2009年1月アーカイブ

・日本の10大新宗教
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この本は気になっていたことが次々に明らかになって面白い本だった。宗教学者の島田裕巳著。天理教、大本、生長の家、天照皇大神宮強と璽宇、立正佼成会と霊友会、創価学会、世界救世教と神慈秀明会と真光系教団、PL教団、真如苑、GLA。著者が選んだ日本の10代新宗教を各一章を使って説明していく。

たとえば高校野球の名門PL学園。「嗚呼、PL 永久の学園~」という校歌まで有名だ。PLが「パーフェクトリバティ」の略だということまでは知っていた。だが、背後にあるPL教団とは何なのか、キリスト教系なのか仏教系なのかというレベルから知らなかった。関西では日本一の花火大会でも有名らしい。

「全国の私立高校のうち、およそ三分の一が宗教団体を経営母体としている。そのうち六割がキリスト教系の学校である。仏教系はキリスト教系の半分で、神道系はごくわずかである。そして、新宗教系は二十校ほどに過ぎない。」

私立高校の宗教性の高さに驚くが、新宗教の割合が著しく低いのは、歴史のある宗教でないと子供を通わせようとする親が少ないからだろうか。逆にある程度広まった古い宗教は、一般にもかなり受容されているということでもある。そういえば仏教系の私の家系は私を含めて3代がキリスト教系の幼稚園に通っている。ある程度認知された宗教にはかなり寛容なのである。

「あらゆる宗教は、最初、新宗教として社会に登場するとも言える。」

「キリスト教系を除けば、神道とも関係がなく、仏教とも関係がないような新宗教は存在しない。」。

であるがゆえに、新宗教も既成の権威を出発点としてつくられていくもののようだ。まったく新しい宗教的権威をゼロから作り上げることは不可能ということか。この本は10大新宗教の系統が整理されているのが勉強になった。

・ぴあダイアリー 2009
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私は仕事のメモはすべてノートに書いている。手帳には週末の予定や趣味の情報などプライベートなことだけを書くようにしている。手帳は私にとってはオフで使うもので仕事では使わない。だから失敗してもいい。毎年違うものを選んでは、違いを楽しみながら使っている。昨年はミスタードーナッツのポイント景品だった。

今年はぴあダイアリーをはじめて使った。

いまさらだがこれがなかなか便利なのだ。

見開き月間スケジュールと週間スケジュールが基本なのだが、印刷された情報ページが充実しているのがぴあ手帳の特徴である。次のようなコンテンツがある。

・気分や季節で表紙を変えよう!! 選べる着せ替え表紙6パターン
・今日は何の日? エンタメ版
・365日、月の満ち欠けマーク付き
・3大都市路線図&地下鉄MAP
・チケットぴあ店舗リスト&利用方法
・全国主要都市エリアMAP 首都圏から九州地区まで主要都市中心部を掲載
・イエローページ 映画館、遊園地からホテルまで幅広くカバー

こうした情報は携帯電話のネット機能で調べようと思えば調べられるのだが、わかっていても面倒だから調べないということが多い。こうして印刷されて一覧できるというのは手軽で素晴らしいなと改めて感じた。「検索」の時代だからこそ「一覧」が光る。

表紙の着せ替え機能(6パターン)があり、これは特にオフで使う手帳として楽しい。

板書の極意

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・板書の極意
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本書の板書は学校で生徒がノートに写すために先生が書く黒板の話ではない。ビジネスシーンで、聴いて、書いて、考える、そして協働をうながすための「板書」=ファシリテーショングラフィックである。だからファシリテーション・グラフィッカーはみんなの話す内容を書く役割であり、受け身の記録係「書記」ではない。

「文字を囲んだり、矢印を使ったり、これは誰でもごく自然に、あたりまえのようにやっていることですが、その意義が「話の展開を見せるためにある」と考えてやれるようになると、今まで以上にわかりやすく、打ち合わせの場をリアルタイムに映し出す表現方法となります。」

よくつかうテンプレート、囲みや矢印、簡単なイラストのサンプル、アイデアがいっぱい紹介されている。線を引いて升目をつくり日付を書き込んで即席カレンダーにするというワザを早速使ってみた。ホワイトボード上で予定をつくるのが簡単になった。みんなの話を絵や図にするパターンをいくつか知っているだけで、自然とその人物は議論をリードしやすくなる。そして何より絵にするために人の話を聞くようになる。

「実は、人の話を聞きながら、自分の話したいことを考えている間は、本当に相手が言いたいことが頭に入っているとは言えません。ひと呼吸入れるつもりで、まずは人の喋っていることに集中して意識を向けてみる。板書の極意は、この「聴く」姿勢にあります。」
私はある大企業の研修に講師として参加したときに、プロのグラフィックファシリテーターの人と仕事をしたことがある。グループのディスカッション内容がリアルタイムにわかりやすい絵や図に変換されていく高度な技術に参加者は感嘆していた。自分が話すことがそのまま絵にしてもらえるのは楽しいし、実のあることを話そうという気にもなる。意見がいっぱい涌いて出てきた。

・モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション
http://gihyo.jp/lifestyle/serial/01/graphic-facilitation

・グラフィックファシリテーション
http://www.graphic-facilitation.jp/

そのプロのグラフィックファシリテータ ゆにさんのサイト。プロのワザを見ることができる。

論理より感性で組織をリードしたい人に向いているメソッドだと思う。

絶頂美術館

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・絶頂美術館
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美術館をのぞいていると近代以前の絵画や彫刻に描かれる苦悶や恍惚の表情(ベルニーニの聖テレジアの法悦など典型例)が妙にエロティックに見えることがある。それは作品が置かれている場が文化的にかしこまった場だからこそ、きわだって感じられるのかもしれない。

著者は有名な芸術作品の恍惚絶頂表現の中に隠されたメッセージを次々にみつけていく。ヴィーナスのヌードの反り返る足指、少年のやけに濡れた瞳、不自然にバストやウェストを強調する姿勢など、明らかに性的ニュアンスが中世の作品にも含まれているのだ。

美術・芸術として自由にヌードや性を表現できるようになったのは最近のこと。かつて絵画の中の人物が脱ぐには、神話や古代史のワンシーンを描いているなどという口実が必要だったそうだ。なんだか"必然性"がなければ脱がない映画女優みたいであるが、それぞれの時代に固有の表現の制約があったからこそ、それぞれの時代なりの前衛的な表現が現れたのでもあった。

この本の主な内容は絶頂表現やヌードを話の肴にした文化史の講義だ。興味本位で読みすすめ、眠くならずに、美術館巡りの予備知識の勉強ができる。扱われている作品の写真も多用されている。

「ヌードを目の前にして自身の心に巻き起こる感情を、自身で眺めてみれば、その時の自分が求めているものやあこがれを知ることができる。ヌードは、単なる裸体のデッサンでもなければ、性的なエモーションを呼び起こす手段でもない。自分自身の理想や欲求やあこがれを映し出す鏡なのである。」

どういう目でヌードを見るか、実はこんな見方もできるよ、という鑑賞の幅を広げてくれる。「怖い絵」が好きな人におすすめ。

・綺想迷画大全
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005221.html

・怖い絵
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005184.html

・刺青とヌードの美術史―江戸から近代へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-807.html

自省録

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・自省録
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「あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。」

ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121-180)が残した内省の記録。彼は多忙な君主としての公務の合間に、心に浮かんだ感慨、思想、自戒の言葉をノートに書き綴る習慣があった。ストア哲学に傾倒したマルクスの言葉は、どれも真摯な真理の探究であり胸に響くものが多い。

「すべてかりそめにすぎない。おぼえる者もおぼえられる者も。」

悔いの残らぬよう今を精一杯に生きろ、宇宙や自然の法則には逆らわず、喜んで受け容れ、徳の高い生き方をせよ、自分に対しても他者に対しても誠実であれ、など生真面目な自戒の文句が続く。

「突然ひとに「今君はなにを考えているのか」と尋ねられても、即座に正直にこれこれと答えることができるような、そんなことのみ考えるよう自分を習慣づけなくてはならない。」

心の中までキレイにすべきなのである。

「明けがたに起きにくいときには、つぎの思いを念頭に用意しておくがよい。「人間のつとめを果たすために私は起きるのだ。」自分がそのために生まれ、そのためにこの世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついっているのか。それとも自分という人間は夜具の中にもぐりこんで身を温めているために創られたのか?(以下略)」

