Books-Managementの最近のブログ記事

・理系のためのクラウド知的生産術
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レスペクトしているブロガーの堀さんが本を出した。堀さんは独立行政法人海洋研究開発機構所属の科学者で、デジタルツールをばりばり使いこなすことでも知られる。お話しするたび、彼の情報分析の確かさに感心してしまう。

・LifeHackong.jp
http://lifehacking.jp/
堀さんのブログ。このブログと内容的に相性がいいのでご存じの読者も多いかも。

目標を明確にして、毎日ToDoリストを更新して、というGTD的なノウハウは苦手だが、この本のクラウド知的生産術には惹かれるところがあった。整理が下手、ものぐさでもいいのだ。

「たとえば、本人が手を動かさなくとも自動的に電子メールを整理するフィルターをつくるのに必要な時間はほんの数分です。それが毎日のメール処理の手間を10分ずつ軽くしてくれるだけでも、年間で60時間、8時間労働の出勤日7日分の時間を生み出すことが可能になるのです。」

この考え方に深く共感した。自動化できる処理は極力自動化しておく。それでうまれる自由時間を人間にしかできない作業に使う。そういうことが世間よりも少し先にできている人が、ツールを"使いこなしている人"なのだと思う。

・自動的にキーワードにマッチする論文が手元に届くしくみ
・アイデアをなくさない情報整理法(エバーノート&リメンバーザミルクなど)
・テンプレート準備で時間の節約
・ちょっとずつ論文を仕上げていくクラウド活用の論文作成法

などなど、最新のクラウドサービスとスマートフォンを、研究に活用するノウハウがいっぱいある。

理系の研究者のための情報処理環境をつくることが主眼だが、論文を企画書や報告書と読み変えれば、ビジネスマンでも情報収集と整理の効率化に役立つ知識が多い。

基本的にはやさしく書かれた入門書なのだが、中級者以上でも参考になる内容がある。私は多くのクラウドサービスを使っていたが、

・Dropboxは使っているけどファイル共有のやり方を知らなかった
・Gmailは使っているけど詳細な検索オプションがあることを知らなかった
・MP3の音声ファイルとPPTをあわせて音声付プレゼンをスライドシェアでできるとは驚き・いくつかの未発見のサービス

などたくさん発見があった。

・「IT断食」のすすめ
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IT中毒に陥った組織に、ITを断つ時間を強制的に設けて、良質なアナログ時間を取り戻す「IT断食」を推奨する本。「ノーPCデー」「ノー電子メールデー」を実施して、ITとアナログの最適なバランスを見出そうという話。

情報の肥大化と行動の弱体化。メールするより電話や対面で話す方がよいのではないかと疑ってみた方がいい。ウェブで延々と検索するより、専門家に話を聞いたり、専門書を一冊じっくり読んだ方がよい結果になることは多い。

なかでも会議の日程調整にメールは向かないという指摘は、本当にその通りだ。メールで複数の候補予定をやりとりしていると、調整が完了するまで、その時間帯がロックされてしまう。そしていつ調整が完了するかも読めない。それで著者は対面や電話でアポをとりなさいとアドバイスしている。現状ではそれが確かにベストなのだが....

スケジュール調整。確かにメールは向かないのだが、本来はITが活躍してしかるべき用途であると思う。スケジュール調整ツールというのはいくつもある。カレンダーを見ながら参加者が空いている時間を登録して探す。飲み会などの予定調整で私はしばしば使っている。

・調整さん
http://chouseisan.com/schedule
・伝助
http://www.densuke.biz/
・調整くん
http://www.hotpepper.jp/doc/chousei/

こういうツールは便利だなあ、みんなが仕事使えばいいのにと思うのだが、一向にそうはならない。多くの企業で社内のスケジュールはデジタルで共有されているのに、企業間ではなかなか難しいことになっている。日本の場合、大企業が率先して使えば広まっていくのではないかと思うのだが、なかなか始まらない。IT経営の研究者が、メールによるスケジュール調整を専用ツールで行った場合の損得計算を数字で弾いてくれるといいのではないかと思うのだが。

・戦略力を高める ―最高の戦略を実現するために
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著名な経営コンサルタントが書いた「戦略力」=「あるべき姿に至る海図を描きつづける力」の指南書。実際の企業例、ケース演習つき。コンパクトに明解に戦略の基本がまとめられている。「戦略上の○○といえばこの○つです」のような整理がわかりやすい。

