2010年9月アーカイブ

・おもいでエマノン
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『黄泉がえり』の梶尾親治が原作、『Spirit of Wonder』の鶴田謙二のSFファンタジー漫画。ユニークなストーリー設定と魅力的なヒロインのキャラクターが相乗効果を出している秀作。

自分は地球の生命30億年の記憶を受け継いでいるという不思議な話をする少女エマノン。アメーバみたいな原始生物だったときから、何億回もの転生を繰り返して、いまの自分になった歴史を覚えているというのだ。旅行の船上で彼女と出会い、そんな話を聞かされたSFマニアの主人公は、話の面白さと彼女の魅力に強く惹かれていく。

これはSFオタクのための恋愛ファンタジーとしてひとつの理想形、完成形だと思う。SFの話を楽しそうに聞いてくれる彼女というだけでも希少な存在だが、エマノンは自分から斬新なSF話をしてくれて、一緒に盛り上がれるわけだから、奥手なオタクには最高なのだ。

エマノンの長い髪、セーターにジーンズ姿というオシャレ過ぎない親しみやすい格好。船上で自然に二人きりになる状況(周囲は酔っ払った嫌なオヤジばかりだったため)。女性の方から話しかけてもらえる偶然。あらゆる要素がオタク系のリア充化へと予定調和的に向かっていくのだ。男の方はひたすら受身でも展開がどんどん進んでいく。

エマノンという名前は No Nameを逆から読んだ自称であって、本名でもないのだが、○○ノンっていう響きもなんだかそっち系で受けそうなネーミングなのである。もう完璧じゃないか。

既にかなりの人気作品らしいが、エマノンでラブプラスをつくったら大人気になるだろう、予言。

・日本型プロフェッショナルの条件―アメリカ的論理思考では問題は解決できない
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ヘッドハンティング会社社長で、経営大学院の教授で、僧侶というプロフィールの著者が語った日本型プロフェッショナル人材論。何をしているかと問われたとき、日本人サラリーマンは「私は○○会社の△△です」と答えてしまう。この本はそうではなくて「私の専門は○○です。現在は△△会社に勤めています」と答える生き方のすすめだ。

プロフェッショナル=専門家のフリー独立ではない。日本の企業文化に合わせた日本人のためのプロフェッショナル論なのが特長だ。
 
「どこにいようとも、自立したプロフェッショナルとしての生き方は追求できます。同じ会社にずっといようとも、転職しようとも、常に自分なりに専門性を磨き、高い倫理観と規範を持ち、公益に寄与するという観点から自分がなすべきことを決断し実践していく。このような生き方をしている人を「日本型プロフェッショナル」と私は呼びたいと思います。」

そして条件はもうひとつある。

「日本型プロフェッショナルのもう一つの条件になるのが、特定の分野で「一流」と呼べるような専門性を持っていることです。その分野で一番になる、あるいは、同業の人々から一目置かれるくらいの尖った専門性が必要です。」

直観か論理思考か、比較優位か個性化か、他力か自力かなどという二項対立を超えて、どちらも大切であるというアジア的中庸の価値提案が多いのは、やはり著者が僧侶だからなのかもしれない。メタのフレームワークでアメリカ的論理思考の限界を飛び越えていく。啓発的。

「組織の中で人より早く出世しようというような私利私欲による動機づけではなく何かのために動こうと自分を動機づけられる人が、真の意味のリーダーです。」

この本の著者の安永雄彦先生を招いた読書会があります。私がファシリテーターです。

詳しくは下記。

・ビジネス書の読書会とセミナーで"ソーシャル・リーダーシップ"を学ぶ 多摩大学大学院IKLS主催 ソーシャル・リーダーシップクラブ お申し込みなど
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/ikls.html

【ソーシャル・リーダーシップコミュニティ】

書評アルファブロガー、橋本大也(研究所客員教授)のナビゲートで話題の本、話題のテーマについて、直接著者をお招きしながら対話形式の読書会を実施します。ソーシャル・リーダーに興味をお持ちの皆さまが場を共有し、成長できる実践的学習の場造りを目指します。

・費 用  1回3,000円
・会 場  都内(品川を予定)

第一回:開催日時10月28日 18:30~20:00
特別講師 安永雄彦様
指定図書「日本型プロフェッショナルの条件」グロービス経営大学院大学教授、エグゼクティブ・サーチ会社の代表を務めると同時に、
浄土真宗の僧侶でもあるという著者と共に、
日本型のプロフェッショナルのあり方について考えていきましょう

お申し込みはこちら
http://www.ikls.org/archives/217

今、全世界が注目をしている「Evernote(エバーノート)」のアプリケーションサービスの開発担当者Seth Hitchings氏が来日、急ではありますが、10月1日(金)20時より、秋葉原のデジタルハリウッド大学大学院にて「ディベロッパーズミーティング」の開催がこのたび決定いたしました!

本イベントで私はパネリストとして登壇することになりました。昨年に書いた『情報力』も執筆のきっかけはEvernoteの便利さに感動したことでした。ヘビーユーザーの一人としてその進化が気になりますし、意見も言いたい。ウェブサイトエキスパート編集長 馮 富久氏と共に、セス氏とトークします。

個人の能力を拡張するデジタル情報処理ツールの未来に興味のある人、エバーノートを使ってアプリを開発したい、ビジネスをしたいという人、ぜひお気軽にお集まり下さい。

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【イベント】10月1日開催 ◆Evernoteデベロッパーズミーティング
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この度、Evernoteでは初めてEvernoteのアプリケーションデベロッパーやWebデベロッパーを対象としたデベロッパーミーティングを開催が決定いたしました。

昨今、様々な企業とインテグレーションを進めるEvernoteでは、日本のデベロッパーやクリエイターの皆さんのセンスに非常に交換を持っており、是非、日本の開発者と方たちと、Evernoteの開発者の交流の場となればと希望されています。

当日は、パートナーインテグレーションと、Evernoteの APIやTrunk、Site Memory といったサービスの開発を担当しているセス氏(Seth Hitchings)を招いて、Evernoteとのインテグレーションに関するお話をしていただきます。

世界中で外部脳を実現するEvernoteと、新しい何かを作りたいと思われる日本の開発者の皆さんにぜひご参加頂ければと思います。

~参考~
>Evernote Trunk
http://blog.evernote.com/jp/?p=661

>Evernote Sitememory
http://blog.evernote.com/jp/?p=1085

※当日は、関係者が逐次通訳をおこないます。

■日時:2010年10月1日(金) 19時50分開場、20時開始、22時終了予定 
■場所:デジタルハリウッド大学大学院 秋葉原メインキャンパス
〒101-0021
千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7F
http://www.dhw.ac.jp/access/

■登壇者:Seth Hitchings(Evernote Director of Partner Integrations)
       デジタルハリウッド大学教授 橋本大也
(データセクション株式会社 取締役会長 http://www.datasection.co.jp/
       ウェブサイトエキスパート編集長 馮 富久   