寝坊している場合じゃないのである。

そして一番感銘したのはこれかな。

「君の頭の鋭さは人が感心しうるほどのものではない。よろしい。しかし「私は生まれつきそんな才能を持ち合わせていない」と君がいうわけにはいかないものがほかに沢山ある。それを発揮せよ、なぜならそれはみな君次第なのだから、たとえば誠実、謹厳、忍苦、享楽的でないこと、運命に対して呟かぬこと、寡欲、親切、自由、単純、真面目、高邁な精神、今すでに君がどれだけ沢山の徳を発揮しうるかを自覚しないのか。こういう徳に関しては生まれつきそういう能力を持っていないとか、適していないとかいい逃れをするわけにはいかないのだ。それなのに君はなお自ら甘んじて低いところに留まっているのか。」

驚くべきことにこれらの言葉は、時の最高権力者が、他者に教えを垂れているのではなくて、自分自身に厳しく問いかけるための言葉だったのだ。現代にはこんなに内面から徳の高いリーダーがいるだろうか。

・マインド・ウォーズ 操作される脳
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本書が紹介していくDARPA(米国防総省国防高等研究計画局)の最先端脳科学研究は、人間の脳を意図的に操作する可能性を探っている。脳科学の可能性を示す、興味深い研究事例が次から次に出てくる。

・思考を読み取る技術
・思考だけで物体を遠隔操作する技術
・電子的、薬物的な認知能力の強化
・恐怖や怒りや眠気を感じなくする技術
・敵の脳に影響して戦闘能力を奪う化学物質

ブレイン・リーディング、ブレイン・コントロール、ブレイン=マシン・インタフェースなど脳を操作するテクノロジーの最先端がどうなっているかを、大統領倫理委員会のスタッフをつとめた科学者がレポートする本である。

実験マウスのレベルでは脳に電極をつけることで体を無線制御することが可能になっているらしい。脳画像解析によって何を考えているかを機械が判断する技術も、思い浮かべた数字を当てるくらいならば実現されつつあるという。

こうした技術が進めば脳のレントゲンのようなものになる。将来的には悪意のテロリストを飛行場のゲートで脳スキャンして発見するなどの用途が期待されているようなのだが、心の中まで丸見えになると社会のあり方、人間関係もずいぶん変わらざるを得ないだろう。

悪意を持つ人がセンサーで検出されたら即逮捕、人間はそもそも悪意が発生しないように電子的に脳を自己制御することが義務づけられる、などという暗黒SF時代がくるのだろうか。研究の現状を見る限り、可能性としてはゼロではないが、まだ時間はかかりそうで少しほっとする。

私がいま欲しいのは脳の中身をすべてWiki形式にエクスポートする機能である。"ROM吸い出し"みたいな要領でできるようにならないであろうか。そうやってみんなの頭脳が外部化されてつながっていけば知識の革命が起きると思うのである。Webどころの騒ぎじゃないと思うのだが、これも実現はまだ遠いか。

DARPAの研究の本来の目的は最強の兵士や兵器を作りだすためだ。その政府の軍事目的のために研究に従事しているのは、ほとんどが民間の大学の研究者達である。当然、倫理的な問題が発生する。著者はこの本の中で科学の最前線を紹介すると同時に政府や軍部と民間の研究期間がどういう関係を構築していくべきかを大きなテーマとして扱っている。

「民主的な社会が秘密主義の最小化を実現する方法は、国家安全保障諸機関を、より大きな、アカデミックな科学界に結びつけておくことだ。DARPAは外部への資金援助から手を引くべきだと議会やその他の場で提案されているが、同じ理由からこれには抵抗すべきである。アカデミック世界と国家安全保障に係わる体制側とのあいだがつながっていれば、両者が隔離されれている場合に比べ、社会はずっと健全なものになるのだ。」

そして何より科学者、技術者が高い倫理意識を持つことが重要になりつつあるのだともいえる。この本はそうした問題提起の書である。

・読書について
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読書家と文筆家に向けられた厳しい箴言の書。19世紀の哲学者ショウペンハウエルによる古典。

「1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく。」

ショウペンハウエルは人間には思索向きの頭脳と読書向きの頭脳があるという。思索とは自らの思想体系でものを自主的に考える精神の深い行為だが、読書は思索の代用品であり、他人の思索の跡をなぞるだけの浅い行為に過ぎないのだと指摘する。

「即ち精神が代用品になれて事柄そのものの忘却に陥るのを防ぎ、すでに他人の踏み固めた道になれきって、その思索のあとを負うあまり、自らの思索の道から遠ざかるのを防ぐためには、多読を慎むべきである。かりにも読書のために、現実の世界に対する注視を避けるようなことがあってはならない。」

思索によって獲得した知識は自身の思想体系に固く併合されて精神に確固たる位置を占める真理になる。だが読書によって流し込んだだけの雑多な知識は、精神の血肉にならないばかりか、思想の混乱を招く弊害を持つ。だからこそ本を読みすぎるのは愚かな行為なのだ。

「ほとんどの思想は、思索の結果、その思想にたどりついた人にとってのみ価値を持つ。」。私は日々多読に耽っているわけで、大変に耳が痛い内容である。思索の時間をとれないほど読書をしてはいけないとは分かりつつも、読書の楽しさに負けてしまう自分がいる。

「さらに読書にはもう一つむずかしい条件が加わる。すなわち、紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。」

こうして多読に耽る読者を厳しく戒めた後、ショウペンハウエルの矛先はさらに著者や編集者、批評家らが結託して多読文化を作り上げる出版界に向けられる。彼らこそ諸悪の根源だと痛烈に批判する。

「現代の文筆家、すなわち、パンがめあての執筆者、濫作家たちが時代のよき趣味、真の教養に対して企てた謀反は成功した。それは奸智にたけた悪事ではあったが、めざましいものであった。すなわち彼らは、上流社会全体の手綱をとることに成功したのであるが、その秘訣は時代遅れにならない読書法に励むように、つまりいつも皆で同じ新しいものを読んで、会合の際の話題にこと欠かないように、上品な連中を訓練したことである。」

金や地位欲しさのために著述家達は目新しいだけの無価値の内容で新刊本を濫発し、批評家と結託して互いに称賛することで、読まなければ時代遅れになるかのようなムードを作り上げていく。ほとんどの新刊本に価値はないから、読者はもっと古典を読むべきだとショウペンハウエルは勧めている。

深いなあ。とりあえず岩波文庫の古典を10冊注文した(そしてまた多読に...)。

・オヤジ★ジェスチャー
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人気ブログ「俺と100冊の成功本」の聖幸さんから年末に頂いた本。
(なぜ私にくれるのですか?)

両手の人差し指でバッテンをつくって「おあいそ」
人差し指を立て顔の前で振りながら「違うんです」
忍者の術を繰り出す真似をしながら「ドロンします」

など、オヤジたちが使うジェスチャーを50パターンもイラストと使用例つきで解説する。
小指を立てながら女性社員に「○○ちゃん、最近コレとうまくいってる?」なんて聞くだとか、飲み会に誘われて断る際に、頭の上に鬼の角のように指を立て「ヨメがおかんむりでさ」と言う例など、オヤジ特有のジェスチャーというのは、オヤジっぽいシーンと密接につながっているのだなと気がつかされる。

「その話は横においといて~」は私もたまにやるのでアイタタタと思ったり。まあいいじゃないかそれくらい。

ここに紹介された50のジェスチャーと付録のオヤジ語辞書を活用すると、誰でもおもいっきりオヤジ臭くなることができる。

で、誰が何のために買うことを想定しているのかさっぱり分からない本なのだが、なにげに非常に丁寧に企画、編集されており好感度が高い。無意味に人に勧めたくなる本である。あ、だから聖幸さんは私にくれたのか?)。

・オヤジ★ジェスチャー
http://blog.zikokeihatu.com/archives/001433.html
聖幸さんのレビュー

巨人譚

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・巨人譚
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私が一番好きな漫画家 諸星大二郎の新刊。

巨人がキーワードになる神話や伝承をベースにした過去作品に、新たに書き下ろしたギルガメシュ叙事詩をテーマとした作品を加えた作品集。初出は1979年から2008年の30年に渡り「西遊妖猿伝、海神記と並ぶもう一つの野心的なライフワーク」と帯にうたわれているのだが、巨人が登場しない作品や中国伝奇モノまで含まれており、ひとつのシリーズとしては寄せ集め感が漂う。

