Books-Managementの最近のブログ記事
・スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

この本は「現実歪曲フィールド」の異名をとるジョブズの伝説的なプレゼンの数々を徹底分析した著者が、その極意を一般人にやさしく解説する本だ。
イベント発表用プレゼンなのに情報を盛り込み過ぎて印、刷用文書のようなスライド=「スライデュメント」をつくってしまう失敗は、誰もが経験したことがあるのではないだろうか。その対極にあるのがシンプルに研ぎ澄まされたスティーブ・ジョブズのプレゼンである。
あの驚くべきわかりやすさと強烈なインパクトはどこからくるのか。この本にはジョブズとゲイツのプレゼンを平均単語数、語彙密度、難解語、難読指数、言葉の複雑度で比較するという興味深い試みと納得の結果が示されている。ジョブズのプレゼンのキレはデータ解析でも示せるものだったのか。
ジョブズ流の基本は
・計画はアナログでまとめる
・一番大事な問いに答える
・救世主的な目的意識を持つ
・ツイッターのようなヘッドラインを作る
・ロードマップを描く
という5つの方法。それらを実現するためのたくさんのテクニックが紹介される。プレゼンの作り方、話し方ももちろん大切だが、アイコンタクト、しゃべる姿勢、手振りなどノンバーバルコミュニケーションも重要な要素だ。
そして何より納得したのはジョブズが5分間のデモのために数百時間の練習をしていること。そこに書かれた文字を読み上げるようなプレゼンをしてはいけない。そのためには台本を捨てる、徹底的に頭に叩き込む、だからシンプルなスライドになる、ということなのだ。
実践すれば誰でもジョブズとはいかないが、とりあえずプレゼンのキレのよさを身につけたい人にはよい本だ。だいたいジョブズ流のコツが形式知としては理解できた。あとはMac、iPod、iPhone、iPadのような製品を連発できる会社のCEOになるだけだ。
・ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは

これは今年初めに読んで、感動して「いいよ」と何冊も周囲に配った本です。
2009年に米国アマゾンに900億円で買収された靴のオンラインストア ザッポスの伝説。同社はCEOをはじめ500人以上の社員がツイッターでコミュニケーションをしているソーシャル戦略の会社としても有名ですが、この本はもっとザッポスにとって本質的な"人の力を主電源とする感動サービスの仕組み"を描いている。ツイッター戦略はその戦略からでてくるものだ。
CEOのトニー・シェイは90年代後半バナー広告交換コミュニティとして大成功を収めてマイクロソフトに買収されたリンクエクスチェンジの創業者でもある。私は最盛期のリンクエクスチェンジの米国オフィスを訪問したことがあるが、ユーザーからの熱烈なファンレターをオフィスにたくさん貼りだしていた様子を思い出した。顧客満足に重心を置いた経営は出発点から変わらない。
お客様に感動を与えるために「顧客を満足させるためなら、ほとんど何をやってもよい」ほど大きな裁量権を与えられたコールセンターのメンバーたち。彼らが作りだすドラマは、ソーシャルネットワークに紹介されて増幅される。
「「ザッポスのCLT社員は、もし仮に顧客が求めている靴が、ザッポスに無かった場合に、必ず他社のサイトを最低三個はチェックして、その靴を入手できるところがないかどうか調べるように、教育されています。」とCEOのトニー・シェイは言う。」
顧客は今回は他のサイトで買っても、次回も必ずザッポスに電話をかけてくる。目先の利益ではなく、長期的に熱烈に顧客に愛されることを優先する。ザッポスではコールセンターが会社のコアを形成している
徹底したカスタマーフォーカスと同時に徹底した従業員フォーカスも特徴だ。企業は本来、運命共同体であるはずなのに、経営トップや投資家ばかりが甘い汁を吸って、社員に還元されないこれまでの企業とはまったく異なる。従業員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない。
ザッポスはコミュニティ的な企業だ。どんな会社を作るのかということを全員で考え続ける企業だ。考え続けることが経営戦略なのだ。そうすることで共同体としての企業の力を引き出している。「カルチャーを創造できれば、ルールをゼロにできる」のだ。
"企業文化が強み"というのは本来は日本の大企業のお家芸でもあったはずだが、成果主義やリストラを濫用して、すっかりその強み、信用が失われてしまった。当面の失地回復は難しそうだ。むしろ、皆でオールを漕いでいる感覚のでるベンチャー企業の方が、企業風土は信憑性を持ちやすいと思う。トニー・シェイみたいに、コミュニティ型リーダーシップで経営センスを持った人が日本でもそろそろ登場してくるのではないか。
翻訳ではなくて日本人が書いているのも驚き。