■参加費:無料

下記フォームにもれなく記入のうえ、9月30日(木)13:00までに、デジタルハリウッド広報室までメールにてお申し込みください。

※ いかなる理由であっても申込期限を過ぎたものはお受付いたしません。
※ メール1通につき1名様のお申し込みとさせていただきます(複数名お申し込み不可)

申込フォーム
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氏名(フリガナ):             (               )
在籍: 一般参加 スクール(所属:       校)、 大学(   年生)、 大学院(   期生) デジハリ在卒:  在校生 ・ 卒業生
メールアドレス:
携帯番号:
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メールお申し込み先
デジタルハリウッド株式会社 広報室宛(担当:川村、根鈴)
Mail:press@dhw.co.jp

申込期限
9月30日(木)13:00 必着  

・呪われたナターシャ―現代ロシアにおける呪術の民族誌
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ソ連崩壊以降のロシアでは呪術や超能力、オカルトへの興味が高まっているらしい。

その理由がなかなか込み入っているのだ。

「呪術「体験」の「リアリティ」が支持されるにあたっては、ポスト社会主義という時代性も深く関わっている。ロシアでは、教育、医療、農業などにおける近代化は、科学を標榜した無神論の名の下に推し進められた。それが崩壊したことにより、ソ連時代の近代化のあり方への疑問や科学概念へのゆらぎが生じ、結果としてふたたび呪術が入りこむ余地が生じているのである。」

ロシアではかつて社会主義が宗教と呪術を弾圧していた。その体制が崩壊して以降、呪術は蒙昧な迷信ではなく科学的根拠を持つ実践だったのに不当に禁じられていた、祖先の教えは正しかったのだ、という言説が、反動として現れたということらしい。呪術の見かけ上の科学的体裁も整えられた。現代医学のイディオムを取り込んだだけでなく、呪文はプログラムとして作動するインフォメーションコードだとするコンピュータ科学との融合もあった。呪術本のベストセラーや専門書店もあるのだから驚きである。

著者は現代における呪術を研究するに当たって、ナターシャという1956年生まれの女性のケースを詳細に分析する。ナターシャは呪術をかつては迷信だとして信じなかったのに、今は自分の人生の不幸はすべて、かけられた呪いのせいだと信じている。写真入りでナターシャや呪術師、超能力者が登場するが、見たところ穏健そうな普通の人たちである。妄想女といってしまえばそれまでだが、そのリアリティを共有している人が結構な数いるわけだから、彼女にとっては立派にリアルなのだ。

昔と異なるのは現代のロシアでは、呪術が流行しているとはいっても、ほとんどの地域住民は信じていないということ。村の中でも僅かな信者が、呪術の本や新聞などのメディアによってネットワーク化されて「リアリティ」を共有している。そして学術研究の呪術情報と、実践者の呪術情報と、マスメディアの呪術情報が循環してそのリアリティを強化して行っている図式があるという。

日本でも今、ホメオパシーの効力が問題にされているが、占いや迷信の類はほかにいくらでもメディアにあふれかえっている。スピリチュアルや風水で人生設計や住居設計をする人も多い。ロシアだけではあるまい。こうした呪術や迷信という病は、いくら科学の時代になっても、教育レベルがあがっても、心を持つ人間の社会であるかぎり根強く生き残り続けるものなのだろう。

・すぐわかる画家別幻想美術の見かた
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「現実にないものを内なる眼で見て、思い浮かべる人間の想像力、つまり"幻想"から生まれた美術」

自分が興味を持つ絵画の多くは幻想美術と呼ばれるジャンルだとわかったのだが、幻想美術というのはどういう美術なのか、どういう作家がいるのかという全体像が、このカタログ的な解説本でやっと把握できた。

近代以前から現代まで62人の画家による幻想絵画をカラー写真で紹介していく。

15世紀のヒエロニムス・ボス、アルブレヒト・デューラーに始まって、20世紀のキリコ、ダリ、マグリットまでを代表作をひとつ選んで解説を加えていく。美術史的には有名な作家も多い。歴史的背景や評価、周辺キーワードなどで立体的に作品が理解できる。

絵画の主題となるのは、夢、幻覚、無意識、眠り、恍惚、神秘、不可思議、秘密、謎、ビジョン、メタモルフォーシス、宇宙、無限・永遠、夜、闇と光、廃墟、迷宮、死、妖精、童話的世界、楽園天国、地獄など。現実と非現実の中間世界。「熱に浮かされたような」「狐につままれたような」瞬間を絵にしている。

しかし、完全に表現者があちらの世界にいってしまっているアウトサイダーアートとはかなり異なる。見る者を幻想に惑わすための設計がなされているなあと感じることが多い。神秘であると同時に知的な芸術なのだ。

「幻想美術の巨匠たちは、本来なら大自然の秩序、ヒエラルキーの中に定位置を占めているこれらのイメージを解放、解体し、我々には想像もつかないような形で組み合わせ、合成したに過ぎない。彼らが創造したかに見える不可視の超現実、超自然、つまり幻想の世界も、常識や理性、偏見にとらわれない自由かつ柔軟な感性と、豊かな想像力の産物であった。」

鑑賞用としても知識ガイド本として非常によくできた本だと思う。

ヒエロニムス・ボス 快楽の園
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ギュスターブ・ドレ パラダイス
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・写真屋さんのデジタルトリマー
http://www.digicameplus.jp/digitaltrimmer/index.html
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本物の写真屋さんの店長が考えたというトリミング処理に特化したフリーソフト。

Photoshopを使うよりも簡単で手早く画像の切り出しが可能になる。

特に写真を印刷したい人におすすめ。印刷する場合には、出力サイズを考えてトリミングを行わないといけないが、このソフトには、よく使う「用紙サイズ」と「画像解像度」があらかじめプリセットで用意されている。余白の設定も可能。

選んだサイズの枠をオリジナル写真の上で動かしながら、切り出すことで適正サイズの画像が得られる。

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切り取り後にどう見えるかを事前確認できるトリミング画像のプレビュー機能もうれしい。多段階のアンドゥ機能によって、安心して作業をおこなうことができる。

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デジカメで撮影した写真を印刷してみたら、なんだか用紙サイズに合わないなと思った人、とりあえずこれで問題は解決できますよ。

動画ファイルをiPod&iPhone&iPad向けH.264(AVC)/MPEG4に変換するフリーソフト。

どこでも!iPod&iPhone&iPad動画
http://lnsoft.net/videosound3.htm#ipod_movie
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動画と音声のフレームレートやビットレート、サイズの個別指定もできるが、基本的には"おまかせ"で形式を選択肢から選ぶだけでOK。ファイルをドラッグアンドドロップすれば変換が始まる。複数の動画を一括処理もできる。

対応ファイル形式はavi,mpg,mpeg,dat,m2p,mp2,m2v,vob,mp4,m4v,m4a,3gp,3gpp,3g2,3gps,wmv,asf,mov,qt,rv,rm,ram,ogm,swf,flv。

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[変換後iTunes登録]をクリックするとiTunesに映像ファイルが登録される。

