2010年7月アーカイブ

iPhone、iPadで遊べるMystery House。

・Mystery House
4826324523_0c47151ca0.jpg

Wikipediaによると
http://ja.wikipedia.org/wiki/ミステリーハウス
『ミステリーハウス』(MYSTERY HOUSE)とは、1980年代に登場したアドベンチャーゲームのタイトル。日本では同名の2本のソフトが存在する。
1980年、アメリカのケン&ロバータ・ウイリアムス夫妻が興したシエラオンライン(Sierra On-Line)からApple II用に発売されたソフト。世界初のグラフィックアドベンチャーゲームとして有名。日本では1983年にスタークラフトからFM-7などの機種への和訳移植版が発売。
1982年、日本でマイクロキャビン(当時はマイクロキャビン四日市)からMZ-2000用に発売されたソフト。

だそうです。

このMystery houseは私にとって憧れのゲームでした。しかし、小学生だった私には当時高価なアップルのは高嶺の花。パソコン屋の店頭や雑誌でmysteryhouseの画面を見るたびに、きっとあのアドベンチャーゲーム世界には無限の自由度があって、どんな指示を入れても反応がかえってくるのだろうと期待していました。

日本でもその後、ミステリーハウスという題名の、アドベンチャーゲームが発売された。当時のメモリ容量ではそれほど複雑なストーリー展開を盛り込めるわけもなく、数十問の言葉当てクイズのようなが、やはり、本家のmystery houseのことが気になったものでした。

4826914018_c8bf6c2fef.jpg

このミステリーハウスではすべてテキストで指示を出します。たとえば、

Open door
Look memo

というように、動詞と名詞の組み合わせでテキストを入力します。すると、テキストと絵で何が起きたかが表示されます。移動は、

N,E,W,S で北、東、西、南へ進め
Up,Down

で行います。

エミュレーターで体験したことはありましたが、これでやっと三十年来の、mystery houseを自分のものにすることができて感激に浸っています。このゲームは決して安くないので、きっと買うのは私みたいなマイコン世代ばっかりなんでしょうね。同類におすすめ。
なお、利用するかどうかはともかくとして、Mystery house cheatで検索すれば解答集もみつかります。雰囲気だけ最後まで楽しみたいならそれもありでしょう。

4826306631_760c621e5a.jpg

・<不良>のための文章術
51QKA6NSTEL__SL500_AA300_.jpg

カネになる文章の書き方を教える本だ。

<不良>は「天声人語」や小論文テストの良い子ちゃん文章術とは対極にある。

「クルマの運転にたとえてみましょうか。学校で習う文章や『文章読本』が教えるのは、教習所で満点をとれるような運転です。法規を守り、自動車のしくみや特性をよく理解して安全に走る。しかし、サーキットやラリーコースでそんな運転をしていたのでは、とてもレースに参加できません。路上では「割り込み」や「幅寄せ」はいけないことですが、レースではそんなことはいっていられません。もちろんスピード違反だって。」

「文章読本」系の本は大作家が書いたものでさえ「この本は名文の書き方を教える本ではありません。」なんて逃げ口上が最初に書いてあるものだが、この本は逃げない。ちゃんと売れる文章の書き方を教えるぞと書いている。フリーライターとしてプロを目指す人はこちらを読むべきである。

書評、飲食店評など実際に良い例と悪い例を示して、なにが違うか、どう直していくべきかを実践的に教えてくれる。心構えも具体的でかつ不良だ。コラムやエッセイならば、

「他人に嫌われることをおそれてはいけません。というか、むしろ積極的に「こいつは面白いことを書くけど、友達にはなりたくないな」と思わせるぐらいの方がいい。いやなやつ、鼻つまみ者を積極的に引き受けなければ、コラムやエッセイは書けません。誰にでもいい顔をしようとすると、とたんに文章はトーンダウンし、つまらなくなる。」

という気でいろ、と。プロである。

ベテランのフリーライターとして著者の経験のもとづくノウハウはどれもうなずくことばかり。自分の反省点をいくつも突かれてイタタタタだった。まずい飲食店についてまずいと書かずに読者にまずいことを伝える技術など、プロとして生き残っていくためのテクニックも参考になった。


・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html

13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html


・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html

・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html

・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html

・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html

・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html

・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html

・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html

・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html

・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html

・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html

・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html

・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html

・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

・宗教とは何か
51gQ0SA2B44L__AA300_.jpg

日本におけるこの本の位置づけはリチャード・ドーキンス『神は妄想である』に対する反論本である。

宗教の現代的な価値を擁護する内容。日本人にはない問題意識のため、この神学論争は国内の論者ではほとんど見かけない。利己的な遺伝子やミームの提唱者として日本でもよく知られるドーキンスだが、今は宗教批判の先鋒に立っているのだ。宗教は迷妄であり愚かだとしてめった切りである。それに対して著者は、科学もまたある種の信仰だと切り返している。

「重要な意味において、科学者は信仰者であると同時に美学者でもあるとわたしは考える。あらゆるコミュニケーションは信頼[=信仰]をふくんでいる。」

信念はあらゆる知の土台になるという論を展開している。アリストテレスやカントや野中郁次郎の、「知識」は信念であるという言葉と同じだ。

「そもそも信仰は───どのような種類であれ───選択の問題ではない。なにかを信じるにあたって人は意識してそう決めるのではなく、知らないあいだに信じているというのが一般的だろう。あるいは、かりに意識して決めるにしても、すでにその方向にかたむいていたからともいえる。」

科学合理主義か宗教かの選択というよりは、著者はあらゆる思想の問題に普遍化していく。信じる心を人間は生得的に持って生まれており、信仰は理性を超える、人間の内面の深さを示すものだという。

「理性だけが野蛮な非合理主義を屈服させることができるのだが、そうするためにも、理性は、理性そのものより深い部分に横たわる信仰の力や資源に頼らなければならない。」

高度にレトリックを使った議論が続くため、読むのがだんだんしんどくなるが、キリスト教世界の合理主義者が、内面においてどのように科学と宗教を調和させるべきかのビジョンが示されている。

・中世民衆の世界――村の生活と掟
41hqokBGuQL__SL500_AA300_.jpg

中世日本の村の掟の資料研究。

オキテって言葉は新鮮だ。ホンモノのオキテってどんなものだったのか好奇心がわく。

この本には資料に基づいて本物がいっぱい出てくるのだが、わかりやすくいうと、

おまえら村の掟で違反者を勝手に処刑しないように
根拠不十分で死罪にしちゃった場合は、子供に財産を継がせよ
村に旅人を泊めるのはご法度だが惣堂なら無許可でとまってよろしい
平常時の人身売買は重罪だ
でも飢饉のときだけは金持ちは貧乏人を助ける意味で奴隷にしていいよ
村人は軍役に対しては食料や補償を求めた
山を荒らすものがいたら鎌を没収すべし
百姓は年貢を払ってからならば逃げてもよろしい

などである。細部を見ると、中世の百姓民衆の権利関係や意識がみえてくる。

たとえば、ある地方で地頭が勝手に村を売ってしまい、別の領主がやってきたが、前の領主と村人が結んでいた約束事(祭りの際の村人を饗応すること)を、新領主に引き継いでいなかったため、もめ事になり売却自体が無効化されてしまった事件記録。地頭が村を売ることができたというのも驚きだが、約束が違うと訴え出て、その要求を通してしまえる村人との関係性も意外。

私はこの本を読むまで当時の民衆は「ミミヲソギ、ハナヲソギ」で領主に奴隷のようにこき使われて移動の自由もなくて、活かさず殺さずに置かれていたというイメージが強かった。だが、実際の中世の民衆は必ずしも支配者のいいなりではなくて、自治を守っていたようなのである。