だがでっちあげシリーズとはいえ、神話伝承を得意とする作家なので、個々の作品はもちろん面白い。スケールが壮大。タッシリナジェールの壁画「白い巨人」が描かれた一本の短剣が共通して登場する。短剣はギルガメシュやテーセウス、オデュセウスら各文明の英雄達の手によってメソポタミアからクレタへ、リビア、サハラ砂漠へと人類の歴史の黎明期を漂っていく。

やはりプリミティブな世界を描くと諸星大二郎の持ち味がいきるなあと思う。諸星作品の中でも、妖怪ハンターシリーズ、暗黒神話・孔子暗黒伝、マッドメン、海神記など古代神話系が好きな私としては、栞と紙魚子のようなコメディ路線だけでは欲求不満だったが、2007年頃から連続して過去作品の新装復刊、西遊妖猿伝の再開など諸星大二郎ブームの再燃がみえてきているのが嬉しい。

ときどき実現されるドラマ化、映画化作品の中には、沢田研二主演、塚本晋也監督「ヒルコ 妖怪ハンター」のようなトンデモ作品もあるが、私は2005年公開「奇談」が好きだ。これは原作の雰囲気をかなり忠実に再現しているように思う。だが、原作にこだわったが故に一般には余り人気がでなかったようだ。カルトをメジャー化させるのは本当に難しい。


・奇談
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・私の好きな漫画家たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2003/12/post-46.html

・未来歳時記・バイオの黙示録
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-830.html

・栞と紙魚子の百物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/post-791.html

・トゥルーデおばさん眠れぬ夜の奇妙な話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/04/post-377.html

・「私家版魚類図譜」「私家版鳥類図譜」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/post-554.html

・はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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ストレスなくパッパと仕事を片付けるための方法論"GTD"の入門書。百式管理人が監修で大変読みやすい翻訳になった。ライフハックに興味のある人は必読である。

GTDメソッドの要点が冒頭で要約されている。

・頭の中の「気になること」を"すべて"頭の外に追い出そう
・それらすべての「気になること」について、求めるべき結果と次にとるべき行動を決めよう
・そうして決めた、とるべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう

GTDではその第1プロセス=「気になること」の徹底的な棚卸しが重要だ。自分が気になることを網羅するのは意外に難しい作業である。あれもやりたい、これもやりたい、時間があったらさらにあっちも、などと発想を広げていくときりがないような気がしてくる。そのほかにどんなカテゴリがありましたっけ?と悩んで作業が止まることも多い。

そのような状況を打破するのにこの本に掲載された「済んでいないことを思い出すためのトリガーリスト」が素晴らしく役立つ。気になることを網羅的に洗い出すための、膨大な数のカテゴリとキーワードがあるので、このページをコピーして半日くらい考えれば念願の網羅リストをつくることができる。これはやった人の人生にとって結構な財産になると思う。

「頭の中に「気になること」を保存しておくことこそがムダなのである」

こうして頭がすっきりしたら、そのリストをinboxにいれて(メールの受信箱みたいなもの)分類する。具体的には行動を起こす必要がない「ゴミ箱」「保留」「資料」、行動を起こす必要がある「プロジェクトリスト」「プロジェクトの参考情報」「カレンダー」「次に取るべき行動のリスト」「連絡待ちのリスト」の8つのカテゴリにおさめていく。

具体的なコツとして、状況に応じた行動のリスト分類という考え方が紹介されていた。これはカレンダー管理一辺倒の私にとって、今日からでも実践してみたいと思った発見であった。

「これは長年の経験からたどりついた結論だが。「時間が出来たときにやるべき行動」のリマインダーは、その行動に必要な"状況"で分けておくのがいちばん効率的である。具体的には、実行に必要な道具や場所、人ごとに分類するわけだ。たとえば、パソコンが使える状況でないとできない行動は、「@パソコン」のリストに分類する。外出先でやることならば「@買い物・雑用」のリストに入れる。共同経営者のエミリーと直接話す必要があるなら、「@エミリー」のファイルやリストに入れておくといい。」

GTDはなにか特別なツールを必要とする方法論ではない。大量の仕事をがしがしさばいていくための普遍的な考え方である。だからこそ実現するには各プロセスにおける具体的なノウハウが求められる。この本にはそうした実践者のためのコツと小技が本文中に大量に散りばめられている。

シャア専用の如く3倍速くなりたい人に。

・最強の記憶術 暗記のパワーが世界を変える
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2007年末のサービスランチ時から真剣に注目しているベンチャー企業のサービスがある。セレゴ・ジャパンの運営する語学学習サイトのiKnowである。脳科学の研究成果に基づいた学習システムで「100語を憶えるのに二週間かかっていたのが一週間で憶えられる」サービスだ。英語教材をメインに100コース、25万アイテム以上の教材が、PCからも携帯からも無料で利用できる。当然大人気で既に30万人以上のユーザーを集めているらしい。

この本はタイトルから連想されるような単なる記憶術の本ではない。創業者の二人が彼らの目指す記憶学習エンジンによる革命(ソーシャル・ラーニング・レボリューション)と起業プロセスを語ったドキュメンタリである。本を読んで改めて、今日本(本社は渋谷)にとてつもないイノベーションを生み出そうとしている会社があることがわかった。

著者らは記憶状態には4つのレベルがあるのだという。

Familiar どこかで見聞きした親近感がある
Recognition 選択肢から正解を選べる
Recall 選択肢がなくても思い出せる
Automaticity 自動的に頭に浮かんでくる

iKnowでは比較的単純な記憶力テスト問題が繰り返し提示される。ユーザーの正答率や回答時間から、ユーザーがどの単語をどのレベルで記憶できたかをiKnowの「ブレインバンク」システムは学習する。人間の記憶はFamiliarレベルの定着度では時間経過で忘れてしまうが、Recallレベルになれば長期間保持される。だから、効率的にRecallレベルの定着が実現されるように、出題パターンや頻度をユーザーごとに自動的に調整していくのである。長期的に少しずつ単語を復習するこの分散学習方式は、一夜漬け式の暗記よりもはるかに効果が高い。理論的には他のどんな教材よりも記憶定着率が高いカスタム教材が提供されるというわけだ。

このセレゴメソッドは英語学習以外にも記憶力が大切な分野ならば、あらゆる学習に応用することが可能になる。彼らは自分たちは単なる英語学習サイトをつくりたいのではなく、脳の外部化とネットワーク化を実現したいという壮大な夢を語っている。

「ブレインバンクは、あなたが学習や経験を通して得たすべての知識が投影された世界です。そこにアクセスすればあなたの知識にもアクセスできるようになります。同様に、別の人のブレインバンクにアクセスすればその人が蓄積してきた知識にアクセスできるようになります。 個々のユーザーのブレインバンクがつながり、インタラクティブに情報交換することが可能になれば、まさに人類の知恵の宝庫となるはずです。たとえば、アインシュタインのような人物の知識が蓄積されているブレインバンクにアクセスして、この天才物理学者の知識を自分の中に取り入れることができればすごいと思いませんか。」

素直にそれはすごいと思う。

創業者の二人の論理的であると同時に情熱的な語りに引き込まれ、思わずこの会社にジョインしたくなってしまう起業本である。

・インドへ馬鹿がやって来た
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56歳、仕事がなくて困った漫画家が、突如思い立ってインドで漫画を売ることを思い立つ。友人の漫画家の作品を翻訳して、現地で印刷して販売すれば儲かるのじゃないかというアイデアだ。海外に出たことは一度もなく、英語もヒンディー語も全然できないのに、現地で部屋を借り、人を雇い、印刷所と契約し、自分で露天を出して、漫画を叩き売る。

売ることに決めた作品は、表現の問題で40年以上も封印されていたという平田 弘史 のカルト作品「血だるま剣法」。日本でだって売るのが大変なクセのある作品を選んでしまったところから、無理な話であった。

・血だるま剣法・おのれらに告ぐ
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「遂に復刊成る! 1962年夏、大阪日の丸文庫から貸本店向け描き下しマンガ単行本として発行された「血だるま剣法」は、なぜ40年以上に渡り封印され続けたのか? マンガ史のみならず戦後の出版史を考えるうえで避けることのできない本作の意味を再検証。リメイク版「おのれらに告ぐ」併録。監修及び解説:呉智英。 」

著者は売れる物を作るマーケティング能力がゼロなのだが、起業家に必要なゼロからどうにかするバイタリティだけは強烈に持っていた。だから、ビジネス的には大失敗なのだけれど、過程を描いたこの漫画はとても面白いドキュメンタリになった。