最近見たいネットの動画が増えているけれども、移動中くらいしかゆっくり見る時間がないので、このツールは重宝している。

・コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
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「近代マーケティングの父」コトラーの最新作。

物の売り方や顧客の満足を中心に考える古典的なマーケティングの概念を完全に脱している。核となるのはこれからの企業のミッションやビジョンのつくりかたの話だ。マーケティング担当者だけではなく、経営者が読むのにふさわしい内容。

マーケティングは第三段階に進化したという。

1.0 製品中心のマーケティングの時代
2.0 消費者指向のマーケティングの時代
3.0 価値主導のマーケティングの時代

3.0では、消費者をマインドとハートと精神を持つ全人的存在としてとらえ、従来のマーケティングの武器だった「製品開発」や「差別化」ではなく、「世界をよりよい場所にする」ための社会的な「価値創造」こそが消費者をひきつける重要な要素になると説く。
消費者がインターネットやソーシャルネットワークによって対話し、協働する世界では、もはや企業論理のマスマーケティングは通用しない。消費者は企業を機能的パフォーマンスから社会的パフォーマンスの観点から語り始めている。そうした傾向はツイッターやブログの風評や炎上事件を見れば明らかだ。

マーケティング3.0とは、

協働マーケティング
文化マーケティング
スピリチュアルマーケティング(精神の充足の意味)

の3つの要素の融合であるという。創造性、文化、伝統、環境といった分野で価値創造に参画できる企業こそ、ソーシャルメディア時代の勝者となると教える。マイクロファイナンス、ソーシャルビジネス、BOP市場、グリーン市場など未来の成長市場におけるケースも示されている。

消費者の精神に訴えかけるブランドに必要な3つの要素が次の3iである。

ブランド・アイデンティティ
ブランド・インテグリティ
ブランド・イメージ

ポジショニング、差別化、ブランドの整合性を保つことが重要課題になるという話。

多様な価値観のグローバル世界では、コミュニティ全体の幸福という大義名分を持つことが、最強のマーケティングになるということだろう。経済や経営がわかるだけでは、もはや経営者はつとまりませんという厳しい話でもある。

・Double Driver
http://www.boozet.org/dd.htm
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WindowsXP/Vista/7にインストールされたドライバーを検出してバックアップおよび復元をしてくれるユーティリティ。OSのドライバー復元機能だけでは心配な人、自分で管理したい人におすすめ。

スキャンを実行すると現在OSにインストールされているすべてのドライバーがリストアップされる。ドライバー名、バージョン、提供元、セットアップ情報、インストール日時などの詳細情報も確認できる。

このリストからユーザーがバックアップしたいドライバーを明示的に選択することができる。快適動作に必要なドライバーのみを選んでバックアップできるのがうれしい。バックアップから選択して復元することももちろん可能。

インストールされているドライバーの概要を印刷する機能もある。正常起動不能に陥ったときに、印刷物があると復旧に助かるかもしれない。

国立国会図書館主催の下記イベントに出演して「読書の過去・現在・未来―デジタル時代における言葉・テクスト・リテラシーをめぐる諸問題」について話します。基調講演は松岡正剛氏だそうです。無料イベントですので興味のある方ぜひお越しください。関西にも中継会場ありとのこと。

■国民読書年記念シンポジウム「読書とはなにか」
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/readingsympo.html

国民読書年を記念し、シンポジウム「読書とはなにか」を開催します。
電子書籍や携帯小説など、いままでにはなかった書物の形態や読書のスタイルが登場し、今後、我々と読書を取り巻く環境は大きく変化することが予想されます。
こうした状況をふまえ、「人間にとって読書とはいかなる意味をもつのか」という本質的なテーマを軸に、日本における読書の特色、デジタル時代における読書のあり方など、現在の研究成果をもとに「読書」をめぐるさまざまな論点を提示します。

※関西館には講演会の模様を、東京からテレビ中継いたします。

■内容
・基調講演「人間にとって読書とは何か」
松岡正剛氏(編集工学研究所所長、イシス編集学校校長)

・パネルディスカッション「読書の過去・現在・未来―デジタル時代における言葉・テクスト・リテラシーをめぐる諸問題」
和田敦彦氏(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
橋本大也氏(書評家、デジタルハリウッド大学教授)
杉本卓氏(千葉工業大学工学部教育センター教授)

・ディスカッション「『新しい読書』のすすめ―研究と実践への展望―」

■日時
平成22年 10月20日(水) 13:30 ~ 17:00

■会場
国立国会図書館 東京本館 新館 講堂
国立国会図書館 関西館 1階 第一研修室

■募集人数
東京本館300名、関西館70名(先着順)

■参加費
無料

■申込み方法
事前申込制(先着順)です。次のいずれかの方法でお申し込みください。
[ホームページ]
https://www.ndl.go.jp/jp/event/apply_readingsympo.html

[FAX](1)イベント名(読書年シンポジウム) (2)氏名(ふりがな) (3)参加ご希望の会場(東京本館/関西館) (4)FAX番号
(5)電話番号 を明記してください

■申込み締切
平成22年10月15日(金)17時(先着順で定員となり次第、受付を終了します。)

■お問い合わせ先
国立国会図書館 総務部総務課広報係
電子メール koho@ndl.go.jp

金毘羅

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・金毘羅
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文体が面白くて一気読み。

「一九五六年三月十六日深夜、私は仮死状態で生まれました。産声を挙げたのは次の日の朝でした。しかしそういう言い方だけだと判らない事実が実は、そこに隠れていました。正確に言うと、───。 一九五六年三月十六日深夜ひとりの赤ん坊が生まれてすぐ死にました。その死体に私は宿りました。自分でも判らない衝動からです。というか神の御心のままに、そうしたのです。」

神憑り電波系中年女性による独白長編小説。

登場人物は"私"だけ。本当は人間ではなくて"金毘羅"なのに、人間世界に降りてきたせいで、幼少より生きづらい生を送ってきたことへの恨みつらみ、そして自分の真の霊的正体を知った時のカタルシスを延々と語る。そうした事実をを知ることがない世間の人々への高笑い。偶然や幻覚を神意と結び付けて、超恣意的な世界認識を構築して、その中にひきこもる女がいる。

熱っぽい一人語りの地の文が独特で、なんじゃこりゃあと思いつつも、よいテンポで序盤を読まされてしまう。

一見すると、現実の生きづらさからの逃避として、宗教知識を使った内面的な辻褄合わせをしているだけのようにも思える。金毘羅、象頭山、大国主、大物主、少彦名、サルタヒコ、アメノウズメ...少し歪曲されながら、日本のカミサマ論が延々と展開されている。その宗教知識の披露をよく読んでいくと、思いがけない深みにはまっていくのがこの作品の後半の魅力。

この本は、ある程度、日本の神道と仏教の歴史について予備知識を得てから読んだ方が面白い。そういう身勝手で恣意的な宗教意識が、実は日本人の伝統的な宗教意識そのものなのだということが見えてくる。土着の宗教と仏教を同一視する「神仏習合」や、日本のカミサマと仏の化身を対応させる「本地垂迹」など、身勝手な私の辻褄思考は、日本人の宗教思考とおもいっきり重なっている。

