2011年9月アーカイブ

・風の中のマリア
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昆虫小説というユニークな作品。

主人公はオオスズメバチのマリア。

巨大な巣には1匹の女王蜂と何千匹のワーカー蜂がいる。社会性昆虫であるオオスズメバチのワーカーに生まれたマリアは、自分のために生きることはない。幼虫のえさを狩り、外敵から巣を守る戦士として、30日間の短い人生を必死に生きる。

戦士は日に何度も狩りに出る。他の昆虫をみつけては噛みついて殺し、肉団子状にして巣に持ち帰る。自分で食べるのではなく、幼虫にえさとして与える。その代わり幼虫からは養分のある液を返してもらう。

オオスズメバチのワーカーはすべて雌だが、女王蜂が生存している限り、オスとつがいになったり、繁殖することはなく、後から生まれてくる妹たちを育てることに一生を費やす。

与えられた役割を果たすことだけを運命づけられた存在だが、マリアはときどき自分が何のために生きているのかを自問するようになる。恋愛することも子供を産むこともない自分にはどんな意味があるのか。マリアの姿は社会の制度やしがらみのなかで生きる人間とどこか似ている。

昆虫の主人公に感情移入させることに成功していると同時に科学読み物としても成立するくらいきちんとハチの生態を描写している。雄のハチはどこにいるのか?、女王蜂はどうやって生まれるのか?、巣はどう始まってどう終わるのか?マリアの一生とハチのコロニーのライフサイクル全体が、実に巧く物語に組み込まれている。子供の学習にもよさそう。

下記イベントを企画いたしました。
ぜひご参加ください。

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米国ソーシャルメディアのビジョナリ ダン・ギルモア氏来日講演会
  『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』
  テクノロジー、ビジネス、コミュニティの未来への予言
http://gs.dhw.ac.jp/event/20111012/index.html

■イベント概要

これからインターネットというメディアがどう変わっていくのか?、米国の有名論客として知られるジャーナリスト、ダン・ギルモア氏に貴重な見解を聞くイベントです。同氏は著作「あなたがメディア!
ソーシャル新時代の情報術」の日本語版出版記念で来日されます。

前著『ブログ 世界を変える個人メディア』から6年、個人メディアが世界を変える動きを論ずる最新刊の原題は"Mediactive"。メディアとアクティブをつなげた"行動するメディア"という意味の造語。賢いメディアの消費者から、行動する利用者へ。メディア変革、次のステップの指南書です。

テクノロジー、ビジネス、コミュニティの未来を考える上で、大変貴重な機会です。

第一部 ダン・ギルモア氏 講演「"行動する利用者"の時代」 通訳付き
第二部 有識者ディスカッションと会場質疑

司会進行 橋本大也(デジタルハリウッド大学教授、データセクション取締役会長)
パネル:国内のソーシャルメディアの有識者らのディスカッションを予定

■講演のベースとなる書籍について

『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/07/post-1482.html

ウィキリークス、フェイスブック、ツイッター、そして3.11後の世界へ......広がり続けるソーシャル空間と、激変するメディアの生態系。その中で、「メディア」はマスメディアとは同義語ではなくなり、私たち一人ひとり、つまり「あなたがメディア!」の時代がやってきた。そんな時代を生きるための実践ガイド。キーワードは「メディアクティブ(行動するメディア)」。豊富な実例によって、メディアの洪水から信頼できる情報を吟味し、共有し、発信していく"行動するメディア"のノウハウが示されている。「あなたはすでに、メディアのクリエーターかもしれない。フェイスブックのアカウントを持っている?
それはメディアのクリエーターだ――少なくとも、ここで私が使っている意味では」
 新聞コラムニスト出身のベテランジャーナリストである著者は、大学のジャーナリズム教授、起業家、社会活動家、と様々な視点から、メディアの最前線を描ききり、その使いこなし術を提案する。前著『ブログ
世界を変える個人メディア』も手がけた朝日新聞編集委員(IT担当)の平和博による訳と解説。

■講演者について

ダン・ギルモア(Dan Gillmor)

ジャーナリスト/ブロガー。アリゾナ州立大学ジャーナリズムスクール教授。1951年生まれ。バーモント大学卒。デトロイト・フリープレスなどを経て、94年から2005年まで、シリコンバレーのサンノゼ・マーキュリー・ニュースでコラムニスト。1999年からブログを続ける最古参のジャーナリスト・ブロガーだ。ノキアが買収したソーシャルサイト「ドップラー」共同創業者でもある。以前はプロのミュージシャンとして活動。著書に『ブログ
世界を変える個人メディア』(平和博訳 2005年・朝日新聞社刊)

【概要】

日時:2010年10月12日(水)19:45会場(20:00開演)
場所:デジタルハリウッド大学 メインキャンパス(秋葉原ダイビル7F)
   千代田区外神田1?18?13 秋葉原ダイビル7階
定員:100名
参加費:当日3,000円、デジハリの学生は無料
参加方法:下記お申し込みフォームより登録してください。どなたでも参加できます。
http://gs.dhw.ac.jp/event/20111012/index.html

主催:デジタルハリウッド大学院、朝日新聞社、先端研究集団オーバルリンク

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iPadの壁紙にちょうどいい。最新のハイテク端末にレトロゲームの画像がマッチする、ような気がする。インベーダーにしてみた。

1942、アフターバーナー、アルカノイド、ボンバージャック、バブルボブル、バーガータイム、ディグダグ、ドンキーコング、ギャラガ、ギャラクシアン、魔界村、ポパイ、パンチアウト、ラリーX、シェリフ、スペースハリアー、インベーダー、ハイパーオリンピック、ペンゴ、パックマン、マッピー、ムーンクレスタ、パックランド、など50種類のレトロアーケードゲームのスクリーンショットが収録されたアプリケーション。

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画像をタップすると写真フォルダに画像が保存されるので壁紙に設定すればよい。

米国のアプリなので、日本ではあまり知られていないゲームも一部あって、逆におもしろいのだが、ほとんどはナムコ、セガ、タイトー、カプコンなど日本の企業の開発だ。80年代のアーケードゲームは、日本が世界市場を席巻していたのだということがよくわかる。

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壁紙として使わなくてもレトロゲーム談議をするのに格好のネタになるアプリだ。80年代によくゲームセンターに行ってましたという人、ゲームセンターあらし読んでましたという人、おすすめです。

教養としてのゲーム史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/09/post-1501.html

Arcade Game Wallpapers HD - Little Bird Applications

・新書で大学の教養科目をモノにする 政治学
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公務員試験対策に使われていた人気テキストに加筆修正して新書化。コンパクトながら政治学全体の流れをつかめる構成。ポスト3.11やら総理交代やらで、改めて政治について考えてみたくなるときに、ちょうどよいと思って手に取った。

政治とは何か、権力とは何かという基本的な概念の説明から始まって、マキャベリ、ホッブズ、ロック、モンテスキューら近代国家の原理を造った思想家たちの政治思想の整理
、そして議会主義、権力分立の原理と具体例、日本及び諸外国の特徴、近代国家の理念が建前と化した現代大衆国家の特徴といった解説が並ぶ。

たとえばイデオロギーという概念の説明は、「イデオロギーというと、一般に政治思想、それも社会主義や共産主義あるいはファシズムといった急進的な思想について用いられることが多い。しかし正しくは、イデオロギーとは私たちの誰もがなんらかの形で抱いている世界観のことである。もう少し厳密に定義するならば「人間、自然、社会等についての一貫性と論理性をもった表象(イメージ)と主張の体系」ということになる。」と、とてもわかりやすい記述。

