2010年10月アーカイブ

・群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法
51P2BglI4unL_.jpg

動物の群れがみせる知的な振る舞いを研究することで、人間の集団行動の原理をも解明しようとする、群衆の叡智の研究書。

アリ フェロモンの痕跡で巣から食物までの最短経路を探す
ミツバチ 8の字ダンスで偵察結果を伝えあい最適条件の家を探す
シロアリ スティグマジーで高度に複雑な建築を実現する
鳥 適応的模倣で群れが瞬時に最適の形で飛行する
バッタ 大量発生すると破壊と死の暴走現象を引き起こす

動物たちの達成は見事で、まるで群れに頭脳があるかのように思える。だが個体の動きを見ていくと極めて単純なルールでしかない。動物たちの群れは個々のルールを知っていても全体を予想できないという点が共通している。この本はオバカな個体の集団がすごい成果を生みだす秘密を探る旅である。

たとえばシロアリは個体同士がコミュニケーションをするのではなく、造っている構造物を通じて互いの行動に影響を与えている。他のアリが土くれをつみあげているのを見ると周囲のアリもそれに倣う。ある高さにまで柱のように積まれると、近くにある柱とつなぐような動きに変わり、結果としてアーチ構造の建築が実現される。動物たちの行動パターンにはこうした間接的協働が多くみられる。

人間の組織でいえば、全体のプロセスがうまくできていれば、会議などしなくてもうまくいくということだろう。組織の生産性を考える時、我々は直接コミュニケーションだけでなく、他のメンバーのやっていることへの反応も見直すべきなのだろう。だらだら残業する人がいるとみんなそうなるというのはよくある会社のパターンだ。

動物の群れが群衆の叡智を発言する時の条件が整理されている。

1 ローカルな知識を重視すること(情報の多様性を維持する)
2 単純なルールを適用すること(複雑な計算の必要性をなくす)
3 メンバー間で相互作用を繰り返すこと(ささやかだが重要なシグナルを増幅し、意思決定を迅速化する)
4 定足数を設定する(意思決定の精度を高める)
5 個々のメンバーの行動に適度なでたらめさを残す(集団が常に型どおりに解決策を選ぶのを防ぐ)

俗に"頭脳集団"という言葉があるが、現実には全員が頭脳だと組織としてのアウトプットは期待されるほどのものにならないことが多いように思う。むしろ天才がいなくても、全体として天才が指揮しているかのような組織を設計することが重要なのだ。群れの科学はネットワークとも親和性が高い。これから面白くなりそうな分野である。気になる人は、まずこれを読んでおくといいのでは。

・iPadで教育が変わる
411svehsPFL__SL500_AA300_.jpg

中学受験進学塾の経営者でカリスマ講師の著者が、iPadを早速教育現場で実践してみましたというレポート。自分はITに詳しい人間ではないと最初に白状しているが、実践した経験を生徒の感想と合わせて、良い点も悪い点もオープンにしているところがよかった。仮説や予想ではなく迅速のフィードバック第一波なのだ。

実際にやってみた経験から、

・授業が紙の資料を使った時より早く終わってしまう
・画像や動画で子供たちの理解が進んだ
・子供たちが「紙に書かないとおぼえられない」という意見を出した
・小学校低学年には向かない
・見る、聴くに優れるiPad、書く、読むは課題
・重い紙の教科書を持ち歩かないで済む

などたくさんの事実や判断がでてくる。こどもたちの授業後のアンケート結果も公開されている。教員たちはデジタル教科書導入による負担の増加を不安に思っていたり、それらを使った理想的な授業を思い描けないでいることなどが明かされている。

本書でも紹介されているが、有識者が組織するデジタル教科書教材協議会では、次のような目標を掲げているそうだ。

デジタル教科書・教材の3つの目標と 10 の条件(試案)16
http://ditt.jp/about/aim

■デジタル教科書・教材で実現する3つの目標

全ての子どもに与えよう。
1 どこに住んでいても世界中の知識に触れる機会を。
2 創造力、表現力、コミュニケーション力を育む最高の環境を。
3 友人、先生、家族とつながる手段を。

■デジタル教科書・教材の機材が備えるべき 10 の条件

1 小学一年生が持ち運べるほど軽く、濡らしても、落としても壊れにくい。
2 タッチパネル。
3 8ポイントの文字がしっかり読めて、カラー動画と音楽が楽しめる。
4 無線でインターネットにアクセスできる。
5 学年別に全ての教科書が納まる。
6 作文、計算、お絵かき、動画制作、作曲・演奏ができる。
7 学校でも家庭でも使える。
8 学校でも家庭でも手に入れやすい価格。
9 電池が長持ちする。
10 セキュリティ・プライバシー面で安心して使える。

試案としてだいたいよいのではないかと思うが、本書の内容のように、今は実践とフィードバックで、方向性を探っていくことが大切なように思った。

デジタルハリウッドも参加する

電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会
http://blog.study.jp/digitalbook/

という団体もあって、実践とフィードバックで研究している。

・【純正品】Apple iPad Camera Connection Kit
31NgO2ZzhoL._SL500_AA300_.jpg

iPad用のアップル純正SDカードリーダーとUSBアダプター。2つで1セット。

サードパーティー製の廉価な製品もあるのだが、安定性を考えて純正を購入。

USBのカメラコネクタはデジタルカメラやiPhoneに接続して写真データをiPadへ転送することができる。SDカードリーダーは、残念ながらSDXCカード、Eyefiカードからは読み込むことができなかった。

DCIMフォルダーの中にある写真データのみを同期する。jpg、png、movなどに対応。

5129868073_3b2bc71a70.jpg

カメラを趣味にしている人にとっては便利。iPadをフォトストレージ化することができる。撮影した写真をその場でiPadの大画面で確認することができるのが素晴らしい。イベントで撮影した写真をネタにして懇親会で盛り上がるというコミュニケーションにも使いやすい。

小さくて2つもあるので紛失しやすい気がする。次期iPadでは内蔵してほしい。

・バイラル・ループ あっという間の急成長にはワケがある
5117tUqtv0L._AA300_.jpg

バイラルループとはインターネット上で情報がウィルスのように伝播すること。

Hotmail,Paypal,ebay,Hotornot,Facebook,Myspace,Flickr,Twitterなど、有名な海外のIT企業が、バイラルループを味方につけて急拡大してきた過程を、起業ドキュメンタリータッチで物語る。ITベンチャーの成功物語の最新版を読みたい人には特におすすめ。書いたのはファストカンパニー記者で著名なジャーナリスト アダム・ペネンバーグ。

バイラルビジネスの成功の条件として、ウェブベース、無料、統合化のためのツールを提供、コンセプトが単純、バイラル・ループの種を内包、成長が加速度的、バイラル係数が高い、成長率が予測可能、ネットワーク効果、相乗効果、他の追随を許さない、究極の飽和状態が挙げられている。

多くの起業家たちはバイラルループを意識して設計していた。一人のユーザーが何人のユーザーを呼び込むかを表すバイラル係数や他のバイラルとの相乗効果でサービスを成長させる(ペイパルとイーベイ、ユーチューブとマイスペースなど)方法を考えた。バイラルループは種を内包していなければ起きるものではないが、起こそうと思えば必ず起きるというものでもない。起業家たちは実は失敗例も多くて、何度目かの正直で成功したケースが多いのが興味深い。バイラルは一度や二度不発でも諦めるべきではないのだ。

この本を読んでいて気づいたのは、グローバルに展開するサービスの優位性である。たとえばフェイスブックやマイスペースは世界中に飛び火することで数億人ものユーザーを集めることができている。日本のミクシイやグリーは、アプリケーションとしてはよくできているのだろうが、日本人だけでループが飽和してしまう限界がある。ビジネスのダイナミズムが全然違っている。

この本、第一章は「元祖はタッパーウェアだった」で始まる。広告ではなくクチコミで爆発的に物を売るビジネスは昔からあったのだ。タッパーウェアはホームパーティで「買いたい空気」が伝染することでねずみ算的に購入者が増えていった。現代ではパーティーはウェブ上で開かれているわけだ。

しかし、まだウェブ上のバイラルループはタッパーウェアのように確固としたビジネスモデルをみつけていない。赤字が多い。次のイノベーションは、ネットワークビジネス的な展開かもしれないと思った。これから何億人、何十億人がクチコミビジネスに参加して、人類史上最大のビジネスコミュニティが誕生する可能性もあるのではないだろうか。

・楽しい昆虫料理
51cdrT6ySrL__.jpg

これは相当やばい...本気の本だったか。

「昆虫料理の世界へようこそ。本書を手に取られたあなたの好奇心に敬意を表します。さあごいっしょに、おいしく楽しい昆虫料理の扉を叩きましょう。 本書では昆虫食よりも昆虫料理という用語を多く使っています。昆虫食と聞くと佃煮を思い浮かべられる人が多いでしょう。でも昆虫にはもっとさまざまなおいしい食べ方があるはずです。肉料理や魚料理があるように、昆虫料理と言うジャンルがあってもいいのではないでしょうか。」

どういう料理かというのはアマゾンのなか身!検索があるので一目瞭然(これほどなか身検索!が効果的な本はあるまい)。バッタ、カマキリ、キリギリス、コオロギ、カイコ、アブラゼミ、タガメ、ナメクジ、イナゴ、スズメバチ、ゴキブリ、ジョロウグモ、ミールワーム、カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、ナナフシ、ムカデ....など多数。

え、カブトムシ?