「我は神、我は幸い、その名は金毘羅、我執をも叶える、鰐と翼の神」

結局、この電波女は日本の宗教が必然的に生み出してしまうモンスターなのである。

第16回伊藤整文学賞受賞作品

しおんの王

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・しおんの王(8) <完>
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久々に夢中で読んだ将棋漫画。

幼い時、目の前で両親を惨殺されたショックで口をきけなくなってしまった少女紫音(しおん)は、棋士の家で大切に育てられて、今は女流プロ棋士を目指している。財閥令嬢で名人に弟子入りしている二階堂沙織、賞金稼ぎのため女装してまで将棋を指す斉藤歩などライバルたちとの運命的な出会いから全8巻の幕が開く。

両親を殺した犯人は将棋に縁があるものらしく、棋界で頭角を現した紫音をつけまわし脅迫メッセージを送ってくる。紫音は犯人をみつけるためにも、一生懸命にトーナメントを勝ち進む。紫音の将棋人生と殺人事件の犯人探しが同時進行で進むスリリングな構成。

難しい状況にも明るい顔で果敢に立ち向かう紫音の健気さが最大の魅力。振り返ってみると設定にはやや無理もあるわけだが、脇役含めて、キャラクターの魅力で最後まで引っ張っている。だれずに面白かった。

各話の間に物語内の対局の棋譜解説がついている。作者は実際の将棋の局面をストーリーに反映させているのだ。将棋に対する愛を感じる作品であり、私はこの漫画に感化されて最近、将棋の実況番組を見るようになってしまった。将棋は内面のドラマだ。

テレビアニメ化された人気作品らしい。まだ観ていませんが。

有料ソフトのソースネクスト 驚速メモリが9月30日までBaiduTypeのプロモーションキャンペーンで一緒に無償配布されている。以前から気になっていたソフトだが、使ってみたら想像以上に便利である。

メモリ最適化+リソースモニター+RAMディスク作成ソフトだ。

・驚速メモリ
http://www.sourcenext.com/present/?i=com_news
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メモリ開放を行うと、物理メモリ内にある使用していないデータをハードディスクに一時退避させることで、物理メモリの利用可能量を増やす。利用可能メモリ量が、ユーザーが設定した量を下回ったら、自動的に開放が行われる仕組み。アプリケーション動作とディスクへのアクセスのどちらを優先するかも選べる。

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アプリケーション、プロセスごとのメモリ使用量を細かくチェックすることができる。またハードディスクの利用状況もリアルタイムにモニターすることができる。多機能なリソースモニターがついてくるのがうれしい。

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ほかにRAMディスク作成機能がある。作成したRAMディスクはWebブラウザーの一時キャッシュに簡単に割り当てることができる。RAMディスク内容のハードディスクへの自動バックアップ設定もあるので、安全にRAMディスクを使うことができる。

・高級ショコラのすべて
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近年、都内に増えている高級ショコラ店が気になっていた。

日本でも老舗のゴディバくらいは知っているわけだが、「ピエール・マルコリーニ」「クリスチャン・コンスタン」「ミッシェル・ジョーダン」と聞くとよくわからない。そもそもゴディバはベルギー王室御用達で、他の御用達ブランドにはノイハウス、ヴィタメール、メリー、コートドール、ガレーがあるなんていうことはこの本で初めて知った。この十年で日本の高級ショコラ市場が盛り上がってきたらしい。アパレルブランドであるはずのブルガリやアルマーニもショコラを出している。

「チョコレートやココアの香りには、集中力や記憶力を高める効果や、リラックス作用があります。また、カカオ豆に含まれるテオプロミンには、脳を活性化して集中力や記憶力を高める効果があります。テオプロミンの名前は、カカオの学名「テオプロマ・カカオ」からつけられました。カフェインに近い成分ですが、興奮作用はずっと穏やかです。」

なんていうチョコレートの効能や歴史、用語解説、業界事情といった専門的な蘊蓄とともに、楽しむための、国内と海外のショコラ専門店の網羅的なガイドと選び方、味わい方(ボンボン・ショコラは、鋭利なナイフで二等分して半分味わったら、軟水を飲んでから、残りを食べる、など)が紹介されている。実用性があって、とてもよかった。

さっそく丸の内のショコラティエ・パレ・ド・オールという店に行ってきた。

http://www.palet-dor.com/

クラシックな看板ショコラのセットとこの店の名物ショコラ・ネスパ?!を注文。カカオ豆の透明なエキスを炭酸で割った冷たいドリンクで、ソーダののど越しだけれどもしっかりチョコレートの味がする。おいしい。店やショコラの知識があることで一層楽しめた。
ちょっとお茶のつもりで親子3人でいったら五千円くらいの出費になった。まあ、"高級"ショコラだから仕方ないか。失敗しないためにもガイドブックが必要なのですな。

・視えるんです。 実話ホラーコミックエッセイ
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実話怪談の漫画家による体験談。雑誌『幽』掲載の書籍化。

・伊藤三巳華ブログ
http://ameblo.jp/itoumimika/

私は子供のころから怪談大好きで、自分でも幽霊見たい、見たいと思っているのに、全然見えません。この作者はオバケ団地で育ったせいで見たいというわけではないのに見えてしまう体質。でも見えるだけで祓うことはできないので一方的にからまれてばかり。だから、やりすごし方には長けています。たとえ見えても見えないふりをしていると心霊に絡まれないものなんですね。見えても無視するのが吉。ほんとか?。

この本には、アシスタント時代に大物漫画家のオフィスで体験した出来事や、怪談イベント、旅先で起こった怪異など、自らの体験をベースに、16篇の漫画が収録されています。ちなみにあまり怖くはないです。見えるだけで祟られたりしないからです。

顔だけ大きい黒髪の女の人、スルスルと降りてくる首をつった女、白袴で仁王立ちの武士、布団をめくったら寝ているおばあさん、深夜の温泉で聞こえてくる歓談の声。禍々しい体験が盛りだくさんですが、なんでもネタととらえるたくましさで乗り越えていきます。ホラーですがコミカルです。

代表を務めている先端研究集団オーバルリンクが主催で下記イベントを開催します。



「写真」と「写真ではない何か」を分ける境界線はどこにあるのか。そもそもそのような境界線は存在するのか。言葉で捉えることの出来ないその境界線は、面倒なことに自ら写真を撮ることなしには見えてこない。

ライカが銀塩カメラの製造を終了し、銀塩からデジタルへという意味においてもまさに境界線にある今、新旧の写真をブログを舞台につなぐイベントを通じて、「写真の境界線」を考えてみる試み。

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講演者:
田中長徳氏(写真家) http://chotoku.cocolog-nifty.com/
三井公一氏(写真家) http://sasurau.posterous.com/

