2012年2月アーカイブ

・日本の歴史をよみなおす
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「聖徳太子は倭人であっても日本人ではない」

中世までの日本史観を大きく変えた網野善彦の名著の文庫版。続編も収録。

日本の社会は十四世紀の南北朝動乱以前と以降では大きく変容しており、その転換期を調べることで、中世日本のイメージをとらえなおす。そこには教科書的常識とは大きく異なる、現代と異質の文化・社会が広がっていた。

民衆の生活や風俗に目を向けることで、時代の本質が見えてくる。たとえば被差別対象の非人はかつては違った意味を持っていた。著者は非人とは中世以前はケガレに関する職能であったと指摘する。日本文化のケガレとは「人間と自然のそれなりに均衡のとれた状態に欠損が生じたり、均衡が崩れたとき、それによって人間社会におこる畏れ、不安と結びついている」ものだが、十四世紀を境に社会が文明化されるに従い、ケガレに対する見方が畏怖、畏敬から、汚く汚れた忌避すべきものという現代の感覚に変わっていった。

「非人は神人・寄人と同じように、一般の平民百姓とははっきり区別されており、不自由民である下人、つまり世俗の奴婢ともまったくちがう存在で、神仏の「奴婢」として聖別された、つまり聖なる方向に区別された存在であり、ときに畏怖、畏敬される一面ももった人びとであったといわなくてななりません。」

非人はケガレを清める力を持った聖別された職能民として社会に位置づけられていたのだ。後に卑賤視され差別へとつながっていったわけだが、当時は現代社会とは異質の社会構造があることが明らかになる。

「海賊」「悪党」が交通路の安全や手形流通の保証に密接に関わっていたとみられることや、公的世界からは排除されていた女性が現実には力を持っていたことなど、歴史の表舞台から消されてきた存在に光を当てていく。

そして網野史学の大きな特徴が農本主義的中世の見直しだ。農業を基礎にした封建社会という旧来の中世観に異議を唱える。百姓=農民ではないというのだ。既に中世社会では商業資本、金融資本が動き、貨幣制度が機能し、海の交易も活発だったことが史料からわかっている。統計的には百姓に分類されているが、その他の職業を兼業している人口も多かったはずなのだ。少数の貴族と武士の支配階級、その他は貧しい農民というステレオタイプは嘘なのである。資産を持つ商業民だって大勢いたのである。

網野善彦は、ケガレ、非人、遊女、海賊、悪党...。中央政府や為政者の歴史ではなく、名もなき民衆、周縁とされてきた人々の社会と風俗に重点をおいて歴史を語る。国家の歴史ではなく、本当の日本人の歴史を読んだ気がした。

・喜びはどれほど深い?: 心の根源にあるもの
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人間の奥深い欲望は適応の結果ではない?
イェール大学心理学部教授ポール・ブルーム著。

食、愛、芸術、スポーツ、想像、苦痛、科学、宗教。さまざまな喜びの根源には、超越的な存在を求める「本質主義」があるという。本質主義とは「事物には、直にとらえることのできない根源的な実体ないしは本来の性質があり、本当に重要なのはその隠れた性質だとする考え方」のこと。

著者らが行った実験では、有名人の着ていたセーターと殺人犯の着ていたセーターを被験者にみせる。もちろん有名人の着ていたセーターの方に高い価値を見出される。しかし、これを殺菌消毒してしまうと価値が下がってしまう。セーターから、なにか大事なものが失われてしまったと被験者は感じたのだ。

それはもちろん汚れや匂いという具体的な何かだけではあるまい。モノの背後に宿った何か、すなわち著者が言う「本質」が人々を惹きつけているのだ。それは中国と日本の「気」、フランスの「エラン・ヴィタール」、マオリの「マナ」、英語の「ライフ・フォース」とも呼ばれる。

科学者の実験では、有名な画家の作品だとわかっている絵画、有名な奏者によるものとわかっている演奏に人々は、純粋に作品自体が持つ影響を超えて、強く惹きつけられた。高価なワインの味に喜びを感じるのは、その味わいと香りのせいではなく、そのワインへの思い入れにもよる部分が大きい。音楽ならCDの完璧な演奏よりも、生の演奏に人は深く感動する。カニバリズムに吐き気をもよおすの理由。人間の心の持つ本質主義こそ、人間の欲望を果てしないものにしているというのだ。

超越的なもの、奥深い実在とのつながりを持つために人間は想像力を使う。想像力は宗教と科学を生みだした。数千人の子供を動員した実験では、子供たちの集団に自然にスーパーパワーを引き出す「儀式」が考案される様子が観察されたという。人間は生来的に超越存在を信じる性質がある。フィクションもまた本質を説明するための道具だ。そして隠れた存在を明らかにするためのもうひとつのアプローチとして思考と実験がある。人間のやることなすことのベースが本質主義なのだ。著者は適応主義で説明できない進化の秘密を明らかにするキーワードだと結論する。

認知心理学や脳科学の最先端をのぞきながら「本質」にたどりつく旅が楽しめる本。

・スーパーセンスーーヒトは生まれつき超科学的な心を持っている
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1396.html

・魚は痛みを感じるか?
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魚は痛みを感じるか

世にも奇妙な、科学者による魚の福祉の本だ。

昔、活き造りを前にして、魚は痛みを感じないんだよ、と教えられた記憶がある。それ以来、単純に魚は痛みを感じないものと信じてきた。犬や猫、あるいは牛や豚が、目の前で切り刻まれて、痛くてのたうちまわっている様子をみたら耐えられない気持ちになるだろう。でも、魚の活き造りは少し気味が悪いし、後ろめたさも感じるが、哺乳類ほどではない。

生物学者の著者は研究資金を得て魚が痛みを感じるかというユニークな研究した。痛みを感じるという現象は複雑だ。まず魚の神経組織に損傷を検知する侵害受容体があるかを調べ、脳にその信号が伝達された結果、魚の行動が変わるかを実験で明らかにしていく。痛みに苦しむためには何らかの意識が必要だ。そして意識に似た現象が魚の脳に発生しているかを観察で見極める。出た答えは、おそらくYes、魚は痛みを感じるといってもいいという結論だった。さらに魚の意識は人間の赤ん坊並みである、とも言った。

この研究発表はメディアでセンセーショナルに取り上げられ、多方面に物議を醸した。最初の批判は、著者が虚偽によって釣り愛好家を迫害しているというものだったそうだ。魚に高度な意識があって痛みに苦しむのなのならば、捕獲や屠殺をするにあたり他の動物と同じレベルの配慮を行わなければならないことになる。

魚は針にせよ網にせよつりあげられるとき、水中で長時間、強度の苦痛を味わう。そして船にあげられ、のたうちまわり、空気中で窒息して死ぬ。深海の魚は膨張して内臓が口や肛門から飛び出し目は膨れあがる。もし彼らが意識を持ち、苦痛を感じているならば、こうした行為は倫理的に許されないというグループが魚類の取り扱いの規制法案を提出するかもしれない。実際、欧米ではクジラはそういう扱いになっているわけだから。

欧米でも日本でも、家畜の屠殺は動物が過度の苦痛を感じないように配慮されて行われる。多くの哺乳類や鳥類の虐待は違法行為になる。釣り針でひっかけて引きずり回すなんてもってのほかだ。著者が実験で使う研究用の魚も脊椎動物であるがゆえに、扱いにいくらかの規制はあるのだそうだ。そう考えると漁業や釣りの対象の魚の扱いは野放しにされていることになる。

著者は魚を福祉の対象に引き上げるべきかについては、科学者らしく中立の立場のようだが、検討に値するデータとして自身の研究を世に出したようだ。魚を食べる文化の日本ではこれがまともに生命倫理の問題に発展して行くことは考えにくいが、百年くらいしたら、キリスト教系の動物愛護精神が発達する国では、常識になってしまうのかもしれない?