怪しいインド人にしょっちゅうだまされる日々だが、全体として殺伐とした雰囲気にならないのは、どこか根底で人間を信じている著者の人柄のせいなのだろう。普通の日本人が入り込まないスラム街へも果敢にアルバイト探しに出かけていく。周囲のインド人達も謎の日本人の行動に戸惑いながら、いつのまにか著者の行動につきあわされている感じがある。

相当に低レベルとはいえ、インドと対等に渡り合ってきた日本人の敗戦記。負けたけれどもとことん健闘した内容は読みどころたっぷり。

日本の弓術

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・日本の弓術
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大正から昭和の初めまでの5年間、日本に滞在したドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲルは、高名な師範に弟子入りして弓術を教わった。その学びは西洋の合理性と論理性、日本の非合理性と直観性とがぶつかりあい、やがて融合していくプロセスになった。ヘリゲルは弓術五段を得てから帰国し、祖国で弓術の習得体験を通して東西文化の本質を突く講演を行った。これはその記録である。

ヘリゲルは最初は当然のように意志の力で身体を制御しようと試みた。注意深く師の動きを観察して、正しい弓の引き方を会得しようとする。だがうまくいかない。深く悩む弟子に師範はこう教えを垂れる。

「あなたがそんな立派な意志をもっていることが、かえってあなたの第一の誤りになっている。あなたは頃合よしと感じるあるいは考える時に、矢を射放とうと思う。あなたは意志をもって右手を開く。つまりその際あなたは意識的である。あなたは無心になることを、矢がひとりでに離れるまで待っていることを、学ばなければならない。」

的に矢を当てようとしてはいけない。腕の力でなく心で弓を引けという師の言葉に、合理性の国からやってきたヘリゲルは戸惑うが、やがて熱心な研鑽の日々を経て、日本の一見非合理な精神性の文化に、西欧の合理性文化をも超越した真理を見いだすに至る。技術の修練を通して無心の境地に至ったものだけが体得する暗黙知の世界を発見したのだ。

それは言葉に出来ない極意を伝授するための、禅にも通じるような神秘的修練方法なのだとヘリゲルは語る。言葉や論理で伝達できるものの限界と、それを超える無心の境地が日本文化の根底にあることを自国の人々に伝えようとする。

「言葉に言い表すことのできない、一切の哲学的思弁の以前にある神秘的存在の内容を理解することほど、ヨーロッパ人にとって縁遠いものはない。すべての真の神秘説に関しては経験こそ主要事であり、経験したことを意識的に所有することは二の次であり、解釈し組織することは末の末であるということをヨーロッパ人はわきまえていない。」

ヘリゲルは日本人の精神的態度、生活様式の根底に潜む非合理性と直観性を幼稚で未熟なものではなく、合理性の限界を超えた次元にあるものとして高く評価した。この本が書かれてから戦後半世紀以上の西洋的な教育を経て、現代の日本人はむしろ当時の聴衆の感覚に近いかも知れない。ヘリゲルの講演によって日本文化の本質を再認識させられる。

・この世でいちばん大事な「カネ」の話
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なんだか感動しちゃったなあ。

西原理恵子の毎日かあさんは隠れファンで全巻読んでいる。

・毎日かあさん4 出戻り編
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基本はお気楽のほほん路線だが「毎日かあさん4 出戻り編」の、元夫との別れのあまりの切なさには涙した。ちょっと昔のフツーの日本の家族模様を描かせたら右に出るモノがいないのじゃないか。おなじほのぼの系でも、すべてが満ち足りたサザエさんではなく、何か欠けている毎日かあさん一家の方がリアリティを感じる。

本書は漫画家 西原理恵子の自伝である。貧乏に泣かされ、大人の無理解で高校中退させられた少女時代。どん底の暮らしから漫画家になって這い上がるも、ギャンブルにはまった話。若い頃の稼ぎや借金の話などカネにまつわる話ばかりで構成している。

西原が「自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。」というように、カネに縛られないためにはカネを稼ぐしかないのである。そういう他の人が言わない真理をガツンガツンと繰り出してくる。自分探しもカネで答えはでる。

「自分は何に向いているのか。
 自分はいったい、何がしたいのか。
 深い迷いで身動きできなくなっているキミを、
 「カネ」が外の世界へと案内してくれる。」

職業選択においては、何がしたいかというより、カネを稼げるコトに適性や能力があるのだから、そういうコトをみつけなさいという論法。なるほど感銘。著者自身が貧乏から独力で成り上がる過程で身につけた金銭教育の本なのでもある。

「カネについて口にするのははしたない」という教えも、ある意味、「金銭教育」だと思う。でも、子どもが小さいときからそういった「教え」を刷り込むことで、得をする誰かがいるんだろうか?いる、とわたしは思う。従業員が、従順で、欲の張らない人たちばっかりだと、会社の経営者は喜ぶよね。」

サブプライム崩壊であっさり破綻した「金持ち父さん」式とはまったく逆を行く毎日かあさんのしたたかな金銭道。この本は自分の息子が中学あたりで"中二病"にかかったら読ませたい本である。

・Musicdog SOUNDLOOK デジタルオーディオ SDD-3000/A
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主に語学の学習用として我が家にやってきたデジタルオーディオプレイヤー。

内蔵メモリ(256M)とSDカード(1Gまで対応)に入れたMP3、WMA形式の音楽ファイルを再生することができる。音源と直接つないで録音するダイレクトレコーディング機能もある。350グラムと軽量なので持ち運びやすい。フル充電で約10時間の再生が可能である。

USBケーブルでPCと接続すると、リムーバブルディスクとして認識されるので、音楽ファイルを選んで転送する。あとは本体の液晶画面で再生を指示する。

sounddog01.jpg

ちなみにアンテナをつなぐとラジオの受信と録音もできる。

音楽をじっくり楽しむプレイヤーとしてはスピーカーが小さい。手元で操作が簡単で、90%から110%まで2%刻みで再生スピードを変えられるから、机の上で音声教材を使っての学習に最適なプレイヤーである。

機能的な目新しさはないのだがデザインとシンプルな操作性が気に入っている。

・xilion
http://kaede-software.com/software/xilion.html
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Mixiのメッセージをローカルにダウンロードして保存できるソフトウェア。IDとパスワードを設定すると自動的にメッセージ全件を取り込む。GUIなのでわかりやすい。

そういえば2008年10月16日にMixiのメッセージが無料ユーザーでも無制限に保存されるうれしい変更があった。

ミクシィ、SNS「mixi」のメッセージ機能を改善--全ユーザーのメッセージを無期限で保存:ニュース - CNET Japan
http://japan.cnet.com/news/media/story/0%2c2000056023%2c20382108%2c00.htm?ref=rss
mixiでは、ユーザー間でのメッセージ送受信する機能を提供している。しかし現状、一般ユーザーにおいては受信や送信、下書作成から60日経過したメッセージは削除され、有料会員である「mixiプレミアム」ユーザーのみ無期限でメッセージを保存できる。これについて、11月1日より、全ユーザーのメッセージ保存期間を無期限にする。

ということは、その時点からさかのぼって2か月前の2008年8月16日までの分が残っているのかなと思ったわけだが、なぜかログは2007年1月分まで保存されていた。2年分で数百通をバックアップできて得した気分だ。

Mixiのさらに強力なバックアップツールにはがある。コマンドラインのインタフェースだが使い方は簡単。

・backup_mixi
http://milk-tea.que.jp/milk-cake/soft/
mixibackupapp01.jpg

こちらは日記にも対応している。

デスクトップにフォルダが作られて1メッセージ1ファイルで保存されていく。

mixibackupapp02.jpg

目次ページもHTMLで生成される。後にデータとして活用できる形式で残したい場合はこのツールのほうが向いている。

・[mixi] backup_mixi
http://mixi.jp/view_community.pl?id=822832
Mixi内のコミュニティ

私という病

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・私という病
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ライター 中村うさぎ(執筆時、47才)が風俗嬢として働いて考えたことを綴った赤裸々ルポタージュ。自身の"女としての価値"を確認したくなった彼女は、身も蓋もなく性的価値が数字で示される世界としての風俗を選んだ。源氏名 "叶恭子"を名乗り(案の定、本家に訴えられるのだが)、個室で欲情した男たちの相手をする。

