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・パギャル消費 女子の7割が隠し持つ「ギャルマインド」研究
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電通ギャルラボの現代ギャルトレンドの研究レポート。アンケートによると、7割の女子が「ギャルマインド」を隠し持っている。特に、見た目はギャルではないのにギャルマインドを持つ女子を「パギャル(半端なギャル)」と名づけて注目して、そのライフスタイルや消費行動についてのディスカッション。

電通の「ギャル」の定義は「いつの時代にもいるパワフルでファッショントレンドのど真ん中にいる女の子たち」。人間に限らず生殖適齢期の異性は、進化のカギなわけだから、ギャルが人間社会において強い影響力を持つことは確かだろう。

ギャルマインドは心(ラブ)、技(デコ)、体(ガッツ)からなるという。共感性が高く、キラキラ・デコデコ・モコモコが大好きで、飲み会、カラオケ、祭りが大好き。都心より地元、安くてかわいいものが好き、一人牛丼OK、泣ける歌が好き、温かい家庭に憧れる、「ポップティーン」「JELLY」のようなギャル雑誌をよく読むというような、指向と行動パターンがあるらしい。

西野カナ、加藤ミリヤ、JUJUが歌う泣き歌(ギャル演歌)のテーマは「報われない恋」や「待つ女」だ。最新トレンドであるはずのパギャルだが、よくみていくとどことなく昭和の香りもする。内面的にはヤンキー文化論の層が近いのではないかとも思った。

新しい消費動向を読み解くインタビューが面白かった。たとえばパギャルで人気のプリクラの話題。彼女たちは撮影後に「ブログがあるから、データがあればいい」といって、データだけ携帯で受信して、肝心のシールは放置する。そしてその写真を公開するブログには友達オンリーのカギがかかっているが、理由は「ブログにパスワードをかけるのは「隠しているつもりはなく、登録者を増やしたいから」。パギャルたちは独自のソーシャルネットワークのレイヤーをつくっているのだ。

厳密な統計データにもとづく研究というよりは、電通社内でのディスカッションをのぞき見るような軽めの内容だが、オジサンたちが「今日盛れてるね。アゲぽよ~」なギャルを知るための、よいきっかけになりそうな内容。

・中国共産党 支配者たちの秘密の世界
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世界最強の組織の裏側を外国人ジャーナリストが暴く。第23回アジア・太平洋賞大賞受賞、英エコノミスト、フィナンシャルタイムズのブック・オブ・ザ・イヤー受賞作。

中国共産党は2009年半ばの党員数7500万人(国民の12人に1人)。世界最大の人口と多くの問題を抱えながらも、共産党が導く中国は、短期間に著しい経済成長と近代化を実現してきた。間違いなく世界最強の組織だ。だがその内側のことはほとんど世界に知られていない。著者は共産党や大企業幹部への取材活動を通して、現代の共産党の実態を明らかにしていく。

「わずか一世代のあいだに党のエリート層は、陰気な人民服を着た残忍なイデオロギー集団から、スーツを着た、企業を支援する金持ち階級へと変身した。それとともに彼らは自分たちの国を変容させ、世界をも作り変えようとしている。今日の中国共産党は、グローバリゼーションの道を邁進することに専念し、それによって経済効率と収益率を高め、政治的影響力をより強固なものにしようとしている。」

中国共産党は何かに登録された組織ではない。憲法前文にある「共産党の指導のもと」という一文以外に、共産党を組織として存在させる法律や登録は存在していない。だから誰も正式には党を訴えることはできない。法体系の外にある超法規的存在なのだそうだ。その力はあまりに強大だ。

「すべての国有大企業では通常、役員会に先だって党会議が開かれます。経営コスト、資本拠出義務などについては役員会で討議されますが、役員人事を握るのは党です。」

共産党の幹部たちは党の要職とともに大企業の役員も歴任していく。党は企業人事に関与していないというフィクションを作り上げるため、表向きの発表は普通の企業の役員交代であるが、実質は党内の人事異動に過ぎないのだという。

中東では民主革命を実現させたソーシャルメディアや検索エンジンでさえ、中国共産党は支配のツールとして活用している。中央権力を強化するために、地方の政治的腐敗や過剰投資を敢えてブロガーに暴かせ、粛清していくのだ。

「ゴマ粒官僚たちを従わせるためには、最新のツールも巧みに利用されている。国内のジャーナリストやブロガーが地方の役人による権力の乱用を暴露することを許したのだ。もちろん、中央政府の最高幹部はその対象に入っていない。中国で言うところの「人肉検索エンジン」によって、地方の役人たちが次々に失脚させられたのは2009年のことだった。」

中国共産党の目指すのは「経済成長」と「ナショナリズムの再興」。経済成長の成功によって自信を取り戻した中国は、もはや西欧型の民主国家+市場経済を見習おうとしているわけではないと著者は結論している。経済大国となりつつある中国は社会主義国家でさえない。まったくユニークな中国共産党の独裁国家なのだ。