「本書は、高望みはせずに定型的な文章を書くことでよしとする。一定の言い回し(表現の型)を踏まえれば、誰にもそこそこの文章が書ける。文章を書くとは一定のマニュアルに従って定型表現をつなぎ合わせることだ。世の文章指南書のお勧めやタブーにあちらこちらで異を唱えながら、本書が説くのは「型」を重視する「パッチワーク的文章術」だ。」
読みやすい、分かりやすい、説得力がある"達意"の文章を書くための指南書。
・一文を短く書く
・使い古された言い回しを上手に使いこなす
・主観的、曖昧な日本語を、英語のように客観的、論理的に書く
・文の単位は長い順で並べる
といった指導がある。わかりやすく、誰でも実践できる方法論ばかりだ。
特に曖昧さ回避で、わかりやすくは基本だと思う。
川端康成『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」は、主語として「汽車」が省略されていると著者は指摘する。英訳ではちゃんと"The train came out of the long tunnel into the snow country."になっているそうである。日本語は述語以外はいくらでも省略可能なので、あいまいになりがちであるから、「和文和訳」のつもりでわかりやすくを心がけなさいとすすめる。
意味を伝達する達意の文章は、表現で感動をうむ文章とは違うから、書いていて味気なく感じる。そこで、味を出そうとして、ヘンな味になって、不味くなっているのが多くの素人の文章なわけだ。下手に味を狙わずに、まずは無味無臭で機能的な作文を心がければ、文章力の基本ができて、さらに上を目指せる。この新書はそうした基礎固めのガイド本である。
・<不良>のための文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1275.html
・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html
13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html
・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html
・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html
・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html
・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html
・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html
・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html
・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html
・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html
・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html
・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html
・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html
・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html
・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html
・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html
・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html
・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html
・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html
カネになる文章の書き方を教える本だ。
<不良>は「天声人語」や小論文テストの良い子ちゃん文章術とは対極にある。
「クルマの運転にたとえてみましょうか。学校で習う文章や『文章読本』が教えるのは、教習所で満点をとれるような運転です。法規を守り、自動車のしくみや特性をよく理解して安全に走る。しかし、サーキットやラリーコースでそんな運転をしていたのでは、とてもレースに参加できません。路上では「割り込み」や「幅寄せ」はいけないことですが、レースではそんなことはいっていられません。もちろんスピード違反だって。」