食べるのです。どういう味か全種類の昆虫について記述されています。

「カブトムシは樹液をなめている成虫に限ります。幼虫は腐葉土を食べるため臭みが強く食材に向きません。さなぎの段階でもまだ腐葉土臭は強烈に残っています。成虫はアルミホイルに包んで焼くのが一番です。殻は硬いので割って中身を食べます。飛翔筋の発達した赤身の胸肉に旨味があります。」

ジョロウグモはお腹の糸の元のところがおいしいとか、ナナフシを揚げてチョコレートコーディングすると「小枝チョコ」そっくりだとか、虫にも旬があるとか、毒のあるのはこれだとか、とにかく本気の人が経験に基づいて語る昆虫料理のレシピ本、ノウハウ本なのです。

ファーブル昆虫館長の奥本大三郎氏との対談では、あまりに日常として昆虫料理が語られるために、だんだん普通のことかなと思い始めるのですが、やっぱりカラー写真を見てしまうと、私にはムリムリ、セミまでは食べたけどゴキブリやナメクジは絶対に嫌と現実に戻ってきます。

大量に本格的な昆虫料理のレシピが掲載されていますが、作る人は果たしてどれくらいいるものなのでしょうか。実際に食べないでも、非常に本気で丁寧に書かれているので、奇書珍書の逸品としてかなり楽しめます。

すごい虫131―大昆虫博公式ガイドブック
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/10/131.html

切れた鎖

| | トラックバック(0)

・切れた鎖
512BNjgeYgDL__SL500_AA300_.jpg

「不意の償い」は、妻と初エッチしている間に両親を火事で亡くし、セックスと死がわかちがたく結びついてしまった男の話。

「蛹」は知性を持ったカブト虫の蛹の話。なぜかなかなか地上に出られず悶々とする。川端康成文学賞受賞作品。

表題作「切れた鎖」は、隣にある大陸系の教会を憎悪しながら何十年も暮らす富裕な一族の話。三島由紀夫賞受賞作品。

断ち切れないものを背負いながら、ずっと憎悪して生きていくものたちの物語。

3作品とも妄想のイメージが膨らんでいっていつのまにか現実を離れていく文体が見事。
人間の内にこもった怨念をおもいっきり増幅してビジュアル化していて不気味。たいしてなにも起きないのだが、不吉で不穏な空気を描くのもうまい。ストーリー的にはホラー映画ではないが、日本的なホラー映画にできるのでは。

個人的に一番良かったのは「蛹」。井伏鱒二の「山椒魚」のようなひきこもり想像力の傑作。社会的なメッセージを読みとることもできそうだが、一回目はあまり深く考えずにどっぷり奇想の世界観に浸るのがよさそう。

・読まずに小説書けますか 作家になるための必読ガイド
51gvaggIe3L.jpg

面白い本は対話の中で記憶の古層から発掘されることって多い。「最近読んだ本で何が一番よかったですか?」なんて漠然と聞かれてもなかなか出てこないのだが、本好き同士であんなのもあるよ、こんなのもあるよとやると、芋づる式に引き出されるものだ。

書評家の岡野宏文氏と豊崎由美氏が小説家になるための必読書を教える対話式ブックナビ。特別ゲストに桜庭一樹氏。

「ファンタジー小説が書きたかったら、得意分野をひとつ持て!」
 →ハリポタのJKローリングに学ぶ
「巧みなプロットを立てたかったら、分析する目を持て!」
 →「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎に学ぶ
「コミック・ノベルが書きたいなら、自分は笑うな」
 →「太陽の塔」の森見登美彦に学ぶ
「うまい比喩を使いたかったら、言葉を知れ」
 →「博士の愛した数式」 小川洋子に学ぶ

など、各章では一つの小説のテクニックとお手本になる一人の作家を論じる、はずなのだが、どんどんキーワードが芋づる展開していって、多様な分野の面白そうな本がいっぱいあがってくる。

そもそも岡野氏と豊崎氏は書評家であって、小説家ではないわけだから(書いたことがあるかもしれないがメジャーとはいえないでしょう)、ここにある言葉通りにしても人気作家になれるわけではないと思う。だが、これらの本が人気作家になるために役立たないはずもないように思えて、作家志望の私はとりあえずまた10冊ほど買ってしまった。

・奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」
51OziN2oRXL__SL500_AA300_.jpg

サードマンとは極限状況下の遭難者の傍に現われ生きろと励ます謎の存在。生死のかかった登山、南極探検、北極探検、海底洞窟探検、漂流者、9.11テロ時の世界貿易センタービルなど、古今東西の奇跡の生還者たちの多くが、自分はサードマンに助けられたと証言している。彼らの証言は驚くほど似ている。危機に舞い降りるこの守護天使は何者なのか。

本書はオカルト本ではない。

正体不明のサードマンに若干のロマンは残すものの、基本的には脳のメカニズムに原因を求める。脳には人の気配を感じるスイッチがあり、それが押されると傍に誰かがいるかのように濃密に感じさせる機構があることがわかっている。

単調さ、孤独、睡眠不足、酸素不足など複数の要因が重なってこのスイッチがオンになるとサードマンは降臨する。この本にはサードマン体験の証言が多数収録されている。それはとても濃い気配の存在らしい。遭難者たちは長時間にわたってサードマンと苦難を共にする。コーヒーや食料をサードマンに分け与えようとした人がいっぱいいる。

「苦難のあいだにも最後には救われると信じる人の方が、救済者をよく体験する」そうだ。死にそうな時に救いの天使の幻覚を見ることで、生きる力を発揮できる人は、生き残りやすい。進化のプロセスで、ポジティブなサードマンを見る人たちが多く生き残ってきたということなのかもしれない。

瀕死の遭難者の前に現れる情け深い神のような存在。サードマンは昔から小説や映画でもしばしば描かれてきた。その正体がかなり暴かれる。前人未到の領域の科学的探究と、スリリングなサードマン体験談が面白い本だ。

・神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/08/post-258.html

・Cubeツールバー
http://www.cube-soft.jp/cubetoolbar/
cubePDFapp01.jpg

CubePDfは基本は何でもPDF化する仮想プリンタソフトだが、Cubeツールバーはいま見ているWebページをPDFに一発変換することができて便利なフリーソフト。先頭に前回出力したファイルの末尾や先頭に、追加で結合させることもできる。

iTunesやDropbox経由でiPhone、iPadに持っていくのに役立つ。

インストールすると、インターネットエクスプローラのツールバーにこんなボタンが追加される。クリックすると、ページのPDF化の設定ウィンドウが起動する。

cubepdfapp02.jpg

画像の解像度設定やPDFパスワード設定なども可能である。説明書PDFを見るとEvernoteとの連携もできそう。

・あっどくりっぷ
http://mt-soft.sakura.ne.jp/mt/archives/2010/10/post_53.html
addclipapp01.jpg

クリップボードの履歴を連結して保持し、必要なときに一覧を出力するユーティリティ。調べ物に便利。

たとえば、シャープは過去にどんな名前をブランド名に使ってきたか。同社のWebをみながら調べたいとする。

普通はテキストファイルを用意して、そこへブランドが見つかるたびに、Webからコピーアンドペーストで追加していく。これだとウィンドウの切り替えが面倒である。このソフトを使っていれば、なにも考えずにコピーしておくだけでよい。

シャープはスで終わるブランド名が多いと感じていたのだが、

ザウルス メビウス ガラパゴス アクオス パピルス テリオス コペルニクス

なんていうブランド名が見つかった。Ctrl+Vで一気に貼り付けることができる。

addclipapp02.jpg
またデータとデータの間に、区切り文字を加えることができる。初期設定では改行だが、カンマやタブを指定すると、エクセルなどでリストを加工しやすくなる。