写真家として確固たる地位にあるだけでなく、カメラやその周辺に関する著作多数のカメラ界の重鎮・田中長徳氏とiPhonegrapherとして世界的に 注目を集める三井公一氏が、「写真の境界線」について語ります。銀塩とデジタル、カメラとしてのデジカメ、カメラとしてのiPhone、カメラがデジタルだからできること、デジタルで写真や撮影行為はどう変わったか、、、。作品とともに語る写真の今。

ナビゲーター:

篠崎晃一(オーバルリンク会員)
田邊俊雅(オーバルリンク会員)


【概要】
■日時:2010年9月27日(月) 19:45開場(20:00開演)
■場所:デジタルハリウッド大学 メインキャンパス(秋葉原ダイビル7F)
千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7階
■定員:100名
■会費:3000円、デジハリの学生は無料
参加方法:お申し込みフォームより登録してください。どなたでも参加できます。
■主催:先端研究集団オーバルリンク&デジタルハリウッド大学・大学院
■企画:オーバルリンク

【タイムテーブル】
20:00 開会
20:00~20:05 企画者によるイベントの説明と講師紹介(5分)
20:05~20:35 三井公一氏 iPhoneで見た写真の境界線(30分)
20:35~21:15 田中長徳氏 今日的写真の境界線(40分)
21:15~21:35 質疑応答(20分)
21:35~21:50 Virtual Photo Lounge 応募作品紹介とグランプリ発表
21:50    閉会

お申込み
http://www.ovallink.jp/event/photo2010.html

・なぜ、横浜中華街に人が集まるのか
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中華街の老舗 萬珍樓の社長で、横浜中華街発展会協同組合理事長の林兼正氏の書いた町づくり論。

500メートル四方に年間2300万人が訪れる横浜中華街。世界の中華街のうち、横浜中華街が最も来訪者が多い。しかし華僑の人数は、ニューヨーク34万人、バンコク60万人、バンクーバー17万人に対して横浜はたったの3000人しかいないのだそうだ。だから、他国の中華街と違って、中国人のための中華街というより、日本人のための中華街という側面が強くなる。

工夫は料理の味を日本人好みにするだけではない。中国料理だけの町から、訪れて楽しい中国文化の町へ。町ぐるみの経営努力で今の中華街の繁栄は作られたことがよくわかる内容だ。

たとえば何年か前に中華街の住民がマンション建設予定地を18億円で買い上げて、媽祖廟をつくったというニュースを聞いた時は、華僑はやっぱりお金持ちだなあと思ったのだが、大富豪が余裕で買い取ったという話ではなかったと知ってちょっと驚いた。

「18億円と言ったって、そんな金が町にもともとあるわけがない。では、どうしたか。町の人々が全員で負担するのだ。30年で18億円を支払うには、利子を別にして、毎年6000万円の金がいる。月にして500万円。400軒の店が毎月1万円強、30年間支払い続けなければならない。横浜中華街の人たちは、私利私欲を捨て、次の世代のために、町を守ろうと今も支払いを続けている。」

日本人以上に中華街の住民は地元愛が高いようだ。

「子供の頃、私は日本の学校に行った。夏休みになると、友だちみんな「おじいちゃんの所へ行くんだ」と言って、田舎に遊びに行ってしまった。私には、田舎がない。あるとすれば、共産国家の中国で、当時、行けるはずもなかった。だから、私にとっては、横浜中華街が故郷であり、自宅でもあった。 「俺にはここしかない───」 私だけではない。ここに住んでいる多くの人たちが、ここで結婚式を挙げ、葬式をする。孫の誕生を祝い、関帝廟で商売繁盛を祈る。祭りがあり、獅子が舞う。」

中華街では廟や祭りの数が年々増えている。日本の地方で減っているのとは対照的だ。中華街の特殊性も大きいので、町づくり、町おこしの方法論として、よそでそのまま使えるというわけではないと思うが、パワフルなリーダーのもとに位置から伝統をつくりだすケースとして興味深いケースだった。

横浜開港から中華街成立と発展の歴史も詳しく解説されていて勉強になる。

・茨木のり子集 言の葉I(全3巻)
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詩人 茨木のり子の自選作品集全3巻が文庫化された。この第一巻には1950~60年代の詩、エッセイ、ラジオドラマ、童話、民話、評伝が収録されている。詩が書かれた背景を知ることができて、主な作品をだいたい読んだことがあるファンでも面白い(まあ、ファンしか買わないような本ではあるけれど)。

「第一詩集を出した頃」と「櫂小史」は24歳で詩を書きはじめて、27歳で川崎洋とともに同人誌「櫂」を立ち上げたころの回想エッセイだ。谷川俊太郎、岸田 衿子、川崎洋、吉野弘、大岡信など日本の現代詩の大物が登場する。

1950年~60年代ということもあって戦争による喪失をテーマにした作品も多い。「はたちが敗戦」の年齢。教科書に掲載されて有名になった「私が一番きれいだったとき」や「根府川の海」(最近の新聞でも取り上げられていた)が書かれたのがこの時期。茨木の凛とした態度は反戦詩に向いている。中国人強制連行体験者の実話をもとにした超長編詩「りゅうりぇんれんの物語」はドラマティック。他に「私のカメラ」「あほらしい唄」のような、らしくない甘い恋愛詩や、日本書紀の野見宿禰を題材にしたラジオドラマ「埴輪」、評伝「山之口 獏」など収録作品はバリエーションに富んでいる。

個人的には教育ということの本質を突いた詩「こどもたち」がベスト。「悪童たち」の「やさしい言葉で人を征服するのは なんてむつかしく しんどい仕事だろう」にもしびれた。

第2巻は1970年代~80年代。第3巻は90年代以降の作品を扱う。時代とともに作風がどう変わっていったか楽しみ。

・思索の淵にて―詩と哲学のデュオ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-398.html

・詩のこころを読む
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-406.html

・響き合うリーダーシップ
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ハーマンミラー社の伝説のCEO マックス・デプリーが1987年に書いたリーダーシップ論の古典。ドラッカー、トム・ピーターズ、クリントン元大統領など著名人が絶賛している。

リーダーシップに必要なのは、誠実さ、関係を築き育む能力、コミュニティの構築。権力によるマネジメントから説得によるリーダーシップ、そして現代的な参加型マネジメントへ。20年前に書かれたと思えない内容。やっとこの本の中身に時代が追いついてきた。

「リーダーシップは「アート」だ。時間をかけて身につけるものであり、たんに本を読んで学ぶものではない。リーダーシップは科学というより伝承であり、情報の蓄積というより関係の構築なので、その意味では、私はそのすべてを明らかにする方法を知らない。」
コミュニケーションと関係構築にマニュアルは通用しない。人の心に響くのは誠実さや信念にもとづくリーダーシップである。著者はそのあり方を「リーダーシップで大切なのは、優秀な頭脳ではなく、全身のたたずまいだ。」と表現している。確かに偉大な経営者にはたたずまいがある。