「恭子が「カネを払ってでも自分を求めてくれる男」を求めて、己の性的価値の確認のために、ここに来たように、彼らもまた、「自分を全面的に受け容れてくれる女」を求め、己の男性的価値(性的にもジェンダー的にも)を確認したくて、ここに来る。それは「排泄」なのか。いや、違うだろ。それは「コミュニケーション」というものではないか。」
体当たり取材モノかと思いきや風俗嬢としての仕事は訳あって数日で終了する。だがわずかな期間でも強烈な体験は彼女に、男と女とは何か、性的な価値とは何か、自分とは何かを深く考えさせるきっかけとなった。

「今回のデリヘル嬢体験で、もっとも興味深かったのは、デリヘル嬢の仕事そのものではなく、デリヘル嬢をやった私に対する世間の反応であった。露骨に嫌悪を表明し、風俗嬢に対する差別意識を臆面もなく曝け出したのは、女たちではなく男たちだったのである。」

そもそもが女の価値確認という過剰な自意識に始まった彼女の風俗体験だったが、実際にやってみたことでその自意識の揺れはむしろ増大していく。愛されたい、見返してやりたい、主体性を持って生きたいと揺れる。その一方で「私という病」に振り回される自分の姿を冷静にみて、現代人が追い回されやすい強迫観念の正体を分析していく過程はじっくり読ませる内容だ。

著者が服を脱いだだけでは飽きたらず、心までスッポンポンになって「私」を世の中に晒している。エロを期待すると肩すかしを食うが、現代社会の病理を明らかにする体験ルポタージュとしてはかなり面白い。

第14回目のテレビとネットの近未来カンファレンスです。

私もスピーカーの一人として登壇します。

今回は財団法人 日本印刷協会主催のメディア業界のコンベンション「PAGE 2009」に場をお借りして、池袋サンシャインシティでの無料開催です。

PAGE 2009
http://www.jagat.or.jp/page/2009/

■第14回 テレビとネットの近未来カンファレンス

「2009年テレビとネットの近未来的業界はこうなる!?」
 ~世界同時大不況時代のここだけのアカルイ話~

明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします。

さて、2009年は2008年の予期せぬ金融破綻で大揺れに揺られたままでの幕開けとなりました。

どこを見ても暗い話題ばかりですが、テレビとネットの近未来カンファレンスでは、2000年ITバブルを生き残った経験値から、この不況を好機と捉え、不景気ではない、オルタナティブな世界を提案したいと考えております。

「2009年テレビとネットの近未来的業界はこうなる!?」と題して、世界同時大不況時代のここだけのアカルイ話をたっぷり提供しようと
考えております。

2008年は、北京五輪、米国大統領選挙と大きなイベントが続きましたが、2009年はまったくなし。これで本当にテレビは大丈夫なのか?自動車が売れなくて、広告は大丈夫なのか?また、ネット動画にも未来はあるのか?2009年にブレイクする予想もふくめて、テレビとネットの近未来を占うセッションとなります。

2009年のテーマとして、「クライアントチャンネル」、「自動化」、「ソーシャルグラフ」、「ウィジット化するテレビ」、「広告新時代」、「ロボット」、「地デジ全録」などをご紹介いたします。

スピーカーは、このイベントでおなじみの

神田敏晶(KandaNewsNetwork代表)
井上大輔(メタキャスト取締役)
橋本大也(メタキャスト取締役、ngi groupイノベーションラボ所長)

の3人です。


■参考動画/情報

メルセデスベンツTV
http://jp.youtube.com/watch?v=ghUVT_Z5oDs

トヨタ壁面ステージ
http://jp.youtube.com/watch?v=sPrcNVtBwpo

環境広告「Polar Bear」
http://jp.youtube.com/watch?v=vl4pVLZ8Czg

ロボットによる自動更新ブログ
http://nettansorweb.cocolog-nifty.com/photodiary/

東芝のCELL TV CES2009
http://jp.youtube.com/watch?v=zSUZD8oXam0
http://tvblogger1.tvblog.jp/tvblog/2009/01/cell-1f8e.html
Yahoo! TV Widgets
http://jp.youtube.com/watch?v=YssuBHqDts8

SONY LIFE X with BRAVIA
http://jp.youtube.com/watch?v=OSfzfUlzVVw

SONY アプリキャスト
http://www.sony.jp/bravia/technology/applicast/

Amazon VIERA CAST

Amazon Video On Demand on BRAVIA Beta
http://www.amazon.com/gp/video/ontv/ontv/ref=atv_getstarted_ontv

■イベント開催概要

【日時】 2009年2月4日(水曜日)18:30開場 18:45~20:30

【費用】 無料

【場所】 池袋サンシャインシティ 文化会館 7階 710
http://www.jagat.or.jp/PAGE/2009/access/access.asp

【懇親会】イベントの終了後に有志による懇親会を開催予定です。場所等の詳細は当日広報します。希望者は申し込み画面にて該当欄にチェックをお願いします(当日申し込みも可)。

【申込URL】http://www.tvblog.jp/tvnetevent/200901/form.php

【告知URL】http://www.tvblog.jp/event/archives/2009/01/

・もう一つの日本 失われた「心」を探して
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産経新聞記者二人が海外取材を通して日本の変容をみつめる。

第一部は「日本人より日本人らしい」ブラジル日系人たちの取材レポート。日系人は150万人を超えるものの、大国ブラジルでは全人口の1%にも満たないマイノリティでもある。だからこそ2世、3世と世代交代してもアイデンティティとしての「日本人気質」を大切に生きている人たちが多い。

ブラジルには教育勅語を奉読する日本語学校があり、演歌をカラオケで歌う人たちが居て、天皇陛下や小泉首相を慕う人々がいた。勤勉実直で、年配者を敬い、礼儀正しいことを良しとする。現代日本では捨て去られてしまった「昔の日本人の美徳」が遠い国の日系社会では未だに守られていることに記者は感嘆する。

ブラジルに続いてパラオ、そしてスペインへ。日本からの移民達が作りだした日本の「親類文明」を旅するうちに、現代日本が経済的豊かさと引き換えに失ったものが明らかになっていく。

第二部はもうひとりの記者がブータンへ飛んだ。このヒマラヤ山麓の小さな国ではGNPではなくGNH(国民総幸福量 Gross National Happiness)という指標で国づくりを進めている。幸せ=財÷欲望。財を大きくして幸福になろうとするのが欧米式、欲望を小さくして幸福になろうとするのが東洋・仏教式。GNHの研究者は「例えばペットボトルの水が売れればGNPは上がるが、川の水が飲める国になればGNHが上がると私たちは考える」という。

ブータンの一人当たり国民所得は日本の五十分の1以下だが、人々はのんびりとした生活を日本人以上に幸福に暮らしている。ヒマラヤの自然と地域社会のつながりに囲まれていれば、過労死や自殺、ストレスとは無縁でいられる。顔つきも似ているブータンの人々の素朴な生活は、かつての日本の農村社会を連想させる。

ブラジル、パラオ、スペインの日系移民の社会とブータンの前近代的な村社会。意外な国で、日本人が自分を見つめ直すための鏡がふたつみつかった。彼らは根っこが我々と同じなのだから、今の日本の良いところも悪いところも客観的に指摘することができる。私たちは歴史的に欧米知識人に学ぼうとしがちだが、各国へ出て行った移民こそ格好の教師になりえるのかもしれないと思った。

現地日系人達の日本へのまなざし、受け止め方(例えば小泉首相がへりで降りた場所に着陸記念碑が建立されてしまうノリ)にも驚かされた。著者の二人は新聞記者らしい取材能力によって象徴的、印象的な事柄を次々に見つけて指摘する。産経新聞連載企画に大幅加筆したものだそうだが、新書というまとめ方でパッケージングされても、なかなか面白く読めた。

古き良き貧しい日本と、失ったものは大きいけれど豊かな日本。ま、何事もトレードオフということだとは思うのですけどね。

聖家族

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・聖家族
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正月休みに、何かにとり憑かれたかのように読んだ長編。紛れもない大傑作である。2段組730ページの分厚い本だがこの体積の中には一つの宇宙が丸ごと取り込まれている。今、絶対的に圧倒的な作品を読みたければ、まずこれである。特別賞だ(何かの)。

日本の歴代の支配者達は古代から明治になるまで、鬼門の方位にある異民族を制圧する将の意味である「征夷大将軍」を名乗ってきた。その抑圧と抵抗の東北の歴史の中で、不思議な魂の交信能力を脈々と受け継いできた青森の名家 狗塚家の700年間にも及ぶ年代記だ。

