Books-Internet: 2012年4月アーカイブ

・朝日新聞記者のネット情報活用術
41ZRwRRWLEL._BO2,204,203,200_PIsitb-sticker-arrow-click,TopRight,35,-76_AA300_SH20_OU09_.jpg

ネット情報活用術の定番が出た。この種のテーマは類書が多い(実は私も過去に一冊書いているが(笑))。IT業界の著者が多くて、内容がネット、テクニカルに偏る傾向があった。その点、本書はバランスが取れた内容で、一般のビジネスマンやライターにもおすすめしやすい内容。

「収集」、「保存」、「確認」、「編集」、「発信」、「共有」、「安全」の7つのプロセスからなる。新聞記者らしいのは「確認」と「安全」を大切にしているというところ。「確認」とは発信元を確かめる、ウラをとるということ。「安全」とは情報の取り扱いにおける安全やネット上のトラブルに巻き込まれないための配慮のこと。

発信を前提にした情報収集術。これって実はブロガーやツイッターにとっても役立つノウハウだ。ネタにした情報発信者が実は偽物だったり、いい話だと思って広めたら作り話だったりして、そこを突っ込まれて逆切れして炎上などという、ありがちな悲劇にあわないですむ。新聞記者ならウラをどう取るか、実例で学べる。

そうした"守り"をおさえたうえで、私が一番参考になったのは、"攻め"の部分でこんな文章の書き方。

「記者の書き方といえば、新人記者のころに教わったひとつのコツがあります。ある市長のインタビュー記事がうまくまとまらず、取材ノートをめくりながら途方に暮れていたときに、先輩記者がこう教えてくれたのです。「一番面白かった話から順番に書けばいい。行数になったらおしまい」

物事の順序や起承転結みたいな形式にこだわって、順番に書いていくと平板で面白くない文章を書いてしまう。冒頭から読ませる記事でなければ、ネットではなおさら読んでもらえない時代になったわけで、この古いノウハウは今もまた活きる。

本文記述には無数に出典(主にURL)が示されている。巻末にはネットの理解に役立つ20冊も挙げられている。このオマケが実はかなり内容が濃くてお得。

・グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容
41bciUXSOn.jpg

なんでもかんでもグーグルまかせの危険性を語った一冊。

特に「選択アーキテクチャー」の問題は重大だと思った。行動経済学の研究では、ユーザーに与えられた選択と序列が、その意思決定に極めて重大な影響を与えることが、さまざまな人間の行動において明らかになってきている。

自由意思を尊重しているようにみえるシステムでも、人々の行動は初期設定に大きく左右される。基本メニューに何が入っているかとか、初期設定オプションがオンなのかオフなのか、検索したときに何が最初に表示されるか。こういったことが、人々の政治、社会、経済の意思決定に強く影響する。

グーグルでさまざまな意思決定のための情報を探す。グーグルのインフラ上でビジネスをする。グーグルで政治について調べる。なんでもグーグル任せになりつつある私たちは、グーグルのデフォルト設定の支配力に対して、もっと意識的でなければならないというのが本書の主張だ。「中立的設計」などありえないのだから。

「私たちは検索システムに積極的かつ意図的に影響──規制さえも──をおよぼすべきであり、そうすることで、知識を配信するウェブのやり方について責任を負うべきだというのが、本書の主張である。私たちは、有力な一企業──どんなに素晴らしい企業であっても──短期的な利益をもたらすのではなく、長期にわたって全世界に利益をもたらすような、一種のオンライン生態系を構築しなければならない。」と著者は語る。

将来的に世界にとってグーグルは大きな脅威になるかもしれない。フラットなネットワーク社会でヒトラーのような独裁者が力を持つことは考えにくいが、情報インフラを握ることで、グーグルが民主政を実質支配してしまうことは十分に考えられる。人々の投票行動や、コミュニケーション、評価評判といった民主制において重要な要素を制御できてしまうわけだから。グーグル化の代償はとてつもなく大きくなる可能性がある。

すべてグーグル任せというスタイルは避けるべきなのかもなあと、グーグルどっぷりの私は素直に思った。しかし結局、他のサービスを使っていても、グーグルに買収統合されてしまったりするのだよね。


・実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1114.html
選択アーキテクチャーについての本。

・閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/03/post-1613.html
同じくグーグルの影響について語っている本。

・必ず結果が出るブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える"俺メディア"の極意
51qdaAb8M6L._SL500_AA300_.jpg

本気でブログを始めようとする人におすすめ。

有名ブログ ネタフルのコグレマサトさんと和洋風◎のするぷさんによるブログ運営ノウハウの集大成本。二人はブログが本業のプロブロガー。「仲間」と「収入」を得ることを目標として、「書き続ける」ためのテクニックの記事を100本書いている。初心者向けなのかと思ったらそうでもない。ベテランブロガーが読んでも、十分に役立つ内容になっている。

ブログを書くための情報収集ツール類、ブログエディター、執筆支援ブックマークレットなど秘密兵器が使い方とともに紹介されている。知らないサービスがいくつもみつかった。

自己表現、自己実現の手段として取り上げられることもあるブログだが、自分が書きたいことを書くだけでは、仲間も収入も得られない。自分をメディア化する意識が必要だし、プロの道具で武装することも必要になる。

極意の筆頭が毎日書くこと。記事数が増えると検索にひっかかりやすくなるということもあるが、「間を空けて記事を書くと、余計な力が入ります。すると、往々にして余計な力の入った書き方は見透かされてしまうようで、期待するほど反響が得られないものです。一方で、まったく力を入れずに10分ほどで書いた記事が大反響となることもあります。」という。これは私も深く共感。肩の力は抜かないと続かない。

するぷさんは「楽しむ」「楽しんで書いている」ことが伝わることが大事といっている。私のブログも3000日以上続いている。継続としては成功例といえると思う。で、自分の経験を振り返ってみると、日々楽しくブログを書いている記録なのであって、決して毎日書かなきゃいけないとか、何千日を目指すぞ、えいえいおーと頑張ってきたわけではない。何が楽しいかというと、やはり二人と同じように「仲間」と「収入」が得られるから。

それから、ブログは基本は一人で書く。だから、なんでも効率よくやる必要がある。写真を加工する、アフィリエイトのタグを効率よく作る、画面キャプチャーを手早く撮る、などのツール類の紹介が多いのは必然なのだと思う。一本のツールで数分ずつ時間を稼げれば、中長期では書く記事の本数が確実に増える。ツールで武装しておくことが毎日書く秘訣でもあるのだ。


"知りたい情報"がサクサク集まる!ネット速読の達人ワザ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1526.html

人気ブログのネタフルがiPhoneアプリに IT・デジモノ記事のネタフル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/06/iphoneit.html