Books-Economy: 2006年11月アーカイブ

・新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略
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金融資産1億円〜5億円の「富裕層」81万世帯のプロフィールと彼らの資産運用の考え方を徹底分析し、特に新興の「新世代富裕層」に対する金融サービスの戦略を考察した本。野村総合研究所アナリストの著。


極端にいえば、旧世代富裕層が金融機関と付き合う選択肢は「金融機関を信頼して『情緒的に依存する』」か「金融機関を信頼せずに、自分がわかる範囲のことしかしない」のどちらかである。

昔からのお金持ち層は保守的なのだ。これに対して少子高齢化による相続と団塊世代の大量退職によって誕生する新たな富裕層=新世代富裕層は、資産運用の知識と相談相手を持たない突然の金持ちである。この層を金融機関はどう取り込んでいくべきなのか。

情緒的な旧世代富裕層と比べて、新世代富裕層は能動的で合理的である。インターネットも駆使して自ら納得できる資産運用サービスを探す。実は富裕層のインターネット利用率は63%で、準富裕層(5000万円〜1億円)の37%、超富裕層(資産5億円以上)57%よりも高い。新世代富裕層にいたっては72%であるという。

しかし、情報収集能力に自信がある新世代富裕層には、単純に情報ページや「マイページ」機能を提供しても受け入れられない。ネットの裏に担当者や専門家が存在して相談に乗ってくれる「気の利いた執事」レベルが求められているという。

新世代富裕層への金融商品設計アプローチとして以下の4つの条件が提案されている。

1 フックをかける
  興味を持つきっかけをつくる
2 夢をわかちあう
  人生観の共有
3 質にこだわる
  すべてにおいて上質なサービス
4 ファミリーにアプローチをする
  家族・親族単位でアプローチ

新世代に特有の価値観とは「自分らしさ」、「自由」、そして「独創性」。これは他業種のサービス設計にも使えるキーワードだと述べられている。

この層には自らベンチャー事業を起こして財を成した人も多いので、何事にも、他人と同じであることを好まず、自分らしいやり方を探している人が多いようだ。老舗ブランドの信用や窓口担当者の誠意だけでは、選ばれるサービスにはならない、というわけだ。

合理的に大金を動かす層が増えるというのは、ビジネスとして大変魅力的な市場が登場するということ。ベンチャー投資にここらへんの層の資金が回るようになるといいなと思う。なにか強烈な特徴がある投資ファンドなどがいいのかもしれない。

今後が注目される富裕層向けサービスについて重要なデータがたくさん入っている本だった。

・日本のお金持ち研究
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003412.html