2006年08月06日

ユングでわかる日本神話このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・ユングでわかる日本神話
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日本の神話を整理していくと、世界の神話と共通のパターンが見出せる。たとえば天地が分かれて世界が生まれる開闢神話、見るなという禁止を破ってしまう神話、直接的な文化交流があったと思えない、遠く離れた異文化にも同様の神話がみつかる。

この本の主題である神話とユングの接点は前書きで説明される。


たとえば、地球上の全ての民族が英雄物語を持っています。神話の中には必ず英雄が登場します。一人の男子が悪者または怪物を倒して人々を救ったり、囚われの女性を救い出すという物語です。そういう物語をこれほどまでに人類が求めてきたのはなぜでしょうか。
この問いに対して、ユング心理学は面白い解釈をしました。すなわち、そうした英雄の物語は、自我の力を得てきて、自立を妨げるものと戦い、それを倒して自立するときの、心理状態を見事に表わしているので、これほどまでに人類共通の物語になっていると言うのです。

著者は、人間が無意識のうちに共通に持っている普遍的なシンボル=元型の概念を使って、日本神話の意味を心理学的に解釈する。そして、そこに含まれる話素を、世界の神話と比較することで日本人に固有の精神性を浮かび上がらせようとする。

フロイト心理学との対比もある。たとえば日本神話の場合、イザナギとイザナミが天上の橋の上から。アメノヌボコという矛を下界に下ろして、海面を攪拌することで、日本の領土が誕生する。フロイト流では矛は男性器の、海は女性器の象徴とみなされるから、これは性交を表わす行為とされる。ユング流では、同じ行為を上にある高い精神性=意識が下にある無意識に働きかける行為と解釈できるのだという。

多くの神話を著者は意識の発達過程を表わすものと説明している。混沌とした世界が組織化され、意味のある秩序に分化していく神話の過程は、それを認識できる高度な意識が発達したことを意味する。意識が発達すると、裸は恥ずかしいと思うようになり、死を忌み、穢れを嫌うようになる。それぞれに対応する神話が生まれる。

宇宙の開闢(世界の始まり)、地下世界の成立(生と死)、起源神話(ヒトや食物などの諸起源)、異類婚(動物と人間の分化)、影や悪(善悪や宗教)という章立てで解説が進む。


・なぜ日本人は賽銭を投げるのか―民俗信仰を読み解く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004105.html

・日本人の神
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003868.html

・日本人はなぜ無宗教なのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001937.html

・「精霊の王」、「古事記の原風景」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000981.html

・神の発明 カイエ・ソバージュ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000314.html

・古代日本人・心の宇宙
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001432.html

・日本人の禁忌―忌み言葉、鬼門、縁起かつぎ…人は何を恐れたのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000809.html

・神道の逆襲
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003844.html

・古事記講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003755.html

・日本の古代語を探る―詩学への道
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003206.html


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Posted by daiya at 2006年08月06日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

ごぶさたしてます。以前、Hotwiredでご一緒させていただいていた今泉です。ユングの神話の解釈はおもしろいですよね。河合隼男に日本の昔話を素材にした単行本がいくつかあります。そちらも機会があるとお読みになるとよいです。
実は仕事の関係でお願いしたいことがあり、ここに書き込んでいます。入れてある私のメールアドレスに、連絡先をいただけるとありがたいのですが。
なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

Posted by: 今泉 at 2006年08月10日 16:33
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