そして、そうした解説を受ける形で、要所要所に「例題」「ポイント」がおかれており、「現代民主政において、正常な政治と腐敗した政治を区別する基準は何か、またそれを正す手法について、その有効性と限界を述べよ。ただし、歴史と現状にも必ず触れること」のように大学の一般教養試験問題のような出題もなされる。新書であるが参考書みたいな形式だ。

ブログやツイッターで国民総評論家時代の今、無用で的外れな発言をしないためにも、今の政治を批判する前に、前提となる基本知識を整理することって重要だと思う。

虐殺器官

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・虐殺器官
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日本が世界に誇れるSF文学作家 伊藤計劃の代表作。

近未来の地球。核爆弾テロによってサラエボが消失して以来、先進国はテクノロジーによる徹底した市民監視システムによって安全な社会を維持している。その一方、民族紛争や宗教問題を抱える発展途上国では、内戦や大量虐殺が増えている。主人公の米軍大尉クラヴィス・シェパードは、情報軍特殊検索群i分遣隊に所属している。米国の敵対勢力の独裁者や不穏分子を暗殺するのが仕事である。

クラヴィスにジョン・ポールという謎の人物の暗殺指令がくだされる。言語学者ジョン・ポールは途上国の大量虐殺事件が起きる場所に必ず現れる死のエージェントだが、不思議なことに監視システムにその行動のログが記録されていない。虐殺実験への関与の詳細も不明。クラヴィスは少ない情報を頼りに、愛人とされる女性に接触するためにチェコへと潜入する。

グレッグ・イーガン系の正当派ハードSF。日本人SF作家とは思えない世界水準の物語構想力に圧倒される。監視社会、生命倫理、民主主義、現代世界の大きな問題意識のもとで、ユニークな想像力を働かせている。SF文学であると同時に、現代思想のひとつの体系を提示しているといっても過言ではあるまい。圧倒的。

「ゼロ年代最高のフィクション」と評される本作を書いた伊藤 計劃のプロフィール。

1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギアソリッドガンズオブザパトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。同書は第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞した。2009年没。

34歳でがんに倒れた作家の活動期間はたった3年間しかなかった。これを含めて長編は3作しかない。なんとも残念。

・創造的福祉社会: 「成長」後の社会構想と人間・地域・価値
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「創造的」という言葉と「福祉」という言葉の結婚の先に未来をみる。

著者のこれからの福祉国家、社会保障のあり方の考え方は

1 事後から事前へ 人生前半の社会保障
2 フローからストックへ ストックに関する社会保障
3 「コミュニティ」そのものにさかのぼった対応と政策統合

というものだ。

これまでは退職期、高齢期に集中していた生活上のリスクが就職難で若年層にも及ぶようになった。生計を立てるフローが危ないだけではない。格差を表わすジニ係数をみると、日本人の年間収入では0.308、貯蓄では0.556、住宅・宅地資産では0.573となっているそうだ。だから日本社会はフロー面よりストック面での格差が大きい社会なのだという。福祉政策においては、市場経済からの落伍者への事後的救済策としてではなく、「コミュニティそのものにつないでいく」ことも重要であるとする。

著者は、未来のセーフティネットを、その中で生きていける、いきがいの持てるコミュニティと定義する。そこでは、労働に対する非貨幣的な動機づけ、コミュニティや場所の価値の再発見、そして多様な幸福の追求が可能になる。コミュニティといっても農村モデルへの回帰などではないのが現実的だ。

「したがって、日本社会における根本的な課題は、個人と個人がつながるような「都市型のコミュニティ」ないし関係性をいかに作っていけるか、という点にまず集約される。これについては1 「規範」のあり方(集団を超えた付言的な規範原理)という点が大きな課題となり、また2 日常的なレベルでのちょっとした行動パターン(挨拶、お礼、見知らぬ者同士のコミュニケーション等)や、3 各地におけるNPOなど新たなコミュニティづくりに向けた様々な活動や事業の試みが重要となると考えられる(広井 「2009b」)」

たとえば「日本の大都市では見知らぬ者どうしがちょっとしたことで言葉を交わしたりコミュニケーションをとるということがほぼ全くない。」とか。地域ソーシャルネットワークやソーシャルアパート(ルームシェアの発展形)などの取り組みが、そうした社会の実現に近かったりするかもしれない。

そして少子高齢化社会と環境親和型社会の解として「経済成長を絶対的な目標としなくても十分な『豊かさ』が実現されていく社会」=「定常型社会」という理想を掲げる。これまでは経済成長や生産拡大に寄与する行為や人材が価値あるものとされ「創造性」もまたその枠組みの中で定義されてきた。しかし、幸福や生きる価値に重きを置いた「規範的価値と存在の価値の融合」に寄与する多様な創造性を評価すべきだという。相反するように聞こえる「創造的」と「福祉」という言葉がそこでつながる。

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iPhoneアプリを教え合うコミュニティのアプリ。

・AppConnect
http://connect.plus.vc/

このコミュニティではユーザーがおすすめアプリを日々紹介している。こんなアプリ探してますという質問の投げかけもできる。新着おすすめを見るだけでも結構面白いのだが、ユーザーが登録したプロフィールから、

年代別
職種別
趣味別

で、おすすめのアプリのランキングがわかるのが一番の魅力。

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たとえば10代は写真共有の「instagram」が人気だが、50代では 「医療介護 CBニュース」 なんていうのがランキング上位に出てくる。職業主婦では 「脳力+ 支払い技術検定」、不動産業界人では 「なぞる距離測定」が人気とか、なるほどねと思える情報がある。

登録アプリ数27,277件、利用ユーザー数744人

だそうだ。

EvernoteやGood Readerが上位で特徴がでないカテゴリも多いが、もっとユーザーが増えていくと、面白い情報源に成長していきそう。

AppConnect - PLUS

・最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
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探偵ミステリが好きな人は絶対必読の傑作ノンフィクション。

1860年6月の朝、英国の田舎の村の屋敷ロード・ヒル・ハウスで、その家の三歳の男の子が無惨な姿で殺されているのが発見される。犯行のあった夜に屋敷にいた家族と使用人たち全員が容疑者となる。

屋敷の主人、後妻の妻、前妻の子供たち、後妻の子供たち、子供の面倒を見ていた子守りの女性たち。子守りの女性が最初の容疑者として疑われたが、自白はとれない。科学捜査が未発達の時代の事件であり、密室で行われた犯行の捜査は暗礁に乗り上げてしまう。

典型的な英国のカントリーハウスで起きた残酷な殺人事件を、当時の新聞は大きく取り上げた。世間はにわか探偵ブームとなって、一般人や作家たちが真犯人は誰かを推理する投稿が盛んになる。

世間の注目が集まる中で、当時、刑事課が創設されて刑事になった8人のうちのひとりジョナサン・ウィッチャー警部がロンドンからが派遣されてくる。地道な捜査を積み重ね。それまで平穏にみえていた屋敷には、複雑な感情のもつれを秘めた人間関係があったことが明らかになっていく。そしてウィッチャー警部は、意外な真犯人を確信するのだが...。

現実は小説よりも奇なり。事件の関係者や警部のその後を何十年間も追跡取材していくと明らかになる意外な事実もある。

ノンフィクションだが、実際の事件の真犯人は誰かを読者とともに考えさせるスタイルだから、真相は最後まで読まないと分からない。また当時の英国における刑事や探偵の実像、世間の持っていたイメージ、そしてミステリ文学に及ぼした影響が語られていく。探偵小説の夜明けはこの現実の事件から始まったのだ。ウィルキー・コリンズ作『月長石』、ディケンズの未完の『エドウィン・ドルードの謎』など、この事件にインスパイアされた有名作品が多数ある。

