人質の朗読会

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・人質の朗読会
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異国でゲリラに誘拐された日本人の人質たちが、全員死亡する前に、長期に渡った監禁場所で密かに朗読会を行っていた。それぞれの人生の物語を文章にして読む朗読。そこには、それぞれの忘れられない思い出や、不思議な話、胸を打つ話し、さまざまな人生走馬灯の一コマが刻み込まれていた。事件後に、朗読会の録音が発見されたという設定で、9つの朗読が収録されている。

人質たちは結婚とか死別とか大事件のあった特別な日を語るわけではない。公園で倒れていた近所の鉄工所の工員を助けてあげた日の話、公民館の談話室にいっていろいろなサークルに参加してみた話、少年の頃、隣の家の娘が留守番中に訪ねてきてコンソメスープをつくって帰った話。どれも平凡な日常の中で少し違ったことが起きて、印象に残った話を淡々と語る。

小川洋子作ということで、非常に高いレベルで安定した文章、そして上品な余韻を残す作品群。もうちょっとスリルとかサスペンスとかあってもいいんじゃない?という少し手前でやめる。しかし、ゲリラに拉致されて全員が死んでいるという前提で読むと、なぜ彼らが人質のなっている日々に、その話を選んだのかの意味を、読者に考えさせ、深く読ませるしくみになっている。この構図がうまいんだなあ。

・博士の愛した数式
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/post-500.html

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このページは、daiyaが2011年9月12日 23:59に書いたブログ記事です。

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