Books-Culture: 2009年12月アーカイブ

このアプリは常用決定。便利。

・FastweetLive
http://glucose.jp/
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Twitterのつぶやきをハッシュタグやキーワードで検索して、結果をリアルタイムに表示するiPhoneアプリ。検索結果の更新は自動で行われるので、セットしたら後は見ているだけでいい。とにかくイベントとの相性が抜群。もちろん、アプリ内からつぶやくこともできる。

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たまたま開発者のグルコース安達さんとアーキタイプ(日本最強のベンチャーインキュベータ)忘年会で一緒になり、FastweetLiveユーザーだらけのハッシュタグ付き忘年会を初体験。飲み会なのにみんなiPhoneいじりまくるのってどうよと思ったが、遠く離れた席の話題もわかるので、結構盛り上がっていました。後日、飲み会の感想を言えるのも良いところ。

イベント以外の使い方としては、よく行く地名を登録しておくとレストランなどのお店の情報がよく見つかる。新発売の商品名を登録しておくと、一早くレビューや感想をみつけることもできる。Twitterを情報収集源に使っている人は必携。

・古代中国の虚像と実像
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「二千年以上も昔の話であるから、こうした誤解は放っておいてもたいした害はないのだろうが、私は非科学的なものが嫌いなので、あえて虚像を指摘し、それを正す文章を書くことにした。 夢のない話を延々とするので、「現実的な話は聞きたくない」という人は、本書を読まないことをお薦めしたい。」

実にむかつく本である。

ちょっと著者を張り倒したくなる。

だが、古代中国好きには面白いことが書いてあるため、読み進めないわけにもいかない。
夏王朝はなかった。
紂王は酒池肉林をしなかった。
『孫子』は孫子がつくっていない。
焚書はあったが坑儒はなかった。
徐福は日本に来なかった。
四面楚歌も虞美人も作り話だ。
孔子の論語は当時から理想論だった

数々の物語を生み出した「古代のロマン」や、有難い「人生の指針」の根拠が、事実ではなくて後世の作り話やウソだったことが暴かれていく。

史料からの推定だけでなく、殷王朝で為政者が政治の意思決定に使った甲骨占卜を実際に骨を焼いて試してみているのが面白い。出土した甲骨は実際には吉や大吉ばかりであり、王の行動を否定するものはほとんどないことに著者は注目していた。あらかじめ甲骨に掘られていた筋は結果を操作するためのものではないかと考えて、実証して見せたのだ。

「つまり、殷王朝の甲骨占卜は、表面上は政策を決定する手段であるが、実際には決定された政策を宣言あるいは承認する儀礼的な行為だったのである。したがって、殷王朝は不確かな占いに頼って政治をしていたのではなく、占いを政治的に利用していたということになる。」

と結論する。いい研究なのだが、この著者のおかげで甲骨占卜の神秘性はなくなってしまう。

そういう話ばかりが延々と続くので、古代中国を舞台にした映画や漫画をみるとき「でも、ほんとうは違うんだよなあ、これ」と思いだすことになるだろう。古代中国が好きな人は、読むべきか読まざるべきか、実に悩ましい本である。

・米原万里の「愛の法則」
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作家、エッセイストでロシア語同時通訳者でもあったの米原万里の講演録集。

1本目「愛の法則」は女は男を次の3つに分類するという話。

A ぜひ寝てみたい男
B まあ、寝てもいいかなってタイプ
C 絶対寝たくないタイプ

で、世の中カテゴリCが90%を占めている。歴史的に見ても、女性は多くの男を競わせて優秀な一人を選ぶことになっている、竹取物語やかえるの王子など、女が主人公の物語では普遍的にそういう法則があるでしょう、という。その理由を性淘汰による進化論的視点や社会学的なキーワードで読みとく。

2本目の講演は、ロシア語通訳でもあった著者らしく国際関係論。

グローバリゼーションとは、イギリスやアメリカが、自分たちの基準で、自分たちの標準で世界を覆いつくそうとすること。国際化とは、世界の基準に自分をあわせようとすること。めざすべきはどちらでもないのではないかという話。