・回転寿司の経営学
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TVチャンピオン優勝者で回転寿司評論家が書いた回転寿司屋の経営実態。経営の合理化の典型的な成功例がみえて楽しいニッチなテーマの経営書だ。お客が回転寿司ではどう振る舞うのがお得かわかる内容もあって経営者でなくても楽しめる。

原価率30%以下が一般的な飲食業界にあって、回転寿司は原価率が40%~50%が当たり前の世界。人件費や管理コストをシステム面でのハイテク化、IT化によって徹底的に合理化して、競合店が熾烈な競争を繰り広げている。

たとえば、ここで紹介されていたあきんどスシローの導入した「開店すし総合管理システム」は、

「皿の裏側にICチップを付け、単品管理を行うと共にリアルタイムの売れ筋状況を把握することで、いま流すべきネタをコンピュータが指示するという画期的なシステムである。客の性別、年代などを来店時に打ち込み、さらに滞在時間により来店したばかり、30分経過、帰る間際等に分類し、どの寿司をどれくらい流せばいいのかをPOSデータをもとにコンピュータ制御するわけだ。三人連れの親子が40分以上滞在している場所にたくさんの寿司を流しても食材ロスになる確率が高くなるし、子供が多ければ、子供が好きな寿司やデザートを流すなどの調整ができる。」

なんていう内容。回転寿司が職人の勘や技に頼っていた時代はとっくに終わっている。そしてこうして絞ったコストを食材の調達に使う。いま回転寿司業界は大手100円寿司チェーンと、高価格グルメ系回転寿司店が二分しているそうだが、後者では銀座の高級店より鮮度の良い美味な魚を味わうことができることもある、という。

三貫盛りはお得、メバチマグロはおいしい、「当店の人気ベスト3」は主に店が売りたい高利益商品、全国ご当地回転寿司など、お客にとっても有益な情報も満載。

・スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
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国際的なマーケティングコミュニケーション企業のヤング&ビルカムが、17年間で120万人以上を対象に継続実施してきた「ブランド・アセット・バリェエーター」(BAV)という調査がある。50カ国4万を超えるブランドイメージについて四半期ごとの購買・消費者意識アンケートを行うものだ。

著者はBAVの分析もとに、リーマンショック後の、世界の消費者心理と購買行動に大きな変化があったと結論する。危機を乗り越えた消費者たちは、まるで御札が投票用紙であるかのように、絆や夢や未来のために、消費活動を行うようになった。社会をよくするための選択としての消費へのシフト。それが本書のタイトル「スペンドシフト」だ。

この本で紹介されるデータ的には「富裕層向け」「お高くとまった」「感性に訴える」「大胆な」「トレンディ」だったかつての人気ブランドへの評価が下降して、代わりに「親切で思いやりのある」「親しみのある」「高品質の」「社会的責任のある」「リーダー」といったイメージを持つブランドが高く評価されている。

物質主義から精神性や社会性の追求がはじまった。消費者の価値観は「不屈の精神」「発明・工夫」「しなやかな生き方」「協力型消費」「モノ重視から実質重視へ」。じっくり考えるソクラテス流の消費の時代。自分の理念に合うかどうかを基準にしてブランドを選ぶ時代。さまざまな調査の数字がそうした新しい時代精神を示している。

クチコミによる評判を重んじ、良き企業市民であること、地域社会や従業員を大切にする企業が愛される。コミュニティづくりと親和性の高いブランドは主要指標のすべてにおいて他のブランドを上回っている。ソーシャルメディアが「顔の見える」企業をつくるための有効なツールになる。

「次の選挙を待つまでもなく、消費が新しい傾向を示す背景には価値観の変化があるとわかるはずだ。アメリカは借金による消費やモノの過剰と決別して、節約と投資へと向かっている。わが国のGDP(国内総生産)の三分の二は消費支出によって支えられている。つまり、消費の風向きは、文化と経済の両方に変化を及ぼしているのだ。わたしたちは、消費しない社会に向かっているわけではなく、消費のもたらす変化をとおして社会をよい方向へ導こうとしている。」

ここに取り上げられるデータは欧米のものが多いのだが、日本でも3.11以降、コミュニティ、絆、未来の共創が大きなテーマとなった。2011年がスペンドシフト元年と言っていいかもしれない。

消費者が何を買うか、何を買わないかで、社会を変えていく。マーケティングの役割が大きく変わるということでもある。視野を広く、志を高く持たないと、マーケッターという仕事はつとまらない時代になった。

ヤバい統計学

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・ヤバい統計学
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統計の失敗やウソを暴くのではなく、統計が正しく使われた成功事例を10のエピソードで解説する。統計学の成果を現実の社会に応用するには、難しい計算ができるだけではまったく不十分で、その数字が人間にもたらす心理効果や、実際の経済効果をよく考えなければならないということがよくわかる本。

最初のエピソードはディズニーランドのファストパスは統計学の成功例だ。ファストパス発券によってアトラクションの待ち行列が短くなるわけではない。しかしファストパスにより「ディズニーのテーマパークでアトラクションを待つ行列は年々長くなっているにもかかわらず、出口調査によるとゲストの満足度は上昇し続けている。」そうである。