哺乳類と魚類、そして他の動物とどこに倫理の線を引くべきなのかと著者は自問自答しているが、やはり、自分が食べる文化にいるかどうか、ではないか。刺身が切り刻まれた遺体と感じる人と、おいしい食材と感じる人が論理的に話し合っても、結論はでなさそうだ。クジラも魚も魅力的な食文化を広げておくことが、魚文化に生きる私たちの取るべき戦略ではないかな。

#注、もちろん魚の福祉は欧米でも一笑に付されるマイノリティであるはずです、現状は。

・快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか
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脳神経科学者が書いた快感回路=脳の報酬系の科学。

セックス、薬物、アルコール、高カロリー食、ギャンブル、ゲーム、学習、エクササイズ、ランナーズハイ、慈善行為、瞑想といった快感回路を作動させる行為が人間にもたらす影響を論じる。

実験用ラットの脳の快楽中枢に電極をつなぎ、ラット自身がレバーを押すと電気刺激が流れるようにした。レバーを押すと快感が走ることを学習したラットは1時間に7000回もレバーを押し続けた。1時間は3600秒であるから約0.5秒に一回、狂ったように押していたわけだ。レバーにたどりつくまでに足に電気ショックを受ける場所を設けても、ラットはそれを踏み越えてレバーの前へ行った。メスのラットは産んだばかりの赤ん坊を放置してレバーへ走った。中には1時間2000回のペースで24時間もレバーを押し続けたラットもいたという。

食べ物やセックスによって快感が引き出されるように進化した我々の身体。脳への直接の電気刺激や薬物作用を使えば快感回路は容易に乗っ取られてしまう。これが悪徳の抗いがたさの原因だ。報酬系の暴走は依存症や異常行動の問題を引き起こす。

だが、もちろん快感回路にはよい側面もあるという。

「現在では脳スキャンにより、生きている脳の中で快感回路が活性化している様子を観察することができるようになった。当然のことながら、この回路は<悪徳>的な刺激で活性化する。オーガズム、甘くて脂肪たっぷりの食べ物、金銭的報酬、ある種の向精神薬などだ。しかし驚くべきことに、<美徳>とされる行動の中にも、同じ効果をもたらすものが多い。趣味のエクササイズ、ある種の瞑想や祈り、社会的な評価を受けること、慈善的な寄付行為さえも、快感回路を活性化しうるのだ。」

進化の最先端にいる人類は、抽象的な心的構成概念によって快感回路を働かせる「スーパーパワー」を手にしたと著者は結論している。つまり、想像力によって生存とは無関係のあらゆることを快感にしてしまうことができるようになったのだ。

人間が、社会的な善に強い快感を感じるように導けば、70億人が総マザーテレサ化することも、ありえるのかもしれない。快感を自在に得るテクノロジーの研究や、快感と依存症を切り離す方法も着々と研究されている。個人が欲望を高等な社会的行動へと昇華する日未来にはくるのかもしれない。著者は最後で快感の未来について依然「政治と商売に左右される悲惨な状況」が続くだろうと悲観的にみている。歴史的に見ても、快楽に関係する儲かるネタは、過剰に税金がかけられたり、恣意的に規制されたり、常に権力に翻弄されてしまうのだ。

これまで宗教や道徳が快感回路の安定化に一役買ってきたわけだが、肥大化した経済原理によって、回路のたがははずれてきている。快感テクノロジーの発展によって人間がラットみたいにならない方法が必要とされている。多様な快感の在り方を知って、それは毒を毒で制するが如く、快感を別のレベルの快感で制御するようなやり方なのではないか、と思った。

・つきはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1072.html

同じ著者の本。

無印良品 文庫本ノート
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4547315338160
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無印良品の文庫本ノートをはじめて使ってみた。

文庫本と同じ製本手法でつくられた144枚のノート。定価147円と安い。

文庫本と同じサイズなのでとにかく携帯しやすい。アイデアを書きとめるのに、つねに持っていることが大切。これならコートやダウンジャケットのポケットにも収まる。

144枚というのはノートとしてはかなり厚い。薄い50枚版もあるが、これくらいの厚みがあった方が文庫本らしさがでている。どんどん書きなぐるって使っていくのがよいのだろう。無印通販サイトをみると筆談用に使っているというユーザーもいた。

見かけが本そっくりなので、おしゃれなカフェで広げても、"ここ、ひとりだけ仕事してます"感がでない(上の写真はそれをやってみたの図)。カフェに籠って丸1冊分アイデアを書くまで出ないとか、自己強制ブレストツールにもよいかもしれない。

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赤いヒモのしおりがついている。どこまで使ったかがすぐにわかって、次にひらくときに便利。

透明カバー(別売り)をつけると汚れの心配がなくなる。他にも市販の文庫本用カバーが豊富にあるし、自分の好みのカバーを自作するというのも楽しそう。

iPhoneアプリ 終電/始発チェッカー

私の場合、通勤時間が片道1時間半。これは本を読むのにはよいのだが、終電時間を把握していないと夜に帰れなくなる心配のある距離感。

出発地と到着地を入れるのが簡単。駅名や住所を指定するやり方に加えて、GPSを使って現在地を選ぶオプションがあって、いまいる店の最寄りがどこかすぐにわからなくても大丈夫な仕様。

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検索結果はYAHOO乗換案内とGoogle乗換案内の二つを切り替えてみることができる。今のところYAHOOの方が情報としては詳しい。

位置情報は一度指定すると記録され、次回から入力する必要はなくなる。出発地と到着地を一発で入れ替えるボタンがあるのは親切。

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日付も選べるので、スケジュールを立てるのにも使える。終電だけでなく始発も調べることができる。

終電/始発チェッカー - mymapplus.com


・幸福の計算式 結婚初年度の「幸福」の値段は2500万円!?
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お金で幸福は買えるのか?
幸福の度合いを金額に換算できるのか?
例:結婚は2500万円の価値がある?