リーダーが多様性をまとめるプロセスで大切なのは「思いきって他人の強みに頼る」ことだという。偉人たちに「場」を与えて、彼らに"遊軍リーダーシップ"を発揮させるのが、優れたマネージャーの仕事であり、著者の具体的な経験なのでもあった。

「組織で働くもっとも優秀な人々は、ボランティアのようなものだ。どんな組織においても好条件の仕事を得られる彼らは、給与や職位よりもっと把握しにくい理由で仕事を選んでいる。ボランティアに契約はいらない。「心の関係」が必要なのだ。」

部下が内発的なモチベーションによって、高い能力を持続的に発揮させる環境=良質なコミュニティをリーダーはつくりだせ。20年前の本だが、現代のフラットでネットワーク型組織におけるソーシャルリーダーシップを先取りしていて、今読んでも啓発される。


・TheaterSearchKing
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映画情報を検索するiPhoneアプリはいろいろあるが、このTheaterSearchKingの特徴は、ケータイサイト「CinemaStyle」の上映情報データベースを丸ごとダウンロードしてしまうこと。起動時のダウンロード時間が長いが、すべてのデータが手元にあるので、検索表示が高速で、オフラインでもみることができる。

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映画館のようなエンタテイメント系の検索は、さくさく動いてくれるとうれしい。なにか面白い映画を近所で見たいというときに、劇場からも、作品からも、軽快に探しまわることができる。

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興行成績、検索回数でのランキングも公開されている。

見た映画を「マイアカデミー」に記録しておくことができる。

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・SANWA SUPPLY ACA-IP12BL USB-ACアダプタ ブルー
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私の家には私と妻用のiPod*2台、iPhone*2台、iPad1台がある。だから充電ケーブル、アダプター類が多数必要になるので、サードパーティ製を幾つも買った。そんな中でデザイン性がよくて気にいっているのが、サンワサプライのこのアダプター。

携帯するのに特に向いている。外出先で卓上で充電するときにちょっと目立つ。よくかんがえると、付属のキャップは充電には役立たないわけだが、持ち運びとみせびらかしには使える。

機能的には家庭用のコンセント(AC100V)をUSB電源出力に変換するアダプターである。100V-240Vまで可能なワールドワイド対応。アップル純正のケーブルではiPadでも問題なく使えた(ほとんど大丈夫だが一部のサードパーティ製のケーブルではiPadの充電ができない)。

カラーバリエーションが豊富。カラーによっては同色のケーブルも別売りされており、コンセントまわりを一層カラフルに仕上げることもできる。5色くらい買って並べるときれいだろうなあ。

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俺俺

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・俺俺
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自分ほどわからないものはないよね、っていうアイディティティ融解パニック小説。

他人の携帯電話を手に入れたなりゆきで俺俺詐欺に手を染めた俺は、そこから俺がいっぱいいる俺俺の異世界へと引き込まれていく。我思うゆえに我ありというデカルトの言葉のように、自分の存在だけは疑わないのが人間の常だ。だが俺が複数存在しているというのもかなり困る。自我が崩壊するんじゃなくて自我が融合してしまうという、想像したこともなかった事態に陥って、俺は大いに焦る。

俺と同じ感性の俺は最高の仲間だが、自分と同じ思考をする人間が敵だったら最高に手ごわい。相手の次の手が読めそうで読めない。自分のことって、よくわかっているようで、わからないのだ。俺が増殖することで自分の持つ不条理性が果てしなく増幅されていく。
サスペンス小説なのかと思って読み始めたら、SF小説であり、パニックであり、ある種のホラーであり、パロディであり、究極の観念論なのであった。この本を読むまで、俺ということについて、ここまで突き詰めて具体的且つ網羅的に考えたことがなかった気がする。

娯楽小説に分類されそうだが根底にかなり深い哲学を読み取ることもできる中身の濃い作品である。就活なんかで"自分探し"をしている人はぜひ読むといい。自分を持たない自分が、自分を持つ自分を、自分の中に探すなんて、矛盾以外の何物でもないってわかるから。

・つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
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六次の隔たり(友人を6人たどると世界がつながる)と三次の影響(友人の友人の友人にまで影響力は及ぶ)が、社会的ネットワークのかなり普遍的な動作原理であることを再認識させられる本。ソーシャルネットワーク研究の一般書では、現時点での決定版といってよさそうな濃い内容。

社会的ネットワークは、情報だけでなく笑いの感情、幸福感、孤独感、性行動、離婚、健康、自殺、肥満、喫煙、禁煙、投票、病原菌など驚くほど多くのものを伝播させる系であることが明かされる。

テーマによって伝播の条件が違うのが面白い。

たとえば肥満は伝播するのだが、同性の友人が太っているときに特に自分も太りやすくなる。禁煙は教育レベルの高い人が禁煙すると周りもやめる率が高くなる。男性の健康は結婚できそうな女性の見つかりやすさに影響される。選挙では一人が投票すると、その人につながった3人が影響されて投票に行く。近接して住む人が幸福だと自分も幸福になりやすい。孤独を感じている人は友人を失いやすい。

三次の影響範囲と時間によって影響が消失することも重要なポイントだ。何事も無限に広がっていくわけではない。

「私たちの研究によれば直近の六か月に一人の友人が幸福になると、人の幸福度は45%上昇するようだ。一方、直近の一年間に友人が幸福になった場合、その効果は35%にすぎないうえ、時が経てばそれも消えてしまう。要するに、友人の幸福は人に影響を及ぼすが、その影響は一年間しか持たないのだ。宝くじの当選者が新たに手にした富に慣れてしまうように、私たちは友人の幸福になれてしまうのである。」

私たちはあらゆる面でソーシャルネットワークに影響を受けて暮らしていることがわかる。そして類は友を呼ぶ。幸せになりたいのであれば、幸せな人たちにつながるのが得策のようだ。人脈の広げ方、自分の生き方を再考させられる話が多い本だ。

つながりは増やせばいいというものではないことがわかる。

リアルと同じようにバーチャルなコミュニケーションにおいても伝播が確認されている。ツイッターやSNSが、情報だけでなく感情や心理も伝播させるネットワークとなっているのだとすれば、その潜在的な力は計り知れないものがあることになる。安易にフォローやリンクをする前に、この本を読んで、自分に与える影響をよく考えた方がいいのかもしれない。

・スグレモ3 無料プレゼントキャンペーン
http://www.sourcenext.com/present/
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ソースネクストが1980円で販売している画面キャプチャソフト「スグレモ3 撮画ツール」が、9月12日までの期間限定で無償配布されている。日本語入力ソフトBaiduTypeの普及キャンペーンの一環らしい。前から気になっていたソフトなので、早速ダウンロードしてみた。

結論からいうと、癖がなくて使いやすい画面キャプチャソフトだ。

デスクトップ、ウィンドウ(パーツ単位可能)、アクティブウィンドウ、矩形領域などのほかに、円形キャプチャーやフリーハンド(自由な形状)でのキャプチャに対応している。タイマーを使ったキャプチャや、任意のキーへのキャプチャ機能の割り当てるもできる。

円形でキャプチャするというのは、下記のようなイメージ。

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変わったところでは、撮影した画像にフレームがつけられるのだが、

Win95風
Win3.1風
Macintosh風
OS/2Warp風
Motif風
NEXTSTEP

などのアプリケーションの枠をつけることができる。なんのためにあるんだろう?