ファストパスの役割は待ち時間を短くすることではなかった。パスがあっても、アトラクションの収容能力は変わらないからだ。統計学的にはパスの真の機能はゲストの待ち時間のばらつきを排除することにあるのだと著者は指摘する。実際の待ち時間が不確実なのが本当の問題で、実際に何分待つかは本当の問題ではなかったのだ。ここでもディズニーランドは知覚を管理する魔法を使っている。

本書では統計学の応用のための思考5つの原則として

1 常に「ばらつき」に注目する
2 真実より実用性を優先させる
3 似た者同士を比べる
4 2種類の間違いの相互作用に注意する
5 稀すぎる事象を信じない

が示されている。この1つめがディズニーランドのファストパスと高速道路の渋滞緩和策の話であった。他にもクレジットカードのスコア、保険のリスク評価、ドーピング検査と嘘発見器、宝くじの設計などわかりやすい事例が集められている。

"ビッグデータ"がIT業界のバズワードになりつつある昨今、統計的思考の応用、成功例というのをもっと把握していきたいと思った。

・次世代インターネットの経済学
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まっとうな経済学者が書く、うわつかない次世代インターネット経済学。

ベストセラーになった「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」などは「情報通信経済学の専門家の立場からは、荒唐無稽な主張である」とばっさり切って捨てる。デジタル経済ではデジタルのものは遅かれ早かれ無料になるというのが「フリーミアム」だが、著者曰く限界費用がゼロになるからといって価格がゼロになる必然性はなく、企業は差別化や独自ブランドによってベルトラン競走から逃れようとする。そもそも限界費用ゼロといっても商品が競争市場で勝てるだけの付加価値を生むには、相当に大きな固定費用が現実には必要なはずだと指摘する。

フリーミアムは経済の一面しかみていないのだ。現代のデジタル経済で重要なのは両面市場の経済学だという。「ネットワーク効果をレバレッジとして効かして、一方で無料で他方で有料で、二種類のユーザを共通のプラットフォームでつなぐようなビジネス・モデルを両面市場(Two-sided Market)という。Googleのビジネス・モデルは、両面市場の経済学として明解に説明できる。」。だから一方の価格の効果だけみていてはだめで、両側の分配比率に気をつける必要があるのだ、というわけ。

経済学者が、バズわーどに踊らされず、経済学的に確実にいえることは何かを冷静におさえながらデジタル経済を現実的に語る本だ。規模の経済やネットワーク効果という基本的な理論を、現在の市場にあてはめて解説してくれる。ロックインと経路依存性の話もITビジネスでよく発生する問題を理解するヒントになる。なぜ市場ではしばしば良貨を悪貨が駆逐してしまうのかのワケ。

「デジタル経済では、主流派経済学が想定してきたような予定調和型均衡は成立しない。正のフィードバックのために、複数均衡の中の最適均衡に収束する保証はなく、いち早くクリティカル・マスを獲得した非効率的な技術が普及し(過剰転移)、そのまま長期間ロックインする(過剰慣性)かもしれない。」

・過剰慣性
「非効率な旧ネットワーク技術が既に普及し、ユーザがロックインしてしまうために、効率的な新ネットワーク技術が阻害される。」
・過剰転移
「非効率な新ネットワーク技術が将来普及すると予想されるために、効率的な旧ネットワークを駆逐してしまう。」

要するに、ネットワーク製品やサービスは、良い物を作れば必ず売れるわけではない。現状の市場の状況をみて戦略を打ち出していく必要があるということだ。当たり前なのだが、市場でプレイヤーとして戦っていると忘れがちな事実をたくさん指摘して貰ったような気がする本だった。

・日本「再創造」 ― 「プラチナ社会」実現に向けて
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明解なヒントに満ちた本。

元東京大学総長で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏が提唱する「プラチナ社会」とは

エコで低炭素な社会を実現していく「グリーン・イノベーション」
活力ある高齢化社会を実現していく「シルバー・イノベーション」
ITを効果的に活用して人が成長する「ゴールデン・イノベーション」

という3つが有機的にむすびついた未来社会のイメージである。

市場競争で飽和した普及型需要から、これまでにない創造型需要で未来を切り開く国になるには、日本は課題先進国から課題解決先進国へと変身することだと説く。いま日本が直面している問題は近い将来にアジアや世界の国々にも生じる問題の先取りだからだ。

物事の本質をみる着眼点がユニークだ。

たとえば各国のインフラの整備度合いを、2010年までの一人当たりセメント投入量累計でみる。アメリカなら約16トン、フランス22トン、日本29トン。急速に追い上げる中国ではすでに14トンに達しており、直近では年に1.3トンのペースで増えている。2年後にはアメリカに追いつく。

「中国とアメリカの国土面積はほぼ同じで、人口は中国が4.5倍ある。2012年に人口当り投入量が同じということは、中国の国土にアメリカの4.5倍の密度でセメントが投入されることを意味する。高速道路や飛行場やビルなどのインフラ投入の総量が4.5倍になるわけだ。 したがって、今後もしばらく中国が年率10%もの高成長を続けるとすれば、道路や港湾、ビルなどのインフラは予想以上に早く建設され、早ければ二年、どんなに遅くとも10年以内で飽和状態に達するのは確実である。」