人々に定期的に幸福度を自己申告してもらう。結婚や離婚、昇進や昇給、転職や失業、こどもの誕生や大事な人との死別、宝くじにあたるなどの大きな出来事があった人たちの、前後の幸福度の変化を調べれば、各外的要因の影響力の大きさがわかってくる。たとえば1万円の昇給は1ポイントの幸福度の上昇につながるといったように、金額に出すことも不可能ではない。妻と死別するとか子供が誕生するというのがいくらなのかも同様に計算できてしまう。

こうした"幸福計算"は200年前にイギリスの経済学者ジェレミー・ベンサムが提案して以来、研究が続けられ、ずっと注目と批判にさらされてきた。まずデータの取り方が難しい。単なるアンケートで本当の幸福度が取れているかわからない。そして、その人の性格特性や置かれている環境が幸福度に大きな影響を与えることがわかっている。外的要因と内的要因の両方の影響度を分離することが極めて難しかったのだ。

外向性、協調性、誠実さ、経験への開放性という性質をもつ人は、人生に対する満足度や幸福度がとても高い傾向があり、神経症的な性格の人はなかなか幸福を感じない。年齢によっても幸福を感じやすい時期とそうでない時期がある。

お金で買えないものの金額を算定することにも意味はある。死亡や障害の賠償金を計算する際にこうした計算式は必要であるし、社会福祉などの政策を考えていく際にも統計的なデータは参考になる。

そして個人の幸福を考える際には適切ではないにしても、幸福度の統計データは実に面白い。こんなことがあると(あなたの場合はどうかわからないが)一般的には何ポイントくらい幸福度が上がります、または下がりますという目安がわかるからだ。同時に幸福と不幸の持続時間もはわかる。

たとえば子供が生まれる体験は大きなようでいて実は35万円くらいの幸福でしかない。宝くじが当たった人は直後はあまり幸福ではなく2年後くらいに幸福を感じる。離婚や親族との死別からも大抵は数年で立ち直れる。希望の会社に転職できても通勤時間が長くなるとあまりハッピーにならない。意外な数字がいろいろと紹介されている。

幸福を感じやすい人は収入が多いという研究もあった(これは変数の取り方に因るので結論ではないが)。お金があるから幸福というより、幸福な人は結果的に高収入になるという見方もできるようである。収入を増やすことよりも性格特性を変えることのほうが手っ取り早い幸福への近道なのかもしれない。

まあ性格を変えるというのも大変ですがね。

東京ウォーカーとか出没!アド街ック天国とか、タウン情報が好きな人におすすめの位置情報アプリ。いつか行きたい場所の情報をあらかじめ登録しておけば、その場所に近づいた時にアラートしてくれる。

午前の営業先に行った時に、近所のランチ店がアラートされたら、あとで寄って行こうなんていうことがわかってうれしい。いつか旅行に行ったら立ち寄ろうと思っている遠いお店でも忘れないでいられる。メモ帳に書いておくよりもリマインド確実だ。

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PCとの連携ができるのがうれしい。食べログ、ぐるなび、Google プレイス、ホットペッパーなどを見ていて気になる店があったら、アドオンツールを使ってブラウザーから一発で登録することができる。

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http://willgolater.com/

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Webでは、みんなの登録スポットが一覧できる。おすすめスポットもある。気になる店が多いので、おすすめリストごと登録できるといいなあ。

Will go later あとで行く場所を忘れないためのおでかけアプリ - KAYAC Inc.

・性欲の科学 なぜ男は「素人」に興奮し、女は「男同士」に萌えるのか
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タイトルがストレートすぎるが、内容はいたって真面目な科学読み物である。進化生物学と脳の認知系の研究者が書いている。この分野では研究者たちは、性器にセンサーをつけての実験、きわどい単語が並ぶアンケートなど、データをとるのがとても困難な研究テーマに挑んでいるわけだが、近年、実に貴重な研究用データの鉱脈を掘り当てたそうだ。それはインターネットである。

この本の前半の圧巻はネットの利用調査の紹介だ。検索エンジンに入力された4億のキーワード、65万人の検索履歴、4万のアダルトサイト、数千の官能小説サイトなどをデータマイニングすることで、ネット上の性的欲望の実態を明らかにした。これが興味本位的にも、科学的にも極めて面白いのだ。

4億のキーワードのうち、13%にあたる5500万の語句がエロチックコンテンツを探すためのキーワードだった。5500万のキーワードの80%は20の興味対象に分類できてしまうという。ほとんどの人は大勢の人と性的欲望を共有していることになる。そしてあなたが自分は相当特殊だと思っていたとしても、同じ嗜好を共有する人はかなり多いということでもある。

ネット上では男性は映像とあからさまな性描写を好み、女性はストーリーと人間関係やロマンスを好む。有料アダルトサイトの訪問者の75%が男性だが、25%は女性なのだ。女性向けロマンス小説は電子書籍でも人気商品である。だが女性はなかなか有料コンテンツを買わない。なぜか?。

脳科学では限られた数の「セクシュアル・キュー」が性的欲望のソフトウェアを起動させるということがわかってきた。たとえば女性のウエスト対ヒップの比率が7:10のとき、それを目にした多くの男性の大脳の前帯状回という報酬処理に関係する部位が活性化する。(ちなみにどの文化でも乳房がおおきいほうが好まれ、足は小さい方が魅力的に感じられる。そしてすべての男性は生まれながらにしてお尻を好むが、どんな乳房や足、お尻が好きかは文化に依存するという)。

男は、女性の大きな胸などひとつのキューだけでも性的興奮を覚えるが、女はいくつかのキューが集まらないと性的興奮が高まらない。特に女性に特徴的なのは「男を惹きつけている」「愛されている」というキューだそうだ。女性は男性との関係において安全性や環境面も重視する。だから男性の容姿も匂いも、経済力や社会的地位、優しさや誠実さなど、多くの要素が女性にとってのキューになる。本当に女心は複雑なのだ。

そして女性は肉食系男子というか支配的な男性=アルファ・メールに弱いという傾向がある。英雄色を好む、強い男がもてるというのは普遍的な原理であり科学的にも立証されているわけだ。

「人間の場合は、支配的な地位と性的能力との関係はハダカデバネズミほど顕著ではないが、支配的な立場にいる人間と、すべてのほ乳類の群れの支配的なメンバーとの共通点がひとつある。それは性欲が強いことだ。男は支配力が増すほど、テストステロンの分泌量が増加し、性欲が高まる。テストステロン値が高い男は、もっとも早く童貞を失い、もっともセクシーなパートナーを手に入れ、もっとも早く女性を口説き落とす。アルファ・メールたちは、群れのなかでもっとも性欲が旺盛なのだ。」

日本では昨今、男性の草食化がいわれているが、テストステロン値が減っているのだろうか。それともポルノが氾濫したせいでキューだらけになって不感症気味になっているのだろうか。

そのほか女性の性的欲望、ゲイの欲望についても詳しい解説がある。

セックスメディア30年史欲望の革命児たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/06/30-3.html

脳科学は「愛と性の正体」をここまで解いた---人を愛するとき、脳内では何が起きているのか?
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1532.html

こんなに違う!世界の性教育
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/06/post-1456.html

癒しとイヤラシ エロスの文化人類学
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1366.html

・裸はいつから恥ずかしくなったか―日本人の羞恥心
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/post-1281.html

・裸体とはじらいの文化史―文明化の過程の神話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1064.html

・セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1151.html

・セックスと科学のイケない関係
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-987.html

・性欲の文化史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1020.html

・日本の女が好きである。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html

・ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-972.html

・ウーマンウォッチング
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-958.html

・愛の空間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/oso.html

・性の用語集
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004793.html

・みんな、気持ちよかった!―人類10万年のセックス史
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005182.html

・ヒトはなぜするのか WHY WE DO IT : Rethinking Sex and the Selfish Gene
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003360.html

・夜這いの民俗学・性愛編
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002358.html

・性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004747.html

・武士道とエロス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004599.html

・男女交際進化論「情交」か「肉交」か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004393.html

・STAEDTLER ルモカラーペン 極細書きF ブラック 318-9 (油性)
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このペンは自衛隊が大量購入しているそうだ。調べてみたら確かに公示の文書の購入明細にもちゃんとでている。作戦マップを作成する際にこのペンを使っているらしい。独自開発のドライセーフインクがペン先に薄い皮膜を作り、2日間ペン先の乾燥を防ぐ。キャップをはめわすれて放置してもOKということ。

油性ペンなので紙だけではなく、ガラス・金属・DVDなどいろいろなものに書ける。耐水性・耐光性・速乾性を備えている。ペットボトルの表面に書いてみたが、数秒後にはもう乾いていて、指でこすっても消えない。

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ルモカラーには太さとカラーのバリエーションがあるが、私はビジネスユースで、

ルモカラー スペシャル 超極細書きS(線幅 0.4mm)
ルモカラー スペシャル 極細書きF(線幅 0.6mm)

を使っている。ブレインストーミングでポストイットに文字を書く際にも油性ペンでくっきりとでるので便利だ。家庭では子供の持ち物に名前を書くのにもちょうどよさそう。

インクがまだ切れたことがないが、ルモカラーペン専用インク補充システムも別売りされていて、ペン先を差し込むだけで、インクの切れたペンのインク補充が簡単にできるようだ。

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ステッドラーはドイツで1835年設立の鉛筆製造の老舗。文具好きにはかなりプレゼンスがあるブランドだがWebをみたらステッドラー日本株式会社は社員30名だそうだ。がんばっているなあ。

・薄いメモ帳 abrAsus アブラサス ブラック
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スーツのポケットに入れているのがこのメモ帳。

薄い、軽い、名刺が入る、ペン付属なので、携帯しやすい。

耳にしたデータや思いつきをさっと書きとるために使っている。

最大の特徴はコピー用紙を折って挟んで使うということ。

こうして折りたたんだ紙に対して、手帳本体を適当に回転させて書きこむという独特なスタイル。私は向きはあまり考えずに、たまたま出た面、あいている面にメモしているが、ちゃんと推奨どおりに書きこむと、紙をひろげた時に7ページ分のメモの天地が同じ方向に揃う。

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・殷周伝説 1―太公望伝奇
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待望の文庫化。横山光輝が中国古代を舞台にした小説『封神演義』を長編の漫画作品にしあげた。横山光輝はこれが遺作となった。

舞台は紀元前1070年。商(殷)の紂王が、妖怪の乗り移った美女妲己に操られて暴政の限りを尽くしている。宮殿に酒の池をつくり、林に肉をかけ、裸の男女を遊ばせた「酒池肉林」で淫蕩にふける一方で、それを諌める忠臣たちは次々に粛清していく。妲己が次々に発明する残酷な処刑法が恐ろしい。焼けた巨大な銅の柱に、生きた罪人を縛り付けて、灰になるまで焼いていく。気に入らない女官を処刑するのに、毒へびと蠍だらけの穴をつくらせ、相撲で負けた方を落として殺す。こうして処刑の見せしめに怯えて誰も逆らえなくなる。

・殷周伝説〈2〉殿中の謀略―太公望伝奇

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そんな末世を40年間の修行生活を終えた仙人の姜子牙(太公望)が崑崙山を下り、川のほとりで出会った周の文王をたすけて、天下を正していく。(70歳超えたおじいさんが大活躍するという点では高齢化社会にマッチしたコンテンツといえるかもしれない)。

『封神演義』はゲームやアニメの原作になることも多い。横山光輝は妖怪や妖術の要素は控えめにして、叙事的に淡々と描くといういつもの作風で歴史小説のように描いている。いまでている文庫3巻までいっきに読み切った。これは最後まで読むなあ。

好きな画像を集めたピンボードで自己表現できる Pinterest
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流行っているからというミーハーな理由ではじめたPinterestですが、ネタ発掘の情報源として、新しい情報発信メディアとして楽しく使っています。Webでみつけた気になる画像にコメントをつけて、自分の"ピンボード"に貼り付けていく。友人知人のボードを眺めながら、いいネタがあったら、自分のボードにも入れていく。

まだ流行り始めたばかりで情報感度が高いユーザー層が多いおかげか、クリエイティブ、アーティスティックなデザインを探すのに、とても充実した空間になっています。コミュニティがつくりだす雑誌の新しい形ともいえそうです。

私のPinterest
http://pinterest.com/daiyah/

私は過去に書いたブログ記事やFlickerにアップした写真を抜粋して、

Books Worth Reading   読む価値のある書籍
Movies Worth Watching  観る価値のある映画
My Photos
Products I Love

というボードへアップしていくという使い方をしています。興味のある方はぜひフォローしてください。

ブロガーが自分の過去記事を編集して特集ボードをつくるのにもむいているなと思いました。

iPhoneアプリもあります。移動中に面白い画像を発見したら後で観るためにピンをおしておくのに便利です。

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Pinterest - Cold Brew Labs

今年もNTT R&Dフォーラムを見てきました。金曜日までやっていますので行く方はご参考に。現地ではNTTレゾナント株式会社主催のイベントに参加しました。

NTT R&Dフォーラム
http://event.ecl.ntt.co.jp/forum2012/info/
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面白かった展示を3つほど紹介します。

・通訳電話
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音声認識・翻訳・音声合成の技術を組み合わせて、通話中の音声を自動的に翻訳して相手に伝えることができるサービスです。外国人と互いの母国語で話すことができます。その場にいる人同士でも、遠隔で電話を使う場合でも使えます。認識と翻訳の精度はなかなかのもので、明確な目的をもった利用シーンで使うならば、実用的なレベルにきているみたいでした。

デモは英語でしたが、日本人は英語はなんとなくできる人が多いので、中国語とかアラビア語の通訳電話があったらいいかもしれないですね。まったくわからない言語でコミュニケーションがとれるとありがたみがさらに増しそうです。

・流れる模様で文字すらすら
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この「流れる模様で文字すらすら」は文字では伝えにくいのですが、体験するとおおっと誰でも声をあげる面白いデモでした。スマートフォンでもパソコンでも、通信遅延でインタフェースがもたつく(カーソルがもたつく)ことってありますよね。そうした場合でも、「流れる模様」を背景に提示するだけで、脳が錯覚を起こして、遅延を感じなくなる、という技術なのです。

・DRK-MC2W マスクケース「防災の達人」(コンパクト)ホワイト
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風邪、インフルエンザ、花粉症対策のためにマスクの日々がまだまだ続きそうです。

オフィスに到着してマスクを外すとき、みなさん、どうしていますか?