「文章読本」系の本は大作家が書いたものでさえ「この本は名文の書き方を教える本ではありません。」なんて逃げ口上が最初に書いてあるものだが、この本は逃げない。ちゃんと売れる文章の書き方を教えるぞと書いている。フリーライターとしてプロを目指す人はこちらを読むべきである。
書評、飲食店評など実際に良い例と悪い例を示して、なにが違うか、どう直していくべきかを実践的に教えてくれる。心構えも具体的でかつ不良だ。コラムやエッセイならば、
「他人に嫌われることをおそれてはいけません。というか、むしろ積極的に「こいつは面白いことを書くけど、友達にはなりたくないな」と思わせるぐらいの方がいい。いやなやつ、鼻つまみ者を積極的に引き受けなければ、コラムやエッセイは書けません。誰にでもいい顔をしようとすると、とたんに文章はトーンダウンし、つまらなくなる。」
という気でいろ、と。プロである。
ベテランのフリーライターとして著者の経験のもとづくノウハウはどれもうなずくことばかり。自分の反省点をいくつも突かれてイタタタタだった。まずい飲食店についてまずいと書かずに読者にまずいことを伝える技術など、プロとして生き残っていくためのテクニックも参考になった。
・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html
13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html
・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html
・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html
・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html
・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html
・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html
・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html
・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html
・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html
・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html
・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html
・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html
・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html
・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html
・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html
・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html
・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html
・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html
・魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52

ヘンなタイトル...が第一印象だったが、中身はかなーり面白い本である。会社の机の上に置いて、毎朝52のルールを一つずつ読んでから仕事を始めたら、斬新な物の見方でスタートが切れると思う。オルタナティブな視点で"リフレーミング"を供給する本である。著者は元ハーバード・ビジネス・レビュー編集者で、米国の人気ビジネス雑誌「ファストカンパニー」を創刊し、編集長として全米雑誌賞を受賞したアラン・M・ウェバー。
テーマは、変革・イノベーション、戦略、新しい視点、仕事に姿勢、リーダーシップ、起業。数ページでひとつのルールがある。人気雑誌の編集長らしい。言語能力やコミュニケーション能力のノウハウが光る。
たとえば相手から情報を引き出す「質問力」を重視している。
「ファスト・カンパニー」の経営者インタビューには
「朝、あなたを目覚めさせるものは何か」
「夜、あなたを眠れなくするものは何でしょうか」
という恒例の質問がある。