物質は飽和する。投入した物質の量をみて状態を測る。いわれてみればとてもシンプルで本質的な考え方だ。

物質は有限だが欲望は無限だ。人類の情報スピードが「神の見えざる手」を超えてしまい、市場は均衡せずに暴走するかもしれない。プラチナ社会を実現するための具体策として、

1 エネルギー効率を3倍にすること
2 物質循環システムを構築すること
3 非化石エネルギーの利用を二倍にすること

といった施策が掲げられている。効率が3倍になれば使用エネルギーが3倍に増えても問題がない。循環システムがあれば無駄がない。非化石エネルギーによってCO2排出量を抑えられる。

ではわたしたち具体的にはなにから手をつけたらいいか?

人々が最新のエコ家電に買い替えることで、日本の産業は復活し、海外に輸出する製品が磨かれ、効率社会も実現される。だから最新の家電の買い替えが、一般市民ができる第一歩としてよいらしい。買いますかね。

・国家は破綻する――金融危機の800年
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過去800年間の各国の記録を精査して国家の金融危機(ソブリン・リスク、デフォルト、銀行危機)を分析した研究書。

長い歴史のスパンで見ると国家はひんぱんに破綻している。公的対外債務のデフォルト、国内債務のデフォルト、そして銀行危機、インフレ、通貨暴落。この本にあるデータをみれば国家は破綻しないなどというのは幻想であることがわかる。世界の半分近い国がデフォルト中ということが歴史上何度も起きているのだ。デフォルト回数の記録保持者はスペインだが、世界のほぼすべての国が新興市場国だったころに一度は対外債務のデフォルトをしている。

国内債務のデフォルトよりも、公的対外債務のデフォルトが起きやすい。これは「国がデフォルトを起こす主な原因は、返済能力ではなく返済の意思である」という理由で説明できるそうだ。債権国が債務国を武力で脅して回収するという発想は費用便益分析的に考えて、現実的ではない。だから債務国にしてみれば、いろいろデメリットはあるものの、ある程度の体力を残した状態でデフォルトしてしまい、交渉で債務の一部不履行やリスケジューリングへと持ち込むことにも合理性がある。

統計的にみると国内債務の方がデフォルトの許容限界が高い。この場合、打ち出の小づちとして政府は、通貨発行ができるが制御不能のインフレをまねく可能性がある。事実上のデフォルトがインフレという形をとることもある。

「なぜ政府は、インフレで問題を解決できるときに、わざわざ国内債務の返済を拒否するのだろうか。言うまでもなく一つの答えは、インフレがとくに銀行システムと金融部門に歪みを生じさせるから、というものである。インフレという選択肢があっても、支払い拒絶の方がましであり、少なくともコストは小さいと政府が判断することもある。」

対外、国内どちらにせよ、国がデフォルトを起こす主な原因は、返済能力ではなく返済の意思であるということになる。むろん一人前の国家はデフォルトを選ばない。

「高所得の先進国の多くは1800年以来、対外債務のデフォルトを起こしていない。
現在の先進国は公的債務のひんぱんなデフォルトや年率20%以上の高インフレからは卒業したが、銀行危機から卒業したとは言い難い。」

後半では、先進国で発生しやすいのは銀行危機であり、いかにそれが一般的でよく起きるかを数字で示している。つまり、国家と言うのは先進国、高所得国になっても破綻するときには破綻するものなのである。構造改革も、技術革新も、よい政策も、健全なファンダメンタルズも、国家の破綻を完全に防ぐことはできない。しかし、専門家はしばしば「今回は違う」シンドロームに陥って、状況を見誤ってきたというのもこの本が明らかにする歴史の一面だ。

著者は公的対外債務危機、公的国内債務危機、銀行危機、通貨暴落、インフレ急騰の5種類の危機が、その年に起きているかどうかで国家の金融危機度を測る総合指数(BCDI指数)を開発した。1種類が起きると1、5種類ならば最も深刻な5になる。

2007年の米国のサブプライムショックとそれに続く「第二次大収縮」は、第二次世界大戦以降で最悪の深刻度を持つものであったということがわかる。国家はしばしば破綻するものだが、歴史的に見てもあれは相当やばかったのだよ、といいたいらしい。

そして今日は2011年の8月1日である。

米国はどうやら今回の債務危機を回避できるらしい。この本の過去のデータ的にも米国がこの状況でデフォルトする確率は低そうだし、「国がデフォルトを起こす主な原因は、返済能力ではなく返済の意思である」なのであるから、当然といえば当然か。

・日本の農業は"風評被害"に負けない
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原発事故の影響で苦境に立たされている農家への取材と風評被害問題の解決の考察。

被災地東北の農家の応援はしたい。だが本当に政府が安全とする放射線の基準値は正しいのか。こどもに食べさせてもまったく問題はないのか。誰が安全を保証してくれるのか。今は悩ましい気持ちで過ごしている消費者が多い。農家に対する信頼不足ではなく、政府の対応に対する信頼不足が原因だ。