ミステリとしてもノンフィクションとしても5つ星。

・コクリコ坂から
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映画『コクリコ坂から 』の原作となった少女漫画。映画との違いをみるのが面白い。設定も物語も、かなり違う。映画のカルチェラタン保存運動は、漫画では制服自由化運動であるし、性別や性格が異なるキャラクターもいる。

宮崎吾朗監督はあとがきで、コクリコ坂からの企画が示されたときに、映画化に対して後ろ向きだったと心情をこう告白している。

「1963年といえば、日本は高度経済成長の只中にあって、その当時高校生だった人たちはいわゆる団塊の世代だ、現代社会が行き詰っているとするなら、その原点である時代を描いても、昔は良かった式の映画にしかならないのではないかという疑念がついて回った。」

何を悩んでいるのだろう。私は映画版の『コクリコ坂から』がかなり好きなのだけれども、それはまさに、文科省推薦のとれそうな「昔は良かった式」だからいいねと思った。

あんなに純真無垢な少年少女は現実にはいないし、舞台となった横浜や新橋の街並みももちろん今はもうない。古き良き時代を懐古調で描き、ある世代に対してストレートに心温まるファンタジーをつくった。ジブリの得意技である、それでいいじゃないか。へんに未来へのメッセージなんて折り込まなくてよいのではないか。

クリコ坂からビジュアルガイド ~横浜恋物語~
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ファンにはたいへんおすすめのビジュアルガイド。カルチェラタン新聞の中身が読めたり(実際に細部までつくっていた)、作品の舞台となる横浜ロケ地ガイドは横浜が近い人にはうれしい。物語を最初から最後まで追った解説が充実しているのだが、ネタバレしてしまうので、この本は映画を観た人向け。

・諸怪志異 第三集 燕見鬼編
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道士の五行先生とその弟子の阿鬼(成人して燕見鬼)が活躍する中国伝奇漫画。

諸星大二郎版「聊斎志異」といわれる『諸怪志異』。ずっと未完のままであったが、ついに完結した。『西遊妖猿伝』が好きな人はこれも必読。

堂々の完結と売り文句にあるが、実際には、未完だったところへ、描下ろし50頁「再び万年楼へ」を加えていっきに終わらせた唐突な感じではある。特に終盤は諸星大二郎の持ち味とは言えない大味なアクションが延々と続いていて、終わり方としてはいまいちだったかもしれない。このシリーズは続き物の長編の話よりも、一話完結的な話のほうに傑作が多いのだ。

あとがきを読んだらご本人が

「初めは燕見鬼を主人公にした伝奇的読み切りのつもりだったのだが、途中から活劇の要素が強くなり、方蝋の乱に焦点を合わせた中国武侠もののような様相を呈していった。」「考えてみると、伝奇ものの短編読み切りとして始まったはずのシリーズ物がいつの間にか連載活劇になってしまった訳で、その時のノリとは言え、勝手なことをしたものである。」

と自覚していたことが判明。

と、最終話のことはぶつぶつ書いてみたが、この作品はやはり傑作である。カラー含むイラストやあとがきのおまけも含めて、こうして大型の愛蔵版で改めてじっくり読めるのが本当にうれしい。

・意識は実在しない 心・知覚・自由
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新しい概念としての「拡張した心」を中心に意識の問題を考察する。

「第一に、人間の心のはたらきと呼ばれているもののほとんどは、環境と円環的再帰的にインタラクションすることで成立していることである。人間の身体内部のはたらきは、そのループの一部をなしているにすぎない。そして、その円環的な相互作用のなかには、より小さな円環的相互作用が入れ子状に含まれている。」

そして著者は人間的環境を5つの構成要素に分類する

1 改変環境 都市や農村、人間の手が入った森林
2 構築物 家屋や建造物
3 道具 何かの目的を達成するための道具
4 他者 共同したり競争する他者
5 社会制度 言語や法、株式会社や保険、民主政治など集団行動のしくみ

こうした環境と連続的に相互作用をするアクターズネットワークが人間の世界なのだという。そして社会的アフォーダンスに反応する能力を持つ、自律的な存在として人間をとらえている。意識はないが、全体の文脈の中に自由意思はちゃんとあるのだと。「拡張した心」は環境や文脈と一体化している相互作用プロセスなので、ここに心とか意識がありますと部分的に切り出せるものではない。

著者が「実在しない」と否定するのは、脳の中に外界で起きていることが投影されるという「チューブタイプ」の意識だ。クオリアがやり玉に挙げられる。クオリア論者は、意識とは外界刺激を取り込んで映すスクリーンのようなものという。情報が神経系を伝わって脳に集まり、脳の中の心の座で情報が解読されるとする。しかし、著者は脳に伝達されるのは実際には刺激や興奮であり、それはどこかに終点があるわけではないだろう、と反論する。クオリアという主観的な内的性質は、外界の知覚対象のあり方から抽象された観念に過ぎないと批判する。

"脳が世界を見ている"のではない。あなたの心は"環境に広がっている"というのがこの本のメッセージである。後半では、人間には世界の中に実在する社会的な意味を読みとって相互作用をする存在たと言う「社会的アフォーダンス論」が展開されている。人間と環境の複雑な相互作用するアクターズネットワークとしての世界という世界観、ここも面白かった。

・アナロジー思考
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「地頭力」「フェルミ推定」の仕掛け人 細谷功氏著。

すべての思考は「類推」から始まる。いわれてみればそのとおりか。

アナロジー(類推)思考とは、著者の言葉によれば、二つの世界の比例関係を利用した思考法のこと。既知の領域と何らかの類似性を有する未知の領域に対して、既知の知識を応用して、未知の領域の知識を新たに得るということ。アナロジーには「自分の理解」「他人への説明」「アイデア創出」という目的が考えられるという。

どこから借りてきてどこへ持っていくかの一般的パターンが例示されている。

1 よく知っている世界 → 知らない世界
2 進んでいる世界 → 遅れている世界
3 身近な世界 → 縁遠い世界
4 極端な世界 → 「角が丸い」世界

1は理解のためのアナロジー。「欧米ではすでにこうなっている(日本ではいまだにこうだ)」というのは2のパターン。3は「たとえ話」。4は子供のストレートな感情表現を大人の世界の読みときに利用するようなパターンだ。適切なアナロジーを用いることで、複雑な事柄を、わかりやすく印象的に伝達することができるわけである。この本にリスト化されている、よくある類推パターンをあらかじめ覚えておくと思考のスピードアップになりそうだ。

そしてアナロジーによるアイデア創出は、遠いところから借りてきて組み合わせる、ことが重要だという。単なる真似やパクリではなく、まったく違う世界からの借用が、ブレークスルーのアイデアになる。表面的類似(オヤジギャグ)ではなく、より深い構造的類似のアナロジーこそ重要であるとして、その発見方法や訓練法を教える。

「「構造的」類似とは、複数の事象の「関係性」に関する類似のことであり、表面的類似に比べて見つけるのが難しい分、その価値も大きい。」

ビジネスの世界では、「一見違うが実は構造的に似ている業界」を探すことが重要だが、そのためには「事業特性」に注目して探すとこんなふうにみつかるとして、アナロジー思考の実践がある。

会社における新人とベテランの能力差は、主にアナロジー思考能力の違いなのではないかと思う。新人は個々の具体的な事象にこだわってしまうが、ベテランは慌てず、過去の経験や他の領域の経験と、目の前の事態を結び付けて、解決や突破法をみつける。アナロジー思考を意識することはデキル人への第一歩となるはず。新入社員にも、おすすめ。

