Books-Internet: 2006年9月アーカイブ

・できる100ワザ SEO & SEM 集客も売上もアップするヤフー!・グーグル対策
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影響力のある言葉の探し方、アクセス解析のキモ、PageRankの上げ方、低予算でできるキーワード広告など、Webサイトの集客と売り上げを増やす方法が100。このシリーズは本来は入門書だが、ノウハウが集約され、実行手順が具体的に書かれていて、中級者以上でも参考になる内容。

Excelで「キーワード帳」を作って、自分のサイト用のキーワードリストをメンテナンスする。実際に検索してみて、競合サイトや他の分野の人気サイトからキーワードを”盗む”のが基本だが、この本には、著者らの長い経験から作成された、強いキーワード案が表にして紹介されている。

例えば「口コミ」を探しているユーザには、口コミ、おすすめ、比較、人気、評判、評価、批評、話題、選び方...。悩み解決を探しているユーザには、簡単、作り方、やり方、育て方、トラブル、対策、相談、診断、修理...。こうしたキーワードを自分のサイトのキーワードと組み合わせることで、検索エンジンで発見されやすく、クリックされやすくなる。

ひとりで考えているだけでは限界もあるので、キーワードを探すツールもいくつか紹介されていた。便利だなと思ったのが、KEIを算出するキーワードアドバイスツールプラス。KEIとは、月間の検索数の二乗÷検索結果数で計算されるキーワード有効性指標で、大きければ大きいほど競合数が少ない良いキーワードになるそうだ。

「書評」というキーワードでKEIを調べてみた例。こんなキーワードを盛り込めば、これくらいの効果が予想されるということ。

・無料登録ドットコム - キーワードアドバイスツールプラス
http://www.keywordadvisetoolplus.com/
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ここではGoogleとYAHOO!の検索結果数で計算されている。ちなみにGoogle:YAHOO!:MSNからのアクセス数は、5:3:1が普通であるそうだ。私のブログがSEOをあまり考えていないせいか、Googleが7割近い。YAHOO!対策もしなければと思った。

このほか、無料アクセス解析の定番Google Analyticsの使い方、Googleアドワーズ広告の使い方など、入門から応用までの全体像が示されている。これからSEO、SEMに取り組みたい個人、企業の担当者に入門書としておすすめ。

・ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち
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マイクロソフトの企業イメージをブログで変えた男ロバート・スコーブルらによる、企業ブログ論。

マイクロソフトは、オフィシャルな形で、

・Channel 9
http://channel9.msdn.com/

を運営している。

このサイトでは、マイクソフトのエンジニアが、自発的に情報を発信している。映像ブログに顔を見せて読者に話しかける。ユーザとの間に活発な意見交換が行われている。かつて独占的な「悪の帝国」と揶揄されて、ことあるごとに、ネットユーザから袋叩きにされていた頃のマイクロソフトとはかなり印象が違ってきている。

こうしたイメージチェンジを実現したのが、この本の著者であり、1日に50回もブログを更新する情熱家スコーブルをはじめとする、技術系社員のブロガーであった。

チャンネル9という名前の由来はユナイテッド航空の機内放送にあるそうだ。空きチャンネルの9を使って、フライトの最中にパイロットの声を流している。「パイロットの様子を知れば知るほど、一蓮托生なんだとわかった。マイクロソフトに対する人々の怖れを解消する手段について、これ以上のメタファーは思いつかないね」と技術エバンジェリストのレン・プライアーは考えた。

原題は「裸の対話」。企業と顧客が飾らない言葉で、率直に意見を交換すること。その対話によって、マス広告には不可能だった、理想的なパブリックリレーションズを実現できるという。100人以上の企業のブロガーの実例を取り上げて、ここ数年の欧米のブログ事情を総括する。

企業ブログの「成功の5つのヒント」

・語れ、売り込むな
・頻繁に投稿し、面白いものを書け
・興味のあることについて書け
・ブログは費用の節約になるが時間がかかる
・人の話に耳を傾けよ

著者は、情熱的で、正統的(=誠実に)語りかけることが大切だと繰り返し説く。これは人と人との対話の基本ルールなのでもある。従来のマス広告と異なるのは、どれだけ多くの人数に読まれるか、ではなく、誰に読まれるか、こそ重要な点。


ニッチに影響を与えるのに、大勢の信奉者を得る必要はない。例えば、あなたが政治についてのブログを持っていたとする。読者はわずか3人だ。そして彼らが、たまたま米国、中国、ロシアの政府高官で、あなたのブログから影響を受けていたとする。これ以上、読者を得る必要がどこにあるだろう?

ブロードキャスト型から会話型へ。情熱的に話しかける企業ブロガーと、情熱的に答える上顧客の対話のログにこそ、企業や商品の魅力が効果的に映し出される。そのためには、企業としてではなく、企業に所属する個人が「顔」を持つ必要があるようだ。

欧米の企業ブログを知る、たいへん面白い本である。

・シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土
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ベストセラー「Web進化論」のシリコンバレーの投資家 梅田 望夫氏1996年から2001年までに書いたコラムをまとめた書籍の文庫化。当然、時事テーマについての記述内容は古いわけだが、シリコンバレー文化とは何かという本質を語る部分は今も変わっていないのではないかと思う。

日本のベンチャーには「借金型」「爺殺し型」「若きスーパースター型」「シリコンバレー型」の4つがあるが、シリコンバレー型は少ないと著者は2000年ごろのコラムで嘆いた。才能のある起業家がベンチャーキャピタルやエンジェルの投資を受けて、借金することなしに、上場して大成功したり、失敗して解散できるタイプのベンチャーのことである。
シリコンバレーのそうした起業家たちには特有の精神文化がある。


限られた情報と限られた能力で、限られた時間内に拙いながらも何かを判断しつづけ、 その判断に基づいてリスクをとって行動する。行動することで新しい情報が生まれる。 行動する者同士でそれらの情報が連鎖し、未来が創造される。行動する者がいなければ生まれなかったはずの未来である。未来志向の行動の連鎖が引き起こす核となる精神。それが「シリコンバレー精神」である。

梅田氏のシリコンバレー精神で素敵だなと思うことに「価値を生み出すのは会社ではなくて個人」という考え方がある。梅田氏がシリコンバレーになじみ始めた頃のコラムから引用してみる。


シリコンバレーに慣れて、いわゆるインサイダー達の集まりに出席するようになって、驚いたのは、胸に付けるバッジに大きな字でファーストネームだけが書かれ、ほとんど見えないくらい小さな字でしか姓と会社名が書かれていないことだった。<中略>相手は「お前は何をやっているのか」「お前のアイデアはなんだ」「お前の価値は何だ」「お前は今まで何をしてきて、これから何をするのか」、先を急ぐように、私という「個人」を引っ張り出そうとする

組織の名刺に頼らない生き方をする人には、覚悟と知恵があるから、強い。その強さの集積がシリコンバレー急成長の原動力なのだと思った。この本で著者は、自身が会社を辞めて米国で独立起業した頃の心境の変化を何度も語っている。

「ああそうか、ここで生きていくためには、私「個人」の「個人としてのストーリー」が必要なのか。」

何度かお会いしたことがある(一度はシリコンバレーで!)梅田さんは私より10歳年上で創業10年目。私は創業6年目である。ちょうど私の今の年齢で、梅田さんは起業している計算だ。それをこの本で知って、よーし、私もやってやるぞと決意を新たにできた。

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