Books-Internet: 2006年8月アーカイブ

・テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0
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あの「広告の近未来」の織田 浩一氏が、米国の著名マーケティングコンサルタントの本の翻訳版をを監修。マスメディアの時代の終焉とネットコミュニティの時代の到来を、広告ビジネスという視点で予言する。

・Ad Innovator
http://adinnovator.typepad.com/

この本の第二部で紹介された北米のトップブランド調査(Brancchannel 2004調べ)によると、消費者が選ぶトップブランドは以下のような顔ぶれになっている。

1位 Apple
2位 Google
3位 Target
4位 Starbucks
5位 Pixar
6位 Amazon.com
7位 Donald Trump
8位 Martha Stewart
9位 EBay
10位 Oprah Winfrey

「10年前には存在しなかったようなブランドが地位を占めている。そしてこれらのブランドのどれもが、テレビCMなどしていないのである。広告信仰のコカコーラは、リストにもあがっていない。」

ブランドの生まれ方が変わったのだ。

現在はマスメディアがブランドを作るのではなく、消費者やコミュニティが選ぶものがブランドになるケースが増えてきている。消費者は市場において、情報通であり、主導権を握り、企業に先行するようになった。そして、つながっている。賢い消費者の口コミネットワークは、マス広告を凌駕する。上記のトップブランドはそうしたマーケティングによって生まれた企業である、という。

そして、マス広告の主要チャネルであるテレビCMの没落が幾つもの数字を持って告げられる。大人の夜間テレビ視聴者のうち、次の日にブランドを想起できた人の割合は、1965年には34%であったが、2000年には9%になった。国民的人気番組「MASH」とその後継番組の視聴率は1983年の77%から、21年間で実質31%も落ちている、など。

日本でも紅白歌合戦などの国民的人気番組の視聴率低落は顕著だ。皆が同じ番組を見るということが少なくなった。だからマス広告から口コミも広がりにくい。CM効果の低落が制作費の削減、コンテンツの質の低下につながる「TVネットワークの悪循環」にはまっていると著者は指摘している。DVR(HDDレコーダー)などのテクノロジーが十分に普及する近い将来、テレビCMは壊滅的な打撃を受けるだろうという。

そして広告が向かうべき未来の方向として、「ROI(投資対効果)からROEへ」という戦略転換の提言がある。「広告のように見えず、広告のように感じられず、広告のように匂わないものを制作してみてはどうか」という。

ROEとは、

・関連性(Relevance)
・実用性(Utility)
・娯楽性(Entertainment)

の3要素で、このうち少なくとも2つを満たすような広告が、結局はROIを満たすものになるという内容である。具体的な手法として10の新しい広告アプローチが語られている。インターネット、ゲーム、オンデマンド視聴、体験型マーケティング、長編コンテンツ、コミュニティ・マーケティング、消費者作成コンテンツ、検索、Mで始まるマーケティングツール(音楽、モバイル)、ブランデッド・エンターテイメント。

この10の方法論の部分が、インターネット・マーケティングの創造的なアイデアと成功事例が満載で参考になる。テレビCMの崩壊に興味がなくても、ネット広告の近未来を考えたい人にとてもおすすめ。Web展開の企画のタネ、プレゼンのネタが次々に見つかる。

・監修者 織田浩一氏のサイトで第一章が丸ごとダウンロードできる!
http://www.digitalmediastrategies.com/lifeafter30/TVCM.pdf

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