下記のイベントを企画いたしました。司会兼スピーカーとして登壇します。

よろしくおねがいします。

・お申し込みはこちら
http://www.jagat.jp/content/view/3110/380/

以下は主催者による告知文の転載です。

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次世代ビジネスモデル・フォーラム2011
クラウド×ソーシャル時代の新ビジネスモデル

~情報共有新時代の幕開け~
情報やコンテンツが爆発的にあふれる中、本当に売れるコンテンツや広告が模索されています。信頼のITインフラの上で、運営者自身がコンテンツを執筆、制作するのではなく、ユーザー側が収集・分類、共有・共演、参加・開発する新たなビジネスモデルが動き出しています。

「情報考学―Passion For The Future」で書評ブロガーとしても著名なデータセクション橋本大也氏には、『印刷白書2011』のビジネスモデルを執筆していただきました。さらに今回はモデレーターとして企画段階から参画いただき、出版・新聞・映像・Web業界から各メディアのエキスパートとともに、新たなIT、社会インフラの上でどのようなコンテンツビジネスを展開できるのかを探ります。

開催日程・開催時間

2011年10月14日(金) 13:30-17:30 受付13:00開始

対象
Web、IT、印刷、出版。新聞、雑誌、広告、映像 など

定員
70名

【スケジュール】

第1部 講演会 ビジネスモデルの有望なキーワード(キュレーション・メディア、シェア・コラボ消費、オープンガバメントなど)を考察し、イノベイティブな次世代ビジネスとは何か、どのような心構えが必要であるかを検討します。さらに、雑誌ビジネス最先端、ジャーナリズムとビジネス、著作権ビジネスなどに関して、各メディアのエキスパートが現状分析を行い、デジタルメディアビジネスの可能性と未来像を展望します。
第2部 ディスカッション 第1部の講演内容を受けて、デジタルメディアの次の進化について考えます。コンテンツビジネスに必要なメディア戦略、ソーシャル×映像・書籍デジタル×著作権ビジネス、デジタルメディアビジネス成功の条件などについて刺激的なディスカッションを展開します。


●モデレーター データセクション株式会社取締役会長 橋本 大也氏(司会進行兼スピーカー・企画者)
スピーカー 富士山マガジンサービス 代表取締役 西野 伸一郎氏
●朝日新聞社 ジャーナリスト学校主任研究員兼報道局記者 服部 桂氏
●シュヴァン 代表取締役 寺田 遊氏
●キャラアニ 常務取締役 田村 明史氏(JAGATクロスメディアエキスパート認証試験委員長)

<会場>

社団法人日本印刷技術協会 アネックス3F研修室
東京都杉並区和田1-29-11

東京メトロ
丸の内線 中野富士見町駅下車 徒歩5分

<参加費>

(税込み・1名)
JAGAT会員   7,350円  
一般      10,500円 

・お申し込みはこちら
http://www.jagat.jp/content/view/3110/380/

・愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN VII   ルウム編
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ガンダムオリジン愛蔵版7巻はルウム編。5,6,7と過去編三部作。

オリジンは連載誌ガンダムエース上では完結しているわけだが、私は愛蔵版で読んでいるために、まだ物語は中盤である。これまで愛蔵版は毎年一冊のペースで六月ごろに刊行されてきたが、今年はこのルウム編が2月に、オデッサ編が8月に、年二冊出ている。

ルウム戦役はアニメでは描かれなかった過去の部分。アムロはほとんどでてこない。シャアとセイラやジオン側のサブキャラ達の視点で、アニメでは深い説明がなかったコロニー落としだとか、そもそもシャアがマスクをかぶっている理由が明らかになっていく。こうした細部は後付けで加えているはずなのに整合性が完璧に思える上に、ドラマとしても成立していて、見事だなあと感動してばかり、安彦良和は絵がうまいだけでなく構想力の見事さに感動させられる。

オリジンは、毎巻思うのだが、安彦良和が思い入れがあったのはやはり主人公のアムロじゃないんだなあ、と。アムロは若くて単純で、陰影をつけにくいから、魅力的に描きにくいのだと思う。アニメにはちょっとしかでなかったザビ家の将軍達とか士官たちの、抱えている複雑な感情の方がずっと魅力的だ。アムロはもはやどうでもいいというくらいになってきた。つまり、サイドストーリーを描きましたというよりも、ガンダム自体を脇役達の群像劇として再構成したのがオリジンなのだろう。

次の巻は年末に読む予定。

・「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/09/post-1503.html


・機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー 機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより― 俺は生ガンダム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/03/post-1400.html

・愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN VI 開戦編 と MG 1/100 MS-09R リック・ドム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/vi-mg-1100-ms09r.html

機動戦士ガンダム アッガイ北米横断2250マイル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/-2250.html

・愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN V シャア・セイラ編
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/-the-origin-v.html

・MG 1/100 ゴッグ MSM-03
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/mg-1100-msm03.html

・ラーメンズ・片桐仁のガンプラ戦士ジンダム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1007.html

・ザク大事典 All about ZAKU
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/-all-about-zaku.html

・MG 1/100 ズゴック MSM-07と愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV ジャブロー編
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/mg-1100-msm07-the-origin-iv.html

・HGUC 1/144 MSM-10 ゾックと機動戦士ガンダムTHE ORIGIN
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/02/hguc-1144-msm10-the-origin.html

・機動戦士ガンダム THE ORIGIN、MGアッガイ、ターゲット イン サイト
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/the-originmg.html

・ガンプラ・パッケージアートコレクション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-820.html

・俺たちのガンダム・ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-662.html

・ガンダム・モデル進化論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003091.html

お茶殻折紙

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・お茶殻折紙
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お茶殻で作られた折紙。

折っているとお茶の香りがただよって気持ちが落ち着く。

「お茶殻折紙」1セット(15×15cm、30枚入、坪量68g/m2)あたり「お~いお茶」500mlペットボトル約2本分の茶殻を紙パルプに配合することで、その分の紙原料の使用量を削減しましたという仕様。ペットボトルのお茶製造のリサイクル過程ででてくる原料でつくっているからエコ。

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この折紙には抗菌・消臭効果もある。これでつくった折鶴を箱に入れておくと効果があるそうだ。

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2種類の小物入れや鶴、チューリップの折り方ガイドが付属する。


・伊藤園のオフィシャルサイト お茶殻折紙
http://www.itoen.co.jp/csr/recycle/product/origami.html


下記イベントに出演します。

私のセッションは、「ソーシャルメディアデザイン~ソーシャルメディアのこれまでとこれから~」です。

ぜひご参加ください。

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デジタルハリウッド大学の先駆的・先導的研究機関、
メディアサイエンス研究所による「研究発表会」を10月8日に開催

本学教員による全17の個性的な研究発表に加え、
豪華ゲストを交えた基調講演や対談を実施

http://www.dhw.ac.jp/ms2011/
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デジタルハリウッド大学およびデジタルハリウッド大学大学院、双方の研究機
関であるメディアサイエンス研究所では、来る2011年10月8日(土)に「メディ
アサイエンス研究所 研究発表会」を開催致します。

本研究所は、デジタルコミュニケーションが社会に大きな変革をもたらす状況
をふまえ、先駆的・先導的な研究を行うことを目的として設立されています。
現在19の研究室を擁し、各研究室ではデジタルハリウッド大学大学院の教員が
中心となりデジタルメディア・コンテンツ等の自主研究や委託研究に積極的に
取り組んでいます。今回の発表会では各研究室が研究成果や過程を発表し、さ
らなる産学連携を推進して参ります。


■メディアサイエンス研究所 研究発表会

日時:2011年10月8日(土)13:00~17:00(12:30開場)
場所:アキバプラザ6階(セミナールーム1~6)
〒101-0022 東京都千代田区神田練塀町3 富士ソフト秋葉原ビル