放射線がまったく検出されない農作物でありながら、東北の産物だというだけで消費者に敬遠されてしまうとすれば、それは確かに風評被害である。3月22日 茨城県で「イチゴの取引価格が1パック20円に急落」したそうだが、出荷はできても市場での価格がとんでもなく低くなってしまうことも痛い。

この本に登場する農家たちは、

「安全・安心の根拠を作るため、あえて自分の畑を一度潰した」
「出荷先を市場ではなく、直取引にシフトする戦略を取った」
「自ら市場に安全の根拠となる資料を配った」

などの行動をとって、それぞれが風評被害に対処している。個々の安心安全を守ろうとする意識はとても高い。苦境にありながら、消費者には安心安全だといえるものだけを届けたいという信念の人がいっぱいいる。志の高さに感動する。

だが、思わぬ問題もあるのだなと知る。

ある茨城の農家は、風評被害によって通常の相場の10分の1(数十円)にまで値段が下がったトマトを泣く泣く直接市場で売った。どれだけ店舗で安売りされているか確認しにスーパーに行くと驚いたことに売り場では「風評被害に負けるな!茨城県産の野菜を食べよう!」というポップ付きで普段の定価(数百円)で売られていたという。値崩れを防ぐための販売手法なのかもしれないが、数十円で売った立場としては、なんともいえない気持ちで帰ってきたそうだ。風評被害に乗じて不当な利益を得ている業者もいるかもしれないと著者は指摘している。

日本の農業は"風評被害"に負けないという力強いタイトルの通りになってほしいが、問題はいままだ現在進行形である。これを機に直販を多くして経営を安定させる農家もあるかもしれないのがわずかな希望か。いま起きている風評被害の複雑さが印象的なタイムリーな内容の本だった。

・世界とつながるビジネス――BOP市場を開拓する5つの方法
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世界の所得分配ピラミッドの底辺40億人、世界人口の3分の2は1日8ドル未満で暮らしている。一人ひとりの収入は少なくとも合計すると年間5兆ドルの所得がある大国となる。この人々を援助の対象とはとらえず、消費者であり生産者であるとみなすことで、現地に持続可能なビジネスを創出できれば、未来の大きな市場となる。

これは国連開発計画(UNDP)の「包括的な市場育成イニシアチブ」調査報告書の日本語版。

1 貧困地域におけるビジネスチャンスと5つの課題
2 BOP市場での事業の成功を導く5つの方法
3 さまざまな業種における、示唆に富む17の事例

という構成で"インクルーシブビジネス"のチャンスを語る。

(1)基本的なニーズへの対応、(2)生産性の向上、(3)収入の増大、(4)エンパワーメント、サポートの方法は大きく4つが設定され、これらの方向性でさまざまな取り組み事例が紹介されていく。中国の貧しい農民のためのコンピュータを開発してソフトとセットで配る。インドの不可触民のために衛生的なトイレをつくる。ケニアの貧困層のために携帯電話で電子マネーの融資を可能にする。南アフリカで低所得者向け教育ローンを提供する。メキシコ人の出稼ぎに住宅建設をサポートするための送金サービスを提供する。などなど。

「貧困は多面的だが、その核心は機会の不足だ。インドの経済学者アマルティア・センの言葉を借りれば、価値があると思える人生を選べないことだ。機会の不足を引き起こしているのは。お金や資源の不足だけでなく、資源を使いこなす能力の不足だ。つまり、健康でないこと、知識や技術が足りないこと、差別を受けていること、社会的に排除されていること、インフラへのアクセスが限られていることなどのせいで、貧困層の人々は自分の持つ資源を活用して機会に変えたくても変えられない。自らが良いと思う選択肢を選べないのだ。」

どうやって貧困層において持続可能なビジネスを生み出せばいいのか。イマージョンという手法が興味深かった。イマージョンとは貧しい村に長期滞在して住民との信頼関係を築き、本当のニーズにもとづくビジネスモデルをつくりあげる手法のこと。

「インテルやモトローラやノキアは「ユーザー人類学者」あるいは「人間行動研究者」を雇っている。彼らは潜在的顧客の中に入り込み、いろいろなサンプルインタビューをして、製品につけたら喜ばれそうな機能は何かを調べてリストアップする。ニューヨークタイムズによれば、携帯電話が家族や隣近所の人たちの間で共用されているという人類学者の研究成果からヒントを得て、ノキアは最大7つのアドレス帳を搭載した携帯電話を生産し始めた。」

貧乏に慣れた長期旅行者いわゆるバックパッカーをイマージョンのリサーチャーとして教育したら面白いことになるのではないだろうか。

世界を変えるビジネスの入口を探している人におすすめの内容。

・世界経済のオセロゲーム
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米国の調査会社が発表した2011年の世界の10大リスクのトップは「Gゼロ」。グループ・オブ・ゼロ、世界的な指導者の不在を意味する。「世界の大国が内向きになり指導力を発揮しようとせず、国際機関も十分な役割を果たせず機能不全に陥る。その結果、経済不振となる」というシナリオ。日本経済新聞社の論説副委員長が書いた。