たとえば「戦略力」は4つの素力から構成される。

1 環境を読む
2 あるべき姿を描く
3 自分を見つめ直す
4 道筋をつくる

あるべき姿ってなんだろう?と気になるが、それはずばり

1 自社が世界一になれる部分
2 情熱をもって取り組めるもの
3 経済的原動力になるもの

の3つの要素を同時に満たすものと定義されていた。そして

「何のために何を成すのか、Whatを実現することの意味の中に、企業の営利を超えた何か大切なものを含んでいるか否かは、後のち、そのWhat実現に向けた遂行力を大きく左右するかもしれない。近年の「環境に優しい」「社会への貢献」などはそのあらわれといえるのではないだろうか。」。

大義名分のWhyがあるべき姿に命を吹き込むのだと著者は教えている。

後半では現代経営学における戦略論の変遷を4つの学派のアプローチで整理している。

1 「計画」 アンゾフ流、戦略計画立案作業を中心とする学派
2 「創発」 ミンツバーグ流、意図せざる行動と学習の過程から生まれるパターン形成を重視する学派
3 「ポジション」 ポーター流、自社を外部環境の中でどうポジションさせるかを重視する学
4 「資源」 バーニー流、自社が保有する独自の経営資源が競争優位を築くと考える学派

経営学のさまざまな要素が盛り込まれている全部いりの印象の本だが、戦略を実践的に考える上で必要なエッセンスに濃縮されていて、ビジネスパースンが読むのにちょうどよい教科書になっている。

・人間における勝負の研究―さわやかに勝ちたい人へ
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永世棋聖 米長邦雄の勝負論。気ったはったの世界の心得を説く内容だが、趣味人で遊び人の勝負師だから、ユーモアも交えた楽しい内容になっている。

まず有名な米長理論だ。相手は負けるとプロ資格剥奪だが、自分は勝っても負けても昇降格に関係なしの消化試合。そういうときにこそ、手心加えずびしっと負かさなければならない。一生のツキを呼ぶ「この一番」とは「でかい勝負」ではなく「その勝敗が自分の進退には直接影響がないけれども、相手にとっては大変な意味を持っている勝負」なのだという理論。

でかい勝負で全力を出すのは当たり前で、そういう勝負は負けても実力があればいつか勝てる。むしろ消化試合に全力を投入して相手を潰せるかどうかこそ勝負の運を呼ぶ重要なポイントになるということのようだ。深い。

そして決断は長考に妙手なし。「大事なことだからこそ、簡単に決めるべきだと私は思います。悩み、考えあぐねてから答えを出す場合よりも、だいたいにおいて間違いが少ないものなのです。」。そしてそういうときのカンは好きで取り組んでいないと働かないもの。好きであることが大事である、と。これは逆にいうと、第一感で最善手をさせる力がなければプロとしてはやっていけないという事実でもある。

強い人と対戦する時は、短期決戦と局面の単純化で勝負するという鉄則は万事に通じていそうだ。では負けたらどうするか。そこもフォローしている。「男が勝負に負けた時は、何を言われても、じっとしているに限る。これはもう鉄則です。」と。負けた時は遊び呆けて頭の中を一度ゼロに、勝っているときはじっとして調子を持続させよというのが米長流だ。

この本、前半は比較的真面目でうなずける内容なのだが、後半の強烈な亭主関白論とか才能を前提にした人生論は、ちょっと偏っていて、実はそれが面白い、本質なのだろう。

・ビジネスマンのための「行動観察」入門
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大阪ガス行動観察研究所所長 松波晴人氏による実践的なビジネスエスノグラフィー。

企業が顧客のニーズを知るには、アンケートやグループインタビューという一般的な手法がある。

「しかしいま、こうした従来の方法だけでは画期的な製品やサービスを提供するのに限界が見えてきた。それはアンケートやインタビューだけでわかるニーズは、顧客が自分で言語化した「顕在ニーズ」だけだからだ。そこで、実際に顧客の行動(経験)を観察して、まだ顧客自身も言語化できていない「潜在ニーズ」にいち早く気付き、顧客に価値のある「経験」を提供することが重要となってくるのである。」

行動観察では観察、分析、改善の3ステップを踏みなさいという。

この本が抜群に面白いのは、理論ではなくて第2章「これが行動観察だ」である。実際に著者らが実施した企業の行動観察による改善プロジェクトが、ドキュメンタリタッチで紹介されていく。現場で試行錯誤しながら、見事に毎回、洞察をつかんでいく。ドラマみたいだ。1社当たり1作の漫画にしたら面白そう。事例は多岐にわたる。

まずはワーキングマザーの潜在ニーズを知るために、協力者の家に入って数時間の観察をする事例。企業の人間が家庭に入り込めば、行動が行儀よく変わってしまう可能性がある。だから観察者は調査の意図を誠実に伝えた上で、主婦に「晩ご飯を食べていってください」といわれるくらい信頼関係が築くよう心がける。すると主婦の隠れた願望が明らかになっていく。