お申し込み先: http://www.dhw.ac.jp/ms2011/

(参加無料・2011年9月30日申込締切)


■プログラム紹介
研究者対談(13:00~13:40)
「ソーシャルメディアデザイン~ソーシャルメディアのこれまでとこれから~」

ビジネスでも活用されるようになったソーシャルメディアの活用法や、コミュ
ニケーションデザインのあり方などの「これまで」と「これから」そして「未
来のカタチ」を本学教授陣と株式会社エイベック研究所 代表取締役社長 武
田隆氏との対談形式でお話いたします。

ゲスト
武田隆氏(株式会社エイベック研究所 代表取締役社長)
橋本大也デジタルハリウッド大学教授
本多忠房デジタルハリウッド大学院准教授


基調講演(16:10~16:50)
「フューチャーセンターにみる新時代の研究~未来志向で問題を解くために~」
「未来志向で創造的に対話するための場」と定義されているフューチャーセン
ター。そこでは持ち込まれた複雑な課題に対して、「未来のステークホルダー」
を集め、オープンに対話し、共有可能な理想像を描き出します。メディアサイ
エンス研究所における研究体制の将来像のひとつとして、イノベーション・
ファシリテータ 野村恭彦氏にご登壇いただき、フューチャーセンターについて
メディアサイエンス研究所所長 杉山とお話いただきます。

ゲスト
野村恭彦氏(富士ゼロックス株式会社KDIシニアマネジャー)
杉山知之デジタルハリウッド大学学長 メディアサイエンス研究所所長


各研究室講演タイトル
13:00~13:30
小山昌孝研究室「制作業界向けコンテンツ制作共有基盤整備事業の研究」
高橋光輝研究室「日本のマンガ産業調査 中間報告」

13:20~14:00
黒田順子研究室「3DCG表現研究」

13:30~14:00
栩木雅典研究室「ARによる失われた歴史的都市(石山本願寺・寺内町)再現」

14:00~14:30
吉田就彦研究室「マーケティング研究部会/人材開発部会研究発表」
海老根智仁研究室「中国の宝塚歌劇革命」
南雲治嘉研究室「視覚の法則の再考」

14:30~15:00
三淵啓自研究室「知識ベース情報処理 から 体験ベース情報理解へ」
羽倉弘之研究室「S3D(立体視)映像研究開発および教育・啓蒙活動」

15:00~15:30
加藤洋研究室「キャラクターマーケティング、キャラクターツーリズムの研究」
本多忠房研究室「消費者心理とインタラクティブ・クリエイティブ」

15:10~15:40
杉山知之研究室「拡張が容易で管理しやすい新映像制作ワークフローの提案」
15:30~16:00
香田夏雄研究室「インタラクティブリアルタイムコンテンツの構築技術」
塩見政春研究室「クチコミを科学する」

16:00~16:30
佐々木直彦研究室「プロデューススキルの発展・応用」
吉田就彦研究室「森林・林業研究部会研究発表」

16:30~17:00
荻野健一研究室「メディアコミュニケーションプラットフォーム」

お申し込み先: http://www.dhw.ac.jp/ms2011/
お問い合わせ: daigakuin@dhw.ac.jp

詳細やお申込み
http://www.dhw.ac.jp/ms2011/

・かむろば村へ 1
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面白い。全4巻の漫画だがいっきに買っちゃっていいと思う。

東北らしい田舎の村に、都会で夢破れてお金アレルギー(お金に触れただけで失神する)になった青年タケが移住してくる。タケの信念は、何も買わない、何も売らないで、ただ生きていくこと。現金を一銭も使わずに理想の自給自足ができると思って村にやってきたのだ。だが農村の生活にだって現金はいるし、農業のやったことがないタケには、ひとりでいきていくことができない。そんなタケの哀れな姿を見かねた村長や優しい村人たちの好意にすがることで、村での生活が始まる。

この村には神様と呼ばれる老人(目が光る)だとか、村長と謎の関係のゲイでもぐりの食堂経営者だとか、動くカミサマの石像だとか、奇妙な存在がいっぱい登場する。ドタバタギャグであり、ミステリーであり、ファンタジーである。(ちなみに全4巻でおよそ伏線や謎の設定は説明される。)。

主要な村の登場人物たちは、それぞれがかなり複雑な過去を持っており、その過去から現在までの線は複雑に折り重なっている。村の実像をひもといていくパズルみたいな漫画である。ぐうたらなタケが引き起こす村でのトラブルを描いていて、これといって大事件は起こらないが、登場人物が魅力的なので4巻がとても短く感じられた。

先日から、いがらしみきお作品を読んでいるが、かむろば村 → アイ → Sinkの順で読むのがおすすめ。同一人物の作品とは思えないほど作風のバリエーションが広い。

・Sink
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/sink.html

・【アイ】 第1集
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/i-1-1.html

・ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変える
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スタンフォード大学の人気講義の書籍化。

ソーシャルメディアを使って個人や企業が社会的にインパクトのある活動をするための戦略を具体的なケースを挙げながら解説する本。同じ翔泳社刊の『グランズウェル』のアップデート版みたいな内容である。

ドラゴンフライエフェクトとは、日本語に訳すとトンボ効果である。トンボは4枚の羽を連動させて飛んでいる。私たちがソーシャルメディアを使って上空に飛翔するには、

1 焦点 目標を絞る
2 注目 目立つことをする
3 魅了 感情に訴える
4 行動 行動を支援する

という4枚の羽をうまく連動させなければいけないという意味である。

インターネットでお金を使わずに、個人や企業の活動を広く知らしめたいと思った時のノウハウ集である。たとえば、ネットの世界で目立つには、

私的さ 相手に私的関心を抱いてもらう
意外性 相手の好奇心を刺激する意外性を示す
視覚  写真や動画で視覚的に訴求しよう
感覚  視覚以外にも五感に訴えるキャンペーンを展開しよう

が大事であるとか、相手を魅了するには、

ストーリーを語る 言葉を尽くすよりシンプルで感動的な物語は効果が高い
共感する     相手の重大事に関心を寄せよう
信頼を得る    情熱的に、自分の価値観、信念をはっきり打ち出す
適切なメディアを使う 発信するメディアを適宜選ぶ

なんてことが大事だよ、という。それぞれのノウハウに主に欧米でのソーシャルメディアの企業活用例、成功例が紹介されている。

「バイラルの方程式」はクチコミの連鎖をとらえた広報戦略の考え方

(話をほかの人に伝えてくれた人の割合%)
×
(それらの人からの誘いが承諾された割合%)
×
(それらの人が誘いをかけた平均人数)=?