・再生紙週刊誌4コマノート・ミニ (V)A5・88枚
4808090109_5061d062ce.jpg

先日、無印良品でみつけたユニークなノート。

週刊誌の大きさで、中身は4コマ漫画を描く仕様のノートだ。

私は漫画など描けないので何に使えるかよくわからなかったが、気に入って衝動買いした。しばらく使ってみると、発想ツールとしてなかなか上手に使えることがわかった。私の利用法は2つ。

4808714522_21ea4cb9e0.jpg

まず一つ目は発想展開ツールとして使う。

思いついたアイデアを1コマ目に書く。別のアイデアが思いついたら、2コマ目ではなくて、横の列の1コマ目に書く。ファーストアイデアを1コマ目にずらっと書いておくのである。そして、時間のあるときにアイデア一覧を眺めて、発展させられるものがあれば、2コマ目以降に書いていく。アイデアを膨らませるのにコマを役立てる。

4808719408_a56068a731.jpg

もうひとつの使い方は、パワーポイントのプレゼン資料の構想を練るのに使うというもの。コマをスライドに見立ててストーリーをつくる。おおざっぱな流れを考える時に、うまく使える。

・ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命
41NJTTrylfL__SL500_AA300_.jpg

梅田望夫氏とMIT教育イノベーション局シニアストラテジストの飯吉透氏によるウエブを使った開かれた教育=オープンエデュケーションの可能性に関する論考と対談。教育者が必読なのはもちろんだが、ITビジネスに関心のある人にもおすすめ。

梅田氏の本はよく読んできたし、進化論の信奉者なのだが、この本で遂に梅田3.0への進化を感じたのが次の一節である。米国で起きたことが日本に時間遅れで波及するという原則について語った部分。

ちょっと長く引用すると、

「しかし最近になって思うのは、「経済のゲーム」で牽引される娯楽(エンタテイメント)、メディア、ビジネス、コミュニケーション、生活の利便性向上(ショッピングなど)といった分野おおむねそうだと考えてよいのですが、どうも「知と情報のゲーム」については、これまで抱いていたアメリカ発「時間遅れ」普及仮説が働きにくい、ということなのです。

そしてそれは、「知と情報のゲーム」のけん引力となっている信念が、欧米の「表現の自由」「学問の自由」「教育を受ける権利」といった人権思想や民主主義思想、特にアメリカ建国以来の思想を強く踏まえてのものだからです。普遍を身にまとってはいても、この信念は欧米近代以来のイデオロギーそのものと言えます。ですから、「知と情報のゲーム」については、「アメリカで起きることは「時間遅れ」で他の国々でも起こるだろう」という仮説から離れなければならないと、いまは考えるようになりました。」

梅田氏は、かつて「ウェブ進化論」で自らが予言したような2.0化が日本で起きないことに「日本のウェブは残念」といって、日本のネットコミュニティで顰蹙を買ってしまった事件があった。その残念だと嘆いたのが、まさに例外の分野だったのだと思う。

オープンコースウェアの実態、教育向けのマネジメントシステム(しかもオープンソース)、オンラインの高等教育機関、メタユニバーシティとクラウドカレッジ構想、iPadの活用状況、など、多くが初耳の米国の教育の最新動向がびっしり詰まっていた。

オープンエデュケーションとは、オープンテクノロジー、オープンコンテンツ、オープンナレッジの3つの要素からなる。ウェブで教育資源を誰もが使えるようにすることで、いま起きつつある変革について書かれている。

世界の一流大学と同じシステムやコンテンツ、ノウハウが誰でも自由に使えるというのは、凄いチャンスだと思った。つまり誰でもウェブ上で大学のようなものを作れるということではないか(入学者がいるかどうかはともかく)。メーリングリストやSNSのグループを作る感覚で、個人が大学をボコボコつくりだしたら、ブログと一緒で珠玉混交だろうが、中には凄いのも現れるのではないか。

たとえばこの著者の二人による梅田・飯吉教育大学とかあったら入学してみたいなあ。

・ご当地「駅そば」劇場―48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語
41hQgFnEoVL__SL500_AA300_.jpg

全国各地の駅のそば屋(立ち食いが多い)のうち、地域の特色を出している48店を写真入りで紹介する新書。著者は全国1500店を巡っている駅そば研究の第一人者。

駅そばって私も好きなんです。お腹がすいているときに、濃いそばのにおいがするとたまりませんよね。ちゃんとした時間にちゃんとしたご飯を食べなきゃといけないと頭では思っていても、ついつい欲望に負けて、おやつや夜食に一杯食べてしまう。週に1,2回ですが年間にしたら50回とか100回になる。結構利用しているなあ、私。

駅そばって稀に大当たりの店があって、コシのある十割そばや、からっと揚げたての天ぷら、煮詰まっていないうまい出汁が出てくることがある。立ち食いなのに、町のそば屋よりうまかったりする。同じチェーンでも大きなばらつきがあったりしますね。私の経験では駅周辺そばであることが多いですが、小諸そばのほんの一部に大当たりがある。

で、この本の著者はそういう普通の駅そばの名店発掘は前の本で終えていて、今回は御当地そばにこだわっています。広島のかきそば、静岡のはんぺんそば、福岡のふくそば(フグの天ぷら入り!)、小田原の梅そば、ほか。その地域でしか食べられない御当地そばの名作をうまそうに紹介しています。ページ48種類。ページをめくるたびに「え、こんなのもあるの?」と駅そばの多様性に驚かされます。

「天ぷらそば」は地域や店によってのってくる具が違うとか、濃い口醤油のカツオ出汁と薄口しょうゆの昆布だしは、関ヶ原に境界線があるだとか、東の白ねぎと西の青ねぎはそれとは境界がずれているとか、実地検証で結論しています。

お腹がすいているときに読むと大変うまそうですが、実際にはひとりで地方へ出張に行った時って、なかなか駅そばには入りません。せっかくだから御当地名物をと思って、普通のお店に入りがちです。まさか著者みたいに駅そば目的で旅行するということはない。著者のレポートは、自分ではなかなか味わえない味覚世界の広がりを知ることができて貴重でした。

このブログ始まって以来の交通新聞社新書の本ですが、このシリーズは鉄道系のマニアックな嗜好の本ばかりで面白いです。他のも読んでみよう。

・活字たんけん隊――めざせ、面白本の大海
41Te1CUZQnL__SL500_AA300_.jpg

本の雑誌編集長 椎名誠による読書案内本。

「たくさんの本を読んできた。作家の仕事をする用意なったのは、その読書の蓄積、それに感化されたやみくもな好奇に満ちたドタバタ的行動力ではないか、と自分では考えている。」

最初に書名を挙げてその本について批評する普通の書評とはスタイルが違う。日常の発見や旅行でのドタバタ体験についての面白いエッセイの中に、たくさんの本の紹介が散りばめられている。数ページの書評が何十本も続く書評本は頭の切り替えが必要で、読む側がつかれてしまうものだが、ベースがエッセイの名手椎名誠の文章だとどんどん読めてしまう。

実は欧米にはスリッパがないのではないかという発見のエッセイ「大日本スリッパ問題」では、スリッパをめぐって『はきもの世界史』、『おまるから始まる道具学』『春の数え方』『スリッパの法則 プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』などの本を、考察の流れの中で自然に紹介している。全体的に文化史絡みの本が多いが、スリッパに履き替える会社に投資しちゃだめだという本はビジネス書である。椎名誠の読書は実に幅広い。

しかし、これだけ本を知っていても知識をひけらかす厭らしさがまったくない。次々に関連本を挙げて見せるが、あ、今の面白かった?じゃあこんなネタもあるよ、という風に読者を楽しませる精神で書かれているから、楽しく読めるのだ。こういうホスピタリティの精神を持った書評家ってなかなかいない。

この本で紹介されていた本をさっそく7冊ほど購入した。椎名誠は岩波新書から読書案内本シリーズを、これを含めて4冊出ている。まだまだ買わされてしまいそうだ。

・ねこのオーランドー農場をかう
51YZDHE34ML__SL500_AA300_.jpg

大人も楽しめる絵本、というか、大人でないとよさがわからないのじゃないだろうか。とてもサイズが大きい超大型本。イギリスの絵本作家キャスリーン・ヘイルが1942年に描いた。農場の経営者になった猫とそこに住む動物たちの物語。

ねこのオーランドー一家は、ピクニックの途中で見つけた荒れた農場を買収して自分たちで再建を図ることに決める。最初の仕事は家に入りこんだ動物たちを外へ追い出すこと。客間のソファーには豚がのソフィーねているし、牛はかべに顔を突っ込んでいるし、メンドリは台所のお皿の上ですわっている。馬のバルカンはわらの屋根をむちゃむしゃ食べている。無理に追い出そうとしても難しそう。