展示会のイベント会場にでかけてブースを観察し、説明者の立ち位置の変更を提案することで、売り上げが3倍にしたケース。優秀な営業マンと普通の営業マンに同行して、できる営業マンのノウハウを発見するケース。オフィスで働く人々を1日中映像で観察して詳細な行動ログを書き出し、分析するケース。調理場を観察して付加価値の高い作業を判別することで料理人の生産性を飛躍的に高めたケース。工場の労働者の生産性と創造性を高めるケース。そして5000人のお客様の名前を記憶するホテルのドアマンを観察し、驚異的な記憶能力の秘密を探るケースなどなど。

多くのケースでわかりやすいノウハウ抽出と具体的な成果がでていて、現場のコメントもある。潜在的なニーズの発見、インサイト創発につながっている様子がうかがえる。「イノベーションを可能にするのは観察に触発された洞察である。」IDEOのトム・ケリー氏の言葉が引用されているがまさにそのとおりの成功例ばかり。

実際には観察から得られたデータに意味のある構造を見出すには、人類学で言うならクロード・レヴィストロースのような熟練した分析者が必要とされるような気はする。対象に棲みこんで長時間の観察をするには、人材や仕組みづくりに、コストもそれなりにかかるだろうが、やってみる価値がありそうな中身を感じた。対象に棲みこんで洞察を得るプロセスは、観察者自身を成長させる教育効果も高そうだ。

・アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力
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「産業を進歩させるアイデアは、とてつもなく斬新なひらめきから生まれるものではなく、むしろ熟練した管理努力のたまものです。」。当てにならない創造性開発ではなく、作品を次々に世に出し、アイデアを実行し続ける能力にスポットライトをあてた本。

この本の公式は、

アイデア実現力= (アイデア)+整理力+仲間力+統率力

まずアイデアはカッコにいれてしまって、おもいついたアイデアを最後は必ず「送り出す」に集中せよと説く。実践するには最高のものだけを送り出そうと思わない割り切りも必要だ。

トーマス・キンケイドの絵とジェームズ・パターソンの小説を例にを挙げて、似たような作品ばかりで創造的とはいえないが、多作で売れておりビジネス面では成功している作家を参考にせよというユニークな指摘をしている。

創造性×整理力で作品が実現されるとするならば、私たちはついつい創造性100や120の作品を作ろうとして、結果的にひとつの作品も完成させることができない。100×0=0である。50×2=100でもいい。創造性がなくても非凡な整理力があれば、整理力に欠ける天才クリエイターよりもアウトプットが出せるという。

この割り切った考え方には異論も多そうであるが、クリエイターも生計をたてて生きていかねばならない。いつか120の作品を出すために、50や80の日常的なアウトプットで凌ぐことだって必要な日々もあるだろう。

ベストセラー作家には1日のうちに執筆に充てる時間を決めている人が多くいる。生産のための日課を守り続けること、行動を習慣化することが大事。自分はチャンスに恵まれないと嘆くより、コツコツと地道に成果を出していくことが、ビジネス面では成功の近道ということ。

・コクヨの1分間プレゼンテーション
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この本凄くいいな。

私は先日、社内の新人研修で「プレゼンテーション」の講師をつとめた。私が社内で一番講演やスピーチの数をこなしているだろうということで選ばれたわけだが、自分だけが体得した暗黙知を、他人に伝達可能な形式知にまとめるのは大変な作業だった。あの研修の前にこの本を読んでいれば相当参考になったなあ、共感できる内容が多い。カリスマではなくても聴く人にちゃんと伝わり、そして動かすプレゼン術の基本が解説されている。

プレゼンで大事なのはだらだら話さないこと。情報を圧縮すること。取捨選択能力、文章構成力、キーワード力をフル活用して、長い話も1分にまとめる。具体的な時間配分も推奨されている。

疑問を投げる (15秒) 興味 何だろう?
結論を述べる (10秒) 驚き へぇ~
理由を説明する(35秒) 納得 なるほど!

