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大型本で上質なプリント。
美しさに言葉を失う、息をのむ。
白黒の風景写真の傑作。
夜間の長時間露光(ときに10時間に及ぶ)や雪景色のハイキーでの撮影と、独創的プリント技術を駆使して、静謐で神秘的な光景を作り出す。マイケル・ケンナは、世界をありのままに写すのではなく、完璧な構図と表現意図をもって、1枚1枚を絵画のような美術作品に仕上げている。
モンサンミシェルやイースター島などの有名観光地の撮影はありふれたものになりがちで難しいはずだが、その技法によって独自の世界観へと異化し、見る者を魅了する。たぶん撮影地を訪れても、よくある風景しか見えないだろうと思う。これらの作品はマイケル・ケンナの心の眼が作り出す魔術なのだ。
巻末の解説にマイケル・ケンナはこう語っている。
「私は描写を超越した暗示力をより好むのです。写真は私にとって世界を転写することではありません。私はそこに見えるものを正確にコピーすることには興味がないのです。写真の最も強い要素の一つは世界の一部を記録することですが、同時にそれぞれの写真家の美的センスと統合させることでもあるのです。その結果が解釈であり、この解釈こそが興味深いと私は思うのですが、主題がそれぞれの人々の心のフィルターを通過することで違う状態で出現したとき、それはもはや何かの複写や記録ではなくなっているのです。」
あまりに絵画的に美しすぎるため、批評家たちは彼の作品に「美しければそれでいいのか?」と問うことがあるらしい。が、ここまで圧倒的ならばいいのじゃないか?。
・マイケル・ケンナ公式サイト
http://www.michaelkenna.net/html/index2.php4
上記のWebに作品のサムネイルがあるので雰囲気は把握できるが、この作家はピント表現や質感にこだわっているので、大型本で見ないとその面白さ、迫力はわからないと思った。
53歳のカメラマンと姪の6歳の女の子が一眼レフカメラを持って表に出る。同じ場所を撮影した大人の写真と子供の写真を見開きに並べて、カメラマンがコメントを書く。その繰り返しで一冊の本ができあがった。コンセプトが素晴らしい。
「大人は作品にしようとする」「子供は撮りまくる」
「大人は意味を探そうとする」「子供にはもともと意味なんてない」
大人は構図を考えて画面に意味を作り出そうとする。それなりに整った絵になるがありがちなフィクションになってしまう。それに対して子供の写真は視線そのものだ。被写体を見たままに写しているから、見る者がそこから意味を汲み取ろうとする。大人の写真より、子供の写真の方が印象が強いものになっていたりして、面白い。
大人が街頭でスナップを撮ろうとすると写される側は警戒したり、構えたりしてしまう。子供が撮ろうとすると被写体はみんな笑った顔になる。視線の高さも違うから、構図も自然に違ってくる。2枚の写真を見比べていると、いろいろな違いがわかって楽しい。
私は一眼レフ、息子(3歳)はコンパクトカメラで、この本と同じカメラ遊びをよくやる。息子は「白いところ撮る!」とか「緑色を撮った」などといって壁や床の一部を撮って喜んでいたりする。色を撮りたいなんて大人はなかなか考えない。ビルの窓や壁の装飾のテクスチャーを切り取っている。印刷してみると、息子の写真の方が芸術的にみえて驚くことがある。
以下、3歳の実物作品集。