Books-Internet: 2010年7月アーカイブ

・アップルvs.グーグル
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IT業界の2大イノベーター アップルとグーグルを今、どうとらえたらよいかを明解に教えてくれる新書。著者は小川 浩氏、林 信行氏。両者の歴史のふりかえり、それぞれの戦略と戦術、競合の展望など、今はこの2社の動きからITの主戦場の最新動向が見えてくる。

「2004年にメディアの近未来を描いた『EPIC2014』というフラッシュ・ムービーが話題を呼んだが、その中では、グーグルとアマゾンが合併して、グーグルゾン(Googlezon)となるという未来予測が描かれていた。しかし、僕はその頃から、そうではない、むしろアップルとグーグルの組み合わせこそが新しいインターネットサービスを生む、言うなればグーグルップル(Googlepple)の方が実現する可能性が高いと主張し続けてきた。」と著者のひとりはいう。

確かにこの2社の親和性は親和性が高い。ポジショニングが近いがために競合も生じる。いまスマートフォン市場で起きているバトルは、これから電子書籍端末やテレビデバイスでもこれから熱い戦いが繰り広げられそうだ。

2010年代後半に向けてグーグルが定義したその事業領域は、PC、携帯電話、テレビ、自動車の4つのデバイス上でのコンピューティング。「ネット接続を果たしたコンピューターはデスクトップとノートブックを合わせて世界中でおよそ14億台。携帯電話は40億台に達するという。そしてテレビは8億台、自動車は12億台となる。」という大きなマーケットだ。アップルも同じ市場を狙っている。戦いはまだまだ続く。

この2社の戦争は世界を豊かにするものだと思う。激しい競争があるから、両者はつぎつぎに革新を生み出している。マーケットの原理が正しく機能している例と言えるのではないだろうか。著者らも書いているが、なにより悔しいのはこの華々しい戦いに、日本企業は割って入ることさえできないことである。

なぜ日本企業はかなわないのか、この本にも分析があるが、私の考えは日本の大企業トップには起業家精神がないからだと思う。スティーブ・ジョブズもエリック・シュミットも組織の論理で喋っていない。アップルのCM「自分が世界を変えると本気で信じている人々が本当に世界を変えている」そのままなのだ。

この本は現状をとらえる見方をわかりやすくさずけてくれる。

たとえば、

・情報の民主化を広げるグーグル
・人々の能力をレベルアップするアップル

というような対比で、両者の本質を説明する。

両社と市場のデータと事実、経営者の発言の引用など情報も多いので自分なりの業界展望を持ちたい人にとっても考える材料になる。ただし、状況はどんどん変わるので、旬のうちに読むのがおすすめである。

・電子書籍と出版─デジタル/ネットワーク化するメディア
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電子書籍と出版というベタなタイトルの本を書きました。7月10日発売です。

共著者は、高島 利行 (株式会社語研取締役営業部長/版元ドットコム有限責任事業組合組合員), 仲俣 暁生 (フリー編集者・文筆家/「マガジン航」編集人), 橋本 大也 (株式会社取締役会長/ブログ「情報考学」運営), 山路 達也 (フリーライター・編集者), 植村 八潮 (東京電機大学出版局長/日本出版学会副会長), 星野 渉 (「文化通信」編集長), 深沢 英次 (メディアシステム・ディレクター/グラフィックデザイナー), 沢辺 均 (ポット出版代表取締役社長・版元ドットコム有限責任事業組合組合員)という出版業界の(くせものぞろいの)論者たち。いま電子出版にはどんな問題意識、議論があるのかがよくわかる一冊です。

私が登場する第1章「2010年代の『出版』を考える」は、2010年2月に開催されたこの写真(沢辺さんのブログから引用)の4人のパネルディスカッションをテキスト化して編集したものです。

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以下が目次です。

I─「2010年代の『出版』を考える」
IT企業の経営者であり、アルファブロガーとしても知られる橋本大也、文芸評論家、フリー編集者として電子書籍を追い続けてきた仲俣暁生と、早くから出版活動のネット展開を手がけてきた版元ドットコム組合員である高島利行、沢辺均の4人が語る、「電子書籍の可能性」「書き手、出版社はどう変わるか?」。

II─「電子出版時代の編集者」
2009年10月に、アルファブロガー・小飼弾氏との著書『弾言』と『決弾』のiPhoneアプリ版を製作し、自らの会社から発売したフリーライター/編集者の山路達也に訊く、書籍の執筆・編集から電子書籍の製作、そして発売後のフォローアップまで、多様化する編集者/コンテンツ製作者の「仕事」。

III─「20年後の出版をどう定義するか」
電子書籍の権利やフォーマット、教育現場での使用に詳しい東京電機大学出版局の植村八潮に訊く、「書籍が電子化される」ということの根源的な意味、「本であること」と「紙であること」はどう違い、どう結びついているのか?

IV─「出版業界の現状をどう見るか」
出版、そしてメディア産業全体の動向を20年間追い続けている「文化通信」編集長・星野渉が解説する、出版業界の現状と、急激な変化の要因。

V─「編集者とデザイナーのためのXML勉強会」
元「ワイアード日本版」のテクニカルディレクター兼副編集長を務めた深沢英次による、タグつきテキスト、XMLの「基本構造」を理解するための解説。

さて、

今日は東京ビッグサイトで開催中の国際ブックフェアに行きました。版元ドットコムのブースでこの本も販売されています。

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ご関心のある方、ぜひ手にとってみてください。