これがコクヨの1分間プレゼンテーションだ。1分間で話せるのはおよそ原稿用紙一枚分の400字。1つの文章が30~50字だとすると5秒の文章が12個言える。だから12の文章を考えればいい。わかりやすいノウハウだ。

「困難・キッカケ・劣等感」で共感を呼ぶ」「ゆっくり話すのではなく、間を入れて話す」「1センテンス1人を見て話す」「お得意のジェスチャーを決めておく」など、声の出し方、話し方のテクニック、トレーニング法と応用が、1ステップについき見開き図解つきで解説されている。

プレゼンテーションはプレゼンターの個性、人柄がでることも大切だと思うが、まずは情報伝達の基本がないとだめである。ビジネスの現場で通じる最大公約数的なノウハウをまずは身につける必要がある。コクヨの研修で活用されているノウハウの書籍化だそうで、実践的な社員教育用のこなれたテキストブックになっている。

・アナロジー思考
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「地頭力」「フェルミ推定」の仕掛け人 細谷功氏著。

すべての思考は「類推」から始まる。いわれてみればそのとおりか。

アナロジー(類推)思考とは、著者の言葉によれば、二つの世界の比例関係を利用した思考法のこと。既知の領域と何らかの類似性を有する未知の領域に対して、既知の知識を応用して、未知の領域の知識を新たに得るということ。アナロジーには「自分の理解」「他人への説明」「アイデア創出」という目的が考えられるという。

どこから借りてきてどこへ持っていくかの一般的パターンが例示されている。

1 よく知っている世界 → 知らない世界
2 進んでいる世界 → 遅れている世界
3 身近な世界 → 縁遠い世界
4 極端な世界 → 「角が丸い」世界

1は理解のためのアナロジー。「欧米ではすでにこうなっている(日本ではいまだにこうだ)」というのは2のパターン。3は「たとえ話」。4は子供のストレートな感情表現を大人の世界の読みときに利用するようなパターンだ。適切なアナロジーを用いることで、複雑な事柄を、わかりやすく印象的に伝達することができるわけである。この本にリスト化されている、よくある類推パターンをあらかじめ覚えておくと思考のスピードアップになりそうだ。

そしてアナロジーによるアイデア創出は、遠いところから借りてきて組み合わせる、ことが重要だという。単なる真似やパクリではなく、まったく違う世界からの借用が、ブレークスルーのアイデアになる。表面的類似(オヤジギャグ)ではなく、より深い構造的類似のアナロジーこそ重要であるとして、その発見方法や訓練法を教える。

「「構造的」類似とは、複数の事象の「関係性」に関する類似のことであり、表面的類似に比べて見つけるのが難しい分、その価値も大きい。」

ビジネスの世界では、「一見違うが実は構造的に似ている業界」を探すことが重要だが、そのためには「事業特性」に注目して探すとこんなふうにみつかるとして、アナロジー思考の実践がある。

会社における新人とベテランの能力差は、主にアナロジー思考能力の違いなのではないかと思う。新人は個々の具体的な事象にこだわってしまうが、ベテランは慌てず、過去の経験や他の領域の経験と、目の前の事態を結び付けて、解決や突破法をみつける。アナロジー思考を意識することはデキル人への第一歩となるはず。新入社員にも、おすすめ。

・本はどう読むか
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昭和の社会学者 清水幾太郎の体験的読書論。

第一次世界大戦の頃、少年だった著者は青少年向けの時代活劇「立川文庫」に夢中になる。忍術、殺人、遊郭、拷問、強姦が随所に出てくるのがよかったと率直にはまったきっかけを書いている。やがて、それに飽きると、詩集や哲学書など、より高いレベルの面白さを求めて、難しい本を読むようになる。その読書遍歴の動機を「虚栄心に駆り立てられて」だとか自分だけの「秘密」の読書などという、わかりやすい説明で明かす。

著者は本を3つに分類する。

実用書 生活が強制する本
娯楽書 生活から連れ出す本
教養書 生活を高める本

実用書は読まざるを得ないから読むのだし、娯楽書は好きに読めばいいのだから、として主にこの読書論は教養書の読み方に重点を置いている。教養を高めていくための読書術、メモのとり方、選び方、整理のしかた、外国書の読み方が主な内容だ。

読書や探究には、いくばくかの不純な動機や刺激、悪徳があったほうが向上しやすいのではないかという意見が面白い。清水幾太郎といえば東大を出て、読売新聞論説委員から、学習院大学教授になった人である。

「哲学の歴史や諸科学の歴史を調べてみると、真理への愛だけが学者たちを動かしていたのでないことに気づく。もちろん、真理への愛がなかったら、何事も始まりはしないが、それと相混じて、虚栄心を初めとする醜い悪徳が彼らを駆り立て、しかも、そこから思わぬ業績が生まれていることがある。同僚を蹴落とそうとして、その学説に反対したり、有名になろうとして、極端な学説を編み出したり......、それがはからずも、立派な成果を生むことがある。」

