Books-Brain: 2011年8月アーカイブ

・知性誕生―石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源
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語彙、記憶力、計算、論理思考、反応時間テスト、空間テスト、迷路など、多数の被験者に多様な知的作業をやらせると成績は全体として正規分布を描く。そして何十、何百の項目において正の相関関係がみられる。あることがとても上手にできる人は、べつのことも上手であることが多いのだ。たとえば国語(他の科目でも良いが)ができる子は、算数も英語も社会もできる子である可能性が高い。俗に言う地頭の良さ、要領の良さである。

実験心理学の創始者チャールズ・スピアマンは、無数の能力の相関を調べ上げ、人間の知能には二種類の要素があることを発見した。取り組むどんなことにもその人が用いる一般因子gと、音楽のように他の要素と相関を持たないsである。地頭の良さ、要領の良さは、高いgの賜なのだ。一方、音楽家はいくら作曲や演奏の才能sがあっても、数学や国語ができるとは限らない。sは異なる種類がいっぱい、ばらばらにあるのだ。

ある人物が一般的な仕事をうまくこなせるかどうかは、ある程度、gをみる知能検査の結果で予測できるということになる。次のような凄い事実が紹介されていた。

「考えうる多くの仕事を集めてリストを作り、それらの仕事がどのくらい望ましいか順位を付けるように一般の協力者に頼む。そして、その人たちがどれくらいその仕事に就きたいかに関して、一位から最下位まで仕事の順位表を作成する。次に、実際にそれぞれの仕事に就いている人たちの平均IQの順位で、もう一つの順位表を作成する。何が分かるかというと、この二つの順位はほぼ完全に一致するということだ。さらに言えば、二つの相関は0.9を超える。ある特定の仕事が、一般の協力者が就きたいものであればあるほど、仕事は実際にgの点数が高い人が就いている。」

とすると...。

ある程度、若い頃に自分はgが高いのかどうか見極めて進路選択、職業選択をすることは重要なのかもしれないと思った。gが低いのであれば、sをみつけて伸ばし、芸術や職人や専門的な職業へいくなど、なりたいものと、なりやすいもののすりあわせを早期にすることが大事なのではなかろうか。今の学校教育は絶対にそんなふうに子供を指導しないわけだけれども、この本がとりあげた知能測定と統計分析の科学が正しいのならば、gとsを知ることは可能性を伸ばすことだと考える。