村の力で処刑や追放を行うという厳しい側面もあったらしい。もめ事の解決には、残酷な鉄火起請でさばいたなんて話も出てきて、

・日本神判史 盟神深湯・湯起請・鉄火起請
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1267.html

内容的にこの本とつながります。

・AppsMosaic
4805002897_7775ebcb3e.jpg

世界約60カ国のアプリの人気ランキングを、アイコンをタイル状に並べて一覧で見ることができるアプリケーション。一覧性と言う点ではiPhoneよりも、iPadで使った方が楽しい。アプリ市場のグローバル状況をリアルタイムに把握することができる貴重な情報源でもある。これからiPhone/iPadアプリで何かやってやろうという人はぜひ見るべき。

国名、カテゴリ名、無料・有料を選択すると、アプリのアイコンが大量にタイル状に表示される。気になるアイコンをクリックすると、詳細情報が表示される。

仕事効率系、カメラ画像系、ネットワークユーティリティ系のアプリは万国共通で、あまり変わらないようだが、各国の特徴が強く出るのが電子書籍(Books)カテゴリである。各国の母国語コンテンツが並ぶのは当然だが、日本のコンテンツが意外なところで出てくるのが面白い。

4804989849_11b1cb5213.jpg

サウジアラビアではメイド系など日本の萌え系でややピンクなコンテンツが売れている。そういえば先日の国際ブックフェアでは、最大のブースは講談社でも小学館でも、DNPでも凸版でもなく、グーグルでもなくて、サウジアラビア王国だった。圧倒的な広さのブースでオイルマネー力と日本への関心を見せつけていた。宗教的に厳格な国で、日本のお色気漫画は程よいレベルで受け入れられるのかもしれない。

それからナビゲーション、ニュースのカテゴリも国別の違いが出やすいところだ。その地域にしか存在しないサービスやコンテンツから、日本での展開を発想してみる。アプリサーフィンはネットビジネスのブレストツールとして使える。

AppsMosaic

・クオリア・テクニカの世界
51K2BxNa7IXL__SL500_AA300_.jpg

茂木健一郎のエッセイ集。表紙は河口洋一郎のCG。

『Nature Interface』誌連載をまとめたもの。タイトルのクオリア・テクニカとは、

「街頭テレビ、コンピュータゲーム、ケイタイ電話。新しいテクノロジーが登場する度に、人々を熱狂させたものは、便利さや速さやパワーではなく、それまでにないクオリアとの出会いだったのではないか。 環境や身体といった、伝統的な自然の中から生まれてくる質感が「クオリア・ナチュラレ」(自然のクオリア)だとすれば、テクノロジーの生み出す新しい質感は、「クオリア・テクニカ」(技術のクオリア)である。」

というもの、つまり、つくりものの質感のことである。都会に住んでいると、人は360度、人工物に囲まれている。さらにパソコンで仕事をする人、ゲームが好きな人、ケータイ中毒の人は長時間を、画面の中、仮想世界の中で過ごしている。人生の大半はクオリア・テクニカの世界なのだ。つくりものには違いないが、人間にとってもはやこれは本質的なものであることは間違いない。

著者は、「人間の肌のしっとりとした様子、ガラスのコップの透明な照り輝き、風に吹かれて揺れる若葉の緑、といった鮮烈なクオリアは、主観的には、どう考えてもある有限の数値で置き換えられるようには思えない。しかし、有限のビットのデジタル信号に基づく情報処理により、生々しいクオリアを感じさせることが技術的には可能である以上、そのようなクオリアも、客観的な立場からは、ある数字にマッピングが可能である、ということになる。」という。

ブルーレイやDVDの映像に私たちは感動する。リアリティを感じさせるのに有限のビットで十分なのだ。ラブプラスの二次元彼女にだって人は本気で萌える(これは一部限定ですが)。デジタルの表現力、バーチャルの可能性は無限に等しいということだろう。有限のビット数がきっかけになって脳にその情報以上のものが生み出されていくからだ。

脳におけるクオリアのはたらきの考察、創造性、イノベーション、インターネット、文明論など著者らしいテーマが続く。4ページで1つの短いエッセイが27本。どれも気づきのエッセンスだけなので、さらっと読めるが、それぞれじっくり考えさせられる内容。創造的な未来へ向かう提言も多い。

私は「イノベーションとセレンディピティ」がよかった。

「セレンディピティという概念が、現代的な文脈で注目される理由は、今日においても、イノベーションは必ずしも対象に関しての完全な知識に基づいて切り拓かれるわけではないからである。「やってみないとわからない」とよくいわれるが、まさに、十分な知識がない状態でも、知識がないからこそ、実験すること、試作してみることには意味がある。知識に基づいて新たな技術がトップダウンによって創りだされるということはむしろ稀であり、知識がないままにとりあえず「やってみる」ことで多くのイノベーションが達成されているのが実感であると考えられるのである。」

情報化の時代は、いろいろなことが、やってみるまえにわかってしまう。だからこそ、やってみることの価値、やってみないとわからないことの可能性があるのだと思う。クオリアの非加算性ということと似ている。

・オーディンの鴉
51zi5ATGVTL__SL500_AA300_.jpg

ネットワークセキュリティがテーマのサスペンス小説。

東京地検特捜部が家宅捜索を予定していた朝、疑惑の国会議員が謎のメッセージを残して自殺した。主人公の特捜部検事たちは、ネット上に議員のプライバシーが悪意を持ってばらまかれていたことを知る。それは議員の移動、メール内容、買い物履歴、外出時に盗撮された写真など、異常なほどの詳細さの情報だった。

YouTube、ニコニコ動画、ブログ、検索エンジンなど、インターネットのサービスが実名で出てくるのが面白い。事件の捜査を続けるうちに、闇の勢力は主人公にも脅迫の手紙を送る。エシュロン、カーニヴォーのような巨大監視システムを持つ謎の組織の正体とは何なのか?。検察と犯罪組織の間に、ネットワーク技術を駆使した緊迫した攻防が始まる。

ITの専門家の視点で見れば、技術考証面ではやや甘い面も見られる(おそらく暗号化技術を考慮していないように思える)が、最新のネットワークテクノロジーが構築する監視社会の恐怖をうまく伝えていて、非常に面白い。

・水野真紀登場の作品紹介動画

・運命のボタン
51HJuQDo-tL__SL500_AA300_.jpg

スピルバーグ、キング、クーンツらがレスペクトするというカリスマ作家リチャード・マシスンの13作品収録の短編集。

表題作の『運命のボタン』は最近映画化された(まだ観ていない)。

突然訪ねてきた男が、夫婦にこんな申し出をする。

「そちらでボタンをお押しになりますと、世界のどこかで、あなたがたのご存じない方が死ぬことになります。その見返りとして、あなたがたには五万ドルが支払われます」

あなたなら押しますか?という究極の選択の結末はいかに、という話。

ネタのユニークさとバリエーションに驚かされる。日本の作家で言えば星新一が近い。星のショートショートをちょっと長くして、寓話性よりも小説性を強くした感じといったらよいだろうか。読みやすさと意外な結末が魅力。

ジャンルとしてはSF、ミステリー、ホラー。

『二万フィートの悪夢』は米TV番組「ミステリーゾーン」と「トワイライトゾーン」(リメイク)の両方で見たことを思いだした。マシスン作品は映画やテレビドラマの原作をいっぱい書いている。読んでおくと語れる蘊蓄になる。