私はマスクを折りたたんでスーツのポケットに入れていました。しかし、これだと不衛生なのですよね。殺菌がついてくるかもしれないから本末転倒です。机の上に置いておくというのも美観的によろしくない。

このケースは予備のマスクを携帯するのではなく、朝につけたマスクを取り外ししながら、1日使いまわすための製品です。二つ折りにしてマスクを収納します。立体型マスクにも対応できる構造です。

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付属の除菌スティックを折り曲げると黄色に変色して、除菌・消臭効果が約1カ月持続し、ペパーミントの香料スティック(追加購入可能)もついています。マスクにありがちな変なにおいがしないのが素晴らしいです。逆に1日使っても嫌な感じがしないので、過度な使いまわしを避けないといけないです。

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水の柩

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・水の柩
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最近の流行作家の中では道尾 秀介が好きだ。ミステリや猟奇も描くが、根底に温かいものがあって、裏切られない気がするから。これも見事な人間ドラマ作品だった。読後に残る余韻がある。秘めた嘘をめぐる成長と再生の物語。

「これは、私が転校してきてから、毎日毎日ずっと私にひどいことをしてきた人たちへの仕返しの手紙です。誰に、何をされたかを、私はここにみんな書きます。そのとき自分がどんなふうに感じていたかも、みんなここに書きます。まず、私をいじめた人たちの全員の名前です。」

旅館経営の家に育った中学2年生の逸男は平凡な自分の人生から抜け出したいと思っている。同級生の敦子は深刻ないじめにあっているが誰にもそれを告げられないでいる。ある日、逸男は敦子から一緒に小学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出してほしいと頼まれる。20年後の自分あてに書いた手紙を入れ替えたいのだという。敦子は復讐のためそこに自分をいじめていた級友の名前を書いていたのだった。

旅館の女将を引退した祖母のいくは、50年前にダムに沈んだ故郷の村に、秘めた思い出を残してきている。このダムへみんなで向かうシーンが途中に何度か挟まれる。逸男と敦子のエピソードとダムへ向かう一行の話とのつながりが最初はわからないのだが、章が進むごとに点と点が結ばれて線でつながっていき、最後は面として立ちあがってくる。少年少女の繊細な心理とサスペンスは直木賞受賞作の「月と蟹」に通じるところがある。

印象的なタイトルと表紙イメージも活きている。かなりおすすめ。

・光媒の花
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1255.html
・月と蟹
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1388.html

新聞各社の社説を一覧できるiPhoneアプリ 社説リーダー
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朝日、読売、日経の合同サイト あらたにす はもうすぐサービスが終わってしまうらしい。社説を読み比べできたのが便利だったので残念に思っていたところ、このiPhoneアプリの社説リーダーをみつけた。現在33紙の社説とコラムに対応している。

社説の一括取得機能があるので、電車の中でさくさくと読み比べができる。検索機能があるので、特定テーマについて調べやすい。ツイッターへの投稿機能もある。

細切れの時間を、だらだらとひまつぶしのニュースを読んだり、実は面白いのかよくわからないソーシャルゲームに費やすよりも、新聞社説を研究する方が、役立つ知識・知恵になると思う。

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■全国紙
・日本経済新聞 (春秋)
・読売新聞 (編集手帳、よみうり寸評)
・朝日新聞 (天声人語)
・毎日新聞 (余録)
・産経新聞 (産経抄)

■地方紙
・北海道新聞 (卓上四季)
・東奥日報 (天地人)
・岩手日報 (風土計)
・河北新報 (河北春秋)
・秋田魁新報 (北斗星)
・福島民報 (あぶくま抄)
・茨城新聞 (いばらき春秋)
・東京新聞 (筆洗)
・神奈川新聞 (照明灯)
・新潟日報 (日報抄)
・北國新聞 (時鐘)
・福井新聞 (越山若水)
・信濃毎日新聞 (斜面)
・岐阜新聞 (分水嶺)
・中日新聞 (中日春秋、夕歩道)
・京都新聞 (凡語)
・神戸新聞 (正平調)
・紀伊民報 (水鉄砲)
・山陽新聞 (滴一滴)
・中国新聞 (天風録)
・徳島新聞 (鳴潮)
・愛媛新聞 (地軸)
・西日本新聞 (春秋)
・佐賀新聞 (有明抄)
・熊本日日新聞 (新生面)
・宮崎日日新聞 (くろしお)
・沖縄タイムス (大弦小弦)
・琉球新報 (金口木舌)

社説リーダー - ymstmsys

iPhone版人力検索はてな
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はてなのサービスの中で一番好きなのが人力検索だ。このたびiPhoneアプリになった。疑問をもつときというのはパソコンの前ではないことが多い。スマホ対応したのはありがたい。これまでも携帯から利用できなかったわけではないが、専用アプリの一覧性やスムーズな操作性は快適さ、便利さ向上につながっている。

みんなの質問をみる、自分の質問をみる、質問投稿と管理ができる。

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私は質問する側になることもある。ググっても答えをみつけるのが難しい質問に、人間が柔軟に答えてもらえるのがすばらしい。

たとえば、

"ネガティブなタイトルの書籍を教えてください。AmazonなどのECサイトへのリンクを一緒にお願いします。たとえば「下を向いて生きよう。」「他人と深く関わらずに生きるには 」「部下は育てるな! 取り替えろ! ! 」「これだけは知っておきたいダメ社員の辞めさせ方」「ネガティブのすすめ―プラス思考にうんざりしているあなたへ 」「お客には絶対に謝るな! 」のようなタイトルの本です。"

"「近頃の若者はなっとらん」と上の世代が下の世代を批判した最古の文献(石板や壁画含む)を教えてください。出典(URLが望ましい)をつけてください。"

"究極のダウンロード?世界最大のファイルを教えてください Webで一般公開されているファイルのうち、世界最大サイズのファイルは何でしょうか?。URLで教えていただきたいのです。またよろしければどうやって、それを見つけたかを教えてください。"

なんてことを聞いてみている。

http://q.hatena.ne.jp/daiya/

人力検索はてな - 株式会社はてな

マーケティングリサーチャーのためのビッグデータ入門-「大量」「非構造」「リアルタイム」データの分析技術-

下記イベントで講演いたします。

「大量」「非構造」「リアルタイム」データの分析技術-マーケティングリサーチャーのためのビッグデータ入門-
http://www.jmra-net.or.jp/seminar/detail.php?document_id=2541
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日時:2012年3月6日(火)13:45 ~16:30(13:30 開場)

会場:日比谷図書文化館 地下1階 日比谷コンベンションホール(大ホール)
    〒100-0012 千代田区日比谷公園1 番4 号(旧・都立日比谷図書館)
※案内開始時には、同施設の「スタジオプラス(小ホール)」とご案内しましたが、上記の部屋に変更いたしました。

定員:100名 (部屋の変更に伴い定員を50名から100名へ変更いたしました。)
講師・ファシリテーター
講師

鈴木 良介 氏(株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント)
2004 年、株式会社野村総合研究所入社。以来、情報・通信業界に係る市場調査、コンサルティング、政策立案支援に従事。近年では、クラウドおよびビッグデータの効率的かつ安全な活用についての調査を行なっている。
近著に『ビッグデータビジネスの時代』(翔泳社  2011年11月刊行)