そこでオーランドーたちは、みえっぱりな馬のひげをとかし蹄をみがいてやる。するといいところをみせたくなって外へでかけていく。きれい好きの豚には豚小屋をおおそうじをしてやると喜んで小屋へもどっていく。鳥小屋にラジオをおいて音楽番組を鳴らすと、メンドリたちはたまごをうみはじめる。

みんなが働くために気持ちの良い環境をつくる。ひとりひとりの性格や長所を考えて、それぞれのモチベーションを引き出すのが、マネージャーのオーランドーの仕事なのだ。多様な動物たちは、種が違うわけだから、どうしたって勝手ばらばらに行動しがちだ。どうにかこうにか調整して、最大の生産をどうやって達成するかが経営者の腕の見せ所。

なるほど1942年の作品かと思うのは「農場を買う」というタイトルからもわかるように、実にわかりやすい資本主義の構図があること。ご主人(正体不明)から資金調達をして農場を買収したねこのオーランドー一家は資本家で、買収された農場に住みついていた動物たちは労働者である。そして、はたらくみんなを幸せにしながら、最大利益を達成する有能な経営者の仕事がテーマなのだ。

とはいっても、そんな難しいことは一切言葉では書かれていない。最初から最後までオーランドーと動物のドタバタ喜劇だ。子供に経営の醍醐味を、経営用語を一切使わずに、興味を持たせることができる内容。会社のマネージャー研修で題材にしてもいいかもしれない。

辺境遊記

| | トラックバック(0)

・辺境遊記
51fbqTRw0oL__SL500_AA300_.jpg

バックパッカーとして気ままに旅するレイドバック感覚にどっぷり浸れる紀行文+肖像画+写真集。旅行先は世界と日本の辺境。キューバ、リオデジャネイロ、小笠原諸島、ツバル、カトマンズ、サハリン、大東諸島、ダラムサラ。

フリーライターとフリー絵描きがコンビを組んだ。ライターは現地の雰囲気と人々との会話を中心に旅の日々を書き、絵描きはボールペンで現地の人たちの肖像を描く。正しい事実を伝えようと言うのではなくて、ありのままを伝えようとする姿勢がいい。辺境からの世界認識は中央のそれとは違っている。

たとえばツバルの少年は自分たちの島が沈んでいるとは思っていない。昔からあんなかんじだという。もし沈んじゃったらどうするのか?と問えば、女の子が綺麗なニュージーランドに移住したいという。神に祈っているから大丈夫だと思うという大人もいる。実はツバルではゴミの不法投棄の方が深刻そうだなんていうことも知る。辺境で生まれて、生きて、死んでいく。画一的なグローバル志向の世界観と違って、ローカルな世界観は多様だ。

この本はビジュアルページが多いが、特にカラーボールペンで描いた肖像画が素晴らしい。人々の表情を見ているだけで人柄や生活ぶりが伝わってくる気がする。絵を描くのに40分から1時間半かかるそうだ。モデルになってもらうことを説得しなければならないし、柔らかくいい表情になってもらうためには、距離を詰める対話が必要だ。肖像画を描くという行為があったからこそ、現地の人たちの飾らない声がとれたのだろうと思う。著者の二人にヘンに問題意識がない、でも堕落しているわけでもない、という姿勢もよかった。

忙しくてなかなか旅行に行けないビジネスマンにおすすめ。私は毎晩寝る前に1章ずつ読んで、よい気分転換になりました。

・ブラウン シェーバー シリーズ7 720s-3
41RpI1TJ2rL__SL500_AA300_.jpg

私は髭が濃い方ではないのでシェーバーにはまったくこだわってこなかった。先日、5年以上使っていたシェーバーが壊れて、はじめてそのメーカーがセイコーであることを認識して驚いた。セイコーって時計メーカーじゃないか、髭そりなんて作ってたんだ、と。

たとえばカメラやPCだったら私はマニアックに製品を比較して最高の一台を選ぶ。メーカーにもこだわる。でも炊飯器とか掃除機は正直興味がまったくないので、店頭で適当に値段とデザインで選んでしまう。これまでシェーバーはその程度の関心レベルであり、メーカーがどこでもよかったのだ。

今回の買い替えは敢えてこだわってみることにした。全メーカーのパンフレットを集めて意識的に検討してみた。ブラウンのシリーズ7、フィリップスのセンソタッチ3D、パナソニックのラムダッシュ、日立のロータリーが主要メーカーと最高級製品のブランド名であるらしい。(セイコーはマイナーでパンフレットさえ入手できず...)。

当たり前だがいかにも男性向け商品なんだなと思ったのは、すべてのメーカーのパンフレットが先端的な技術と多機能を前面に出していたことだ。このシェーバーで、こんな美男子になれるとか、こんなライフスタイルがつくれるとかは決して言わない。世界最強の音波振動、899パターンの網目をもつディープキャッチ網刃、3D首振りヘッド、音波カスタムボタン、などの技術優位性と原理説明で、ひたすらハイテクぶりを強調している。

技術比較は好きなので結局、2週間もかかってしまった。ブラウンとフィリップスが脳内の決勝戦に残った。王道のブラウンと回転式のフィリップス。ネットでクチコミを調べてみると、どうやらフィリップス回転式の使い心地は意見が分かれることがわかった。熱心な愛好者がたくさんいる一方で、自分には合わなかったという人もいるのだ。髭や肌との相性があるようだ。でもあのユニークな外観は使ってみたいなと思って迷った。

で、結局フィリップスではなくてブラウンを選ぶ決め手となったのは、パンフレットにあったこの図であった。

B002QHRSIM_03.jpg

髭が濃い・薄い、肌が強い・弱いの2軸でユーザーを位置付けた。そして、この製品は「独自のコンピューター制御技術が可能にした「音波カスタムボタン」によって、シェーバーヘッドの振動幅を的確にコントロール。人それぞれに異なる肌質や、ヒゲの濃さに合わせた最適な深剃りを実現する」と説明した。私は自分の髭が濃い方ではないことは確かだが、肌が強いか弱いかよくわからなかった。コンピュータ制御で全部対応できるならばこれがいいじゃないか、と。

1週間ほど使ってみたが、前の機種とは使い心地が比べ物にならない。軽く肌にあてただけで髭がなくなっていく。髭を巻き込んで肌が荒れることもない。髭そり時間が半分以下になった。もっと早く買いかえればよかったなと後悔。

シェーバーは製品の特性上、買う前に実際に試すことが難しい。たぶん各メーカーの高級品はどれも使い心地はいいのだろうけれど、購入にはパンフレットやクチコミ情報に大きく左右される製品だ。今回のパンフレットの比較は、ビジネスのプレゼン資料の作り方の勉強になった。

・すごい虫131―大昆虫博公式ガイドブック
51K2BeN2BMhdL__SL500_AA300_.jpg

虫が嫌いな人は無視してください。なんちゃって。(本日誕生日で自他ともに認めるオヤジ年齢になりました。)

9月5日まで江戸東京博物館で開催されていた大昆虫博の公式ガイドブック。生きた虫は嫌いだが、標本を眺めるのは好きな私はずっと気になっていたがとうとう行けなかったので、この本で我慢することにしたわけです。

でも、この本、本物の標本展示より凄い(エグい)かも。大型本なわけですが、虫をカラー写真で実物の何十倍にも拡大して掲載しています。虫の複眼とか綿のような毛とかが大写しにされて、実物大以上に不気味なことこの上ありません。あきらかに自分とは異質な生き物の質感。私は好きですが、嫌いな人は鳥肌が立つでしょう。

全生物種の6割を占める昆虫は、数の上では地球の生物の主役。100万種もいると、とてつもなくヘンなのがいっぱいいて感動します。拡大しておぞましいのはやはりゾウムシでしょうか。体内で化学反応を起こして100度の高熱臭気ガスを発するミイデラゴミムシとか、ありえない真っ青のルリボシカミキリとか、ペットボトルサイズになるサカダチコノハナナフシとかも、ブルっときました。

養老孟司、奥本大三郎、池田清彦など虫マニアのお宅訪問。養老先生はおそらくバカの壁の印税で虫趣味に浸るための別荘(バカの壁ハウス)を建てているんですね。この先生方は皆、家の冷凍庫に虫を入れていて時間が空くと標本にしているようです。

すごい虫131を選んだこのカラーのガイドブックは、展覧会の趣旨である生物多様性を、虫だけではありますが嫌と言うほど学べる内容になっています。虫の嫌いな人は間違って開くと危険です。

羆嵐

| | トラックバック(0)