グローバル視点で混沌とした時代のゲーム盤を読み解けば、オセロで相手の駒をいっきに自分の色に塗り替えるように、勝者と敗者の入れ替えを起こすことができて、日本にも経済復活のチャンスがあるという力強い提案本。

著者は「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざリ ぢっと手を見る」の俳句になぞらえて経済活動をとりまく環境条件の悪さを「啄木の世界」となづけた。一方で「カネは天下の回りもの」、自らの才覚で成功をおさめる世界を『日本永代蔵』になぞらえて「西鶴の世界」と呼んだ。

「交易条件の悪化を「啄木の世界」、企業の努力による純輸出の拡大を「西鶴の世界」と呼ぶとすれば、肝心なのはどちらの要素が勝っているかだ。ひと言でいえば、06年までは純輸出額の拡大が交易条件悪化を埋め合わせていた。 だが07年半ば以降は「啄木の世界」が勝っているといえよう。もちろん、その試練は新エネルギー開発やエネルギー効率の向上を促すことで、オセロゲームのように新たな「西鶴の世界」の幕を開く可能性がある。最も有望なのは電気自動車であろうが、ここしばらくは日本にとって「啄木の世界」が続くことを覚悟しておくべきだろう。」

グローバリゼーションの勝ち組・負け組をわけるのは、個々の国や企業の努力というよりも、オセロのルール上で有利な手を売っているかどうか。その見極めるポイントをいくつか解説している。

たとえば一人当たりGDPの増加に伴い消費支出が爆発的に伸びる「スイートスポット」にあたる中国やこれからの成長が見込めるBRICs諸国の市場。アジア、新興国の内需拡大に合わせて家電や車を売り込めれば勝ち組になれるが、お隣韓国が日本を急速に追い上げてきているという。

この本を読んで日本のチャンスとして面白いと思ったのがコンビニの輸出だ。セブンイレブンは日本に12925店あるがタイには既に5660店も出店しており、業界売り上げトップで毎年200から400店ペースで拡大しているそうである。コンビニが受けているというのは、日本的なライフスタイルが受けているということでもある。

「食事やサービス、家電製品、アニメから音楽まで日本をまるごと売りこむ。いわば日本の生活様式を輸出する形で、消費を「外需化」することが重要な戦略目標になってくる。こうした好循環を起こせれば、国内の雇用の増加にも役立つのは間違いあるまい。」と著者は書いている。

新幹線や原発、水道インフラを輸出するよりも、こうした商売のインフラを売った方が、その先にあるアニメやゲームを含めた文化の市場までおさえることができて面白そうである。

国内経済については、生産年齢人口が減り、高齢者人口が増える高齢化社会の問題を分析している。日本の家計金融資産の64%(811兆円)を60歳以上が保有している。このうち一人住まいの高齢者の保有分が235兆円もあるという。将来が不安で死ぬまで金を持ち続ける「強制貯蓄」状態から、一人暮らしの高齢者をいかに解き放つかが課題であると。ああ、オレオレ詐欺に代わる合法的なビジネスということですかね。

日本経済復興のヒントがいろいろ詰まっていそうな論考集。

・競争の作法 いかに働き、投資するか
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日本経済新聞の2010年度エコノミストが選ぶ経済図書ベスト1に選ばれた新書。

経済学者が、現代日本において適正な競争原理が果たす重要性を説いた本。

市場主義を再評価する。競争の行きつく先は悲惨な格差社会ではなく幸福な社会だと。

著者は「日本経済で不平等が深刻になったのは、競争原理が貫かれて生産の効率性が飛躍的に向上したからではない」という。「競争原理を貫いたから、平等原理に抵触した」のではなく、「競争原理を大きく踏み外したので、所得分配上の深刻な問題が生まれた」のだという。

「戦後最長の景気回復」やリーマンショックの影響、「二つの円安」など経済指標を分析して、失われた10年から現在までの日本経済の流れを説明する。そして、従来の国民経済計算(GDPなど)では幸福やこころの豊かさは測ることができないことも示す。そのうえで、今の日本では、本当に貧しい人たちは少数であり、多数は「豊かさ以上、幸せ未満」の状態に置かれているという。多くの人にとって格差社会は他人事の議論だというのである。

「21世紀の入口に立って格差社会論争が取り組んだ不平等とは、競争原理を実践するはるか手前のところで、少数に対して悲惨な貧困を押しつけた多数が安堵していた状態にすぎなかった。」

つまり中流以上のマジョリティが、既得権や制度に守られて、たるんでいることで、経済的に大きな損失につながっているということだ。生産性が高い集団の歪みを正して、公正な競争原理を導入すれば、経済は活性化する。また真摯な競争は真の人間性を育む機会となりえる。だからこそ、今、株主らしい株主、経営者らしい経営者、地主らしい地主が真剣勝負で議論する、真正面から競争に向き合っていくことが大切なのだ、というのが本書の主張。