この計算で答えが1より大きければその話はバイラルに伝わる、という公式があるそうだが、具体的にそれがどういうものかというと、このニューヨークタイムズの7500記事を分析した研究者の論文の話がわかりやすい。感情を刺激する記事である。

・Social Transmission and Viral Cultur
http://opim.wharton.upenn.edu/~kmilkman/Virality_Feb_2010.pdf

畏敬の念、驚かせる記事、ポジティブな記事。そしてそれらについて人々がクチコミをしているのをみると、それをみたひとが一層興味が増して行動するものだという事実が、心理学的に証明されたそうである。

当たり前といえば当たり前だが、なかなかこれまでの企業組織内ではこういう面白い話をする人材が育たない。文章を書く能力があまり評価されていないからじゃないかという気がしてならない。ソーシャルメディアの時代には、デザイナーの地位とともに、ライターの地位ってもっと引き上げるべきだと思うなあ。重要なのだから。

・人質の朗読会
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異国でゲリラに誘拐された日本人の人質たちが、全員死亡する前に、長期に渡った監禁場所で密かに朗読会を行っていた。それぞれの人生の物語を文章にして読む朗読。そこには、それぞれの忘れられない思い出や、不思議な話、胸を打つ話し、さまざまな人生走馬灯の一コマが刻み込まれていた。事件後に、朗読会の録音が発見されたという設定で、9つの朗読が収録されている。

人質たちは結婚とか死別とか大事件のあった特別な日を語るわけではない。公園で倒れていた近所の鉄工所の工員を助けてあげた日の話、公民館の談話室にいっていろいろなサークルに参加してみた話、少年の頃、隣の家の娘が留守番中に訪ねてきてコンソメスープをつくって帰った話。どれも平凡な日常の中で少し違ったことが起きて、印象に残った話を淡々と語る。

小川洋子作ということで、非常に高いレベルで安定した文章、そして上品な余韻を残す作品群。もうちょっとスリルとかサスペンスとかあってもいいんじゃない?という少し手前でやめる。しかし、ゲリラに拉致されて全員が死んでいるという前提で読むと、なぜ彼らが人質のなっている日々に、その話を選んだのかの意味を、読者に考えさせ、深く読ませるしくみになっている。この構図がうまいんだなあ。

・博士の愛した数式
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/post-500.html

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フォトモザイクってコンピュータがなかった頃はつくるのが困難だったでしょうね。

少し前まではコンピュータがあっても、専門家でないと作り方がわかりませんでしたが、いまやiPhone一台あれば、大規模なフォトモザイクをつくれてしまうようになりました。
つくりかたは簡単。このPhoto Mosaicaを起動すると写真フォルダの分析が始まります。そしてフォトモザイク化したい写真を一枚選ぶだけ。素材としての写真がいっぱいあるほうが美しい仕上がりになるようです。

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このサンプルは私の息子が作った雨のしずくのようなキャラクター(嘘)ですが、フォトモザイク化してみました。プライベートな写真が混ざってしまうため、拡大はしませんが...。More Optionsから使いたくない写真は選ぶことができます。

photo

作成した写真は保存したり、TwitterやFacebookへ完成したフォトモザイクを送信したり、できます。さらに有料で追加できる機能もあります。フォトモザイク大好きな人は試すといいです。

Photo Mosaica - ZeMind Game Studio Ltd

寒灯

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・寒灯
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芥川賞をとった『苦役列車』の主人公、北町貫多のその後を描く続編。

同棲する彼女のヒモのような生活を送っている貧乏作家の貫多。短気な性格から些細なことに激昂し、自分に優しくしてくれる彼女に暴言を吐いてしまう毎日。作家でインテリなので、その暴言の内容が、衒学的で、巧妙で、重箱の隅をつつくかのようにネチネチと、厭らしい。こんな風にはなりたくないよなと思う男の厭らしさを、仮想的にたっぷり味わうのがこのシリーズの醍醐味であろう。それはまた男(女もか)なら誰しも少しは内面に芽を持っている厭らしさでもあるのだ。

本作の最後で話は一段落するわけだが、シリーズとしては『苦役列車』、『寒灯』ときてさらに連作あるいは三部作くらいになるのであろうか。鬱々と籠った内面の圧力が高まって爆発する瞬間がヤマになる筋であるが、主人公がひきこもりであるので、これといった事件が起こらない話だから、ワンパターンに陥る可能性はある。次回作以降でどういう変化をつけてくるかどうかが気になる。

・苦役列車
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1392.html

・あの日からのマンガ
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「『たとえ間違えているとしても、今、描こう』と思いました」しりあがり寿。

震災から一か月頃に発表された朝日新聞夕刊連載の4コマ『地球防衛家のヒトビト』と月刊コミックビーム発表作の読み切り中編からなる漫画作品集。すべて地震、津波、原発という難しいテーマを扱う。

ナンセンス四コマ漫画は、震災と原発にあたふたとする人々の姿を軽く笑い飛ばす。

主人公が「地球防衛家」なのに被災地復興へいかないのもおかしいだろうと、著者自身がボランティアへ行ってきて、そこで体験したことを漫画で報告するシリーズがある。

主人公は被災地から帰宅すると「3日か4日いただけだし、被災地は広いし、簡単にどうだったなんてとても言える事じゃないけど...」と前置きしながらも「いやまあ、ホントに大変でこんなこと実際にみるまでは...」としゃべりまくる、しゃべりたくなる。人間ってそんなもんだという可笑しみを4コマで表現する。

原発放射能をナンセンスに笑い飛ばした川下りシリーズも「セシウムちゃん」とか「危険な女」としてのゲンパツとか、きわどい擬人化で、フクシマ時代のシュールな笑いをとる。そして笑いの底の意味を読者に考えさせる、問題提起する。

なんといっても圧巻は中編の読切り漫画である。震災から50年後の日本の姿をSF的、寓話的に描いた『海辺の村』、震災後を懸命に生きる女性を描く『震える街』、死と再生をひとこともせりふを交えずに美しい映像にした『そらとみず』。この3作品は目頭が熱くなった。すばらしい傑作である。

iPhoneで写真を撮影するのが好きな人は使ってみると楽しい。

Photo Statsは、写真フォルダの中身を精査して、統計情報をわかりやすいイメージ(インフォグラフィック)にするアプリである。

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可視化されるのは、

・ 撮影地の地図上の分布図
・ トップ撮影地ランキング
・ 写真と画像の総枚数
・ 写真データのサイズ総計
・ 平均シャッタースピード
・ ISO値の割合
・ フラッシュ撮影の割合(iPhone4)
・ 撮影時間帯の分布
・ タテヨコの割合
・ 撮影数が多かった日付ランキング

などだ。すべてが画像として出力される。

私の写真フォルダには3595枚の写真と画像があった。この分析結果からたとえば次のようなことがわかる。

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たとえば最も撮影数が多かったのは、過去2年で2011年7月31日の78枚だった。2番目は2009年の11月2日の72枚だった、なんてランキングがみえる。

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こちらの図は一日の内で何時頃に写真を撮影することが多いかをみせる図だ。私は午後がおおいのか。

Photo Stats - infographic creator for your iPhone photos - Dear Future Astronaut AB

こんなイベントをOpenOvalとデジハリの共催で開催します。

 チャリティイベント
「3.11 いまデジタル系の私たちにできること」
 ITから復興再生を考える講演会と討論会

未曽有の大震災から半年が経ちました。多くのボランティアや支援者たちが、被災地の、そして日本の復興再生に向けて、さまざまな活動をしています。このイベントでは、大規模災害発生時や復興のプロセスにおいて、エンジニア、ビジネスプロデューサー、クリエイターといったIT系、デジタル系の私たち個人が、どんなことができるかを改めて見直してみたいと考えています。

『災害とソーシャルメディア ~混乱、そして再生へと導く人々の「つながり」~』の著者である小林啓倫氏をお招きして、3.11直後にソーシャルメディアやデジタル系の個人がはたした役割についてお話しいただきます。

第一部 災害とソーシャルメディア いま私たちにできること

第二部 有志のミニプレゼンと参加者を含めた討論会

復興支援活動に関わった有志(現在選定中)や会場の参加者、デジタルハリウッド大学のメンバーによるミニプレゼンと、第一部講演を受けての討論会を実施します。

第1部 ナビゲーター: 橋本大也 データセクション株式会社取締役会長、デジタルハリウッド大学教授
第2部 ナビゲーター: 石橋秀仁 ゼロベース株式会社 代表取締役社長/ウェブ・アーキテクト