・羆嵐
51trjTOFCCL__SL500_AA300_.jpg

吉村昭作、新潮文庫。新刊でもなんでもないが、店頭で表紙買いした。大当たり。

黒地に白で浮かび上がる人食い羆(ヒグマ)の顔。どう見ても凶暴極悪系である。舞台は大正時代の北海道の開拓地。酷寒の暗闇の中で、こんな凶暴な羆に自宅に押し入られ、家族が骨をかじられる音を聞きながら、なすすべもなく絶望に震えるしかない村人たちの恐怖。史上最悪と言われた羆の襲撃事件をベースにしたドキュメンタリである。

冬眠の穴をみつけられなかった羆は村に降りてきて容赦なく村人に襲いかかる。一度女体の味を覚えた羆は女ばかりを食い散らす。原形をとどめない遺体に村人たちは震え上がる。武器もなく非力な村人は追い払うことさえできない。次々に犠牲者が増えていく。圧倒的な力を前にしたときの恐怖と無力感を、これでもかとばかりに味あわされる小説だ。

やがて到着する警察や隣村からの応援も所詮は素人集団であり、圧倒的な力をもつ羆の前には役に立たずに烏合の衆ぶりを露呈する。組織の無能という点では新田次郎の「八甲田山死の彷徨」と似た学びがある本だ。リーダーシップの失敗が描かれる。

ああ、どうなちゃうんだこりゃという中盤までから、後半は一転してドラマチックな展開で読ませる。救世主の登場。本当にこんな人がいたのですかね。いやいたのでしょうね。実はこれはハードボイルド小説として読んでもいいのかもしれない。まさに事実は小説よりも奇なり。

抜群に面白い中編小説。

・高熱隧道
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/12/post-678.html
吉村昭のドキュメンタリと言えばこれもすごい。

・デンデラ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/10/post-1095.html
熊の襲撃の現代の傑作と言えばこれ。

『ザ・本とインターネット』ソーシャル読書セミナー@ドコモスマートフォンラウンジ 10月19日(火)19時~

docomosmartphonelounge_feature_01.jpg

有楽町にあるドコモスマートフォンラウンジで、毎月一回トークイベントをやることになりました。会場では話題のGALAXY S/GALAXY Tab 先行展示も開始されています。スマートフォンの未来を体験しがてら、私のセッションものぞいてください。もちろん無料です。よろしくお願いします。

■日時
 10月19日(火) 19:00-19:45

■場所
 有楽町にあるドコモスマートフォンラウンジ内イベント/セミナースペース
 http://www.dcm-spl.com/enjoy/index.html
Webから参加の予約することができます。実は当日ふらっと参加も可能ですが、予約していただけると大変うれしいです。モチベーションになります。

■イベント概要

『ザ・本とインターネット』 ソーシャル読書セミナー 第1回
(Passion For The Future オフライン)

本とインターネットとどうつきあうか。それで人生が変わります。

IT起業家で書評ブロガーの橋本大也氏が、"今月の面白い本ベスト10"や、電子書籍やWebの最新事情を語ります。年間500冊超の読書生活で発掘してきた名著・奇書の書評のライブ・トーク。ひとりで本屋に行くより、気になる本がきっと見つかるセッションです。さらに未来志向で、パソコンやケータイ、タッチ端末など先端テクノロジーがもたらす読書スタイルや出版文化の変容も考えてみようと思います。

構成:

1 自己紹介とごあいさつ(5分)
2 今月読んだおすすめ本 5冊 (15分)
3 今月のテーマ本 5冊 (15分)
4 デジタル読書生活向上委員会 (15分)

講師紹介

橋本 大也 データセクション株式会社 取締役会長

2000年、大学在学中にインターネットの可能性に目覚め、株式会社データセクションを設立。現在、ITコンサルタント・起業家として数社のITベンチャー役員を兼任すると共に、大学等で教鞭をふるっている。主な著書は「情報力」「情報考学―WEB時代の羅針盤213冊」「新・データベースメディア戦略」「アクセスを増やすホームページ革命術」「ブックビジネス2.0」ほか多数。

株式会社早稲田情報技術研究所 社外取締役
株式会社日本技芸 社外取締役
株式会社メタキャスト取締役
デジタルハリウッド大学 教授
多摩大学大学院経営情報学研究科 客員教授


代表を務めている団体オーバルリンクでこんなセミナーを企画しました。登壇します。

『ブックビジネス2.0』セミナー 第一回
 《本、アーキテクチャ、生態系 〜 電子書籍語りバブルを越えて》

・ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系
51ODM4EbntL__SL500_AA300_.jpg

"電子書籍語りバブル"とも言える状況となった2010年にあって、『ブックビジネス2.0 ウェブ時代の新しい本の生態系』は、類書とは一線を画した内容で、業界関係者の注目を集めています。

 本セミナーでは、電子書籍版の開発も進んでいる『ブックビジネス2.0』の執筆者陣が、毎回、ゲストをお招きして、この先にある<本>のかたち巡り、縦横に論じていただきます。

 第一回は、<本>とアーキテクチャをテーマに、著者の橋本大也氏と岡本真氏が、ゲストに『アーキテクチャの生態系』で知られる社会学者・批評家の濱野智史氏と、空間ディレクターの李 明喜氏をそれぞれお招きします。

 出版、図書館、IT業界に限らず、このテーマに関心をお持ちの多くの方々と、会場でお会いできることを楽しみにしています。

登壇者:

濱野智史氏(『アーキテクチャの生態系』著者/株式会社日本技芸リサーチャー)
橋本大也氏(オーバルリンク代表/デジタルハリウッド大学教授)
李 明喜氏(空間ディレクター/デザインチームmattキャプテン)
岡本 真氏(プロデューサー/アカデミックリソースガイド代表取締役)

ナビゲーター:
仲俣暁生(フリー編集者/『マガジン航』編集人)
木下 誠(プログラマー/HMDT株式会社代表取締役)
宮田和樹(『ブックビジネス2.0』企画担当/実業之日本社)

【概要】

■ 日時:2010年10月25日(月)19:45会場(20:00開演)
■ 場所:デジタルハリウッド大学 メインキャンパス(秋葉原ダイビル7F)
千代田区外神田1−18−13 秋葉原ダイビル7階
■ 定員:100名
■ 参加費:当日3,000円、デジハリの学生は無料
■ 参加方法:下記お申し込みフォームより登録してください。どなたでも参加できます。

http://bit.ly/bkb20event1025

※ 開発中の電子書籍版『ブックビジネス2.0』での"前売チケット"の販売実験を計画しています。最新情報は担当者のTwitter及び、このページでお伝えします。
■ 主催:先端研究集団オーバルリンク&デジタルハリウッド大学・大学院&『ブックビジネス2.0』プロジェクト
■ 企画:橋本大也、仲俣暁生、木下 誠、宮田和樹

【タイムテーブル】
20:00 開会
20:00〜20:10 イントロダクション
20:10〜20:55 トークセッション第1部:濱野智史 X 橋本大也
20:55〜21:40 トークセッション第2部:岡本 真 X 李 明喜
21:40〜22:00 質疑応答

【参加者のプロフィール】

濱野智史 @hamano_satoshi
http://d.hatena.ne.jp/shamano/
1980年生まれ。株式会社日本技芸リサーチャー。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て現職。専門は情報社会論。特にウェブサービスのアーキテクチャ分析を中心的に手がける。 著書に『アーキテクチャの生態系』(NTT出版)、主な論文に「ニコニコ動画の生成力」(『思想地図vol.2』NHK出版)など。

李 明喜 @mattoct_lee
http://www.mattoct.jp/blog/
1966年生まれ。空間デザイナー、ディレクター。 「コミュニケーションの可能性/現実の拡張」をテーマに空間デザインに取り組む。インテリア、建築、情報デザインからコンテンツディレクションまで体験としての空間を創造する。主なプロジェクトに「Sign 外苑前、代官山、霞ヶ関」、「BIT THINGS」、「GRANBELL HOTEL SHIBUYA」、「d-labo (スルガ銀行ミッドタウン支店)」など。2009年より東京大学知の構造化センターによるデザインの構造化プロジェクト「pingpong 」のディレクターを務める。合同会社コンテクチュアズ(contectures, LLC.)メンバー。

橋本大也 @daiya
http://www.ringolab.com/note/daiya/
オーバルリンク代表。データセクション株式会社取締役会長。起業家、ブロガー。デジタルハリウッド大学教授。多摩大学大学院客員教授、早稲田情報技術研究所取締役などをつとめる。著書に「情報力」(翔泳社)「Web時代の羅針盤213冊」(主婦と生活社)「アクセスを増やすホームページ革命術」(毎日コミュニケーションズ)などがある。