欲望に駆られて知的探求をする。それがこの人流の読書術、探究術ということの基本みたいだ。

初版が1972年なので、「マスコミ時代の読書」では、活字メディアに対して、テレビという映像メディアが現れてきたとして、ふたつを比較しているところは時代を感じる。知識のカード・システムによる整理というのも、いまなら主にパソコンで管理するものだろう。一部記述が古くなった部分はあるものの、紙の読書論としてはいまもなお学べる記述が多い古典である。

・読書術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1103.html


・読書論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-932.html

・読書について
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-913.html

・読書という体験
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-569.html

読書の歴史―あるいは読者の歴史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1047.html

・あなたの表現はなぜ伝わらないのか―論理と作法
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話すこと、書くこと、伝えることの基本要素を整理する教科書的な新書。感情や意志の伝達の原理と効果的な方法論を教える。

コミュニケーションには効率性と効果性のふたつの面があるという話が面白かった。

「伝達には効率と効果が大事である。ここで効率は量の問題で、これは費用と時間で計られるものである。費用も時間もかからないのが効率的な伝達手段である。たとえば、会いにいって要件を済ますより、メールで済めば費用も時間も少なくて済む。つまり、効率がいい。一方、効果は質の問題で、これは伝達目的がどのように達成されたかで計られるものである。メールで用事が済んでも、相手の感情を害してしまったら、メールでの伝達は効果的ではなかったことになる。」

効率性では電子メディアは最高のメディアである。瞬時に何百人でも何千人にでもメッセージを送り届けることができる。しかし電子化効率化の時代だからこそ、わざわざ訪ねてきてくれるとか、花を送ってくれるとか、会食に招待してくれるとか、非効率なメディアは非効率であればあるほど、感情的に伝わる部分が大きい感覚がある。メールで済むのにわざわざという価値が相対的に上がってきたように思う。時代錯誤の「血判書」で大きな商談を成立させた現代の経営者の話を思いだしたが、非効率で効果的を狙うのもひとつのテクニックである。

話し方では、やっぱりこれだなとしみじみ思ったのが、

これから何を話すかを話す(序論)
内容(中身)を話す(本論)
何を話したかを話す(結論)

という序論、本論、結論の組み立て方。これは私も長年のプレゼン経験で、なにか特別な狙いがない限りはこの方法がベストだと、たどりついた結論と同じだ。序論で本論の目次を予告することで聴衆は長い話を聞く受け入れ態勢ができるし、最後で繰り返すことで、ちゃんと聴いていなかった人も、一応聴いていたことにできる、それって重要である。話す側にしても、最後に何を話して終わるかを悩まなくてもよくなる。

コミュニケーションの要素を棚卸して、何が自分に足りないかを考えるてがかりをくれる一冊。

・パブリックスピーカーの告白 ―効果的な講演、プレゼンテーション、講義への心構えと話し方
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元マイクロソフトの開発者で『イノベーションの神話』の著者で、現在はプロの講演家として活躍するスコット・バークンによるプレゼンテーション実践術。特にIT業界にありがちなパワーポイント・プレゼンの改善点がたくさんみつかる。

著者が示した「よい準備」
1 講演のタイトルに対して確かな立場を示す
2 目の前の聴衆について注意深く考える
3 具体的な論点をできるだけ簡潔に表現する
4 知的な専門家の聴衆からのありえそうな反論を知っておく

「何が要点で、聴衆の注意を向けたものからどのような洞察が得られるのかに対して、意識的であってください。」

自戒含めて我が業界でよくあるのが、目の前の聴衆の反応よりも、準備したスライドを消化することを優先してしまう一方的なプレゼンだ。しかもそのテーマがコミュニケーション、インタラクティブ、ネットワークだったりするのだから性が悪い。

偉大なスピーカーはどうしているのかというと「マーク・トウェインやウィンストン・チャーチル、フランクリン・ルーズベルトは皆5つか6つの論点(多くの場合、一つの論点についてほんの二語、三語)を書いた短いアウトラインを備忘録として使い1時間に渡る演説をしていました。あらかじめ充分に考えていれば、あなたの脳が必要とするものは短いリストだけで、話すことのほとんどは自ずから行われていくものなのです。」。キーワードを与えられたら、自動的にひとつのストーリーを話せるくらいには準備をしておくべきだし、専門家ならそれが当たり前だということ。

そして、こんな話もあった。

「スライドや配布資料などの衣装をすべて脱ぎ捨てれば、講演は親密で偽りのないものになります。単純にアイデアを持つだけの人間になります。これが何千年もの間、行われてきた姿です。スライドや小道具を使うコメディアンがほとんどいないのにはもっともな理由があります。そのような道具は聴衆とのつながりを築く妨げになる可能性があるからです。」

