次世代インターネットの経済学

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・次世代インターネットの経済学
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まっとうな経済学者が書く、うわつかない次世代インターネット経済学。

ベストセラーになった「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」などは「情報通信経済学の専門家の立場からは、荒唐無稽な主張である」とばっさり切って捨てる。デジタル経済ではデジタルのものは遅かれ早かれ無料になるというのが「フリーミアム」だが、著者曰く限界費用がゼロになるからといって価格がゼロになる必然性はなく、企業は差別化や独自ブランドによってベルトラン競走から逃れようとする。そもそも限界費用ゼロといっても商品が競争市場で勝てるだけの付加価値を生むには、相当に大きな固定費用が現実には必要なはずだと指摘する。

フリーミアムは経済の一面しかみていないのだ。現代のデジタル経済で重要なのは両面市場の経済学だという。「ネットワーク効果をレバレッジとして効かして、一方で無料で他方で有料で、二種類のユーザを共通のプラットフォームでつなぐようなビジネス・モデルを両面市場(Two-sided Market)という。Googleのビジネス・モデルは、両面市場の経済学として明解に説明できる。」。だから一方の価格の効果だけみていてはだめで、両側の分配比率に気をつける必要があるのだ、というわけ。

経済学者が、バズわーどに踊らされず、経済学的に確実にいえることは何かを冷静におさえながらデジタル経済を現実的に語る本だ。規模の経済やネットワーク効果という基本的な理論を、現在の市場にあてはめて解説してくれる。ロックインと経路依存性の話もITビジネスでよく発生する問題を理解するヒントになる。なぜ市場ではしばしば良貨を悪貨が駆逐してしまうのかのワケ。

「デジタル経済では、主流派経済学が想定してきたような予定調和型均衡は成立しない。正のフィードバックのために、複数均衡の中の最適均衡に収束する保証はなく、いち早くクリティカル・マスを獲得した非効率的な技術が普及し(過剰転移)、そのまま長期間ロックインする(過剰慣性)かもしれない。」

・過剰慣性
「非効率な旧ネットワーク技術が既に普及し、ユーザがロックインしてしまうために、効率的な新ネットワーク技術が阻害される。」
・過剰転移
「非効率な新ネットワーク技術が将来普及すると予想されるために、効率的な旧ネットワークを駆逐してしまう。」

要するに、ネットワーク製品やサービスは、良い物を作れば必ず売れるわけではない。現状の市場の状況をみて戦略を打ち出していく必要があるということだ。当たり前なのだが、市場でプレイヤーとして戦っていると忘れがちな事実をたくさん指摘して貰ったような気がする本だった。

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このページは、daiyaが2011年8月11日 23:59に書いたブログ記事です。

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