『四角い墓場』が超大作SF映画 Real Steelとして制作が進行中とのこと。公開は2011年クリスマスとのこと。スティーブン・スピルバーグとステイシー・スナイダーが製作総指揮、ナイトミュージアム2」のショーン・レビ監督で期待できそう。

・モノクロSFX作品にハマる アウターリミッツ、ミステリーゾーン、ウルトラQ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/07/sfxq.html

ボールペンで何度も書いて消せる シリコンメモパッド

1個より発注可能!シリコンメモパッド

1個より発注可能!シリコンメモパッド

価格:320円(税込、送料別)

文房具屋で衝動買いした。

油性ボールペンで書いて消して繰り返し使えるエコなメモパッド。どうやら本来は個人が一個を購入するというよりは、企業がノベルティとしてロゴを印刷して大量に配るグッズらしい。

4758682129_b22c36275f.jpg

透明シリコンがやわらかくて触感が新鮮。これに本当に書いちゃっていいのかと心配になりつつ、油性ボールペンで文字を書いてみる。ぐにゃぐにゃして書きやすいとはいえない上、写真のようにはっきりとはインクが定着しない。なんとか読めるレベル。

4759320636_5dcae91858.jpg

書いた文字は消しゴムで消すことができる。指でごしごしやっても落ちた。

実用性という点では高評価とはいかないが、ノベルティとしては目新しくて、配っていたらもらっちゃうな。

・アップルvs.グーグル
51kklhEh1pL__AA300_.jpg

IT業界の2大イノベーター アップルとグーグルを今、どうとらえたらよいかを明解に教えてくれる新書。著者は小川 浩氏、林 信行氏。両者の歴史のふりかえり、それぞれの戦略と戦術、競合の展望など、今はこの2社の動きからITの主戦場の最新動向が見えてくる。

「2004年にメディアの近未来を描いた『EPIC2014』というフラッシュ・ムービーが話題を呼んだが、その中では、グーグルとアマゾンが合併して、グーグルゾン(Googlezon)となるという未来予測が描かれていた。しかし、僕はその頃から、そうではない、むしろアップルとグーグルの組み合わせこそが新しいインターネットサービスを生む、言うなればグーグルップル(Googlepple)の方が実現する可能性が高いと主張し続けてきた。」と著者のひとりはいう。

確かにこの2社の親和性は親和性が高い。ポジショニングが近いがために競合も生じる。いまスマートフォン市場で起きているバトルは、これから電子書籍端末やテレビデバイスでもこれから熱い戦いが繰り広げられそうだ。

2010年代後半に向けてグーグルが定義したその事業領域は、PC、携帯電話、テレビ、自動車の4つのデバイス上でのコンピューティング。「ネット接続を果たしたコンピューターはデスクトップとノートブックを合わせて世界中でおよそ14億台。携帯電話は40億台に達するという。そしてテレビは8億台、自動車は12億台となる。」という大きなマーケットだ。アップルも同じ市場を狙っている。戦いはまだまだ続く。

この2社の戦争は世界を豊かにするものだと思う。激しい競争があるから、両者はつぎつぎに革新を生み出している。マーケットの原理が正しく機能している例と言えるのではないだろうか。著者らも書いているが、なにより悔しいのはこの華々しい戦いに、日本企業は割って入ることさえできないことである。

なぜ日本企業はかなわないのか、この本にも分析があるが、私の考えは日本の大企業トップには起業家精神がないからだと思う。スティーブ・ジョブズもエリック・シュミットも組織の論理で喋っていない。アップルのCM「自分が世界を変えると本気で信じている人々が本当に世界を変えている」そのままなのだ。

この本は現状をとらえる見方をわかりやすくさずけてくれる。

たとえば、

・情報の民主化を広げるグーグル
・人々の能力をレベルアップするアップル

というような対比で、両者の本質を説明する。

両社と市場のデータと事実、経営者の発言の引用など情報も多いので自分なりの業界展望を持ちたい人にとっても考える材料になる。ただし、状況はどんどん変わるので、旬のうちに読むのがおすすめである。

・日本神判史 盟神深湯・湯起請・鉄火起請
41ZpN0Zi5nL__SL500_AA300_.jpg

最近読んだ新書で一番面白かった。名著だ。

日本書紀に盟神深湯(くかたち)という神判が出てくる。熱湯に手を入れたり、焼けた斧を握らせる神判である。古代史の話は実際に行われたのかわからないが、室町時代には、煮えたぎった熱湯の中に手を入れて火傷の具合で有罪無罪を判定する湯起請があった。そして、江戸時代には真っ赤に焼けた鉄片を握らせて判定する鉄火起請が、現実に行われていた。著者は記録に残っている湯起請87件、鉄火裁判45件の事例を、丁寧に分析して神判の実態を明らかにしていく。

土地の領有権や男女問題など解決が困難な問題がこじれて大ごとになると、湯起請・鉄火起請は行われた。当事者たちは決死の思いで神判に挑んだこと(負けたり逃げたりすると処刑されることもあった)、どんな思いで関係者はそれを見ていたか、事後どういうことになったか、などの顛末が多数語られる。細部が面白い。

熱湯に手を突っ込む。生身の人間なのだからそりゃあ絶対火傷するに決まっている、と思うわけだが、湯起請の記録上、被疑者が火傷した率を調べてみると50%なのだ。半分は無傷で無罪放免となっている。なんとも微妙な数字である。

そもそも人々は盟神深湯・湯起請・鉄火起請で、本当に神の真意を知ることができると考えていたのか?研究によると実は古代社会においてさえも盟神深湯は真実糾明法として問題があることが広く認識されていたようだ。

著者はこうまとめている。

「以上、紹介した事例からもわかるとおり、当時、共同体社会において行われていた湯起請には、人々の純粋な信仰心からだけでは説明できない要素が多々見受けられる。そもそも人々は湯起請によって真実を見きわめようということを第一義的に考えていたわけではなかった。彼等は真犯人をみつけることよりも、犯罪者が共同体内にいなかったということが証明されることを何より歓迎していたふしがある。また逆に、それにより結果的に共同体社会にとって有害な(可能性のある)者が除去されるなら、それはそれで好都合なことだとも考えていたようだ。」

為政者は神慮を持ちだすことで、自らの恣意的な政治判断に対する反対意見を封じることができた。恐怖政治の道具としても、それらは使われていた。湯起請・鉄火起請を持ち出せば係争の相手をびびらせることができるし、湯を炊く、火傷の程度を判断するのも人間だからある程度は操作もできただろう。かなり政治的なにおいのする儀式だったことがうかがえる。この国においては神判とは、神の名を借りた合理的判断のツールだったらしい。

記録上は古代に断絶していた熱湯裁判を、復活させたのは室町幕府第6代将軍足利義教だったという説が有力。義教はくじ引きで選ばれた将軍であったため、自分は神慮によって将軍職に就いたと信じて、その治世の間、神判に異常な執着をみせたという。湯起請を連発している。君主狂気とと民衆の集団ヒステリーが呼応して、ブームを盛り上げていたようだ。

残酷な神判の儀式の研究から、日本人の宗教意識、社会心理の歴史が見えてくる非常に面白い内容である。

・魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52
512BvgO-GK7L__SL500_AA300_.jpg

ヘンなタイトル...が第一印象だったが、中身はかなーり面白い本である。会社の机の上に置いて、毎朝52のルールを一つずつ読んでから仕事を始めたら、斬新な物の見方でスタートが切れると思う。オルタナティブな視点で"リフレーミング"を供給する本である。著者は元ハーバード・ビジネス・レビュー編集者で、米国の人気ビジネス雑誌「ファストカンパニー」を創刊し、編集長として全米雑誌賞を受賞したアラン・M・ウェバー。