この問いによって、経営者が今取り組んでいる仕事ではなくて、夢中になっていることはどんなことかと今本当に気にしている問題は何かを聞きだすことができる。その経営者がどんな人物か、その会社をドライブさせるエネルギーを知ることができるという。
「太陽が地球のまわりを回っているのか、地球が太陽のまわりを回っているのか、十五世紀にそんな質問をすれば世界が変わっていたかもしれない」という例をあげてよい質問はよい答えより大事だぞと教える。
そして多くの企業経営者への取材から、成功する経営者は、会社の目的をたった一つの短文で表現できるリーダーだと指摘する。ビジョンが大きいだけでなくて焦点がはっきりしていることが重要だというのだ。
「『正しい言葉』と『だいたい正しい言葉』の間には、『稲光』と『光を発するホタル』ほどの違いがある」「書くまでは考えをはっきり知ることができない」「記事を損なわずして、分量を三分の一にせよ」。
言葉がメディアとネットワークで増幅される時代に、経営者の言語感覚の鋭さはリーダーシップの要ともいえるものなのかもしれない。
私が感銘を受けたルールのベスト5は、
・額縁を変えて絵を見よ
・スタート時には「4C」が必要だ
・新しいカテゴリーをつくれ
・ストーリーを語れ
・「雑音」を減らし「信号」を発せよ
こういうのが52もある。
・マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた"ちょっとした発想"

『ニューヨーカー』の名コラムニスト マルコム・グラッドウェルの傑作コラム集。
TVショッピングの王様ロン・ポピール
ケチャップ帝国をつくりあげたヘンリー・ジョン・ハインツ
「ブラックスワン」で著名な投資家ナシーム・タレブ
戦後アメリカでヘアカラーを普及させたシャーリー・ポリコフ
ピルを開発して広めたジョン・ロック
カリスマ調教師シーザー・ミラン
世界を発想で変えた商売の天才たちのエピソードが5つ。
アメリカっていうのは個人の才覚一つでどこまでも成りあがれる自由の国なのだということがよくわかる。TVショッピングの王様ロンコ社のロン・ポピールなどは典型的だ。自分が開発した商品を、テレビで実演販売して巨額の富を得た。この本に取り上げられているのは、こうしたわかりやすいアメリカンドリームの物語なのだ。
娼婦のファッションだと軽蔑されていたヘアカラーを一般の女性に普及させたシャーリー・ポリコフや、避妊薬のピルの開発と普及によって女性の生き方を変えたジョン・ロックなど、単に経済的な成功を収めただけでなく、天才たちの業績はアメリカの文化史の一部といってもいいだろう。マルコム・グラッドウェルが結局、一番語りたいのは「アメリカ」という国なのだと思う。
「はじめに」で、マルコムグラッドウェルは、自身の発想法についても触れている。ふたつあるのだという。
「アイデアを見つける秘訣は、たとえ相手が誰であろうと、たとえ何であっても「語られるに値する」物語がある、と自分に思い込ませることにある。」
どんな話でも深く追求していけば絶対に価値があることが見つかると信じ込めると、おもしろい話になるらしい。そして、
「アイデアを見つけるもうひとつの秘訣は、権力と知識の違いを理解することだ。本書には権力者、あるいは著名人と呼べる人間は数えるほどしか登場しない。私が興味を抱くのはマイナーな世界の天才たちなのである。 私が何か物語をみつけたいときは、トップに君臨する人間からは取りかからない。現場から探す。実際に作業を行っているのは現場で働く人間だからだ。」
神は細部に宿る。ロン・ポピールはヒット商品となったロティスリーキッチンを開発する際に、なによりも、きつね色の焦げ跡がつくことを重視した。それが消費者に対して最大のセールスポイントになるということを理解していたからだった。自らが現場で料理をしているからこそ、それができたのだった。
著者のマルコム・グラッドウェルは、成功者の体験からそうした重要な細部を見つけだす天才である。ドキュメンタリや取材ベースのコラムを書きたい人にも、勉強材料としてこの本はすばらしいと思う。
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/1-2.html
ほめ上手よりも認め上手になれという本。部下のいる人におすすめ。
日常的に部下をほめるとなると、どうしても欺瞞性やうさんくささが伴ってくる。毎日部下がホームランばかり打つわけではないからだ。そもそも、ほめる=褒美、しかる=罰で人を動かせるという単純な方法論にも限界がある。
おおげさに称賛するのではなく相手を人間として尊重すること。誇張を含んだ「ほめる」よりも、ありのままを「認める」ことのほうが、ほめられた者の長期的な有能感や自己効力感を引き出しやすいとして、著者は認め上手になることをすすめる。そして挨拶、声かけ、名前を出す、異性を入れる、同期生ネットワークをつくる、お金よりも名誉の成果主義を導入する、家族に尊敬される手助けをする、など認め上手になるノウハウが紹介されている。
ある程度大きな組織では、デキる社員もいればそうでもない社員もいる。ほめたり認めたりする際には、モチベーションの違いに注意せよと説く。