現代の狗塚家に生まれた三兄弟、牛一郎、羊二郎、カナリア。牛一郎は行方不明。死刑囚として牢屋にいる羊二郎と、先祖や胎児と話す能力を持つカナリアの二人を中心に物語が語られる、超越的な語り手によって。この語り手は人間ではないだろう。それは東北の土地そのものといえる。土地に残された過去の記憶が、なにも知らずに今を生きる登場人物達の行動に、歴史的な意味、血統的な意味を与えていく。

「ベルカ、吠えないのか?」では犬の血統をたどることで現代史を立体的に再構築してみせた古川 日出男は、この作品では狗塚家の血統を縦横無尽にたどることで、異次元の東北を浮き上がらせる。現実という狭い視野の世界観を、血筋の過去と未来、そして"ウラ"や"シタ"に広がる異世界とつなげて、原稿用紙2000枚を使った妄想の大宇宙を創造した。

異なる時代を生きた数十人の登場人物のそれぞれの生き様が、異世界の超越ネットワークを通じて呼応して、大きなうねりを未来につくりだしていくという、作者の壮大な歴史のビジョンに圧倒される。私はこれを読みながら本当に熱を出してしまった。心身準備を整えてから挑戦しないと受け止めきれないくらい、作者の心的エネルギーが注ぎ込まれた魔性の作品である。

・ベルカ、吠えないのか?
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/01/post-341.html
古川 日出男のもうひとつの傑作。

私は毎年、紅白歌合戦を見ながらガンプラを作っているわけですが、2006年暮れがアッガイ、2007年年暮れがゾック、そして2008年暮れはズゴックでした。水陸両用が好きなのです。

・MG 1/100 ズゴック MSM-07
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こういう写真を貼りつけると途端にブログの空気が変わるわけですが、私はそんなにガンダムマニアではありません。初代しか知らないし、それ以外のシリーズに興味がないのです。であるが故に、初代ガンダムを安彦良和が描き直している漫画THE ORIGINなわけです。

・愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV ジャブロー編
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毎年一冊の愛蔵版が出版されるペースで読んでいます。今回はジャブロー到着前後ということでまさにズゴックが登場するのですが、THE ORIGINのズゴックはガンプラと造形がちがってマッチョな感じです。私はガンプラの方が好きですが。

安彦良和には『ナムジ』『神武』という古事記をベースにした傑作がありますが、THE ORIGINも機動戦士ガンダムという神話に対する大胆な解釈という点で似たような感覚で描いているのかも知れません。THE ORIGINはこのジャブロー編あたりから、テレビ版や映画版ガンダムでは描かれなかったエピソードが増えていきます。

巻末に柴田ヨクサルによる安彦良和の仕事場取材レポート漫画が掲載されています。この緻密な絵を60才近い作家がほぼ一人で描いていることに驚き。しかもネームなしアタリなしのいきなり本番。知ってましたが安彦良和はやはり神です。

・HGUC 1/144 MSM-10 ゾックと機動戦士ガンダムTHE ORIGIN
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/02/hguc-1144-msm10-the-origin.html

・機動戦士ガンダム THE ORIGIN、MGアッガイ、ターゲット イン サイト
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/the-originmg.html

・ガンプラ・パッケージアートコレクション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-820.html

・俺たちのガンダム・ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-662.html

・ガンダム・モデル進化論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003091.html
この本はデータブックとしてもよかった。

東京奇譚集

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・東京奇譚集
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村上春樹の短編集。文庫版。さらっと読みやすい。

ゲイとストレートの不毛な恋。南の島で鮫に足を食われて死んだ息子を弔いに旅に出た母親。階段の途中で行方不明になった夫を捜す妻。運命の女だったかもしれない女。自分の名前を忘れてしまう女。都会生活者の喪失感をテーマにちょっと不思議な話が5編。

どの作品にも冒頭から喪失のメタファーが散りばめられている。文学部の学生が研究レポートを書きやすそうな記号だらけである。5作ともおおざっぱに「喪失を抱えた登場人物達が偶然によって出会いそして別れていくという話」だと要約できる。その偶然の要素によって物語が意外な方向に流れ進んでいく。つまり面白くなっていくのだ。

喪失感というつまらないものが偶然によって引き合い、面白いものになる。一作目『偶然の旅人』の登場人物のセリフに「偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうか」というのがある。常に偶然に意味を見出すことができるならば、こんなことってあるんだ!の連続になり、人生は幸運な出会いや神様の加護でいっぱいになる。

この作品集は何かを失った人たちの話ばかりだが、偶然を経過して再生へと向かう明るさが根底にある。病院などの待合室で読むのにおすすめ。

・カラオケJOYSOUND Wii
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自宅でカラオケが楽しめるWiiソフト。マイク付。パッケージ版。

予約して発売日に入手し年末年始に実家で子供達(ポニョ熱唱)と遊んでみました。

付属マイクの集音性能はあまりよくないのですが、防音設備がない普通の民家ではこれくらいの音量で十分のように思えます。エコーがちゃんとかかっています。自宅環境では音量や音質云々よりも、エコーがかかるとカラオケっぽい気がします。

パッケージ版にはあらかじめ70曲が内蔵されています。定番曲と2008年度のヒット曲が含まれるのでこれだけでも結構楽しめました。ネットに接続すると有料で3万曲以上の楽曲を歌いたい放題になります(業務用は10万曲くらいらしい)。1000円(Wiiポイントで決済)で1ヶ月間歌い放題に登録しました。

風景変更や採点や歌唱レッスン、ミニゲームなどの機能があります。採点が業務用のカラオケよりも辛い気がします。マイクのせいかもしれません。課題曲をみんなで歌ってインターネット上でランキングを競うキャンペーンも展開中。

自宅向けカラオケ機器の市場というのはずいぶん昔からあるわけですが、イメージ的には田舎の大きな家の片隅に普段はほこりをかぶっているレーザーカラオケみたいなものという印象がありました。Wiiで最新楽曲も配信となると、新たな都市部の一般家庭に浸透していくのかもしれません。

カラオケJOYSOUND Wiiで一通り遊んで感じたことは、やはり自宅環境では熱唱はできないということです。防音の問題もありますが、そもそも自宅ではハレとケの区別がつかないが故に盛り上がりにかけるわけです。お茶の間でミスチルのシーソーゲームを絶唱するわけにもいかないわけです。

で、結論としては自宅でボソボソと歌うにはフォークミュージックがよいと思いました。神田川とか青葉城恋歌とか一人上手とかです。アコースティックギター一本で弾き語り系がしっくりくると思うわけです。ただの私の好みですが。

ポップミュージックはこれまで「カラオケで歌いやすい歌」や「iPodで聴きやすい楽曲」に対応してきましたが、今後自宅カラオケが増えるのならば「自宅で歌うのに適した歌」が流行るのかもしれません。

というわけで、このソフト、カラオケ機器として長く楽しめそうなソフトです。毎日は遊ばないですが月に一度くらいは立ち上げそうな予感です。楽曲配信サービスが末永く続いていくれる事を祈ります。

・カラオケJOYSOUND Wii
http://joysound.com/ex/wii/

・封印作品の憂鬱
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一度は発表されたが何らかの事情で再発表が自粛された「封印作品」の謎を解明するドキュメンタリ。「封印作品の謎」「封印作品の謎2」に続く第3弾。今回のタイトルは「日本テレビ版ドラえもん」「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」「みずのまこと版『涼宮ハルヒの憂鬱』」。今回は3作品しか取り上げないが、これまで以上に執拗に関係者を追いかけており、一番濃い内容になっているように感じた。これを書くのに実に2年を費やしたそうだ。

特に面白かったのはやはり「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」だ。ウルトラマンの日本以外の著作権はタイのプロダクションが保有を主張して揉めているという話は結構有名だから私も知っていた。円谷プロとタイのプロダクションの間で交わされた契約書の真偽をめぐる裁判では、日本の法廷では契約書は本物、タイの裁判所では偽物という判断がなされて、この問題を一層ややこしいものにしている。

この章で取り上げられたのはそのタイのチャイヨープロダクションが資金を出して製作した映画である。両者の関係がこじれたため、現在は日本で上映されることはありえない状況になっている。タイ人の発想で作られたため、日本人からするとかなり奇異なシーンがあるのだが、特に異様なのはウルトラマン6人+タイの猿神ハヌマーンが、一匹の怪獣を取り囲んでボコボコにしてしまう集団リンチシーンであろう。YouTubeにばっちりこのシーンがアップされている。(長期間これが消されないのも著作権の所在が不明だからであろう。)