テーマは、変革・イノベーション、戦略、新しい視点、仕事に姿勢、リーダーシップ、起業。数ページでひとつのルールがある。人気雑誌の編集長らしい。言語能力やコミュニケーション能力のノウハウが光る。

たとえば相手から情報を引き出す「質問力」を重視している。

「ファスト・カンパニー」の経営者インタビューには
  「朝、あなたを目覚めさせるものは何か」
  「夜、あなたを眠れなくするものは何でしょうか」
という恒例の質問がある。

この問いによって、経営者が今取り組んでいる仕事ではなくて、夢中になっていることはどんなことかと今本当に気にしている問題は何かを聞きだすことができる。その経営者がどんな人物か、その会社をドライブさせるエネルギーを知ることができるという。

「太陽が地球のまわりを回っているのか、地球が太陽のまわりを回っているのか、十五世紀にそんな質問をすれば世界が変わっていたかもしれない」という例をあげてよい質問はよい答えより大事だぞと教える。

そして多くの企業経営者への取材から、成功する経営者は、会社の目的をたった一つの短文で表現できるリーダーだと指摘する。ビジョンが大きいだけでなくて焦点がはっきりしていることが重要だというのだ。

「『正しい言葉』と『だいたい正しい言葉』の間には、『稲光』と『光を発するホタル』ほどの違いがある」「書くまでは考えをはっきり知ることができない」「記事を損なわずして、分量を三分の一にせよ」。

言葉がメディアとネットワークで増幅される時代に、経営者の言語感覚の鋭さはリーダーシップの要ともいえるものなのかもしれない。

私が感銘を受けたルールのベスト5は、

・額縁を変えて絵を見よ
・スタート時には「4C」が必要だ
・新しいカテゴリーをつくれ
・ストーリーを語れ
・「雑音」を減らし「信号」を発せよ

こういうのが52もある。

・ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系
51ODM4EbntL__SL500_AA300_.jpg

先日の「電子書籍と出版」に続いて、もう一冊この本を共著で書きました。

私が書いた「印税90%が可能なエコシステムを」は昨年のイベント第1回ARGフォーラム 「この先にある本のかたち-我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」で考えたことを、まとめて書きました。

出版ビジネス再編の議論のきっかけになればと思っています。

どうかよろしくお願いします。

内容:

iPadやKindleだけが「本の未来」ではない。
この先にある「本」のかたちをめぐる、俊英たちからの提案集。

【CONTENTS】
はじめに 仲俣暁生

電子書籍で著者と出版社の関係はどう変わるか
津田大介 / ジャーナリスト インターネットユーザー協会代表理事

印税90%が可能なエコシステムを
橋本大也/ 起業家 データセクション取締役会長

未来の図書館のためのグランドデザイン
岡本真/ アカデミック・リソース・ガイド代表取締役

ディジタル時代の本・読者・図書館
長尾真/ 国立国会図書館長

多様化するコンテンツと著作権・ライセンス
野口祐子/ 弁護士 NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事

ウィキペディアから「出版」を考える
渡辺智暁/ 国際大学GLOCOM主任研究員

「コンテンツ2.0」時代の政策と制度設計
金正勲/ 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授

ブックビジネス2.0 ? ウェブ時代の新しい本の生態系 特設サイト
http://bkb20.com/

ハッシュタグ #bkb20 のまとめ
http://togetter.com/li/34498

・コクヨ ノ-GG3A キャンパスノート Campus high grade MIO PAPER セミB5 A罫30枚
20070614_02.jpg

コクヨのキャンパスノートの上質版 Campus high gradeのひとつ MIO PAPER。なにが違うかというと紙が違う。ゲルインクのボールペンに最適化されている。(水性ペン用にはCYO-BO PAPERというラインナップがある)

4759325554_aa94f4c84a.jpg

確かにこれはゲルインキで文字がくっきりと書ける。

・澪 MIO PAPERの特徴
http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/campus_hg/mio_point.html
4758689263_750abe592b_m.jpg

・なめらかな書き心地
・インクの乾きが早くにじみにくい
・軽い薄口なのに、裏うつりしにくい

というわけで、最近、このノート2冊目を愛用中ですが、紙の質もいいのですが、ほどよい薄さ(30枚)がよいですね。私は毎日数ページずつ使います。一冊のノート使用が長期にわたると表紙が汚れてきたり、モノとして飽きてきたりするものですが、このノートはほどよいところで終わるのです。

上質紙をうたう割に表紙はあっさり。社内で普段使いのノートとしてよいです。

iPad(Wifiタイプ)で常用中。

Webサイトを丸ごとダウンロードして、ネットのつながらない場所でも、閲覧可能にする。自分のブログをパーソナルデータベースとして持ち歩くのに使っている。先週、国際ブックフェアに行ったときには、あらかじめイベントのWebサイトを丸ごとダウンロードしておいたので、現地で探索するのに便利に使えた。

4801322641_2d2e0c75d4.jpg

まずダウンロードしたいサイトのURLと取得する階層を1から3で指定する。1ならば1クリックしたところまで、2ならば2クリック先までをダウンロードする。大きなサイトの場合はかなり時間がかかる。サーバへの負荷も考えると設定は控えめにした方がいいだろう。

4801955538_acf74051bc.jpg

そしてダウンロードしたサイトは、オフラインでも、ブラウザーで見ているかのように、閲覧できる。ダウンロードしてある限りはリンクをクリックしてたどることができる。ネットに接続している場合には、最新版を取得してくれる。

Web

Web制作の仕事では「こんな感じで仕上がってきています」と、クライアントとの進捗会議のプレゼンテーションにも使えそうだ。Flashは当然ながらダメなんですが...。

・エレンディラ
51ZEhHYSDWL__SL500_AA300_.jpg

ノーベル賞作家ガルシア・マルケスが書いた"大人のための残酷な童話"6つの短編と表題作の中編を収録。

「大きな翼のある、ひどく年取った男」
「失われた時の海」
「この世でいちばん美しい水死人」
「愛の彼方の変わることなき死」
「幽霊船の最後の航海」
「奇跡の行商人、善人のブラカマン」
「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」

やなぎみわのアート写真がきっかけで、原作を読んでみようと思ったのだけれども、写真家の創作意欲をかき立てた理由がわかった気がした。エレンディラだけでなく、他の6つの作品もイメージ喚起力が衝撃的だった。

特に「大きな翼のある、ひどく年取った男」が強烈。下界に落ちてきた天使が村人たちに監禁虐待されてボロボロにされる悲惨な話。大江健三郎の「飼育」を思いだした。あちらは第二次世界大戦中に日本の山中に米軍の飛行機が墜落して、黒人兵が捕まって、村人たちに"飼育"されてしまう話だった。異質→恐怖→排除。いつでも一番怖いのは無知な人間なのだ。

「この世でいちばん美しい水死人」は、浜辺に流れ着いたハンサムで肉体美の男の水死体があまりに美しかったので村の女も男も群がって弔うという話。「奇跡の行商人、善人のブラカマン」はどんな毒にでも効くという解毒剤を売るイカサマ師の話。死と笑い。ラテン系らしいメメントモリなメッセージがすべての作品に織り込まれている。

短編集だが幻想的、神話的、宗教的なマルケスの魅力がよくでている。

・パリ、娼婦の館
51bk404eEKL__SL500_AA300_.jpg

19世紀のパリに栄えた娼婦の館の研究書。フランスの小説に登場する記述や、20世紀初頭にパリを訪れた日本人の証言、写真資料から、当時「メゾン・クローズ」と呼ばれた娼家の実態を調べている。ひたすら妖しく淫靡な世界が再現される。