講演者がパワーポイントの資料を防護壁にしてその内側に閉じこもろうとする、その臆病さが、講演のライブ性を殺す、場の力を借りた創発を妨げる要因になっている。一切道具を使わないスピーチを練習するのがよいのかもしれない。

それから講演家へのフィードバックループが機能していないを指摘している。

「まったく拍手が貰えないようにするためには、いったいどれほどひどい内容にすれば良いのでしょう?そんな事態は見たことがありません。そして多くの人は拍手を良い結果の証拠だと見なすので、話し手はいつでも満足してしまうのです。ステージを降りて、友人に尋ねます。「どうだった?」返ってくるのは「良かったよ」という答え。そして以下同様というわけです。」

これは講演後にTwitterやブログに書きこまれる、見知らぬ参加者の評価を見るのがよいのだろう。そういえば最近こんなニュースもあった。

<ニコニコ動画>六本木に新施設「ニコファーレ」7月オープン 壁面モニターでコメント"体感"も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110522-00000013-mantan-ent
「ユーザーたちの「コメント」がモニターに表示され、来場者は360度取り囲むように流れるコメントを"体感"できる 」

ちょっとした恐怖体験でもあるが...究極のフィードバック空間だろう。

ニコニコ動画では、スピーカーの話す内容以外への突っ込みも多いものだ。聴衆は講演の音声だけを聴いているのではなくて、資料と本人を一体の映像として見ているということも、忘れがちなことだ。

非言語の重要性を調べるため著者が仕組んだ実験が笑えた。立派な風貌をして、権威ある話し方のできる役者を雇って、矛盾する内容と無意味な参考文献を挙げるデタラメな講演をさせたところ、多くの聴衆が高い評価を与えたというもの。

だから、

1 信頼度は主催者に依存している
2 外見は大切です
3 熱意が大切です

とのこと。


スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/100-4.html

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/-18.html

人を幸せにする話し方―仕事と人生を感動に変える言葉の魔法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1070.html

ブライアン・トレーシーの 話し方入門 ー人生を劇的に変える言葉の魔力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-838.html

・たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/cd-1.html

・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html

・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html

・カラー版 机も頭もすっきり! デジタル化情報整理術
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友人のいしたにまさきさんと松田ぱこむさんの共著。

デジタル化情報整理術というタイトルですが、実は内容の8割は「自炊」の本です。もちろん独り暮らしのお料理レシピではなくて、積み上がった書籍を自らの手でスキャナーにかけてデジタル化する方の自炊です。

持っている本、雑誌、名刺、書類のすべてをデジタル化して、PCやケータイからいつでもアクセスできるようにしたいと思う人におすすめの本です。自炊に取り組む人にとって、非常に実践的で、ノウハウの詰まった内容になっています。

本や雑誌の綴じ部分を断裁して、スキャナーでデジタル化する。おすすめのスキャナー、断裁機の紹介や、スキャナー付属ソフトの使い方、作業を円滑に進めるためのポイントなど、極めて具体的です。

実は、具体的過ぎて何のことかわからない記述もいっぱいありました。製本によって異なる断裁方法、スキャナーの読み取りモードの設定法など、そもそもどのような問題が起きるのか、私は知りませんでした。だって私は一度も自炊をしたことがないのですから。

じゃあ、なぜこの本を紹介するのかと言うと、

「第7章 その道の"プロに聞く"デジタル化スタイル」

で、私なりのデジタル情報整理に対する考え方を5ページほど寄稿させていただきました、ということなのです。デジタル化をどう仕事やプライベートに活かしているか、手放せないアプリと使用方法、うまくいかなかった情報整理術や使わなくなったデバイス、情報のインプットアウトプットのマネジメント法などについて書きました。

自炊にかなり興味があって、おまけとして私の5ページが気になる方、ぜひ一冊レジへお運びください。よろしくお願いします。

・スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方
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"ナポレオン・ボナパルト(フランス皇帝)
さらば、友たちよ。諸君の一人ひとりをこの胸に抱き締められれば、どんなにいいだろう。 ─── 古参近衛兵たちへの惜別の言葉。1814年4月20日、パリ郊外のフォンテンブロー宮殿の中庭で"

ソクラテス、チャーチル、リンカーン、マンデラ、孫文、鄧小平、ワシントン、フランクリン、ガリレオ、ガンジー、ケネディ、ナポレオン、ジャック・ウェルチ、ビル・ゲイツ、オバマ...。社会に大きな影響を残した名演説家たちのスピーチに学ぶ、聴衆に感動を与える秘訣。