橋本 大也 氏(データセクション株式会社 取締役会長)
データセクション株式会社 取締役会長のほか、株式会社早稲田情報技術研究所 取締役、株式会社メタキャスト取締役、株式会社日本技芸取締役、デジタルハリウッド大学教授「リサーチ& プランニング」、多摩大学大学院 経営情報学研究科客員教授「Web マーケティングイノベーション論」を兼任。主な著書に『情報力』『情報考学-WEB時代の羅針盤 213 冊』『新・データベースメディア戦略。』『アクセスを増やすホームページ革命術』『ブックビジネス2.0』等

浅野 弘輔 氏(株式会社ホットリンク ビジネス開発部 商品企画グループ)
Web 開発者としてソーシャルメディア分析ツール「クチコミ@係長」立ち上げを担当。現在はホットリンクの収集
した膨大なソーシャルメディアデータに対する新しい分析やサービスの企画・研究を行う。
過去にはネットの口コミデータを使った国勢選挙の選挙予測を行い、2009 年の衆議院総選挙で80%、2010 年
の参議院選挙で60% の的中率を得た。

ファシリテーター

萩原 雅之 氏(トランスコスモス株式会社 理事 エグゼクティブリサーチャー/ JMRA 研修委員会)1984 年、東京大学教育学部卒業。日経リサーチ、リクルートリサーチ、ネットレイティングス株式会社代表取締
役社長を経て、2009 年よりトランスコスモス株式会社エグゼクティブリサーチャー。2004 年よりマクロミルネットリサーチ総合研究所所長を兼任。日本世論調査協会個人会員。著書に『次世代マーケティングリサーチ』
(ソフトバンククリエイティブ)など。

プログラム
13:45 ~ 13:50 開会のメッセージ
13:50 ~ 14:40 鈴木 良介 氏 基調講演「ビッグデータ時代にマーケティングはどう変わるのか?」
14:40 ~ 15:30 橋本 大也 氏 「ソーシャルメディア× ビッグデータでインサイト発掘」
15:30 ~ 15:40 休憩
15:40 ~ 16:30 浅野 弘輔 氏 「ビッグデータで変わるデータ分析の企画・設計の考え方」
質疑応答は、各講演の中で行います。 
※当日、多少変更の可能性がございます。

申し込み・詳細はこちら
http://www.jmra-net.or.jp/seminar/detail.php?document_id=2541

・三丁目の夕日の時代 ´64(昭和39年)篇
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先日、映画『三丁目の夕日´64』を観に行った。これまでで一番泣ける作品になっていた。第一作が昭和33年、第二作が昭和34年ときて最新作の舞台は昭和39年(1964)、つまり東京オリンピックの年。

このムックは1964年の風物が写真と資料で特集されている図鑑。映画の情報はほとんどなくて、時代背景を知るための内容になっている。オリンピックだけではなく、新幹線開通、黒四ダム完成、太平洋横断海底ケーブル開通、東京モノレール開業など、日本の基盤がいっきに整備された象徴的な年だったことがわかる。

この時期に日本橋の上に高速道路がかけられた。都内の高速道路が橋の上に造られていることが多い。これは用地買収に手間取って工事に遅れがでないように、景観保護よりもオリンピックに間に合わせることが優先された結果であるそうだ。

東京オリンピックはオリンピック史上における「コンピュータ元年」でもあったそうで、オンライン・システムの導入が一気に加速した。翌年の40年には国鉄に「みどりの窓口」ができ、三菱銀行がリアルタイム・システムを導入。日本列島の経済基盤がこうして整備されて、57か月続く「いざなぎ景気」へと突入していく。

オリンピックが国の発展のドライビングフォースとしてとてもよく機能していた。

私は昭和45年生まれだが、だんだんと時代が近づいてきた。三丁目の夕日は続編が楽しみ。このシリーズは約50年前を振り返っているわけだけれど、2062年頃にはスカイツリー完成を懐かしむ映画ができる、のかなあ。

・こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと
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"最も影響力のある国際ジャーナリスト40人"に選ばれたこともある中東に強いフリージャーナリストが語る現代のジャーナリズムの問題点。ブログやツイッターの話ではなくて、国際ジャーナリズムの本質的議論がある。

中東特派員としてイラク戦争やさまざまな従軍取材を経験した著者は「もし欧米のマスメディアが戦争のあいだもきちんと仕事をしていたなら、テレビのまえに坐っていた視聴者は泣き叫び、反吐を吐いていたはずだ。」という。ニュースはまったく現地の実態を伝えることができていなかったのだと批判する。

たとえばイラク人が巨大なフセイン像を引き倒して歓喜の声をあげる印象的なシーンは世界中で放映されていてたが、現実は、アメリカ人将校が画策して200人くらいのイラク人が実行しただけのショーなのであった。危険だというテロリズムの現場に行ってみると案外に平和に人々が暮らしていたことなど、報道と違う事実を語る。

独裁国家では巧妙な情報操作が行われていて、欧米のジャーナリストも結果的に操られてしまっている。独裁国家に滞在中、監視されているのでメールを通信社へ出すことができなかった経験のある著者は、ジャーナリズムが存在しうる独裁国家はそもそも独裁国家ではないとも自嘲する。中東の現実をマスメディアが伝えることの困難が何重にもある。

そして放送局もまたPRコンサルタント会社やマーケティングの専門家が手助けをすることで、人々が見たがっているものを制作して放映している。視聴者のニーズが本質的なフィルターになってしまっている。たとえば視聴者はわかりやすい映像を好む。

だから情報としてのナレーションだけでは駄目で、現場のわかりやすい映像がなければ、テレビでは使うことができない。放送局は通信社から十分な情報は得ているのに、わざわざ危険な現地に特派員を飛ばして、原稿を読み上げさせる。映像と音声の二つの歯がかみ合わないとテレビでは流せない「ハサミの法則」があるからだ。

結局のところ現代のニュースは一種のショービジネスに過ぎないと嘆く。独裁者や権力者の情報操作や、カネになる映像ばかりが集められ流される構造ができあがってしまっているのだ。わかりやすいラベリングが過度の単純化やミスリードを招く。報道の最大の敵は検閲を行う権力ではなく、報道機関を存立させているはずの資本主義や市場経済にあるという根深い問題に突き当たる。

「情報の選択について市民が投票にも似た決定を下す際に、"何を聴く必要があるか"ではなく"何を聞きたいか"を基準にするなら、民主主義はどうやったら生き延びられる?。」

報道の可能性と不可能性の双方を自らの経験から訴える硬派のジャーナリズム論。

・AR山
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先日、横浜のランドマークタワーの展望台でAR山を起動してみた。

AR山はiPhoneのカメラ映像上に、リアルタイムに山の情報を表示するアプリ。

いま見えているあの山はなんていう名前だろう?
○○山はどちらの方向だろう?
あの山の高さは何メートルだろう?
あの山まで何メートルだろう?