目からうろこ的な指摘が幾つもあって、啓蒙される新書だった。

・ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム
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ノーベル平和賞受賞者・グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスが書いた「ソーシャル・ビジネス革命」。この人以外が書いたら眉つばもののタイトルであるが、世界を変えたこの人が書いたから、これは本物である。

この本で私が勉強になったポイントは3つ。

まずソーシャルビジネスを定義し、似て非なるものを厳密に区分けしていること。

「ソーシャル・ビジネスにはふたつの種類がある。ひとつ目は、社会問題の解決に専念する「損失なし、配当なし」の会社で、起業を所有する投資家は、上がった利益をすべてビジネスの拡大や改善に再投資する。先ほど挙げた例はすべてこのカテゴリーに含まれる。私たちはこれを「タイプI」のソーシャルビジネスと呼んでいる。 ふたつ目は、貧しい人々が所有する営利会社だ。これは直接所有される場合もあるし、特定の社会的目標に専念するトラスト(信託機関)を通じて所有される場合もある。私たちはこれを「タイプIIのソーシャルビジネス」と呼んでいる。貧しい人々に利益が分配されれば貧困が緩和されるため、この種のビジネスは当然ながら社会問題の解決に役立つ。グラミン銀行はタイプIIのソーシャルビジネスの一例だ。」

ユヌスの基準で考えると、日本や欧米でブームに乗って出てきた多くのソーシャルビジネスが、もどき、ニセモノということになる。そもそも従来型の営利企業のための株式会社の枠組では、次の原則を満たすソーシャル・ビジネスは難しいもののように思える。

・ソーシャルビジネスの7原則

1 経営目的は、利潤の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、情報アクセス、環境といった問題を解決することである。
2 財務的・経済的な持続可能性を実現する。
3 投資家は投資額のみを回収できる。投資の元本を超える配当は行われない。
4 投資額を返済して残る利益は、会社の拡大や改善のために留保される。
5 環境に配慮する
6 従業員に市場賃金と標準以上の労働条件を提案する。
7 楽しむ!

重要なのは、まずは5人を助けるビジネスをタネとして考えること。それがうまくいったら、そのタネをまけば、百万人、千万人を助ける社会変革につながる。決して最初から大きく変えようと思わないこと、だそうだ。

ポイントの2つ目はユヌスの立ち上げたグラミン・グループの全貌を理解できること。

グラミン・グループの事業はマイクロクレジットの銀行経営だけではない。携帯電話のグラミン・テレコム、エネルギー(家庭用ソーラー)のグラミン・シャクティ、医療サービスのグラミン・カルヤン、教育のグラミン・シッカ、クリエイティブ・ラボなど、多くの子会社を立ち上げて、貧しい人々の生活をよくするため、幅広い事業に進出している。

グラミンは営利企業との合弁企業を次々に設立して成果を上げ始めている。ソーシャルビジネスは協力者の助けを得ることが重要だが、相手が営利企業というのもありえる。逆にいえば、営利企業がソーシャル・ビジネスで成功するには、グラミンと組んでしまうのが一番よさそうだ。

この本で紹介された事例

グラミン・ダノン 低価格の栄養ヨーグルトの生産と販売
グラミン・インテル ITを利用して社会的利益
グラミン・アディダス ワンユーロシューズで靴のない人を世界からなくす
グラミン・ヴェオリア・ウォーター 廉価にきれいな水を供給する

営利企業は貧しい国が十分に豊かになるのを助けてから回収すればいい。

そしてこの本の3つめのポイントは、ユヌスの人生観、世界観がわかること。

なぜ安定した教授の地位を捨てて、ソーシャルビジネスに取り組むことにしたのか。どのような苦労があったのか。これから何をしようとしているのか。ユヌス自身の人生と人生観がよくわかる本だ。

「誰しも、他者を助けたいという強い利他的欲求を持っている。これは、個人的利益に対する欲求と同じくらい強い。しかし、従来の資本主義は、人間の持つこの強い衝動を活かそうとしてこなかった。その結果、世界経済は偏った成長を続け、格差はみるみる広がった。」

数十億人を置き去りにした20世紀の経済発展の時代が終わり、21世紀はソーシャル・ビジネスの時代ととらえ「理論的には、経済全体をソーシャル・ビジネスで構成することも可能だ。」と、そこに無限の可能性を見ている。

とっくの昔になくなった貧困問題を展示する貧困博物館をつくるのが自分の夢だと語るユヌス。社会起業家必読の本。

強さと脆さ

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・強さと脆さ
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全米で250万部突破の「ブラック・スワン」の副読本的なエッセイ集(ペーパーバック版のために書き下ろされた部分を日本で単行本化した)。「ブラック・スワン」を読んでいることを前提として書かれているので注意。ある種のファンブック。

本論に対して寄せられた反響に対してコメントをしたり、わかりやすいまとめ、新たな論点の提示などで構成されている。

「ブラック・スワンに対処するための9原則」

1 時の試練と、はっきりとは現れない知識に敬意を持つ
2 最適化を避ける。無駄を愛することを学ぶ
3 確率の小さいペイオフを予測しない。普通の事象ならその限りにあらず
4 起こりにくい事象に「典型的な姿」なんてないのに気をつける
5 ボーナスの支払いにはモラル・ハザードがついてまわるのに注意する
6 リスク指標は避けて通る
7 よい黒い白鳥か悪い黒い白鳥か
8 ボラリティが見られないのをリスクがないのと取り違えない
9 リスクを表わす数字を見たら気をつけろ