「これは日本人の伝統的な習性で、その時々の世界の最強の国が、イコール世界になってしまう傾向がありいます。しかも、世界最強の国というときに、何を基準に世界列強と判断するか。基本的には軍事力と経済力、これだけを見て、文化を見ません。文化を見ないにもかかわらず、なぜか世界最強の軍事力と経済力を持つ国は文化も最高だと錯覚してしまう傾向があります。」

だから今の日本はアメリカを最高だと考えて英語ばかりを勉強する。驚いたことにサミットの同時通訳では日本だけが、英語以外の外国語をいったん英語に翻訳してから日本語に翻訳しているのだという。これでは微妙なニュアンスが削られてしまうし、すべてが英語文化の色眼鏡で見ることになる。英語偏重の危険、直接の関係を築いてこその国際化、国際化を錯覚すると自国の文化を喪失しかねない、と言い、本当の意味での国際化とは何かを啓発する。

日本の国際化というと遣唐使に始まり現代のMBA留学まで、一部のエリート層が海外のこれまたエリート文化を学んで持ち帰り、多くの日本人はその流儀に倣うことが国際化だと考えてきたように思う。関係性が間接的なのである。

他2本のテーマの講演があるが、男女関係、国際関係での経験をネタに、人と人とが直接コミュニケーションすることの大切さ、面白さを語るという点で4編とも共通している。ユーモアたっぷり軽妙な語り口だが、ところどころに鋭い指摘があってどきっとする。

・匂いのエロティシズム
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「面白いのは、爽やかさとか清潔感といった言葉に適した香りを選ばせると、民族や文化、あるいは世代の違いによってかなりばらつきが見られるのに、性的な魅力に結びつく匂いとなるとかなりの普遍性が見られるとうことだ。」

ムスク(麝香)、アンバー、シベットといった動物に由来する匂いが、世界中で香料や媚薬として使われてきた。代表格のムスクは匂いの成分としては腋の下の匂いや体臭に近いことがわかっている。だがヒトはフェロモンに刺激されて、直接的に性行動が発動する動物とは異なる。

多くの哺乳類は生殖器や肛門から発情兆候の匂いを発するが、二足歩行になったヒトは鼻の位置が高くなって、匂いをかぐのが困難になったので嗅覚が退化し、視覚刺激に反応するエロスを持ったというのがフロイトの説。だが、ヒトはもっと複雑なのではないかというのが著者のエロモン仮説である。

人間は嗅覚的な匂いだけでなく、視覚や言葉にも性的な匂いを感じ取って反応する。「この、新たな意味を帯びた性的な匂いのことを、私はエロモンと呼んでみたい。フェロモンが本能に訴える匂いであったとすれば、エロモンはエロスに訴える匂いであり、人間的な意識が無くてはあり得ないものと考えるわけである。」

脳の生殖管理ソフトがバージョンアップして、フェロモンのような単純刺激ではなく、視覚や五感も総動員したマルチメディア対応のソフトウェアに進化したのではないかと著者はいう。マルチメディアとエロスの相性が良いのは、テクノロジーの歴史をみたら明らかだ。

「人間的な意識を前提とする「匂いのエロティシズム」は、だから本能的でも原初的でもない。エロスの匂いを感じ、匂いにエロスを感じることは、先祖帰りでも生物進化の逆行でも何でもないのである。むしろ、あらゆるものをエロス化してきた以上、フェロモンのような本能的な匂いとは全く別の、新たな匂いのエロスの形さえ創造できるのが、われわれ人間なのではないだろうか。」

性行動と社会関係、脳の進化、フェティシズム、文学研究など、性と匂いをキーワードにして幅広く著者の持論が展開されている。香料会社のパフューマー(調香師)なだけあって、香料の歴史や効果などの蘊蓄部分が濃い。

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