「成績が低い者もそれなりにがんばるはずだという見かたもあるが、それはそもそも成績が上位の者と下位の者とではモチベーションの構造がまったく違うということを理解できていない。上位の者は注目されているうえ、がんばって成績を伸ばせばさらに「すごい!」「たいしたものだ」と感嘆、称賛される。だから、ますますがんばる。それに対して下位の者は、絶えず尻を叩かれるし、多少がんばって成績が伸びたとしても感嘆や称賛をされることはない。せいぜい「努力しているな」くらいで終わる。だから、やってやろうという前向きな意欲がわかないのである。」
下位の者には、別の尺度で認めること、別の次元で評価してやることが重要だという。たとえば売り上げや契約件数ではなくて、訪問回数や顧客満足度などの軸や、社内のクラブ活動、地域への貢献など、仕事以外であっても紹介する。組織の全員のやる気をひきだすための方法論がとても参考になった。
そして認める、ほめるは斜め上から目線で。
「「上から目線」と「斜め上から目線」の違いをたとえていうと、監督ではなくコーチ、親ではなく兄や姉の立場に近い。監督の前では萎縮してしまう選手もコーチのいうことなら聞けるし、親に歯向かう反抗期の子でも兄や姉の忠告には耳を貸す。」
著者は同志社大学教授で専門は組織論、人事管理論。表彰活動を世に広める日本表彰研究所所長。日本の組織にありがちな状況が書かれているので大変にわかりやすかった。私は人をほめるのが苦手なのだけれども、参考になる話が多かった。
・MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク

「自分はいったい何をやりたいのか」
「自分の夢は何なのか」
「自分はどういう職場にしたいのか」
「自分はどう世界と付き合いたいのか」
バブル崩壊後、多くの日本企業が、それまでの日本型経営を続けることが難しくなり、目標管理と成果主義を徹底的に導入した。その結果、個人の思いは語られることが少なくなった。数値目標導入によって経営が一時的に改善されたかのようにみえても、ギチギチに合理化、効率化した組織からは創造的な発想は出てこない。社員は高い数値目標の達成だけを求められて疲弊するばかり。だから、著者はMBOに埋め込む新しい考え方MBB(Management By Belief 思いのマネジメント)を提唱する。
MBO(Management By Objectives 目標管理)では、個人は
「まず、経営者は株主に対して利益を約束する。そして、それを念頭に置いた経営計画を立てる。今度は、その数字を各部門や各課に割りつける。それによって社員個々人が目標にする数字も決まってくる。理論上は個人がきちんと成果を挙げれば、課や部の目標数字もクリアでき、課や部の目標がクリアされれば全社の目標も実現できるしかけだ。」
という合理的なシステムの歯車、部品のひとつになる。だが、心を持った個は、意思を尊重されずに使われるだけでは、心身ともに摩耗してしまう。論理分析思考からはイノベーションも生まれない。企業の成長と個人の幸せのベクトル合わせがMBBの目指す新しいしくみである。
「経営において個人の思いを重視する考え方は、人間や企業をどう見るかという基本的な人間観、経営観に通じる問題でもある。つまり、人間や企業を「作業工数」「金儲けの集団」と見るのか、それとも「自ら考え、知を創造していく主体」として捉えるかである。」
この本では、今、知識創造の主体としていきいきと働くビジネスマンや経営者をケースとしてとりあげて、うまくMBBを実現するための経営ビジョン、人事制度、教育制度、評価制度、リーダーシップ論が語られる。
MBBの定義はこう書かれている。
「会社の目標や組織の背景にある経営陣や上司の思いと、自分自身の仕事やキャリアに対する思いをぶつけ合う『創造的対話』によって会社にとっても意味のある業務上の目標を見出し、それを設定して、実行していくこと」
トップダウンで効率を追求する欧米型の経営手法と、現場と経営の相互コミュニケーション(ベタな飲み会含む)を大切にする日本型の経営手法の融合が、MBBの目指すモデルである。それには経営者も社員も全員が、"しみじみ"と「これしかない」と思えるまで話し合う場づくりが必要になる。
たとえばケースのひとつ星野リゾートの社長の言葉からは強い思いが伝わってくる。
「温泉に浸かれて、本物の和食が味わえ、畳の上でくつろげる日本の温泉旅館は世界一のホスピタリティを発揮する力を秘めています。フランスのまねごとをしているアメリカのホテリエよりもよほどポテンシャルは高い。そういう誇りが社員の心の底にはあるんです。だから私が『うちもリッツ・カールトンになろう』なんていっても社員は燃えません。しみじみしません。だから、むしろ『ペニンシュラを日本から追い出すんだ』といったほうが、意気が上がるのです。」
やりがいと楽しさのある創造的な組織の作り方。こうした思いを個人と組織がどうやったら共有できるのか。しみじみ感をつくりだす実践とは何か。そのフレームワークを示すのがこの本である。