娼婦たちはなぜ身を売るようになったのか。日常生活はどのようなものだったのか。女将や女衒はそもそも何者か。娼家の経営の実態。風俗情報の流通。管理売春の制度。高級店と格安店のちがい。衛生管理の状況。100年前のパリの娼家のあらゆる側面が語られている。

「衣食足りて変態を知る」であり、高級店ほどマニアックなサービスを提供していた。超高級店はSM、イメクラ、○マルフェチと、なんでもありのバリエーション。具体的な内容の説明が凄い。たとえばニワトリの羽だらけになって女の子たちに追い回されるプレイなんていうニッチな要望にもこたえていたという。

「高級なメゾン・クローズに通ってくる金満家の客の中には、直接の接触を好まず、ひたすら「見る快楽」のみを追求したがる客、いわゆる「覗き魔(ヴォワユール)も少なくなかった。こうした覗き魔のために、店ではいろいろと工夫を凝らしたアトラクションを用意していたが、その中で最も一般的だったのは、ストリップの原初的形態である活人画(タブロー・ヴィネヴァン)だった。 すなわち、何人かの娼婦が全裸ないしは半裸で絵画の中のオダリスクを演じるのだが、客がまるで絵画を至近距離から眺めるように、目を近づけて(あるいはムシ眼鏡を使って)この活人画を「鑑賞」するところに面白さがある。」

こうした密室でのサービス内容の記述から、19世紀パリの夜の文化の爛熟ぶりが伝わってくる。ヨーロッパ的な官能の原風景がここにある気がする。奇書の類といっていいけれども、フランス古典文学を読むときの参考にもなる本だ。

・マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた"ちょっとした発想"
51uqw9pZREL__AA300_.jpg

『ニューヨーカー』の名コラムニスト マルコム・グラッドウェルの傑作コラム集。

TVショッピングの王様ロン・ポピール
ケチャップ帝国をつくりあげたヘンリー・ジョン・ハインツ
「ブラックスワン」で著名な投資家ナシーム・タレブ
戦後アメリカでヘアカラーを普及させたシャーリー・ポリコフ
ピルを開発して広めたジョン・ロック
カリスマ調教師シーザー・ミラン

世界を発想で変えた商売の天才たちのエピソードが5つ。

アメリカっていうのは個人の才覚一つでどこまでも成りあがれる自由の国なのだということがよくわかる。TVショッピングの王様ロンコ社のロン・ポピールなどは典型的だ。自分が開発した商品を、テレビで実演販売して巨額の富を得た。この本に取り上げられているのは、こうしたわかりやすいアメリカンドリームの物語なのだ。

娼婦のファッションだと軽蔑されていたヘアカラーを一般の女性に普及させたシャーリー・ポリコフや、避妊薬のピルの開発と普及によって女性の生き方を変えたジョン・ロックなど、単に経済的な成功を収めただけでなく、天才たちの業績はアメリカの文化史の一部といってもいいだろう。マルコム・グラッドウェルが結局、一番語りたいのは「アメリカ」という国なのだと思う。

「はじめに」で、マルコムグラッドウェルは、自身の発想法についても触れている。ふたつあるのだという。

「アイデアを見つける秘訣は、たとえ相手が誰であろうと、たとえ何であっても「語られるに値する」物語がある、と自分に思い込ませることにある。」

どんな話でも深く追求していけば絶対に価値があることが見つかると信じ込めると、おもしろい話になるらしい。そして、

「アイデアを見つけるもうひとつの秘訣は、権力と知識の違いを理解することだ。本書には権力者、あるいは著名人と呼べる人間は数えるほどしか登場しない。私が興味を抱くのはマイナーな世界の天才たちなのである。 私が何か物語をみつけたいときは、トップに君臨する人間からは取りかからない。現場から探す。実際に作業を行っているのは現場で働く人間だからだ。」

神は細部に宿る。ロン・ポピールはヒット商品となったロティスリーキッチンを開発する際に、なによりも、きつね色の焦げ跡がつくことを重視した。それが消費者に対して最大のセールスポイントになるということを理解していたからだった。自らが現場で料理をしているからこそ、それができたのだった。

著者のマルコム・グラッドウェルは、成功者の体験からそうした重要な細部を見つけだす天才である。ドキュメンタリや取材ベースのコラムを書きたい人にも、勉強材料としてこの本はすばらしいと思う。

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/1-2.html

・多摩大学大学院説明会イベント 特別企画「ソーシャルリーダーシップ」
http://tgs.tama.ac.jp/modules/news/index.php?page=article&storyid=47
tama_s2010_3.jpg

私が教員をしている多摩大学大学院の説明会イベントのご紹介です。私も特別企画のパネルで登壇いたします。

多摩大学大学院は「一業を起こす人材、一業をマネジメントできる人材を育てる」を理念に社会人向けMBAコースとして開設以来17年余の歴史を持ちます。次世代のビジネスリーダーの育成機関です。

今回の説明会では、学校説明のほか、紺野登教授のレクチャーと、徳岡晃一郎教授と私も参加する特別企画「ソーシャルリーダーシップ」パネルディスカッションがあります。

大学院にご関心のある方、ぜひお気軽にご来場ください。

2010年度第3回大学院説明会を開催いたします。

本大学院の概要説明、入試制度説明に加えまして、 特別企画「ソーシャルリーダーシップ」をテーマに本大学院の紺野 登教授をはじめとした教員によります講義、パネルディスカッションを開催いたします。従来のリーダーシップ論に限界や疑問を持っている方、より創造的な働き方を考えている方、最新のリーダーシップ論をめぐって理解を深めていただきます。

<開催概要>
開催日 : 2010年7月20日(火)
参加費 : 無料
時  間 :
19:30~
19:30~19:40 研究科長 挨拶
19:40~20:10 紺野教授 レクチャー
20:10~21:10 パネルディスカッション

iklsmembers01.jpg

お申し込みはこちら
http://tgs.tama.ac.jp/modules/news/index.php?page=article&storyid=47

・神様 OH MY GOD!―小林伸一郎写真集
51biZynW7XL__SL500_AA300_.jpg

日本の地域に棲むロードサイドの神様たちを写した写真集。大型本。

あなたがもし雑誌「ワンダーJAPAN」の愛読者だったり、都築響一「ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行」にひかれるという人だったら、まさにそういう嗜好で大当たりの作品集なので、迷わず買うべきだ。

ユニークな神様ばかり。

土着土俗の信仰っていうのはまず表のメディアにのらない。地方の富豪が人知れず建立したマイナー巨大仏や、立派な男根や女陰の形をしたご神体、極私的な信仰によって異様にカスタマイズされたブッダやイエス様の像など、想像力のバリエーションが爆発している。

私の地元の江の島にいる裸弁財天とか龍神、大船の観音様も、こうした方向でなかなかインパクトがあると思うのだが、この写真集に登場する土着系の神々はさらにぶっ飛ばして、周囲に独特の亜空間をつくりだしている。すばらしい。実際に観に行きたい。

見た感じ廃墟チックでさびれてしまっている神様もあるが、ピカピカに磨かれている神様もあって、こういうマイナーに思われる神様を、信じて救われている人が、日本にはいっぱい?いるんだなあと、なんだか感動する。日本は神の国と言うのは本当なのだ。

・晴れた日は巨大仏を見に
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-748.html

・「世間遺産放浪記」「奇想遺産―世界のふしぎ建築物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-643.html

・和聖地巡礼 ~秘宝館の胎内~
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/post-768.html

光媒の花

| | トラックバック(0)