ブラック・スワンを読んでからずいぶん経つが、このリストで内容を思い出した。

・ボラリティや通常のランダム性を抑え込むと黒い白鳥に振りまわされやすくなる
・ボラリティが低くなった期間を、リスクが低くなった期間と見誤っている
・進歩はオプション性に絡むランダム性から生まれる(次の著書で詳しく書くらしい)

など、金融のみならず、安心・安全社会の陥穽への指摘が鋭いなと改めて思った。

ナシーム・ニコラス・タレブは、ブラック・スワンがベストセラーになったせいか、この本ではひたすら断言口調でしゃべりまくる。本論と比べて、根拠やロジックが弱い気がするが、その分、勢いのある、わかりやすい表現が多い。

・グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命
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著者 藤井 清孝氏は、マッキンゼー出身でハーバードMBAを取得し、ケイデンス・デザイン・システムズ日本法人、SAPジャパン、ルイ・ヴィトン・ジャパンなど外資系企業の代表を歴任、現在は電気自動車の充電インフラ企業ベタープレイス・ジャパンの代表をつとめる人物。

「世界をみてきたからこそわかる、日本の本来的な強さ」をベースに日本の産業に必要なイノベーションを3つ(ビジネスモデル、ガバナンス、リーダーシップ)語る。どれも説得力ある内容で、日本経済再生はこの人に任せてみたらいいのではないか、と思った。

「近年、ものづくりのパラダイムが世界レベルで大転換してきている。これはデジタル化がビジネスのあらゆる側面に深く浸透してきていることに起因する。従来のハードウェア生産局面での付加価値が加速的に減少し、ソフトウェア、標準化、ユーザー・インタフェースなどを制した企業に富が集中し始めているのである。このような環境下では、個々の要素技術に強い日本企業が技術面を強調し過ぎることにより、一番苦しい技術開発部分を負担させられながら、その果実をアメリカやアジアに取られてしまう構図が加速する。」

DRAMメモリー、液晶パネル、DVDプレイヤー、太陽光電池、カーナビなど急速拡大した市場の日本企業のシェア推移を示したグラフが衝撃的だ。どの製品も日本が主導して開発して当初は高いシェアを誇っていたのに、20年間で急速に海外勢に「果実」を奪われている。

垂直統合型日本企業のお家芸「アナログ擦り合わせ」力だけではもはや生き残りは不可能なのだ。モジュール型製品の強みや国際分業による競争力など、グローバルレベルでの競争ルールにおける知恵が必要ということだと思う。

著者は、プロダクト・イノベーションからビジネスモデル・イノベーションへ向かうための必要な力を挙げている。

1 感動する「ユーザーエクスペリエンス」をつくる力
2 「オープン化」と「ブラックボックス化」のメリハリをつける力
3 指導権を取れるアライアンスを構築する力
4 もうかる仕組みを事前に設計する力
5 顧客からの信頼をブランド力に昇華する力
6 個別要素の強みをプラットフォームに構築する力
7 優秀な人材が馳せ参じる組織力

それぞれの項目で、自社の「ブラックボックス」でオープン環境を支配する、顧客満足ではなく顧客感動の追求する、ユーザーエクスペリエンスをブランド化する、サービスを製品化するなど、「日本はガラパゴス」と開き直る前に、まず把握しておくべき世界のルールと攻略法が示されている。

「7 優秀な人材が馳せ参じる組織力」では、野心エネルギーが活力の源泉となるという、世界では当たり前なのに、日本では、なかなか当たり前にならない話が書かれている。
「日本企業は終身雇用で優秀な人材を大量に採用し、育成してきた。結果として、事業を多角化させ、その担い手として人材も送り込む仕組みをつくり上げさせた。 だが、もっと大きな視点で見てみれば、これは大企業がさまざまな小さなビジネスまでも取り込んでしまっているということでもある。結果として、若者が起業しようとしても、どこかの大企業の子会社がもうやってしまっている、などというケースが極めて多い。大企業のコアビジネスから離れた事業への多角化は、新規参入者が起業するチャンスの芽を摘んでしまっており、結果的に産業全体の活性化を妨げているのである。 人材面でも、優秀な人材が大企業に抱え込まれてしまっている。本社の人材が関係会社へ「出向」という日本独自のシステムで、退路を断つことなくサラリーマンとして経営陣に入り、「疑似起業」をしている。このように、商機と人材の両方において、アントレプレナーがダイナミックに起業するという流れを弱めてしまっているのだ。」

日本でも、自営ベンチャー、オタクベンチャーの時代を脱して、いわゆるエリート層が自らダイナミックに起業したくなるような社会環境を整備すべきだ。それと「退路を断つ」って重要だなあと思う。

日本のテクノロジー産業をどう立て直すかのヒントがいっぱいのとても良い本だった。

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