著者はタイに乗り込み、プロダクションの代表ソンポート・センゲンチャイへの直接取材を成功させた。ソンポートは60年代に円谷プロに特撮の留学し帰国後にタイで映画製作会社を興した。円谷プロの創始者円谷英二に師事した人物がなぜ裁判で争う最悪の関係性に陥ってしまったのか、ソンポートはいま何を考えているのかが明らかにされる。そして国内でも当時の関係者を綿密に取材することで、背景にある利害関係や関係者の思惑、確執がはっきりとみえてくる。

このシリーズを私が好きなのは、封印作品という特異点から見える昭和(ハルヒの章は平成だが)という時代のゆがみを描いているからだ。この著者が封印作品をライフワークとして追い続けるのは、表現の自由のためでもなければファン感情でもないのだろう。封印を解くたびに、新たな世界が見えてくる体験(読者もそれを共有する)に魅了されているのだと思う。単なるサブカルのトリビアに終わらないから読後の満足度が高い。

封印作品4が楽しみだ。今回執筆に2年かかったと言うから次は2010年くらいかなあ。

・封印作品の謎 2
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/-2-1.html

・封印作品の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/01/oiiia.html

2008年にこのブログで紹介した小説・創作作品の中から、これは本当によかったと思う本をランキングで10冊+2冊並べてみました。私が2008年中に読んだというのが基準なので、昔に発表された作品もかなり含まれています。

・2007年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/2007-5.html
・2006年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004849.html
ちなみに一昨年、昨年度はこうでした。


■1位 宿屋めぐり
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-828.html

・宿屋めぐり

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私のこの本の感想は「なんだかよくわからないがすごくよくわかった。」というものだ。極上の小説にしか達成できないことだと思う。宿屋めぐりとはがんじがらめの魂のクオリアを強烈に解き放ったアート。大傑作、まず読みましょう。

■2位 双生児
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-850.html

・双生児

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複雑、緻密な構成にうならされること間違いなしの大傑作。私などは読み終わって1時間くらい紙に物語の構造を図式化しながら考え込んでしまった。それがまた最高に楽しい時間だった。英国SF協会賞とアーサー・C・クラーク賞を受賞。

■3位 われらが歌う時
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-898.html

・われらが歌う時 上

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バロック音楽、オペラ、ゴスペル、ブルース、ジャズ、ヒップホップなどあらゆる音楽がそれぞれの時代や登場人物の人生を彩る。音はジャンルの垣根を越えて次第に混ざり合って、新たな時代の音楽を生み出していく。現実世界でも混血の大統領が誕生しようとしているアメリカの姿を、音楽をモチーフに描いているのだとも言える。

■4位 エア
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-842.html

・エア

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これは衝撃作。21世紀の世界に究極的な情報技術が登場したらどんな変化を及ぼすかを、寓話的に予言している。といっても、未来のハイテクそのものがテーマではない。原題はAir(or,Have Not Have)"。情報や金を持つ者、持たざる者の関係性がネットワークによってどう変わりうるのかこそ最大のテーマだ。

■5位 ゴサインタン―神の座
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/02/post-705.html

・ゴサインタン―神の座

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地方の名士として代々続いてきた農家の後継ぎ結木輝和は40を過ぎて独身であった。農家に嫁いでくれる嫁を探して見合いを続けたが失敗続き。そこでアジアの花嫁仲介業者の世話になって、ネパールから若い妻を迎えることになる。彼女の名前はカルバナ・タミ。輝和は耳慣れない名前を嫌って自分のかつての意中の女の名前「淑子」と呼んだ。淑子は日本語も満足に話せぬまま結木家に入った。旧家の一族は彼女を日本の生活に馴染ませようとするのだが、やがてそのプレッシャーが淑子の秘めていた「生き神」としての能力を発動する。

■6位 八甲田山死の彷徨
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-888.html

・八甲田山死の彷徨

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真冬の八甲田山も怖ろしいが、200人の大部分を殺したのは明らかに人間の組織であったように思える。そして、こうした組織的な判断による破滅は、現代の企業組織にもよく見られるように思う。リーダーが読むべき失敗学の参考書として経営者にもおすすめ。

■7位 ガダラの豚
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/post-762.html

・ガダラの豚 1

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ガダラの豚は冷静に物語の全体構造を設計する表のらもと、人間の心の闇を知り尽くした裏のらもが、総力をあげて作り上げた大作だ。娯楽作品であると同時に深い闇がある。

■8位 ロード
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-831.html

・ザ・ロード

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ここは極限的な性悪説の世界だ。万人が原初的な闘争状態にある。他者を見たら、奪われる、殺されると思わないと、生きてはいけない。温情は禁物である。他人に何かを与えればそれだけ自分の生きるリソースが目に見えて減るのだ。誰も人を信じることが出来ない。世界の破滅以降に生まれた息子にとって、父だけが唯一の信じられる人間だ。父は苦難の旅のなかで、かつて存在した世界の様子を教え、息子の心に希望の火を点そうと努力する。

■9位 朗読者
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-818.html

・朗読者

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アメリカでは200万部以上が売れて、映画化が決定している。「タイタニック」のケイト・ウィンスレットがハンナを演じるそうで相当の大作になりそうだ。現在撮影中で2010年に公開予定。今頃読んでおくと、映画の頃には程よく忘却していてちょうどよいかもしれない?。

■10位 ストーカー
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-805.html

・ストーカー

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あるとき異星人の「来訪」があった。彼らは人類にまったく接触することなく、痕跡「ゾーン」のみを残して地球を去っていった。「ストーカー」とは危険な「ゾーン」に不法侵入して、異星人たちが残した正体不明の物体の数々を持ち出してくるアウトローな職業の呼び名だ。

・心の起源―生物学からの挑戦
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心とは何かを科学者が哲学的に探究する。面白い。

著者は記憶こそ心の基本であるという。記憶には想起、記銘、保持といった機能が生物学的に備わっている。こうした記憶の照合作用から、時空(位置や時間の堆積)、論理(原因と結果の堆積)、感情(快不快の堆積)という3つの基本的な枠組みがでてくる。そしてさらに統合能力としての統覚が、記憶の中の離散的なもの(時刻、位置、事象、快苦)の中から連続的なもの(時間、空間、因果律、好悪)を見出し、世界の認識に至る。

著者のアプローチは心を物質に還元しない。物質世界、生物世界、心の世界が入れ子構造になっているが、それぞれの世界に独自の法則が働いていると考える。心も遺伝子の乗り物と考えるようなドーキンス的アプローチとは一線を画す。

まず各世界を特異点(開闢)、基本要素、基本原理、自己展開といったキーワードで分析していく。物質世界の自己複製のはたらき(例:RNA)が生物世界を開く特異点となったように、生物世界が心の世界を開く特異点は記憶の成立とその自己複製作用だと著者は指摘する。記憶の能力を高めた人類は、経験する世界を統合して理解しようと試みる。だが、個別の経験からは当然ながら矛盾が現れる。

「離散と連続、有限と無限とは所詮は水と油であって、何としても橋渡しが叶わぬものであるのに、統覚がこれらを結び合わせてしまったことは、心の世界観に決定的な矛盾を忍び込ませる結果をまねいた。これは心の世界のその後の展開に測り知れない影響を与えている。というのは、それからというもの絶えず綻びかかる個別と普遍とのあいだの結び目を、際限なく繕っていかねばならぬ破目に陥ったからである。」

基本原理で世界を理解しようとすれば矛盾があるから、それを解決すべく私たちの認識する世界は自己展開し常に新しい世界として開く。これまでの公理を書き換えて新しい公理系を打ち立てようとする。「一つの世界とは一つの公理系であって、新しい世界を開くとは新しい公理系を立てることにほかならない」。このライブな動きこそ私たちの心の原動力なのだ。

まるで証明問題の如く心の世界を極めてロジカルに説明している。一つの説明としての自己完結度、収まりの良さはちょっと感動である。

アマゾン、ブログなどの読者評価はふたつに分かれているようだ。

この本はほとんど哲学なのであるが、難解な哲学用語は出てこない(用語は必ず定義が示される)。哲学者が好む文学的レトリックも少ない。その代わり簡単な言葉の積み重ねなのだけれど複雑な論理式がしばしば用いられる。理系頭の人には高評価で、文系哲学好きにはアプローチ的にちょっと辛いというのが、評価をわけた理由かなと思う。