・光媒の花
51JZPJUD7-L__SL500_AA300_.jpg

これは抜群に面白い。おすすめ。

「この全六章を書けただけでも作家になってよかったと思います。」と、ベストセラー連発の道尾秀介にとっても、これは会心の作品であるらしい。

ある街を舞台に、表向きは普通に見えながら、心に深い闇を抱えて生きる人たちの連作群像劇。6つの物語の主役たちは年齢性別や職業はさまざまで、同じ街に住んでいるという点をのぞいて深いつながりはない。前の作品の脇役、端役だった人間が続く作品では主役になる。次は誰の視点に飛ぶのかなあと想像しながら読むのが楽しい。

「光媒の花」は、「風媒花」(風が花粉を運ぶ花)や「鳥媒花」(鳥が花粉を運ぶ花)から連想した造語らしい。人生の光と闇を媒介として、6つの物語の花を受粉させていく一匹の蝶の目線で、読者は前の花から次の花へと跳んでいく。

悪い人だと思っていた人にもそれなりの理由があったり、事故だと思っていたことが事件だったり、ひとつの現実を異なる視点から見ることで、世界の重層感が増していく。全体的に殺人、レイプ、虐待、少年犯罪と暗いエピソードがならぶが、希望や救いを必ず描いているのがいい。

山本周五郎賞受賞作。

・千年樹
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/05/post-1215.html違う作家だが、最近読んだおもしろい連作短編と言えばこれもよかった。

・電子書籍と出版─デジタル/ネットワーク化するメディア
519m9uO55OL__SL500_AA300_.jpg

電子書籍と出版というベタなタイトルの本を書きました。7月10日発売です。

共著者は、高島 利行 (株式会社語研取締役営業部長/版元ドットコム有限責任事業組合組合員), 仲俣 暁生 (フリー編集者・文筆家/「マガジン航」編集人), 橋本 大也 (株式会社取締役会長/ブログ「情報考学」運営), 山路 達也 (フリーライター・編集者), 植村 八潮 (東京電機大学出版局長/日本出版学会副会長), 星野 渉 (「文化通信」編集長), 深沢 英次 (メディアシステム・ディレクター/グラフィックデザイナー), 沢辺 均 (ポット出版代表取締役社長・版元ドットコム有限責任事業組合組合員)という出版業界の(くせものぞろいの)論者たち。いま電子出版にはどんな問題意識、議論があるのかがよくわかる一冊です。

私が登場する第1章「2010年代の『出版』を考える」は、2010年2月に開催されたこの写真(沢辺さんのブログから引用)の4人のパネルディスカッションをテキスト化して編集したものです。

4748162611_d191f211c0_b.jpgのサムネール画像

以下が目次です。

I─「2010年代の『出版』を考える」
IT企業の経営者であり、アルファブロガーとしても知られる橋本大也、文芸評論家、フリー編集者として電子書籍を追い続けてきた仲俣暁生と、早くから出版活動のネット展開を手がけてきた版元ドットコム組合員である高島利行、沢辺均の4人が語る、「電子書籍の可能性」「書き手、出版社はどう変わるか?」。

II─「電子出版時代の編集者」
2009年10月に、アルファブロガー・小飼弾氏との著書『弾言』と『決弾』のiPhoneアプリ版を製作し、自らの会社から発売したフリーライター/編集者の山路達也に訊く、書籍の執筆・編集から電子書籍の製作、そして発売後のフォローアップまで、多様化する編集者/コンテンツ製作者の「仕事」。

III─「20年後の出版をどう定義するか」
電子書籍の権利やフォーマット、教育現場での使用に詳しい東京電機大学出版局の植村八潮に訊く、「書籍が電子化される」ということの根源的な意味、「本であること」と「紙であること」はどう違い、どう結びついているのか?

IV─「出版業界の現状をどう見るか」
出版、そしてメディア産業全体の動向を20年間追い続けている「文化通信」編集長・星野渉が解説する、出版業界の現状と、急激な変化の要因。

V─「編集者とデザイナーのためのXML勉強会」
元「ワイアード日本版」のテクニカルディレクター兼副編集長を務めた深沢英次による、タグつきテキスト、XMLの「基本構造」を理解するための解説。

さて、

今日は東京ビッグサイトで開催中の国際ブックフェアに行きました。版元ドットコムのブースでこの本も販売されています。

4781226025_59a999fd1f.jpg

ご関心のある方、ぜひ手にとってみてください。

花伽藍

| | トラックバック(0)

・花伽藍
61ItxyhCDPL.jpg

主にレズビアンの恋愛を官能的に描いた短編集。

「たづさんの中で射精したい。二人の赤ちゃんがほしい。ゆずちゃんの代わりにあなたに授けてあげたい」

身体の構造でも結婚という制度でも、結局結ばれることができない宿命の女同士が、激しく愛し合う。排除された者の孤独が精神的なむすびつきを異性以上に強いものにする。そして一度は2人だけの愛の世界を作り上げるけれども、構造と制度の問題は、やがて二人の世界にもひび割れをもたらしてしまう。

とりわけ夏祭りの夜に太鼓をたたく女が自分を熱く見つめる浴衣の人妻と、底なしの穴に落ち込んでいくような恋愛をする『鶴』が鮮烈。

この短編集の5つの作品には年齢の異なる女性がでてくるが、全体として同性愛の女性たちの一生を描いている。最後の作品『燦雨』は高齢のカップルが、それぞれの家族の反対を押し切って、2人で暮らして、互いの最期を看取るという内容。高齢化が進めば、同性愛者の高齢化というのも進むわけで、ここに描かれた物語は現実にも増えるのかもしれない。

・認め上手 人を動かす53の知恵
41-D1FZvA5L.jpg

ほめ上手よりも認め上手になれという本。部下のいる人におすすめ。

日常的に部下をほめるとなると、どうしても欺瞞性やうさんくささが伴ってくる。毎日部下がホームランばかり打つわけではないからだ。そもそも、ほめる=褒美、しかる=罰で人を動かせるという単純な方法論にも限界がある。

おおげさに称賛するのではなく相手を人間として尊重すること。誇張を含んだ「ほめる」よりも、ありのままを「認める」ことのほうが、ほめられた者の長期的な有能感や自己効力感を引き出しやすいとして、著者は認め上手になることをすすめる。そして挨拶、声かけ、名前を出す、異性を入れる、同期生ネットワークをつくる、お金よりも名誉の成果主義を導入する、家族に尊敬される手助けをする、など認め上手になるノウハウが紹介されている。

ある程度大きな組織では、デキる社員もいればそうでもない社員もいる。ほめたり認めたりする際には、モチベーションの違いに注意せよと説く。

「成績が低い者もそれなりにがんばるはずだという見かたもあるが、それはそもそも成績が上位の者と下位の者とではモチベーションの構造がまったく違うということを理解できていない。上位の者は注目されているうえ、がんばって成績を伸ばせばさらに「すごい!」「たいしたものだ」と感嘆、称賛される。だから、ますますがんばる。それに対して下位の者は、絶えず尻を叩かれるし、多少がんばって成績が伸びたとしても感嘆や称賛をされることはない。せいぜい「努力しているな」くらいで終わる。だから、やってやろうという前向きな意欲がわかないのである。」

下位の者には、別の尺度で認めること、別の次元で評価してやることが重要だという。たとえば売り上げや契約件数ではなくて、訪問回数や顧客満足度などの軸や、社内のクラブ活動、地域への貢献など、仕事以外であっても紹介する。組織の全員のやる気をひきだすための方法論がとても参考になった。