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スグレモ3
http://www.sourcenext.com/titles/use/113910/

・ドラッカー名著集1 経営者の条件
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ドラッカーの名著『経営者の条件』(原著1964年出版)の最新訳。英語の原題は「The Effective Exective」である。経営者の条件と訳されているが、『できるエグゼクティブ』の本である。ドラッカーは上司に命じられたこと以上の仕事をする人はすべてエグゼクティブであると言っている。狭義の経営者よりも読者層は広い。

名言、名文が満載の本だが、マイベストのセンテンスを並べてみる。

ひとつめはドラッカーといったら、やはり「真摯さ」である。この本にも出ていた。

「人間性と真摯さは、それ自体では何事もなしえない。しかしそれらがなければ、ほかのあらゆるものを破壊する。したがって、人間性と真摯さに関わる欠陥は、単に仕事上の能力や強みに対する制約であるにとどまらず、それ自体が人を失格にするという唯一の弱みである。」

仕事に全身全霊を傾けて、仲間と心から笑ったり泣いたりできる人というのが、経営者の基本条件なのだ。現実には多くの経営者がその基本条件を満たせていないことに問題があるということは、この本が書かれて半世紀近くたっても変わらない。

そして時間は普遍的な制約条件という考え方。

「成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。たとえ一日の四分の一であっても、まとまった時間であれば重要なことをするには十分である。逆にたとえ一日の四分の三であってもその多くがこま切れでは役に立たない。」

ドラッカーに言わせたら、ビジネス書にありがちな細切れ時間の有効活用なんてことを考えていてはダメなのである。いかにまとまった時間をつくるかこそ重要なのである。連続して3、4時間はぶちぬきで時間をとらないと、まともな知識労働なんてできないっていうことだ。多くの管理職が間違っている。そして優先順位より劣後順位の決定が重要と。

問題より機会を見よ、もなかなか忘れがちな警句だ。失点を防ぐだけでは勝てない。

「問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。」

議題の順番の変更で対応できるから、マネジメント会議ですぐにでも実践しやすいポイントだ。楽しそうなプランを考えることに夢中になって、問題の検討が時間切れになってしまうのではないかと懸念したりもするが、それは会議の仕切りの問題なのであって、本質は問題より機会を見よということの方なのだ。

そして上司の役割。会社に成果で貢献している人を大切にせよ。

「成果をあげるエグゼクティブは、部下が上司たる自分を喜ばせるためなどではなく、仕事をするために給料を払われていることを認識している。オペラの舞台監督は、プリマドンナが客を集めてくれるかぎり、彼女が何度かんしゃくを起こそうと問題ではないことを知っている。最高の舞台をつとめ上げるうえで必要なかんしゃくであるならば、それを我慢することも舞台監督の報酬のうちである。」

自分とうまくいっているか、ではなく、いかなる貢献ができるか、で部下を評価する。特に重要な分野における卓越性を評価する。マネージャーは、わがままなプリマドンナにブチ切れたらダメなのである。エグゼクティブに対して、人間的な度量の大きさを求めるのがドラッカーの経営哲学なのであると再認識。

ソーシャル・リーダーシップクラブ開設のご案内
http://www.ikls.org/archives/217

・てにをは辞典
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コラムやエッセイ、創作など、自己表現する文章を書く人を支援する本。「逆引き頭引き日本語辞典」の小内一氏編纂。

「空が晴れる」なら「空」と「晴れる」。

「を」「が」「に」「の」を介して結びつく言葉の辞書。

近現代の大衆小説・時代小説・純文学・評論など250名の作家の作品から、編者が20年かけて採集した語例が60万語。主に文庫になった本から選んでいる。

「言葉は単独でもつかわれますが、多くの場合、二つ以上の言葉が結びついて使われます。この結びついた形を、本書では、「結合語」と呼ぶことにします。国語辞書は言葉の意味と文法的な解説を主とするので、紙面の制約上、わずかしか結合語の例を載せられません。 本書には、言葉の意味と文法的な解説はありませんが、のべ六十万語の結合例を載せています。本書は、国語辞書を補完する一冊として使っていただくと、より力を発揮すると思います。」

実際、ちょっと開いただけで、インスピレーションが広がることがある。

たとえば「告げる」を引くと、

「つげる【告げる】▼愛を。秋の深さを。ありかを。ありのままを。意志を。暇を。裏切りを。噂を。大売出しを。おおよその見当を。おさらばを。思ったままを。おやすみを。開演を。開始を。外出を。額を。火災を。可能性を。勘定を。危機を。危急を。季節の到来を。吉兆を。決まりを。気持ちを。急死を。旧姓を。急変を。曲名を。苦しさを。苦労を。決意を。結果を。決別を。結末を。心持を。事柄を。事の次第を。言葉を。最後を。作戦を。さよならを。死を。事件を。時刻を。自殺を。事実を。事情を。失踪を。辞任を。終焉を。終局を。襲撃を。住所を。終了を。正午を。症状を。承諾を。承知した旨を。消滅を。職業を。職場名を。進捗状況を。姓名を。接近を。注文を。早春を。存在を。誕生を。地名を。注文を。電話番号を。到着を。逃亡を。到来を。永の別れを。名前を。妊娠を。発見を。発車を。春のおとずれを。番号を。番地を。病状を。病名を。不在を。無事帰還を。本当のことを。目的を。行く先を。夢を。要件を。用事を。容積を。容態を。来意を。来客を。来訪を。理由を。臨終を。別れを。臆した声で。あからさまに。あらわに。確実に。世界に。全員に。手短に。控えめに。ひそかに。墓前に。明白に。いちいち。おずおずと。きっぱりと。さらりと。粛然と。すらすらと。せわしなく。誰にともなく。たんたんと。力強く。はっきりと。ぼそりと。ぽつりと。運転手に行き先を。鶏鳴暁を。仕事が一段落を。鶏が時を。一日も早く。(饗宴が・結婚生活が)終わりを。(戦雲・風雲)急を。▲暁を~(鐘の音・鶏の声)」

告げるに接合するリスト、まるでひとつの詩みたいだ。

▲は結合語の前に、▼は後に来る例である。ぴったりの言葉や表現をさがす、似た言葉を探す、違和感を覚えたときに直す、など、言葉に詰まったら、ちょっと開いてみると、状況を打開できたりする。

・究極版 逆引き頭引き日本語辞典 名詞と動詞で引く17万文例
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/17.html

・なぜアヒル口に惹かれるのか
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田中美保、上戸彩、広末涼子、YUKI、酒井法子に共通するもの。それがアヒル口。