岡本 真 @arg
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/
プロデューサー。アカデミックリソース株式会社代表取締役。インターネットの学術利用をテーマにしたメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)を刊行。著書に『これからホームページをつくる研究者のために』等。京都大学情報学研究科非常勤研究員、国立情報学研究所産学連携研究員などを兼任。

仲俣暁生 @solar1964
http://d.hatena.ne.jp/solar/
フリー編集者。『ワイアード日本版』、『季刊・本とコンピュータ』の編集部を経て、現在はボイジャーが発行する本と出版の未来を考えるウェブマガジン『マガジン航』編集人。著書に『〈ことば〉の仕事』、編著『いまの生活「電子社会誕生」』など。日本エディタースクール、武蔵野美術大学、横浜国立大学で非常勤講師を務める。

木下 誠 @mkino
http://hmdt.jp/
HMDT株式会社代表取締役。学生時代にMacintoshに出会い、Webサイト「HMDT」を開設。Mac上でのプログラミングの話題、Cocoaの使い方の紹介などを行う。
2007年にHMDT株式会社を設立。Webブラウザ「シイラ」の開発 、MYCOMジャーナルでの「ダイナミックObjective-C」の連載、アップル社での定期的な「Cocoaセミナー」の講師などを務める。著書に、「たのしいCocoaプログラミング」、「Happy Macintosh Developing Time 3rd Edition」、「Programming Dashboard」など。

宮田和樹 @kazuqi
http://bkb20.com
株式会社実業之日本社マーケティング部所属。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。ヤフー株式会社、マイクロソフト株式会社にて、ポータルサイトのトップページやパーソナライズサービスの企画を担当。2009年8月から、現職。主な担当に、電子書籍版『志高く 孫正義正伝 完全版』の企画、『仕事ができる人はなぜ「あそび」を大事にするのか』のマーケティング、『ブックビジネス2.0 ウェブ時代の新しい本の生態系』企画など。

【ご案内】
公式ハッシュタグは #ovallink です。
公式Twitterアカウント @ovallink より最新情報を提供する予定です。
会場からの実況中継(tsudaり)をしていただける方を募集しております。備考欄にてお知らせください。

---------------------
本イベントはデジタルハリウッド大学・大学院のDHGSアカデミー教育活動の一環として開催しています。

・嘘つき王国の豚姫
51haoKdoqlL__SL500_AA300_.jpg

岩井志摩子が現代を舞台に凄いのを書いている。また負の情念に圧倒された。

「「このままじゃあ、殺される」

いつからか私はそんな強迫観念に囚われ、囚われているのに追われ続け、追われ続けているのに逃げないでいた。逃げられないのではなく、逃げない。もはや強迫観念は私にとって、安らげる揺りかごや寝床ですらあった。強迫観念、なんて言葉も概念も知らない頃から。

私がいじめられっ子になったのは、幼稚園児の頃。つまり、物心ついた頃、大人になって過去を振り返ったとき、一番最初の記憶や最も古い思い出がある頃。私にとっては、いじめられていた記憶が一番最初の記憶。いじめられっ子だった自分が、最も古い思い出。自分の原点は、いじめられっ子。世界の、被害者。」

救いようのない転落人生の物語。弱い自分に対して嘘を重ねてやり過ごす主人公。残虐ないじめや虐待を経験してねじまがった彼女はぶくぶくに太って、容姿も醜い豚女になる。実家2階の部屋=王国に閉じこもり、自分は本当は可愛くてデキル子、自分は悪くない、仕方がないと言って、言い訳しながら生きていく。そしてレイプ、家出、売春、悲惨な末路...。こんな風にだけはなりたくないという最悪の女の半生を描いている。

転落人生シミュレーターみたいな小説である。途中ちょっと浮き上がることもあるのだけれど、それはさらなる深みへの転落の始まりだったりして、これでもかとばかりに苛められる豚姫のりか。でも見栄っ張りで性格が悪いので誰にも同情もされない。だから一層、溜め込んだルサンチマンが歪んでいく。

誰しもどこかに「本当の自分はもっとできる人間、自分は悪くない」という豚姫的根性は持っているわけで、ありえたかもしれない自分の転落した姿を、怖いものみたさで読む。止められない止まらない。そんな人間性ホラーの悪趣味小説として傑作である。

・魔羅節
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/10/post-1082.html

・ぼっけえ、きょうてえ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1066.html

・瞽女の啼く家
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1061.html

・べっぴんじごく
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-843.html

・グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命
51-ExsKmBML.jpg

著者 藤井 清孝氏は、マッキンゼー出身でハーバードMBAを取得し、ケイデンス・デザイン・システムズ日本法人、SAPジャパン、ルイ・ヴィトン・ジャパンなど外資系企業の代表を歴任、現在は電気自動車の充電インフラ企業ベタープレイス・ジャパンの代表をつとめる人物。

「世界をみてきたからこそわかる、日本の本来的な強さ」をベースに日本の産業に必要なイノベーションを3つ(ビジネスモデル、ガバナンス、リーダーシップ)語る。

「近年、ものづくりのパラダイムが世界レベルで大転換してきている。これはデジタル化がビジネスのあらゆる側面に深く浸透してきていることに起因する。従来のハードウェア生産局面での付加価値が加速的に減少し、ソフトウェア、標準化、ユーザー・インタフェースなどを制した企業に富が集中し始めているのである。このような環境下では、個々の要素技術に強い日本企業が技術面を強調し過ぎることにより、一番苦しい技術開発部分を負担させられながら、その果実をアメリカやアジアに取られてしまう構図が加速する。」

DRAMメモリー、液晶パネル、DVDプレイヤー、太陽光電池、カーナビなど急速拡大した市場の日本企業のシェア推移を示したグラフが衝撃的だ。どの製品も日本が主導して開発して当初は高いシェアを誇っていたのに、20年間で急速に海外勢に「果実」を奪われている。

垂直統合型日本企業のお家芸「アナログ擦り合わせ」力だけではもはや生き残りは不可能なのだ。モジュール型製品の強みや国際分業による競争力など、グローバルレベルでの競争ルールにおける知恵が必要ということだと思う。

著者は、プロダクト・イノベーションからビジネスモデル・イノベーションへ向かうための必要な力を挙げている。

1 感動する「ユーザーエクスペリエンス」をつくる力
2 「オープン化」と「ブラックボックス化」のメリハリをつける力
3 指導権を取れるアライアンスを構築する力
4 もうかる仕組みを事前に設計する力
5 顧客からの信頼をブランド力に昇華する力
6 個別要素の強みをプラットフォームに構築する力
7 優秀な人材が馳せ参じる組織力

それぞれの項目で、自社の「ブラックボックス」でオープン環境を支配する、顧客満足ではなく顧客感動の追求する、ユーザーエクスペリエンスをブランド化する、サービスを製品化するなど、「日本はガラパゴス」と開き直る前に、まず把握しておくべき世界のルールと攻略法が示されている。

「7 優秀な人材が馳せ参じる組織力」では、野心エネルギーが活力の源泉となるという、世界では当たり前なのに、日本では、なかなか当たり前にならない話が書かれている。
「日本企業は終身雇用で優秀な人材を大量に採用し、育成してきた。結果として、事業を多角化させ、その担い手として人材も送り込む仕組みをつくり上げさせた。 だが、もっと大きな視点で見てみれば、これは大企業がさまざまな小さなビジネスまでも取り込んでしまっているということでもある。結果として、若者が起業しようとしても、どこかの大企業の子会社がもうやってしまっている、などというケースが極めて多い。大企業のコアビジネスから離れた事業への多角化は、新規参入者が起業するチャンスの芽を摘んでしまっており、結果的に産業全体の活性化を妨げているのである。 人材面でも、優秀な人材が大企業に抱え込まれてしまっている。本社の人材が関係会社へ「出向」という日本独自のシステムで、退路を断つことなくサラリーマンとして経営陣に入り、「疑似起業」をしている。このように、商機と人材の両方において、アントレプレナーがダイナミックに起業するという流れを弱めてしまっているのだ。」

日本でも、自営ベンチャー、オタクベンチャーの時代を脱して、いわゆるエリート層が自らダイナミックに起業したくなるような社会環境を整備すべきだ。それと「退路を断つ」って重要だなあと思う。

日本のテクノロジー産業をどう立て直すかのヒントがいっぱいのとても良い本だった。

・創造性とは何か
412WhFtHlyL__SL500_AA300_.jpg

KJ法の創始者 川喜田二郎教授による創造性論。大著から創造性に関する一章だけを抜粋した新書なので読みやすい。

著者は創造行為を保守と創造の循環としてとらえる。保守に循環しないものは創造ではなくて単なる破壊なのだ。ただし偉大な創造は循環のスケールが大きいので破壊のようにみえることがあるともいう。