【概要】

日時:2010年9月22日(木)19:45会場(20:00開演)
場所:デジタルハリウッド大学 メインキャンパス(秋葉原ダイビル7F)
   千代田区外神田1−18−13 秋葉原ダイビル7階
定員:100名
参加費:当日3,000円、デジハリの学生は無料
参加方法:下記お申し込みフォームより登録してください。どなたでも参加できます。
http://gs.dhw.ac.jp/event/110922/index.html

■■ このイベントにかかる経費を引いた利益はデジタルハリウッド大学を通じて、日本赤十字社に寄付をいたします。 ■■

参考図書:『災害とソーシャルメディア ~混乱、そして再生へと導く人々の「つながり」~』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4839939411/
目次
第1章 ソーシャルメディアが可能にした災害時コミュニケーション
第2章 ソーシャルメディアを支援するもの
第3章 社会を動かすソーシャルメディア
第4章 デマの問題と対策
第5章 ソーシャルメディアの今後

■小林啓倫(Akihito Kobayashi) 氏
ITジャーナリスト。1973年東京都生まれ、筑波大学大学院卒。国内SI企業、外資系コンサルティング会社、米国でのMBA留学等を経て、2005年より国内コンサルティングファームに勤務。また「PolarBear Blog」および「シロクマ日報」の2つのブログを運営するブロガーでもある。著書に『AR-拡張現実』『リアルタイムウェブ-「なう」の時』(マイコミ新書)ほか多数。ツイッターIDは"akihito"。

主催:デジタルハリウッド大学院、同大学橋本研究室、先端研究集団OpenOval

・本はどう読むか
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昭和の社会学者 清水幾太郎の体験的読書論。

第一次世界大戦の頃、少年だった著者は青少年向けの時代活劇「立川文庫」に夢中になる。忍術、殺人、遊郭、拷問、強姦が随所に出てくるのがよかったと率直にはまったきっかけを書いている。やがて、それに飽きると、詩集や哲学書など、より高いレベルの面白さを求めて、難しい本を読むようになる。その読書遍歴の動機を「虚栄心に駆り立てられて」だとか自分だけの「秘密」の読書などという、わかりやすい説明で明かす。

著者は本を3つに分類する。

実用書 生活が強制する本
娯楽書 生活から連れ出す本
教養書 生活を高める本

実用書は読まざるを得ないから読むのだし、娯楽書は好きに読めばいいのだから、として主にこの読書論は教養書の読み方に重点を置いている。教養を高めていくための読書術、メモのとり方、選び方、整理のしかた、外国書の読み方が主な内容だ。

読書や探究には、いくばくかの不純な動機や刺激、悪徳があったほうが向上しやすいのではないかという意見が面白い。清水幾太郎といえば東大を出て、読売新聞論説委員から、学習院大学教授になった人である。

「哲学の歴史や諸科学の歴史を調べてみると、真理への愛だけが学者たちを動かしていたのでないことに気づく。もちろん、真理への愛がなかったら、何事も始まりはしないが、それと相混じて、虚栄心を初めとする醜い悪徳が彼らを駆り立て、しかも、そこから思わぬ業績が生まれていることがある。同僚を蹴落とそうとして、その学説に反対したり、有名になろうとして、極端な学説を編み出したり......、それがはからずも、立派な成果を生むことがある。」

欲望に駆られて知的探求をする。それがこの人流の読書術、探究術ということの基本みたいだ。

初版が1972年なので、「マスコミ時代の読書」では、活字メディアに対して、テレビという映像メディアが現れてきたとして、ふたつを比較しているところは時代を感じる。知識のカード・システムによる整理というのも、いまなら主にパソコンで管理するものだろう。一部記述が古くなった部分はあるものの、紙の読書論としてはいまもなお学べる記述が多い古典である。

・読書術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1103.html


・読書論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-932.html

・読書について
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-913.html

・読書という体験
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-569.html

読書の歴史―あるいは読者の歴史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1047.html

今年度のソーシャル読書セミナー第2回は9月22日です。著者をお招きしてご著書についてのご講演と、参加者とのディスカッションをするイベントです。

次回は「アナロジー思考」東洋経済新報社の著者 細谷 功氏を講師に迎えて、私がナビゲーターをつとめます。ビジネス、経営、リーダーシップ、先端ITの話題と、参考図書に限らずオモシロイ書籍の話題を広げていく予定です。

今年は参加者の相互交流による人脈づくりのお役にも立ちたいと思っております。興味のある方、ぜひお気軽にご参加ください。

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多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所・大手町サンケイプラザ同開催
ソーシャル・リーダーシップセミナーのご案内
http://www.ikls.org/archives/274
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http://www.ikls.org/archives/281

        The Institute of Knowledge Leadership Studies, Tama University
(IKLS)
多摩大学 知識リーダーシップ綜合研究所
大手町サンケイプラザ 共同開催

2011年9月ソーシャル・リーダーシップセミナーのご案内
2011年9月

多摩大学 知識リーダーシップ綜合研究所(IKLS)は、知識経営の観点から、日本経済の今後の躍進を担うリーダー、リーダーシップに関する総合的な研究を行うために設立されました。

【ソーシャル・リーダーシップセミナー】
ソーシャル・リーダーシップセミナーは、書評アルファブロガー、橋本大也(研究所客員教授)のナビゲートで話題の本、話題のテーマについて、直接著者をお招きしながら議論する、対話形式の読書会です。参加者の相互交流を交え、互いに成長できる実践的学習の場を目指します。

【2011年9月20日】

■ 地頭力を鍛える!~アナロジー思考を考える~
  特別講師  細谷 功 (株)クニエ マネージングディレクター

  ファシリテーター 橋本大也 研究所客員教授
  参考図書「アナロジー思考」東洋経済新報社

不確実な時代を生き抜くための「地頭」とは何なのか?トップコンサルタントでベストセラーを送り出す細谷様とともに、思考を深めていきましょう!

細谷功様 略歴
1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(ザカティーコンサルティング、そしてクニエの前身)に入社。製造業を中心として製品開発、マーケティング、営業、生産等の領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定着化、プロジェクト管理、ERP等のシステム導入およびM&A後の企業統合等を手がけている。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『いま、すぐはじめる地頭力』(大和書房)、『「WHY型思考」が仕事を変える』(PHPビジネス新書)、『象の鼻としっぽ』(梧桐書院)などがある。

・ 開催日時  18:30~20:30(18:00開場)
・ 費  用  5,000円
        軽飲食付のカフェ式イベントとなります

      会  場  大手町サンケイプラザ
      (東京メトロ大手町駅A4、E1出口直結))
          http://www.s-plaza.com/map/index.html

■10月以降のセミナーゲスト告知
・2011年10月19日 一條 和生 一橋大学国際企業戦略研究科教授
・2011年11月22日 平井 孝志 株式会社ローランド・ベルガー取締役パートナー
・2011年12月12日 野中郁次郎 一橋大学名誉教授
是非、お楽しみにお待ち下さい!