"出発の時間になりました。これから私たちはそれぞれの道を行くことになります。私は死に、みなさんは生き続けます。どちらがよい道なのかは、神にしかわかりません ─── 「ソクラテスの弁明」紀元前399年、ギリシアのアテネで(プラトン著「ソクラテスの弁明」より)"

偉人たちの伝説的なスピーチのさわり部分と、それが話されたシチュエーション、人々を感動させたポイントが一人あたり数ページで語られていく。100人の100の伝説スピーチの概要を知るだけでも教養書として面白い。

ビジネスのプレゼンを効果的に行うための小手先の技を知りたいのであればこの本は適当ではない。そうではなくて、世界を変えるため使命感を持って話す機会に備えるという目的ならば、この本は大いに参考になるだろう。100人のスピーチの背景には共通して大志がある。それがないと人の心を揺さぶることはできないということがわかる。

テクニックを詳細に語る本ではないが、大きなパターンは見えてくる。たとえば名演説家が多用するテクニックとして「三の法則」や「繰り返し」がある。「三の法則」とはリンカーンのゲティスバーグ演説の「人民の、人民による、人民のための政治」のように、三回事例や同じ言葉を三つ並列させる方法だ。100のスピーチの中に幾つもみつかる。

"ウィンストン・チャーチル
我々は、海岸で戦う。敵の上陸地点で戦う。野原や市街で戦う。丘陵で戦う。我々は、断じて降伏しない。 ─── 下院演説「我々は、断じて降伏しない」1940年6月4日、ロンドンで"

"ヘンリー・ウォード・ビーチャー
探しましょう、真の博愛を。探しましょう、信仰の真の果実を。探しましょう、いずれかの宗派の集団の中ではなく、それぞれの宗派に集う一人ひとりの心の中にある崇高で力強い愛の中に。探しましょう、書物の中だけではない場所に。 ─── 1869年11月18日、ニューヨークのプリマス境界で行った説教"

キング牧師の「私には夢があります」のようにスピーチの中で同じフレーズの繰り返しも、似たような効果をもたらす。前述のリンカーンは演説の切り出しで87年前と言うところで「80と7年前(Four score and seven years ago)、私たちの父祖は、この大陸に新しい国家を築きました」と言ったそうだが、リズムを大切にしていたということがよくわかる。

情熱的に大志を燃やしている人が、メッセージを明確にしたうえで、文字ではなく音の流れとして効果的に構成することが名演説の最大の秘訣かなあと、この100人のスピーチを読んで思った、私の結論。

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/-18.html

人を幸せにする話し方―仕事と人生を感動に変える言葉の魔法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1070.html

ブライアン・トレーシーの 話し方入門 ー人生を劇的に変える言葉の魔力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-838.html

・たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/cd-1.html

・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html

・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html

・なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力
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問題解決力と問題発見力は別物。

ケネディ政権で国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏は、ハーバード・ビジネススクールで行った講義の中で、MBAのケーススタディは役に立たない。なぜなら学生に何が問題なのかを教えてしまうからだ、と言った。

解決すべき問題が何か、なかなかわからないことが現実の問題なのだ。

原題は"Know What You Don't Know. How Great Leaders Prevent Problems Before They Happen"(あなたが知らないことを知りなさい 偉大なリーダーたちはいかにして問題を未然に防いだか)。自分の知らない何かに常に注意を向けること、自分が何を知らないのかを追求し続けること、それがリーダーの問題発見力の基本だという。

「効果的に問題を見つける7つの行動」として、

1 フィルターを避ける 
2 人類学者になる 
3 パターンを探す 
4 点を結びつける 
5 価値のある失敗を奨励する 
6 話し方と聴き方を教える 
7 ゲームの録画を見る 

が挙げられ、それぞれに一章が割かれ詳しく解説されている。たとえば第一章では、

「フィルターを避ける」ための5つの手法として、

・自分の耳で聴く
・さまざまな意見を探して聴く
・若い人とのつながりを持つ
・周辺部にも足を伸ばす
・利害関係者でない人と話す

という具体的な方法レベルまで語られる。人の上に立つリーダーになればなるほど、フィルターを通して状況を把握することになる。だからこそ意識的に、組織の外にある多様な情報、生の情報に意識的でなければならない。ソーシャルメディアに触れるというのは、手軽な方法である気がする。

リーダーの陥りがちな失敗も事例がいっぱい紹介されている。「価値のある失敗を奨励する」の章ではサンクコストの過ち(損失を取り戻そうとしてますます深みに落ち込む)が語られる。音速ジェットのコンコルドプロジェクトは有名なケースだ。