「アヒル口とは、その名のとおりアヒルのくちばしのような形をした口のこと。具体的には口角(唇の両端)がキュッと上がり、口先はやや突き出たような状態で、ちょうどアルファベットの「W」のようにめくれあがった形をしているのが特徴です。」

つまりドナルドダックのような唇のことである。

アヒル口には生まれつきの天然アヒルと、男に受けるから表情としてつくっている人工アヒルがいるそうであるが、近年、アヒル口に萌える男子が増えていて、女子もそれを意識しているため、アヒル口が街に増えているのだという。

タイトルをみた時は、それって本当にブームと言うほどなの?と疑問に思ったが、アヒル口の年表を見て、アヒル口芸能人の増加や、アヒル口写真集、アヒル口AVも出ていることを知り、やっぱりブームだと納得させられた。

認知科学者の著者は、人がアヒル口に萌えているとき、脳や心の中では何が起きているかを解き明かす。切り口がユニークな認知心理学の本として、大変楽しめる本だった。

アヒル口は脳が優先的に認知する笑顔の口の形であり守ってあげたい赤ちゃんの口の形だから

というのは読む前から、想像できたが、

日本人は遺伝子的に対人不安になりやすく物事に愛着を抱きやすいセロトニン。ポーターSS遺伝子をもっているから

というのは思いもよらない理由。心理学や脳科学の研究成果を示しながら、人間の顔認知のメカニズムを一般読者にわかりやすく解説する、良質のエデュテイメント。

・ツイッターで人気爆発! みんな大好き アヒル口
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・朝日新聞社 雑誌 Journalism 8号
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「特集は「記者会見をめぐる諸問題」。進む記者会見開放の動きと記者クラブ問題について検証する。長野県庁「脱・記者クラブ」の今、鈴木寛文科副大臣インタビュー「政府・民主党のメディア戦略」、江川紹子「検察オープン会見参加記」、津田大介「記者会見をツイッターでtsudaる」、外国人ジャーナリストから見た日本の記者会見など。」

朝日新聞の雑誌「Journalism」に寄稿しました。

私が寄稿した記事については下記URLで無料で公開されています。

・【ネット】ネットのクチコミ分析に見る 新しい報道の可能性
http://www.asahi.com/digital/mediareport/TKY201008060112.html
米ニールセンオンラインの昨年4月の調査によると、世界50カ国のネット利用者が最も信頼している情報源は「知人による推奨」と「ネット上の消費者の意見」であるという。前者は10人中9人、後者は10人中7人が信頼すると答えており、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアを上回った。同社はこの2~3年の利用者の発信情報が主流となる、いわゆるCGM革命により「消費者が、直接の知人やネット上の他人からのクチコミに頼る度合いが非常に強まった」と結論づけている。 ......


この月刊Journalismという雑誌は、寄稿がきっかけではじめて読んだのですが、電子メディアの未来を考える材料が満載で、マスコミ関係者でなくても、とても面白い内容でした。津田大介氏の「記者会見をツイッターでtsudaる」なんていう特集もあります。

冒頭の特集は「記者会見をめぐる諸問題」。左派とはいえ大新聞の代表格の朝日新聞ですから、マスコミ既得権として記者クラブ擁護論が多いのかと思っていましたが、記者クラブの開放論、無用論が大半で、ちょっと驚きました。じゃあ記者クラブって誰が必要としているのでしょうか。

・デザインのデザイン
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2004年にサントリー学芸賞を受賞した武蔵野美術大学 原研哉教授のデザイン論。

デザインとは何かという問いに対して、著者は単一の答えを出すのではなく、戦後の世界や日本のデザインの歴史を振り返って、産業革命からバウハウス運動を経てポストモダンまでのデザインのさまざまな考え方を示す。それは「不器用な機械生産に対するアンチテーゼ」であったり、生活という「生きた時間の堆積」が磨きあげるカタチであったり、独創的な省略であったり、情報の建築であったりする。

デザインを考える中で「欲望のエデュケーション」というキーワードがでてくる。これはデザインにおいて、悪化が良貨を駆逐する現象のことだ。発展途上国からデザイナーズブランドが生まれない理由でもあるなあ。

「センスの悪い国で精密なマーケティングをやればセンスの悪い商品がつくられ、その国ではよく売れる。センスのいい国でマーケティングを行えば、センスのいい商品がつくられ、その国ではよく売れる。商品の流通がグローバルにならなければこれで問題はないが、センスの悪い国にセンスのいい国の商品が入ってきた場合、センスの悪い国の人々は入ってきた商品に触発されて目覚め、よそから来た商品に欲望を抱くだろう。しかしこの逆はない。ここで言う「センスのよさ」とは、それを持たない商品と比較した場合に、一方が啓発性を持ち他を駆逐していく力のことである。」

米国アップルやグーグルが、モバイル端末や情報サービスのデザイン力で日本メーカーを押しのけて、世界市場を席巻しているのは、日米のデザイナーの能力差ではなくて、情報サービスに対する両国の消費者の情報リテラシーが違うということなのかもしれない。個人が情報を積極的に求めて自分なりに活用したいと思っている度合いが、米国の方が強い気がする。それがセンスの良さにつながるのではないだろうか。

デザインのもたらす「情報の美」へのアクセスルートとしては「分かりやすさ」「独創性」「笑い」の3つが挙げられている。笑いは精度の高い理解が成立していることを示すバロメーターだという。ニヤリとさせるデザインは、かなりの上級者によるデザインなのだな。

初夜

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・初夜
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喜劇のような悲劇、あるいは、悲劇のような喜劇。イアン。マーキュアン作。

「彼らは若く、教育もあったが、ふたりともこれについては、つまり新婚初夜については、なんの心得もなく、彼らが生きたこの時代には、セックスの悩みについて話し合うことなど不可能だった。いつの時代でも、それは簡単なことではないけれど、彼らはジョージアン様式のホテルの二階の小さな居間で、夕食のテーブルに着いたところだった。隣の部屋には、ひらいたドア越しに四柱式のベッドが見える。幅はやや狭めだが、ベッドカバーは純白で、しわひとつなくピンと張り、人の手で整えたとは思えないくらいだった。」

という出だしから始まる。

1962年、まだ保守の空気が濃厚だった英国で、ある夫婦の結婚初夜の事件について、ゆっくりと語られて、それだけで一冊が終わる。歴史学者志望の夫エドワードとバイオリニストの妻フローレンス。新潮クレストなので終始、上品で優美さは失わないのだけれど、あまりに深刻に童貞と処女の悩みが語られるものだから、吹き出しそうになる。

初体験であるがゆえの焦りや過剰反応のもたらす滑稽さ。それが二人の人生に致命的な結果をもたらしてしまう。若いときの深刻な決断って性に限らず、往々にして、はたから見たら滑稽なのだけれど、それが分かる頃にはもう若くない。青春のままならなさを描いた作品ともいえるわけですが。

純文学×恋愛×官能×喜劇×悲劇×歴史×... ユニークな作風が強く印象に残って、面白かった。ストレートじゃない独特な恋愛小説を読みたい人におすすめ。読みやすい。

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