情報力

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・情報力
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大学・大学院での講義内容をベースにして、個人の情報力を極めるための本を書きました。パソコンをフル活用した新しい情報の活用ノウハウと50以上の思考支援ツールの紹介です。

私は学生時代から、物を調べる仕事に従事してきました。

1 複数のベンチャー企業での創業役員体験
2 企業や大学、官公庁の調査プロジェクトでの経験
3 ベンチャーキャピタリストとして投資の判断をする側の経験

これらの経験から学んだことを今回一冊にまとめてみました。

私はこの本の冒頭で"ハイパー個人"という言葉を造りました。デジタルとネットワークで情報処理能力を飛躍的に増大させた人を意味します。

圧倒的に大量の情報の中から自分の意志決定に必要な適合情報を抽出し、分析して仕事と生活に役立てること。それがハイパー個人のための情報術です。

この本には総論の後、情報収集、情報整理、情報分析、情報活用の4つの章があります。それぞれのフェイズで必要な考え方とやり方を本書に書きました。

情報収集    情報整理   情報分析   情報活用
データ  →  情報  →  知識  →  知恵

情報は広げて集めたら収束させる必要があります。膨大な量の断片的なデータを収集し、整理することで情報に変え、分析を加えて知識に昇華し、汎用的に使える知恵にまで高めることが大切と考えます。それをどうやるかというのが主な話です。

本の内容をもうすこし詳しく紹介すると

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・Evernote、Dropbox、FrieveEditor、FreeMind、OneNote、iEditなど思考支援アプリの使い方
・欲しい情報がすぐに見つかる検索テクニック
・速読術を使わずに速く読むハイパー読書術
・メモや発想を外部脳に保存するノウハウ
・ネット上にあなた専用私設顧問団を持つコツ
・集合知を機能させるハイパー・フェルミ推定

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読書論やブログ論についても触れました。

定価は980円。見ての通りイラストたっぷりで読みやすくしあげました。コンパクトで1、2時間で読めてしまう本ですので、ぜひ情報力増強ののドーピング剤として一度お試しください。

よろしくお願いします。

著者 橋本大也

新春ポッドキャストも最終日。

Passion For 2009ということで3人が今年の抱負を語ります。

で、この中で触れましたが、私は本を書きました。

パソコンとネットワークをフルに使った情報活用術の本です。

『情報力』。

翔泳社から2009年1月9日発売です。詳しくはまた明日あたりのエントリで。

・情報力
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さて4年目のこのゆるーい企画も無事終了です。歴史になってきました。

2006年、2007年、2008年、2009年 新春ポッドキャスト記事一覧
(私は毎年同じ正月のスタイルを繰り返しているなあ。)

新春ポッドキャスト 3日目 「ツイてる!ポッドキャスト2008」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/32008.html

新春ポッドキャスト 2日目 「ツイてる!ポッドキャスト2008」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/22008.html

新春ポッドキャスト 「ツイてる!ポッドキャスト新春2008」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/2008.html

新春ポッドキャスト 3日目 「ツイてる!ポッドキャスト2007」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/32007.html

新春ポッドキャスト 2日目 「ツイてる!ポッドキャスト2007」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/22007.html

新春ポッドキャスト ブロガー対談 「ツイてる!ポッドキャスト2007」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/2007.html

新春ポッドキャスト対談 「ツイてる!ポッドキャスト2006」 3日目
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/01/20063.html

新春ポッドキャスト対談 「ツイてる!ポッドキャスト2006」 2日目
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/01/20062.html

新春ポッドキャスト対談 「ツイてる!ポッドキャスト2006」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/01/2006.html


今日も駅伝を応援に出かけました。

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本日も新春ポッドキャストです。

3日目の内容はそれぞれのブログで人気の本、注目の本などベスト3の紹介です。

Passion For The Future 橋本
×    
俺と百冊の成功本 聖幸氏
         http://blog.zikokeihatu.com/

×
たつをのChangelog たつを氏
         http://nais.to/~yto/clog/


さて、私は元日に風邪を引いてしまいました。ツイています。

こんな本を先日読みました。風邪を引いたらツイてるとおもえという本です。

・風邪の効用
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風邪をひいた後は脱皮するように新鮮な身体になる。風邪は病気というより自然の治療行為であり、途中で治さず症状を経過させることが重要だと説く整体の大家の本。風邪の原因は身体の偏りであり、硬くなった部分を柔らかくほぐすのが風邪という考え方だ。

・無理に早く治すな、経過させろ
・風邪はうつらない
・テレビを見ると風邪をひく
・風邪を引きそうと思い込むと風邪を引く

西洋医療的にはトンデモな意見もあるのだが、なんだか感覚的には納得してしまう部分もいっぱいあったりしてこういうのもありだなと思ってしまう記述も多い。

で、この先生自身はどうやって風邪に対処しているかというと、整体の専門用語がまじるが、

「私自身の風邪に対する処理方法は極めて簡単なのです。背骨で息をする、息をズーッと背骨に吸い込む。吸い込んでいくとだんだん背骨が伸びて、だんだん反ってくる。反りきると背骨に少し汗が出てくる。その間は二分か三分くらいです。汗が出たらちょっと体を捻ってそれで終える。背骨に気を通すと、通りの悪い処がある。そこが偏り疲労の箇所であり、それに一生懸命行気をし、そこで呼吸をする。それでも通りの悪い処があれば、人に愉気してもらう。私がたいていの場合、活元運動をやってしまう。」とのこと。

背骨で息をしてみると、確かに血の巡りがよくなって快方に向かいそうな気がしてくる。気がして来るというのが東洋医療的には大切なのだろう。そして治った後は風邪をひく前より健康な身体になっている。「風邪を引いたら儲け物」という本、弱気になりがちな病気のときのポジティブシンキングとしてよいかも。


今年も駅伝に応援に出かけてきました。

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早稲田は2位でした。往路優勝を逃しましたが総合優勝に望みをつなぎました。

写真はアルファブロガー池田信夫氏を教授に抱える上武大学。駅伝では新顔。

新春ポッドキャスト2日目。

話題は2008年に使ってよかったモノの紹介です。Pomera、ユニークなCD収納袋、一眼レフ、本立て、タイマーなどなど次々に役に立つモノたたぬモノが出てきます。

・前半



Pomeraは私も買いました。玄人向唯我独尊電子筆記用具英得搭載。

・後半

Mt.Fuji view from Enoshima beach
写真は江ノ島の海岸から望む富士山です。写してきました。

あけましておめでとうございます。

今年もみなさんと私が最高にツイてる年でありますように!。

さて、今年も例年通り(4年目!)ブロガー3人+デジハリ宮本プロデューサのチームで「ツイてる!ポッドキャスト新春2009」を連日放送します。去年までは音声放送でしたが、なんと今年からは映像です。

第一日目の内容はそれぞれの「2008年のこれはツイてた!」ベスト3の発表です。

Passion For The Future 橋本
×    
俺と百冊の成功本 聖幸氏
         http://blog.zikokeihatu.com/

×
たつをのChangelog たつを氏
         http://nais.to/~yto/clog/

今年も収録にはデジタルハリウッド大学放送部宮本さんの力を借りました。


さて明日からは箱根駅伝が始まります。年末に出版社から献本でいただいていた、こんな本を読んでいました。早稲田が優勝すれば本も相当売れそうですが、どうなることやら。

・自ら育つ力 早稲田駅伝チーム復活への道
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低迷していた名門チームを再建に導いた早稲田大学競走部の駅伝監督 渡辺康幸が書いた成長理論。3グループに分かれた練習法や今年の主力選手の最新情報など駅伝競技の裏側がわかって面白い。名門チーム特有の運営の難しさが語られている。管理の厳しい名門高校から自由な早稲田大学に入ると、自主性や自己管理が甘い選手が多くて伸び悩むらしい。

早稲田史上最悪の16位の直後に就任した渡辺監督は「箱根で優勝したいです」と言って入ってくる一年生たちに「自分の実力を棚に上げて語られる目標ほど、聞いていて虚しいものはない。自分たちもうすうす気づいているから、目標を語っているというわりには、言葉の重みや気持ちの張りが感じられない。内心ではとても無理だと思いながら「ああ、箱根で優勝してみたいな」とつぶやいているにすぎない。」と厳しい目を向けた。

細かい目標を明確にして自主的にステップを刻んでいくような状態を目指す渡辺流自己成長理論で、早稲田は2008年には12年ぶりの往路優勝総合2位にまで浮上してきた。2009年は渡辺監督にとっての5年の指導の成果を見せる正念場となる。

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