Books-Economy: 2011年11月アーカイブ

ヤバい統計学

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・ヤバい統計学
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統計の失敗やウソを暴くのではなく、統計が正しく使われた成功事例を10のエピソードで解説する。統計学の成果を現実の社会に応用するには、難しい計算ができるだけではまったく不十分で、その数字が人間にもたらす心理効果や、実際の経済効果をよく考えなければならないということがよくわかる本。

最初のエピソードはディズニーランドのファストパスは統計学の成功例だ。ファストパス発券によってアトラクションの待ち行列が短くなるわけではない。しかしファストパスにより「ディズニーのテーマパークでアトラクションを待つ行列は年々長くなっているにもかかわらず、出口調査によるとゲストの満足度は上昇し続けている。」そうである。

ファストパスの役割は待ち時間を短くすることではなかった。パスがあっても、アトラクションの収容能力は変わらないからだ。統計学的にはパスの真の機能はゲストの待ち時間のばらつきを排除することにあるのだと著者は指摘する。実際の待ち時間が不確実なのが本当の問題で、実際に何分待つかは本当の問題ではなかったのだ。ここでもディズニーランドは知覚を管理する魔法を使っている。

本書では統計学の応用のための思考5つの原則として

1 常に「ばらつき」に注目する
2 真実より実用性を優先させる
3 似た者同士を比べる
4 2種類の間違いの相互作用に注意する
5 稀すぎる事象を信じない

が示されている。この1つめがディズニーランドのファストパスと高速道路の渋滞緩和策の話であった。他にもクレジットカードのスコア、保険のリスク評価、ドーピング検査と嘘発見器、宝くじの設計などわかりやすい事例が集められている。

"ビッグデータ"がIT業界のバズワードになりつつある昨今、統計的思考の応用、成功例というのをもっと把握していきたいと思った。

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