■お支払いについて
本セミナーは、受付にて当日のお支払いとなります。なるべく釣銭の無いよう会費のご準備をお願いします。また開始直前は受付が大変込み合うかと思いますので、早めの来場をお願いします。

■お申し込み方法
必要事項を下記アドレスまで返信ください。

大手町サンケイプラザ セミナー申込窓口

◆ seminar@s-plaza.com
お申込メールの必要事項
1 お名前
2 ふりがな
3 ご連絡メールアドレス
4 会社名
5 部署名

当日は参考図書が読まれている前提で進行いたしますので、なるべくお読みになったうえでご参加ください。

多摩大学 知識リーダーシップ総合研究所
〒108-0075
東京都港区港南2-14-14 品川インターシティフロント5階
http://www.ikls.org/
担当 片岡
kataoka@ikls.org

* 当セミナーは多摩大学知識リーダーシップ総合研究所とサンケイプラザ(株式会社サンケイビル)との共同開催となります。お申し込み時にいただいた個人情報は今後両者が主催する催し物、セミナーのご案内の際に使用させていただきます。今後、ご案内が不要の方は、お手数ですがメールにてご連絡いただけますようお願いいたします。
以上

・「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱
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世代論のネタとして秀逸。

アニメオタクではなくて経営戦略コンサルタントが書いた本なので、深いサブカルチャー論は期待してはいけないのだが、40代中心でタテ社会的「ガンダム世代」と20代中心のヨコ社会的『ONE PIECE』世代の対立という、大きな見立ては、かなりの説得力を感じた。

「『機動戦士ガンダム』に影響を受けた世代は、組織は理不尽なものと理解しつつも、そこに所属することをよしとしている。一方で、『ONE PIECE』世代に影響を受けた若い世代は、組織への所属よりも仲間への所属をよしとしている。」

「若者は、彼ら自身が第一の軸と考える「仲間」をとても大切にしていて、コミュニケーションも濃密に取る傾向がある。その一方で、第二の軸である「勤めている会社」などに対しての所属感はそれほど強くはない。さらに大きな「日本社会」という軸に対しては、所属という感覚はとても希薄になる。」

ガンダム世代の私はワンピース世代が気になる。著者によると、ワンピース世代は、身内に対するコミュニケーション能力が非常に長けている。出世よりもお金よりも「自由」を愛する。完全な自由を得ることが成功である。自分の意見を持つ前に、意見をネットで検索する世代だ、など、そうかもなあという見立ての話が続く。

もちろん世代全部が同じ属性のわけはないし、いつの世でも普遍の若者の属性、オジサンオバサンの属性があるはずだとは思う。しかし、ガンダムとワンピースという世代に圧倒的な人気を誇った漫画に、各世代の生き方のイメージを読みとるアプローチは、わかりやすいし共有しやすい。社会学的にデータをもとに世代を論じることも有益だが、わかりやすい見立てこそ、実践の場で使う知としては重要だと思う。今後、社会学者たちが、ワンピース世代、ガンダム世代を検証したらさらに面白いテーマになるだろうなあと思う。

ネガティブな言い回しをポジティブに変換する ネガポ辞典 iPhoneアプリ

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ネガティブな言い回しをポジティブに変換するための辞書。

これはかなり使える。

「浮気性」は「人の良いところを見つけるのが上手い」

「偉そう」は「リーダーになる素質がある」

「協調性がない」は「自主性がある」

など、ひとつのネガティブ表現に対して、3つのポジティブな言い方が登録されている。ネガティブなことを言いたくなったら、ささっと検索して、ポジティブで表現してみたら、コラボレーションがうまく進むことは多いはず。

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しゃべるときにはいちいち人前で辞書を引くわけにいかないが、メールを書く時にとくに使える。誰かに批判的な意見を柔らかく書きたい時に、何度かこの辞書に助けられた。

気になる表現についてはお気に入りに登録して一覧できる。

女子高生が考えた"心のアプリ"だそうで2010年秋、全国高等学校デザイン選手権大会(通称デザセン)で、全国第3位に輝いた、とのこと。コミュニケーションを大切にする世代の発想らしい。

ネガポ辞典 - Hokkaido Arbeit Johosha Co.,Ltd.

・ウルトラQ彩色版
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ウルトラQは1966年に放映されたウルトラシリーズ第一作の特撮テレビドラマ。ウルトラQの特徴は、ウルトラシリーズなのにウルトラマンが登場しないこと。怪獣は出てくるが、それと戦うのは人間だけである。ウルトラマンは2作目の『ウルトラマン』からだったのだ。

ウルトラマンがいないウルトラQでは、毎回怪獣を決定的に倒せるとも限らず、これどうなっちゃうんだろうという緊張感があるのが、ウルトラマン以降にはない、ドラマとしての魅力である。

ウルトラQ全記録
http://homepage.mac.com/onishi2/index.html
同番組のファンサイト。データベースが充実。

オリジナル映像はモノクロだが、この秋に全作カラー化されてDVD、ブルーレイ『総天然色ウルトラQ』が発売されることになった。そのタイミングに合わせて、マンガの彩色版が発売された。安定した作画能力を持つ藤原カムイ作。

「ペギラが来た!」「地底超特急西へ」「バルンガ」「ガラダマ」「2020年の挑戦」「悪魔ッ子」の6作品。ストーリーはテレビドラマの原作をかなり忠実に漫画化している。文字化されてはじめて気がついた発見もあった。原作を観ているととても楽しめる。(いきなり漫画を読んで面白いかどうかは私には判断できない。)

藤原カムイの描く二次元の怪獣は、オリジナル映像の持つ不気味さ、異質さをうまく再現しており、大きなコマ割で描かれたペギラとかケムール星人は、しばしページをめくる手が止まって見入ってしまった。

ウルトラ怪獣DVDコレクション(1)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/dvd1.html
モノクロSFX作品にハマる アウターリミッツ、ミステリーゾーン、ウルトラQ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/07/sfxq.html

・教養としてのゲーム史
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ゲームの「進化の系統樹」がよく整理されている。

たとえば最初に紹介されているのは、

ポン → ブレイクアウト → インベーダー → ギャラクシアン → ギャラガ

という進化系。単純なテニスゲームのポンにブロック要素を加えるとブレイクアウトになり、ブロックが動くインベーダーに進化して、さらに自由度の高い動きをするギャラクシアンができて、合体などの要素が加わるとギャラガになる。

ほかにも

ヘッドオン → 平安京エイリアン → パックマン
ドンキーコング → マリオブラザーズ → スマブラ
ウルティマ、ウィザードリィ → ドラクエ
ドルアーガの塔 → ハイドライド → ゼルダの伝説
プリンセスメーカー → 同級生 → ときメモ → ラブプラス 

などなど、主に画面の見立てを軸にして系統を有名なゲームを挙げながら説明していく。80年代から代表的なゲームを遊んできたという人ならば、頭の整理ができて気持ちがよい体験が味わえる。

果たしてこのやり方で、数千、数万もあるゲームのすべてをわかりやすく進化の系統樹で説明できるのかどうかわからないが、この取り組みはビデオゲームの考古学で有効な分類法だと思う。今後の著者の集大成に期待したい。

ゲームの進化の歴史には開発上のドラマやハプニングもあったことが紹介されている。制約を魅力に変えたインベーダーの開発エピソードなんて特に面白い。インベーダーでは敵を倒すほど、動きが速くなってエキサイティングになるわけだが、あれは実は制約由来だった。現代の富豪的プログラミングの状況では生まれなかったかもしれない演出だったわけである。

「スタート直後にインベーダー軍団が一匹も欠けていない状態では、描きこむドットの数が多い分だけシステムの負担も大きく、動作も重い。が、インベーダーが倒されて数が減ると、処理能力にも余裕が生じて、移動スピードや攻撃も速くなる。ハードの弱点となるはずの特性が、逆に展開にスリリングな緩急を与えたのである。」

当時はユーザーも、画面上に巨大なボスキャラクターがうごめいたり、複数の敵キャラが高速に同時に動き回るのをみると、素直に感動したものだ。ゼビウスで描きこまれた地面がスクロールするのを唖然としながら見ていた人も多かった。ゲームってどんどん進化しているなあと言う感覚が日常的にあった。あの80年代の日々がゲーム進化のカンブリア爆発だとすると、高機能・高精細のゲーム環境になれてしまっている現代は進化が停滞している気がするなあ。

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