創造とは非合理を世の中に認めさせることという捉え方もしている。知られていることから論理的に導かれるような当たり前のことは創造ではない。非合理さを実践で納得させることこそ創造なのだ。それを混沌→矛盾葛藤→本然というプロセスであらわしている。一見非合理だと思うものが矛盾葛藤を経て、まさにそれこそ自然だと思えるように至るという意味だ。

仕事で創造性を発揮する条件しては3つ

 1 自発性 2 モデルのなさ 3 切実性

を挙げている。前例のないことへの主体的な挑戦が創造につながる。ここで面白いと思ったのが、著者の主体性の考え方だ。

「主体性については、よく人に強いられてやるのは主体的でないと言われるが、それは一般論であって、本当は全体状況が自分にやれと迫るから、やらざるをえないというほうが、じつは真に主体的だと私は思うのである。」

自分はこれがやりたいからやるというレベルじゃ、まだまだなのだ。祖国を救えという天の声に立ちあがったジャンヌダルクのように絶対的受身のほうが高い主体性と考えるのである。天命、運命、使命感を切実に感じることが、イノベーションにつながる。坂本龍馬は時代状況の中で輝いたというわけか。

・iStreamer
5058888660_e61d561e50.jpg

Webではほぼ御法度だった横スクロール・インタフェースが、実はタッチパネルのiPadアプリではかなり便利であることに気がついた今日この頃。

iStreamerはツイッターやFacebookやブログ(RSS)のビューアーだ。まず自分のツイッターやFacebookのアカウントを登録する。ブログについては専用の検索インタフェースから読みたいブログを探す。あらかじめ米国の有名なサイトはプリセットされていて選ぶだけで登録もできる。

5058888942_d2944aa0dc.jpg

普通のビューアーと違うのは、発言が年表のようにマッピングされて横に流れていくこと。再生間隔や速度は変更することができる。大量のツイッターフォローをしている人がザッピングするのにおすすめである。

The iStreamer for the iPad - by AllofMe.com from AllofMe, Ltd. on Vimeo.

このアプリもFlipboardやPulse News Readerと同じように斬新なインタフェースでありながら、実用的な便利さを実現している。アプリが進化しているなあと感じる。

iStreamer


・iPAd ビジュアルなインタフェースでニュースやブログを読む Pulse News Reader
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/06/ipad-pulse-news-reader.html

・iPadアプリ 雑誌みたいなレイアウトとページめくりで、ツイッターやニュースサイトを読む Flipboard
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/ipadflipboard.html

・ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上)
41AR6TW4FML__SL500_AA300_.jpg

ベンチャー経営者におすすめの本を聞くと「ローマ人の物語」を挙げる人が多い。私も経営者だし、なかなか手が出なかったけど、そろそろ読んでおくかということで第一巻を読んでみた。いやあ、おもしろいじゃないのって当たり前か。傑作の誉れ高いシリーズ。

ローマの長い歴史には何百人ものリーダーが登場する。そこに共通点はない。頭脳明晰で徳の高いリーダーもいれば愚かな暴君もいる。頭がよくて仕事ができる人、人民を思う良い君主が必ずしも国の運営に成功するわけではないのが現実の歴史だ。どんなリーダーが成功するかは結局、ローマの置かれた状況による。独裁的で好戦的なリーダーが必要な時代もある。国の経営に普遍的な正解はない、それがベンチャー経営者が好きな部分なのかもしれない。

ローマを強くしたのは、実は英雄的なリーダーの力ではなくて文化や風土だったのかもしれない。ローマは伝統的に戦いに敗れた国の住民を奴隷にせずに、対等なローマ市民として迎え入れて、元老院の議席まで与えた。勝者も敗者も共に国づくりをすすめたのだ。「敗者を同化する彼らのやり方くらい、ローマを強大にした要因はなかった」というのはプルタルコスの言葉。企業の合併を連想する言葉でもあるなあ。

ローマについては、

「人間の行動原則の正し手を、
  宗教に求めたユダヤ人。
  哲学に求めたギリシア人。
  法律に求めたローマ人。」

という要約がある。

「宗教は、それを共有しない人との間では効力を発揮しない。だが、法は、価値観を共有しない人との間でも効力を発揮する。いや、共有しない人との間だからこそ必要なのだ。」

最近、経営における企業文化の重要性が見直されているが、価値観とそれを実現する仕組みづくりって組織にとって本当に重要なのだなと思う。まあ、まだ第一巻しか読んでいないので、まとめみたいなことは言えないんですが...。

・ROME[ローマ] コレクターズBOX
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/rome-box.html

このドラマも傑作。

from a distance

| | トラックバック(0)

・from a distance
41p997C9cVL__SL500_AA300_.jpg

尾崎豊の息子がデビューがとても気になっているのですが、私の青春時代は尾崎豊、長渕剛、そして浜田省吾のローテーションでした。

でその浜田省吾、この10月に3枚目のベストアルバムとDVDが発売になるというニュースを見ました。買おうかなあと思って、アルバムを眺めていたのですが、結果的にこちらをレジに持って行ってしまいました。3枚目のベストは社会派過ぎで、いまさら聞くのはちょっとハードなのです。

こちらのCDは女性ボーカルによる浜田省吾のバラードのカバー。

選曲が絶妙。浜田省吾にはセンチメンタルなバラードに名曲が多いのですが、「もうひとつの土曜日」や「片思い」のようなヒット曲を選ばず、ファンじゃないと知らないだろう渋い名曲を選んでいるのがすごくいいのです。

明るめの「恋に落ちたら」で始めてメロウな「君に会うまでは」が続く流れにまず唸り、5曲目に「ロマンスブルー」って、うわ、そんな隠れた名曲を選んじゃいますか、ドラマチックという感激で、「凱旋門」が素晴らしい出来栄え。

全体的にかなりスローテンポで、アコースティックなアレンジになっています。夜のBGMによいと思います。大人です。曲によっては浜田省吾のオリジナルを超えています。悪い夢 (我那覇美奈) なんて、オリジナルには感動しなかったのに、こちらではぶるっときました。

浜田省吾ファンにおすすめ。

楽曲リスト:

1. 恋に落ちたら (Aisa)
2. 君に会うまでは (鈴木亜紀)
3. 途切れた愛の物語 (大木綾乃)
4. 最後のキス (鈴木桃子)
5. ロマンスブルー (noon)
6. 夢にいざなえ (hayato kaori)
7. 凱旋門 (RiSAKO)
8. 防波堤の上 (EPO)
9. 悪い夢 (我那覇美奈)
10. 晩夏の鐘 (鈴木重子)

・ママと子どもに作ってあげたい パパごはん
51-2lfArkVL__SL500_AA300_.jpg

ビストロパパ滝村さんが料理本を出版した。

「橋本さんは料理はしますか?」という話になって、「たまにですが、最高級のオリーブオイルと輸入パスタを選んできてスペシャルなパスタを作ったり、巨大な焼きプリンをつくったり...」と答えたら「男の趣味ですね」とばっさり斬られた。

デジタルハリウッドの役員として忙しかった滝村さんが、料理に目覚めたのは長女の誕生がきっかけ。「家族と一緒においしいご飯をお家で食べたい」と思って見よう見まねで料理を始めた。技術的にはきちんと計量することだけを意識して。

私のように自分が食べたいものを、自分の都合で作るのは男の趣味料理なのだ。時間がかかるし油や塩分がたっぷりで毎日食べたら問題がある料理。一方、ビストロパパが目指すのは「自分のお腹が減っていなくても、家族のために作る、お父さんの料理」。家族に喜ばれて感激される料理だ。作る過程に"子手伝い"も参加させる。大人は"アト辛大人味"で。ビストロパパの料理は家族のコミュニケーションメディアでもある。

この本にはパパだけでなく料理が苦手なママにも役立つ71のレシピが紹介されている。
どれもこれも写真がおいしそう。

「ごま塩油でキャベツ」「ほうれん草のお浸し」「卵焼き」「焼き魚」「牛ステーキ」などといったキッチンパパ(Level1)

「ハンバーグ」「カレーライス」「チャーハン」「炊き込みご飯」「天ぷら」など定番が多数登場するエプロンパパ(Level2)

「パエリア」「ピザ」「ミネストローネ」 などビストロパパ(Level3

と3段階の難易度で分類されていて、LEVEL1と2は手順は4つしかないシンプルさ。計量をちゃんとして、この通りに進めれば、おいしくできてしまうのだ。私は何度かビストロパパの料理を御馳走になっているので、おいしさは太鼓判を押せる。