「かなり早い段階で、このプロジェクトは金銭的に成功する実質的な見込みがないことが明らかになった。英国とフランスの政財界のリーダーたちは、あと一歩のところでプロジェクトを中止しそうになった。けれども、過去に支出した莫大な金額が「無駄遣い」になることをおそれて継続の道を選んだ。最終的にコンコルドの開発費用は当初予算の500%を超えた。この投資はいかなるプラスの金銭的リターンももたらさなかった。」

ビジネス、政治、軍事、スポーツ、医療など各界のリーダーたちの意思決定の成功と失敗から、要点が抽出整理されていて読みやすい。不確実な状況の到来、組織のリーダーにとって危機管理、意思決定がとりわけ重要な時代になった。今読む本だと思う。

新文章讀本

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・新文章讀本
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川端康成が大正から昭和初期にかけて書いた文芸時評と文章論をまとめた本だから「新」とついているけれども古典である。当時川端が高く評価していた「現代」作家の徳田秋声、泉鏡花、葛西善蔵、志賀直哉、横光利一、谷崎潤一郎、佐藤春夫、里見弴らの文章が引用されて、良い文章とはこうあるべきという要点が語られる。

「俗に芸術的文章と実用的文章と二つに区別がありようにいわれるが、これは果たして如何であろうか。結論を先にいえば、私はその差別を認めぬ。先ののべたように、文章とは、感動の発する儘に、自己の思うことを素直に簡潔に解り易くのべたものを良しとする。古来文章の規範として「華を去り実に就く」といわれたのも、このところであろうか。」

「私は芸術的文章の秘密はわからないので、わかりやすい実用文のコツを述べます」なんて言い訳で始まる文章指南書も多いのだが、さすがノーベル文学賞はそんなことはいわないのである。わかりやすくて、感動させる文章がベスト、そりゃそうだ。

概して川端がよしとするのは、耳で聞いて解る文章であり、文語の型を破る口語的な文体である。説明的と表現的という表現法の違いや、センテンスの長短による効果の違い、自然描写系と人物描写系の作家の違いなどを具体例を引用して読者に鑑賞させてから、持論を展開する。新しい文章の創造への試みを肯定的に評価する傾向が強い。

収録されている「文章学講話」には川端が講義するレトリックへの強いこだわりがみられる。修辞学の歴史を古代ギリシアから近代までを振り返り、日本の修辞学の未発達を嘆く。創作家と鑑賞家の間の心理活動に、修辞学的技巧が与える影響を調べたいという情熱を燃やしている。

修辞学の技巧論ということもあるのだけれど、まえがきに、この川端の「耳で聞いて解る」文章へのこだわりのヒントらしきものが書かれている、と思った。

「少年時代、私は「源氏物語」や「枕草子」を読んだことがある。手あたり次第に、なんでも読んだのである。勿論、意味は分かりはしなかった。ただ、言葉の響や文章の韻を読んでいたのである。 それらの音読が私を少年の甘い哀愁に誘いこんでくれたのだった。つまり意味のない歌を歌っていたようなものだった。 しかし今思ってみると、そのことは私の文章に最も多く影響しているらしい。その少年の日の歌の調は、今も尚、ものを書く時の私の心に聞こえて来る。私はその歌声にそむことは出来ない......。」

「少年時代」に「手あたり次第」で体得した「歌声」が「聞こえてくる」。これがたぶん川端の才能の秘密なのだろう。名文のリズムを自分の呼吸に取り込むということが、名文を書く土台を作っているのではなかろうか。読み手の心理を知りぬいていればこそ、よい書き手になれるというこの本の主張にも近い気がする。

文章をめぐる探究のことばも多数引用されている。

「人間は、言葉でほか、自分の心が表わせない。その言葉が信じられない時。───昔の女の人は死にました。」とある女が云った。ゲエテは「言葉が何時も抵抗する」と云っている。ストリンドベルヒは「夢幻劇」で詩人に、「塵の子に、天に達し得る程純潔なる言葉が見出し得るものだろうか───? 神の子よ?。」と云わせている。イタリイの情熱的な美学者クロオチエなぞは「心象即表現即芸術」と云った。」

この本は一言で言うと、上の文の最後にでてきた「心象即表現即芸術」を目指す本である。


・日本語作文術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/post-1287.html

・<不良>のための文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1275.html

・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html

13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html


・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html

・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html

・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html

・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html

・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html

・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html

・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html

・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html

・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html

・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html

・スラスラ書ける!ビジネス文書
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・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
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・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
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・分かりやすい文章の技術
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・大人のための文章法
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・伝わる・揺さぶる!文章を書く
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・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
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