そして認める、ほめるは斜め上から目線で。

「「上から目線」と「斜め上から目線」の違いをたとえていうと、監督ではなくコーチ、親ではなく兄や姉の立場に近い。監督の前では萎縮してしまう選手もコーチのいうことなら聞けるし、親に歯向かう反抗期の子でも兄や姉の忠告には耳を貸す。」

著者は同志社大学教授で専門は組織論、人事管理論。表彰活動を世に広める日本表彰研究所所長。日本の組織にありがちな状況が書かれているので大変にわかりやすかった。私は人をほめるのが苦手なのだけれども、参考になる話が多かった。

4759323838_71de4d381b.jpg

一目ぼれして衝動買いしました。

金のガチョウと思って買ったのですが、金のアヒルでした。

調べてみたのですが、「アヒルとガチョウの見分け方」「アヒルとガチョウの違いを教えてください。 - Yahoo!知恵袋」「アヒルとガチョウの違いについて - その他(ペット) - 教えて!goo」などアヒルガチョウ問題のページは数多くあって、このふたつは一般的に間違いやすいもののようです。

「アヒルは野生のマガモを飼育して改良したもの、ガチョウはガンを改良したもの」で「ケツが上がっているのが"アヒル" ケツが下がっているのが"ガチョウ"」など見分け方があるそうですが、これは正確にはどちらでもなくてただのペンホルダーです。

4758692273_bb977b3a5c.jpg

ペンホルダーがついていないノートの表紙に、クリップ部をとりつけて使います。

このペンホルダーにはアニマルがついていないシンプルなシリーズもあります。アニマルはゴールドで主張したいひとたちのものです。他にはウサギ、リス、ハリネズミ、ネコがあります。

クリップ部が出っ張るために、ノートの一部が書きにくかったりもするのですが、とにかく金ぴかで目立つので、客先でノートを広げると「それ、なんですか?」と、80%以上の確率で聞いてもらえます。すると私は、前述の「ガチョウとアヒルの見分け方」を熱く語ることて雑談コミュニケーションにスムーズに入っていくことができるのです。

メタルペンホルダー・アニマル

よいです、これ。

・ドキドキしちゃう―岡本太郎の"書"
31HUyh4bjFL__SL500_AA300_.jpg

岡本太郎のユニークな書道アート。約40点収録。

「そもそも字と絵の表現は一体のものだった。象形文字のいわれや変遷などをたどらなくとも、無心に楽しんで字を書いていると自然に絵になってしまう」。

今にも文字が動き出しそうだ。

文字であると同時に絵である。

燃え上がる炎のような「喜」
女が男を支える「男女」
小さな「む」が大きな「挑」にまさに挑みかかるような「挑む」

"書"とはいっても、岡本太郎の書は黒の墨一色ではない。太陽の塔みたいに、赤、青、黄色と原色の絵具も使って、字形も大胆に崩した文字である。書画というものとも違う。意味だけでなくて、生命が吹き込まれている象形文字のアート。

作品の多くには岡本太郎の詩のような解説がつけられている。これもいいのだが、読む前にまず書だけを自分なりにじっくりと味わってから、二週目で文章を読むというのがさらによい鑑賞方法だと思う。書のイメージ喚起力が凄いから、付加情報がなくても、それだけで自分なりの解釈を楽しめる。

時間を忘れて見入ってしまう作品集である。

・美の呪力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/izo.html

・岡本太郎 神秘
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004986.html

・今日の芸術―時代を創造するものは誰か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005051.html

・岡本太郎の遊ぶ心
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005077.html

・岡本太郎の東北
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005167.html

・MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
51i3jitUmZL__SL500_AA300_.jpg

「自分はいったい何をやりたいのか」
「自分の夢は何なのか」
「自分はどういう職場にしたいのか」
「自分はどう世界と付き合いたいのか」

バブル崩壊後、多くの日本企業が、それまでの日本型経営を続けることが難しくなり、目標管理と成果主義を徹底的に導入した。その結果、個人の思いは語られることが少なくなった。数値目標導入によって経営が一時的に改善されたかのようにみえても、ギチギチに合理化、効率化した組織からは創造的な発想は出てこない。社員は高い数値目標の達成だけを求められて疲弊するばかり。だから、著者はMBOに埋め込む新しい考え方MBB(Management By Belief 思いのマネジメント)を提唱する。

MBO(Management By Objectives 目標管理)では、個人は

「まず、経営者は株主に対して利益を約束する。そして、それを念頭に置いた経営計画を立てる。今度は、その数字を各部門や各課に割りつける。それによって社員個々人が目標にする数字も決まってくる。理論上は個人がきちんと成果を挙げれば、課や部の目標数字もクリアでき、課や部の目標がクリアされれば全社の目標も実現できるしかけだ。」

という合理的なシステムの歯車、部品のひとつになる。だが、心を持った個は、意思を尊重されずに使われるだけでは、心身ともに摩耗してしまう。論理分析思考からはイノベーションも生まれない。企業の成長と個人の幸せのベクトル合わせがMBBの目指す新しいしくみである。

「経営において個人の思いを重視する考え方は、人間や企業をどう見るかという基本的な人間観、経営観に通じる問題でもある。つまり、人間や企業を「作業工数」「金儲けの集団」と見るのか、それとも「自ら考え、知を創造していく主体」として捉えるかである。」

この本では、今、知識創造の主体としていきいきと働くビジネスマンや経営者をケースとしてとりあげて、うまくMBBを実現するための経営ビジョン、人事制度、教育制度、評価制度、リーダーシップ論が語られる。

MBBの定義はこう書かれている。

「会社の目標や組織の背景にある経営陣や上司の思いと、自分自身の仕事やキャリアに対する思いをぶつけ合う『創造的対話』によって会社にとっても意味のある業務上の目標を見出し、それを設定して、実行していくこと」

トップダウンで効率を追求する欧米型の経営手法と、現場と経営の相互コミュニケーション(ベタな飲み会含む)を大切にする日本型の経営手法の融合が、MBBの目指すモデルである。それには経営者も社員も全員が、"しみじみ"と「これしかない」と思えるまで話し合う場づくりが必要になる。

たとえばケースのひとつ星野リゾートの社長の言葉からは強い思いが伝わってくる。

「温泉に浸かれて、本物の和食が味わえ、畳の上でくつろげる日本の温泉旅館は世界一のホスピタリティを発揮する力を秘めています。フランスのまねごとをしているアメリカのホテリエよりもよほどポテンシャルは高い。そういう誇りが社員の心の底にはあるんです。だから私が『うちもリッツ・カールトンになろう』なんていっても社員は燃えません。しみじみしません。だから、むしろ『ペニンシュラを日本から追い出すんだ』といったほうが、意気が上がるのです。」

やりがいと楽しさのある創造的な組織の作り方。こうした思いを個人と組織がどうやったら共有できるのか。しみじみ感をつくりだす実践とは何か。そのフレームワークを示すのがこの本である。

・世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1003.html

・人事異動
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-947.html
徳岡 晃一郎氏の著書。


ところで、著者のひとり徳岡先生らと私は多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を運営しています。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。

・多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所
http://www.ikls.org/

・「福」に憑かれた男 人生を豊かに変える3つの習慣
51rQ2B1vfUDL__AA300_.jpg

人生哲学と経営哲学を両方学べる。おすすめ。

会社を辞めて家業の書店をついだ秀三。俺が立て直して見せるという最初の意気込みも現実の困難のまえには勢いを失っている。大型書店の近隣への出店の情報を聞いて、もはやこの店も閉店かと落ち込んでいる。