「パパが料理を作り、食卓が笑顔にあふれる」世界を作るために、パパ料理文化のエバンジェリストになった滝村さん。テレビ出演やイベント登壇の情報がブログに日々掲載されています。気になった人はのぞいてみてください。

ビストロパパのブログ
http://blog.livedoor.jp/tuckeym/

有料のセミナーではありますが、ご関心のある方、ぜひご参加ください。私のテーマは「口コミ伝播データをマーケティングに生かす Twitterやブログの大量データ分析から見える世界」です。

■アクセス解析セミナー「事例で探るアクセス解析最前線」
http://a2i.jp/activity/seminar_frontline

アクセス解析のテーマ別セミナー「事例で探るアクセス解析最前線」〈ウェブのユーザー接点が広がる。ソーシャルメディア、スマートフォン、動画コンテンツ、個客の長期分析〉を開催します。

アクセス解析ツールの導入が進み、サイトへのアクセスを計測・分析し、課題を解決していく、いわゆるPDCAの浸透がこの1年で急速に進みました。
一方、ユーザーのウェブ行動の多様化が進み、Twitterを筆頭としたソーシャルメディアの台頭、動画コンテンツの普及、スマートフォンの拡大、CPA だけではないLTV(ライフ・タイム・バリュー」)でのマーケティング施策の評価...、などさまざまな変化、ニーズが台頭しています。

そのような状況を踏まえ、このセミナーでは、外部環境、アクセス解析へのニーズが変化する中でも通用する、Webアナリティクスにおける新標準や最新トピック、先端ノウハウ、また現場の生の取り組みとその課題を紹介していきます。

 
開催概要

[テーマ] テーマ別セミナー「事例で探るアクセス解析最前線」
[日 時] 2010年11月2日(火曜日) 13:30~受付開始 14:00~講演開始 (17:30終了予定)
[定 員] 200名程度
※会場はテーブルがあります。
※今回、無線LANの設定はありません。
※動画中継はありません。(Twitterやブログの報告は問題ありません)

[会 場] ベルサール新宿 住友不動産新宿セントラルパークビル1F
http://www.bellesalle.co.jp/bs_shinjuku/access.html
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-13-1 新宿セントラルパークシティ内
住友不動産新宿セントラルパークビル1F 
TEL : 03-5909-0701

■交通: 「都庁前駅」A5出口徒歩4分(大江戸線)
     「西新宿五丁目駅」A1出口徒歩5分(大江戸線)
     「西新宿駅」2番出口徒歩7分(丸ノ内線)
     「新宿駅」A18出口徒歩12分(丸ノ内線)
     「新宿駅」西口徒歩13分(JR線・小田急線・京王線)
     「新宿駅」7番出口徒歩15分(新宿線・大江戸線)
     *ベルサールは、このほかに「西新宿」「新宿住友スカイホールビル」があります。
      くれぐれもお間違えならないようご注意ください。
     *最寄りの駅は「都庁前駅」になります。「新宿駅」からは15分程度かかります。

[料 金] a2i法人会員(有料会員) 無料 0円
     a2i個人会員(有料会員) 無料 0円
     一般料金・無料会員    10,000円(税込)
     ※アクセス解析イニシアチブの個人会員、法人会員は、無料でご参加いただけます。
     ※法人会員は当セミナーは3名までとさせていただきます。
      3名以上お申し込みの場合、空席状況により調整させていただきます。
     ※お支払いはクレジットカード( Paypal )または、銀行振込です。

[主催と特別協力] 主 催:アクセス解析イニシアチブ
         協 力:翔泳社 MarkeZine

お申し込みはこちら→

 
プログラム概要

開 場 13:30

第1部 14:00~14:50(50分)
◆「顧客接点を進化させるYouTube動画 そのビジネス効果と事例」
~長谷川 泰(はせがわ たい) グーグル株式会社~

第2部 14:50~15:40(50分)
◆「出来る事からやってみた、リクルートが取り組むスマートフォン・Twitterのアクセス解析」
~齋藤和樹 株式会社リクルート~

休憩 10分間

第3部 15:50~16:40(50分)
◆「『個客』の長期分析で見えたコンバージョンの本当の理由」
~内野明彦 株式会社コンフォート・マーケティング~
*事例を中心にお話しいただきます。

第4部 16:40~17:30(50分)
◆「口コミ伝播データをマーケティングに生かす Twitterやブログの大量データ分析から見える世界」
~橋本大也 データセクション株式会社~

※質疑含め 18:00 終了を予定
※プログラム内容は、予告なく変更になる場合がございます。また、当日の進行で終了時間が延びる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
 

・えっ!? ビジネスで成功し続けるためのサプライズ・マーケティング

「サプライズは現代のビジネスにおいて最も重要な要素である」

サプライズマーケティングのパイオニアで、世界最大のコメディー・フェスティバルを運営し、テレビプロデューサーとしても活躍する現エアボーン・モバイル社長のアンディー・ナルマン著。言葉を失う驚きの瞬間=POW!モーメントをプロデュースして、ビジネスを成功させる秘訣を語る。

ビジネスにおいて"サプライズを用意しましょう"というとき、穏健なのと過激なのと2種類ある。消費者が設定した基準よりも高機能とか低価格でしたというのが、予測可能で穏健なサプライズ(WOW)。この本が指南するのは、いきなりクルマをタダで配るとか、ずっと男だと思っていたら実は女でした、みたいな消費者が思わず言葉を失う衝撃のことだ。

POW!は、

WOW=グレードアップ、期待を超えること
POW!=クォンタム・リープ(量子的飛躍)、まったくの衝撃

と定義され「「WOW」がエコノミークラスからファーストクラスへの移動だとすれば、サプライズは何キロも先へのテレポーテーションだ。」と表現されている。

もちろん絶句させるだけではだめで、

驚き(サプライズ)─── 喜びをもたらすコンスタントな極限の拡大

であるべきと説いている。相手の頬を張ってからすぐに抱きしめるようであれ、と。

ビジネスでPOW!を用いて成功したキャンペーンがたくさん紹介されている。奇抜な発想を、どのように営業利益獲得へのリードにするかの参考になる話が続く。ただし本書のマーケティング手法は相当に高度である。普通の人が真似できるかというと、かなり難しいのじゃないだろうか。

「サプライズの創出という実際の仕事はビジネスよりもアートの世界に位置する」という。この著者は日常生活からして相当にハイテンションで、周囲にサプライズを提供することに人生を懸けているタイプの人間のようだ。既存のフレームを破壊して、別の次元から言葉を繰り出すためにはどうしたらいいのか、をひたすら考えている。

そのアートのための戦術が第7章で9つにまとめられている。「バージンのコンタクトレンズ」を装着する」「衝撃とぁぁ」「言葉は重要」「バックミラーを見る」「時限爆弾を仕掛ける」「ビジネス痴性」「パズルのピース」「物事を文脈から切り離す」。

誰の心にもある遊び心や不良マインドを、ビジネスで許される限界ギリギリまで解放しながらも、飽くまで社会的規範を超えないことが大切ということかな。ぶっとぶけどタイホはされないレベルととうか...。アテンション・エコノミー時代に、企業はいかにして目立つべきかを考えるための、少々過激な参考書。かつての「ゲリラ・マーケティング」が好きだった人におすすめ。

.
mosaic face
5044671744_6f9f615c7e.jpg

iPhoneで街頭やイベント会場の風景をアップする際に、人物の顔が大きく写ってしまって、プライバシー配慮の点で大丈夫かな、これ、と思うことがある。そんなときにこのアプリを使えば、即効でモザイク処理ができて安心できる。

5044046487_4c4c7cc600.jpg

写真を指定すると、顔らしい部分を自動判定して、モザイクをかける枠が表示される。複数の顔に対応している。それでよければ処理を実行させる。なお、顔認識の精度は100%ではないので誤認識することがある。その場合にはマニュアルで追加するか、顔認識の機能をオフにして、自由にモザイク処理をすることができる。つまり顔専用ではなくて汎用的なモザイク処理ツールとしても使えるのだ。

たとえばこれは某社の会議室にあった巨大なザクだが、顔検出では検出されなかったので(モビルスーツの顔には対応していないらしい)、顔検出をオフにして、完全にマニュアルでかけている。
5044049687_d7f47d3a35.jpg

mosaic

処理した画像は保存やメールできるだけでなく、このアプリから直接にTwitterやFacebookへ写真をアップすることもできる。

このアーカイブについて

このページには、2010年10月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2010年9月です。

次のアーカイブは2010年11月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1