Books-Education: 2009年1月アーカイブ

・最強の記憶術 暗記のパワーが世界を変える
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2007年末のサービスランチ時から真剣に注目しているベンチャー企業のサービスがある。セレゴ・ジャパンの運営する語学学習サイトのiKnowである。脳科学の研究成果に基づいた学習システムで「100語を憶えるのに二週間かかっていたのが一週間で憶えられる」サービスだ。英語教材をメインに100コース、25万アイテム以上の教材が、PCからも携帯からも無料で利用できる。当然大人気で既に30万人以上のユーザーを集めているらしい。

この本はタイトルから連想されるような単なる記憶術の本ではない。創業者の二人が彼らの目指す記憶学習エンジンによる革命(ソーシャル・ラーニング・レボリューション)と起業プロセスを語ったドキュメンタリである。本を読んで改めて、今日本(本社は渋谷)にとてつもないイノベーションを生み出そうとしている会社があることがわかった。

著者らは記憶状態には4つのレベルがあるのだという。

Familiar どこかで見聞きした親近感がある
Recognition 選択肢から正解を選べる
Recall 選択肢がなくても思い出せる
Automaticity 自動的に頭に浮かんでくる

iKnowでは比較的単純な記憶力テスト問題が繰り返し提示される。ユーザーの正答率や回答時間から、ユーザーがどの単語をどのレベルで記憶できたかをiKnowの「ブレインバンク」システムは学習する。人間の記憶はFamiliarレベルの定着度では時間経過で忘れてしまうが、Recallレベルになれば長期間保持される。だから、効率的にRecallレベルの定着が実現されるように、出題パターンや頻度をユーザーごとに自動的に調整していくのである。長期的に少しずつ単語を復習するこの分散学習方式は、一夜漬け式の暗記よりもはるかに効果が高い。理論的には他のどんな教材よりも記憶定着率が高いカスタム教材が提供されるというわけだ。

このセレゴメソッドは英語学習以外にも記憶力が大切な分野ならば、あらゆる学習に応用することが可能になる。彼らは自分たちは単なる英語学習サイトをつくりたいのではなく、脳の外部化とネットワーク化を実現したいという壮大な夢を語っている。

「ブレインバンクは、あなたが学習や経験を通して得たすべての知識が投影された世界です。そこにアクセスすればあなたの知識にもアクセスできるようになります。同様に、別の人のブレインバンクにアクセスすればその人が蓄積してきた知識にアクセスできるようになります。 個々のユーザーのブレインバンクがつながり、インタラクティブに情報交換することが可能になれば、まさに人類の知恵の宝庫となるはずです。たとえば、アインシュタインのような人物の知識が蓄積されているブレインバンクにアクセスして、この天才物理学者の知識を自分の中に取り入れることができればすごいと思いませんか。」

素直にそれはすごいと思う。

創業者の二人の論理的であると同時に情熱的な語りに引き込まれ、思わずこの会社にジョインしたくなってしまう起業本である。

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