『商売繁盛!商売の神様、いるのならお願いします。もうギリギリです。何とかしてください!』

秀三の叫びを、彼にとりついている福の神(研修中)は歯がゆい思いで聞いていた。福の神は秀三の成功のためにそれなりに手を尽してやっているのだが、思うように結果が出せていないのだった。

そこへ成功者らしい老人とその老人にとりついている先輩福の神が現れて、成功するための指南を与えていく。人間と福の神とそれぞれの視点で、人間の成長、成功、そして幸福とは何かを学ぶレッスン。

『大切なのは、目の前の一人の人生に興味を持つことだ。愛をもってその人を見ることだ』

この本が教えようとしていることは教訓として抜き書きしてしまうといたって当たり前のことだ。それが、この感動的な物語の文脈で読むとまったく新しく豊かな意味をもってしみじみそうだよなあと思える。

特に中小企業の経営者、お店の従業員は必読。迷いの中にいる人が読めば、人生が変わるかもしれない。泣けてくるかもしれない。自己啓発書として本当によくできた名著だと思う。

私もちょっとほろっときてぐっときたのでした。

切羽へ

| | トラックバック(0)

・切羽へ
41WiPWugLLL__SL500_AA300_.jpg

先日、ある会議でゲーム「ラブプラス」に抱くバーチャルな恋愛感情は、本質的にプラトニック・ラブであり、本物の感情と何も変わらないと熱く論じたところ、プラトニック・ラブという言葉をわかってもらえなかった。それくらいプラトニック・ラブの概念は死に瀕している。この作品はそんな時代に真正面からプラトニックの価値を追究している。

のどかな離島の小学校で養護教諭をしている主人公セイは、画家の夫と平和で幸福な日々を暮らしていた。ある日、セイは島に新しく赴任してきた新任教員の男と出会う。男にどうしようもなく惹かれてしまう自分にきがつく。何の不満もない夫との愛情生活と、秘めた男への感情が並行しながら、しだいに緊張感を高めていく様子が描かれる。

タイトルの切羽(きりは)とは、トンネル工事の最先端部のこと。両側から掘っていって二つの切羽がつながるとトンネルが開通する。切羽がつながるまで、地の向こう側の、相手の存在を思いながら掘り進むわけである。掘る人は相手の存在と向こうもこちらに向かっていることを闇雲に信じているのである。

恋愛というのは2人でするものとは限らない。男女関係の開通にいたる前は、切羽の先に相手がいることを信じて、1人で思いを高ぶらせているだけだ。心にうかぶ相手の姿はどこまでもバーチャルである。で、それは高嶺 愛花や小早川 凛子や姉ヶ崎 寧々と何が違うのか?という冒頭のラブプラスの話になる。ふたりで燃える前にはひとりで萌える段階があるのだ、必要があるのだ。

この切羽へはプラトニック・ラブでありながら、やたらと官能的で、なまめかしい小説になっている。田舎生活でこれといった事件は何も起きないのにスリリング。文章は読みやすくて美しい。この作家の力量は凄いなあとしみじみ実力を納得させる第139回直木賞受賞作。

合葬

| | トラックバック(0)

・合葬
gassosugiura01.jpg

江戸文化の漫画家 杉浦日向子の作品。庶民風俗、町人文化をとりあげた作品が多い中で、これは異色のシリアス路線である。よみごたえがある。

最後の将軍 徳川慶喜の警護を目的として結成され、新政府軍と上野戦争を戦って壊滅した彰義隊。官軍とも賊軍ともつかない曖昧な存在。隊士たちは何のために命をかけて戦うのか。明確な大義をみつけられず迷いを抱えたまま、それぞれの思いを胸に決戦へと突入する。

彰義隊は自らの意思によるボランタリな組織だった。この漫画の3人の少年たちも、どう生きるか迷った末に、戦いに加わることを自ら選ぶ。その心理プロセスがとてもリアルである。杉浦日向子が得意とする江戸の平穏な日常描写があって、少年たちのおかれた鬱屈が伝わってくる。戦いという非日常にどうしてつながっていったのか、よくわかる気がする。

維新期の江戸の混沌と緊張のムードもうまく描写されている。市民革命と言うわけでもないから、戦うのは一部の志士たちのみである。多くの人には関係ないのである。市中では普通に日常生活が営まれている。決戦の日は、上野で飛び交う砲弾の音を、福沢諭吉が三田の慶応義塾で授業をしながら聞いていたという。

時代の流れについていけなかった旧勢力の残党の話といってしまえばそれまでだが、命を賭けた人たちにはそれぞれに熱いドラマがあった。新政府軍は上野戦争で勝利を収めた後、彰義隊の遺体の回収を禁じたらしい。この漫画は消えゆく江戸への著者のレクイエムであり、散って行った志士達を弔う合葬なのだ。

・会議の科学―健全な決裁のための社会技術
411QMKH3YYL__SL500_AA300_.jpg

会議を科学的にデータ解析して、「決定プロセスの健全性」を確保するには、どのように会議を行えばいいかを研究した本。ビジネス書にありがちな"すごい会議"の幻想を打ち砕く。まず実際の会議は多くの場合、生産的なものになっていないことが指摘される。

「ブレインストーミングに限らず、通常、集団で課題遂行を行うときには、一人で同じ課題に取り組むより優れた成果が得られると期待しがちである。しかしそうした期待に反して、今述べたブレインストーミングと同様に、集団で行ったとしても期待される成果に達しないばかりか、個々人の成果を集団人数分集めた方が優れていることを示した研究が多い。」

皆で話し合えばいい考えが出てくるという素朴な信念は多くの場合、ただの幻想にすぎないという。メンバーの相互作用による「プロセスの喪失」は主に次の4つに起因している。

1 評価懸念 否定されることを恐れて発言を控える
2 発言量の同調 他のメンバーの発言量に合わせて発言を控える
3 ただ乗り 他のメンバーの努力に期待して発言を控える
4 発話のブロッキング 誰かが話している間は発言できない

特に4つ目の発話のブロッキングは強く作用しているそうだ。

私も経験的に、ブレストはまず一人で長めにやってから、個人の成果を持ち寄ってもう一度短めにやるのが一番生産的だと感じている。いきなり皆でやるとウダウダしてしまいがちなのだが、科学的にも研究されていて、そのウダウダの中身が明らかにされていた。確かにそういうことだ、納得。

「議論の中に共有情報が占める割合は45%だったのに対して、非共有情報はわずか18%だったのである。加えて、グループのメンバーが多くなるほど、その傾向が顕著になることも明らかになった。しかも、議論の中に投入された共有情報のうちの34%が、少なくとも一度は繰り返し話題にされており、非共有情報では26%が繰り返されていたという(Stasser,Taylor,& Hanna,1989)。これらのことを踏まえると、話し合いでは、確かに情報交換がなされていたのだが、その時間の大部分は、すでに共有された情報をやりとりすることに費やされていたということになるだろう。」

会議にもハレとケがあるのじゃないかと思った。ハイテンションのプロフェッショナルが集まれば集合知を生みだす創造的な"ハレ"の会議が確かに可能だと思う。だが、日常的に行われる"ケ"の会議は、間違えないことや情報を正確に共有することが目的である。この本には、そうした普通の会議の陥りがちなワナと回避法が、科学的な研究の成果として、解説されている。

会議のインタラクションについて、ビジネス書ではなく科学書を読みたいと思ったらこれがおすすめだ。

・「みんなの意見」は案外正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/05/post-381.html

・会議はモメたほうがいい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/06/post-241.html

・すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003427.html

・会議が絶対うまくいく法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000203.html

このアーカイブについて

このページには、2010年7月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2010年6月です。

次のアーカイブは2010年8月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1