といったことがわかる。観光中の会話が広がる。

日本国内の2万件弱の山情報をデーターベースを利用して、山の情報を表示する。

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山情報が2万もあるから場所によっては画面が山の情報だらけになってしまう。そこで山までの距離、山の高さで表示をフィルターすることができる。有名な山だけに限定する名山モードが便利だ。


バーコードもQRコードも読みとって商品認識するiPhoneアプリ アイコニット ICONIT
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スマートフォンでQRコードとバーコードを読みとるアプリ。リーダーとしての基本性能がよい。カメラでの読み取りが速い。QRもバーコードも両方対応しているので、デフォルトのリーダーになりそうだ。

商品のバーコードを読みとった後は、AmazonあるいはGoogleで商品検索を行うことができる。友達が持っていて欲しいモノをスキャンさせてもらったり、待合室で読んでいた雑誌のISBNコードをスキャンしたり、結構いろんなシーンで使える。

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QRコードで読みとった情報はジャンル別(Webアドレス、メール、テキストなど)にアイコンで整理されて管理できる。テキストをQRコード化することもできるし、QRを介して誰かと交換することもできる。

開発メーカーのサイトを見るとQRコードを読みとると関連付けされた音楽や動画を再生する機能ほか、今後、キャプチャーした情報を活用する機能が拡張されていくようだ。こういうアプリで何か便利なことを考えてもらって、流通過程でしか使われていないバーコードを、もっと消費者にとっても利益があるものになるといいなあと思う。

バーコードリーダー/アイコニット - MEDIASEEK Inc.

・幸せな小国オランダの智慧
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小国だが知恵のある国として改めてオランダに学ぶ。現代の蘭学書。

国土の半分以上が水没の可能性のある低い土地(ネーデルラント)であるオランダは、過去千年間、洪水と戦ってきた。多数のダムや堤防を作り、治水事業を推進し、「一万年に一度」の確率の洪水にも備えている。不確実性に備える一方で、経済や社会の成熟も追求する。オランダは近年、世界最高の一時間当たりのGDP、欧州屈指の失業率の低さ、子供の幸福度第一位、世界最大の農業ビジネス国、を実現している。

「オランダは、つねに災害や危機に対する能力を培ってきた。それはたんに防衛的な面だけではなく、イノベーションや持続的な経済運営にもかかわるものになってきた。その「能力」とはどのようなものであろうか。 それは人々の中にある社会的な関係性の豊かさ、ソーシャルキャピタル(social capital=社会関係的知的資本)である。技術力や経済力(カネ)ではない。そして、そのうえで発揮される、個と共同体に共有された問題解決のための思考法だろう。」

オランダは災害で失った土地を回復するため、干拓地住民コミュニティに自発的協力を求めた。オランダの独自の気風である誰でもなんでも言える風土と自由闊達な対話の文化が、災害復興に立ち上がる人々の間に、ポルダーモデルと呼ばれる力強いコミュニティ経済社会システムを生み出した。

「Go Dutch」は割り勘という意味だが、日本の総額頭割りの支払いではない。自分が飲み食いした分量に従って払う。みんなで合理的に協力する文化の象徴として紹介されていたが、この精神がオランダのいたるところに浸透している。

たとえば、オランダの低失業率の原因のひとつはワークシェアリングの成功だ。フルタイム労働とパートタイム労働の時間当たり賃金を同一にして、社会保険の差をなくした。結果として労働時間の適正化と女性の就業率が上昇にとって大幅な所得増を達成できた。政府、企業、労組の連携が取れたのは、階層を超えた協力と対話を大切にするポルダーコミュニティの伝統がしたからだと分析されている。そして、雇用問題に限らず、現場での自律的判断力と、現場をよく知る中央のバランスの取れた連携によりオランダは他国が羨む柔軟な知的弾力性を備えていることが中盤でいくつも紹介されている。

現在と未来のステークホルダーが対話する現代的な場としての「フューチャーセンター」が後半ではクローズアップされている。オランダの公共セクターは組織の未来戦略を考えるための開かれた場を開設して、集合知によって未来に向かうシナリオを生み出している。このフューチャーセンターというコンセプトは欧州の政府や大企業が積極的にいれ、成功例を産んでいるグローバルトレンドだが、著者の紺野教授らが数年前に日本に紹介しており、そろそろこちらでもキーワードになりそうな注目コンセプトである。

もちろんオランダ万歳の本ではない。光と影として、オランダ的思考、社会的思考の負の側面も取り上げている。そのうえでオランダのやり方は経済、社会、文化のバランスの良い発展を実現する人間的資本主義として評価できる部分がある、日本の参考になる部分があるというのが、この本のメッセージだ。私たちはこれまで大国、強国にばかり学ぼうとしてきたが、これからはバランスの取れた国に習うのも実り多そうだ。

部屋

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・部屋
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世にも奇妙な幼児言葉の猟奇犯罪小説。ミステリ好きにおすすめ。

「ぼくはママと住んでいる。知っているのはこの部屋とテレビの世界だけ。なぜならぼくはこの部屋で生まれて一度も外に出たことがないから。」

"ぼく"は生まれてから5年間、誘拐されてきた母親とふたりっきりの部屋を出たことがない。幼児の言葉で綴られる一見穏やかな日常生活。天窓以外の窓がない狭い部屋だが、"ぼく"にとって優しいお母さんと水入らずで過ごせる安心の空間。それ以外の世界なんてしらない。不満や不安なんてあるはずもなかった。

「いい?≪テレビ≫に映ってるのは......本当のものの絵なの」
びっくり......び~~くり!そんなびっくりな話、はじめて聞いた。」

しかし、ある日、母親からテレビの中の世界が本当に部屋の外にあること、そして"日よう日のさし入れ"を持ってくる男の正体を知らされて当惑する。自分たちは悪い男に監禁されていたのだ。母親は決死の脱出計画もちかけるが、"ぼく"のほうはといえば慣れた部屋での生活が終わることのほうが気になる。

客観的には異常者による長期監禁事件と脱出計画。緊迫した状況であるが、その異常性を理解していない幼児の好奇心と想像力に満ちたおしゃべりで語られるので、読者はやきもきさせられる。ああ、"ぼく"それって相当ヤバいよと教えてやりたくなる。子供の世界認識がリアル。作者は子供の発達心理学を参考にしているらしい。文体も工夫している。(訳者もそれを巧妙に日本語に翻訳した)。

読む手に本当に汗をかくくらい緊迫する中盤までに続いて、後半では少しずつ外の世界の全体像を認識していく"ぼく"の成長も読みどころ。普通の子供は毎日少しずつ学んでいく過程をわずかな期間で与えられて、世界認識を急速に適応させていく。

こうした長期監禁事件は世界中で起きている。著者がこの事件の発想を得たのはオーストラリアのフリッツル事件(父が娘を24年間監禁し子供を生ませた)だそうだが、日本の事件も参考にしたという。

母親を主人公にしなかったアイデアがまずすばらしい。ストックホルム症候群みたいな大人の異常心理ではなくて、子供の心理や発達過程をテーマに描いたことで、極めてユニークな作品に仕上がっている。この先どうなっちゃうかわからない不安感の倍増と、悲惨な状況が続く長編だが希望を失わずに読める文体に活きている。

・アーティストのためのハンドブック  制作につきまとう不安との付き合い方
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アーティスト = 美術作品、音楽、文学、写真など作品を制作する人

アーティストとして生きていく不安にどう対処したらいいか?
才能とは何か、自分に才能があるのかどう見極めたらいいか?
優れた作品とは何か?成功とは何か?アイディアと技術とどちらが大切か?

といった問題に対して2人のベテラン・アーティストが答える。全米で20年間読み継がれた古典の翻訳。アーティスト指向の人が読むと、自分の抱えた論点がいっぱい言語化されているのをみるだろう。

この本では一度も創造性という言葉が使われない。著者らはその言葉をファ○クという言葉と同じように忌み嫌っている。アートを職業として生きていくには、当てにならない天才の創造性よりも、継続的に作品を作り続けていく継続性、生産性を大切にしている。まずは質より量なのだ、と。

こんな実験もでてきた。

「陶芸の先生が授業の初日に、教室をふたつのグループに分けると発表しました。そして教室の左側半分の学生は作品の「量」によって、一教室の右側半分の先生には作品の「質」によって、それぞれ成績がつけられることが言い渡されました。」

量グループ:制作した陶器の総重量で成績をつける。数は何点でもOK。重いと高成績。
質グループ:制作するのは1点だけ。1点の質で評価される。

量グループ、質グループで提出されたすべての作品を、質で並べ直したところ、最高と評価された作品はどれも量グループから出たものだったそうだ。量のグループは山のように作品を制作しつづけたことで、失敗から学んだ。質グループは完璧さにこだわり、理屈をこねたりするばかりであった。

作品の量をつくること。作品制作を生活習慣化できているかどうかが重要な問題だと著者は指摘する。。多くの美大出身者にとって卒業制作展が最後の展示会であり、そこで作品制作を止めてしまう。提出期限のような作品を生み出すインセンティブ、評価し合い励まし合う環境がなければ続かない。

「作品制作の細部には、苦労の末に身につけた実践的な制作上の習慣や、何度も頼りにしてきた形式的な反復が宿っています。」。作品とは「生産的な様式をもって生活することから生まれた表層的な表現」なのである、という。

ノらない日でもとりあえず○○から始めるという日常の作品制作の手順、クセをつくるとうまくいくと実践的なアドバイスもある。そして競争のエネルギーを他のアーティストではなく、自分の内側に向けること。「自らの心の声を唄えば、いずれ世界は受け入れるようになり、その本物の声は報われる」などという考えは捨てること。

そして、

「決定的に重要な作品は、制作者を取り囲む歴史の基本構造に直接加わっています。」

世界に評価される作品を生み出し続ける人のためのハンドブックである。

・タッチで静電気を除去するグッズ ぺんてる 除電器ビー ビー・ビーンズ イエローグリーン EAS7-4
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これは絶対ビリっとくるよなあ、間違いないよなあ、と思いながら、いつものノブに触れるとやっぱりビリっとくる。分かっているのに繰り返す負け試合のようで大変悔しい思いをしている人に朗報のグッズ。

静電気がたまってそうだなと思う場所へ、このグッズをタッチするだけでOK。メーカーいわくステンレスフェルトを放電体として内蔵していて、タッチ放電だけでなくコロナ放電も誘導するため、帯電量が多くてもスムーズに除電できるとのこと。除電に成功すると液晶に雷のマークが表示される。効果が確認できるのがとても楽しい。

ここは静電気たまっているかなあ?といろんな場所をテストしてみた。ビリっとこないから気楽だ。あらかじめ身の回りの静電気ハザードマップをつくっておくとよいと思う。パソコンのハードウェアを扱う人もお守りに持っているとよさそう。

これで今の季節、セーターを着た日も安心というかむしろ楽しみ。

曾根崎心中

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・曾根崎心中
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人形浄瑠璃や歌舞伎で有名な近松門左衛門『曽根崎心中』を角田光代が翻案、初の時代小説として発表した。素晴らしい出来。まずはこれを読んでから浄瑠璃や歌舞伎を見るといい。感情移入しやすくなる。

曽根崎心中は江戸時代の大阪で起きた事件がもとになっている。天満屋の遊女の初と、醤油屋の手代・徳兵衛が出会い、激しい恋に落ちる。徳兵衛は働いて、初を身請けしようとするが、悪い友人に騙されて、すべてを失ってしまう。絶望した二人はあの世で結ばれようと心中をする、という内容。

この小説は主役の初の主観視点で描かれている。背筋に電気が走るような二人の出会い。男に惚れるなど愚かしいと思っていた初が、すべてを投げ出してもいいと思う運命の恋に落ちていく、女心の変化。現代小説の手法で、300年前の作品を現代人の共感を呼ぶ作品として見事につくりかえてしまった。

ふたりが育む愛情や天満屋や女郎友達とのそれなりに温かい関係の明るい部分と、逃亡女郎の陰惨な折檻や、少女時代の厳しかった人間関係、剃刀を使った心中のシーンなど暗くてじめじめしたシーンのコントラストがすごく官能的。

冗長に思える部分がまったくなくて、とてもピュアに短く激しい悲恋を描いている。原作の翻案が大成功している。

・ツリーハウス
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/post-1498.html
角田光代の大傑作長編。

・デモいこ!---声をあげれば世界が変わる 街を歩けば社会が見える
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ああ、やはり、こういう本でたか。

「世の中を変えたければ、デモへ行こう
 声をあげたければ、デモへ行こう
 仲間を見つけたければ、デモへ行こう」

「デモは楽しい」から始まるデモ実践のパンフレット。デモに参加したい人、デモを主宰したい人にむけて情報を提供する。3.11以降、東京ではデモが増えた感じがする。反原発や反格差のデモでは従来とは違った、政治色が薄い、普通の若者の参加も増えているように思う。ツイッターやブログとの連動もよくみる。

デモ情報の探し方、はじめてのデモ参加のアドバイスなど参加したい人向けの情報の次に、ちょっとディープなデモの主催の仕方コーナーが興味深かった。

警察へのデモ申請のやり方
集合場所の確保の仕方
横断幕、フライヤー、プラカードの作り方
デモ情報の広め方

まったく知らないことがいくつか書かれていて勉強になった。たとえば警察へのデモ申請は72時間前までに。担当の警察官と打ち合わせが必要。人が集まれる場所を確保しなければならない。一般的には集合場所として公園が使われる。この際、管理者に占有許可を取る必要があるが、無料ではない。一人当たり区立公園だと24円とかお金がかかるのだそうだ。

デモ参加者の声(写真、プロフィールつき)、デモ主催者体験談など、最近のデモのトレンドがみえてくる。政治活動家という風貌は少なくて、もっとライトな感覚の人が多い。ツイッターがきっかけでというタイプも。

ネットでアピールの時代だからこそ、リアルの示威行動が、逆に目立つようになってきたということかもしれない。私はデモ、参加したことがないが、デモをすることは権利のひとつなので国民としては知っておいていい知識だと思った。

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