・世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1003.html
・人事異動
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-947.html
徳岡 晃一郎氏の著書。
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ところで、著者のひとり徳岡先生らと私は多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を運営しています。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。
・多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所
http://www.ikls.org/
人生哲学と経営哲学を両方学べる。おすすめ。
会社を辞めて家業の書店をついだ秀三。俺が立て直して見せるという最初の意気込みも現実の困難のまえには勢いを失っている。大型書店の近隣への出店の情報を聞いて、もはやこの店も閉店かと落ち込んでいる。
『商売繁盛!商売の神様、いるのならお願いします。もうギリギリです。何とかしてください!』
秀三の叫びを、彼にとりついている福の神(研修中)は歯がゆい思いで聞いていた。福の神は秀三の成功のためにそれなりに手を尽してやっているのだが、思うように結果が出せていないのだった。
そこへ成功者らしい老人とその老人にとりついている先輩福の神が現れて、成功するための指南を与えていく。人間と福の神とそれぞれの視点で、人間の成長、成功、そして幸福とは何かを学ぶレッスン。
『大切なのは、目の前の一人の人生に興味を持つことだ。愛をもってその人を見ることだ』
この本が教えようとしていることは教訓として抜き書きしてしまうといたって当たり前のことだ。それが、この感動的な物語の文脈で読むとまったく新しく豊かな意味をもってしみじみそうだよなあと思える。
特に中小企業の経営者、お店の従業員は必読。迷いの中にいる人が読めば、人生が変わるかもしれない。泣けてくるかもしれない。自己啓発書として本当によくできた名著だと思う。
私もちょっとほろっときてぐっときたのでした。
会議を科学的にデータ解析して、「決定プロセスの健全性」を確保するには、どのように会議を行えばいいかを研究した本。ビジネス書にありがちな"すごい会議"の幻想を打ち砕く。まず実際の会議は多くの場合、生産的なものになっていないことが指摘される。
「ブレインストーミングに限らず、通常、集団で課題遂行を行うときには、一人で同じ課題に取り組むより優れた成果が得られると期待しがちである。しかしそうした期待に反して、今述べたブレインストーミングと同様に、集団で行ったとしても期待される成果に達しないばかりか、個々人の成果を集団人数分集めた方が優れていることを示した研究が多い。」
皆で話し合えばいい考えが出てくるという素朴な信念は多くの場合、ただの幻想にすぎないという。メンバーの相互作用による「プロセスの喪失」は主に次の4つに起因している。
1 評価懸念 否定されることを恐れて発言を控える
2 発言量の同調 他のメンバーの発言量に合わせて発言を控える
3 ただ乗り 他のメンバーの努力に期待して発言を控える
4 発話のブロッキング 誰かが話している間は発言できない
特に4つ目の発話のブロッキングは強く作用しているそうだ。
私も経験的に、ブレストはまず一人で長めにやってから、個人の成果を持ち寄ってもう一度短めにやるのが一番生産的だと感じている。いきなり皆でやるとウダウダしてしまいがちなのだが、科学的にも研究されていて、そのウダウダの中身が明らかにされていた。確かにそういうことだ、納得。
「議論の中に共有情報が占める割合は45%だったのに対して、非共有情報はわずか18%だったのである。加えて、グループのメンバーが多くなるほど、その傾向が顕著になることも明らかになった。しかも、議論の中に投入された共有情報のうちの34%が、少なくとも一度は繰り返し話題にされており、非共有情報では26%が繰り返されていたという(Stasser,Taylor,& Hanna,1989)。これらのことを踏まえると、話し合いでは、確かに情報交換がなされていたのだが、その時間の大部分は、すでに共有された情報をやりとりすることに費やされていたということになるだろう。」
会議にもハレとケがあるのじゃないかと思った。ハイテンションのプロフェッショナルが集まれば集合知を生みだす創造的な"ハレ"の会議が確かに可能だと思う。だが、日常的に行われる"ケ"の会議は、間違えないことや情報を正確に共有することが目的である。この本には、そうした普通の会議の陥りがちなワナと回避法が、科学的な研究の成果として、解説されている。
会議のインタラクションについて、ビジネス書ではなく科学書を読みたいと思ったらこれがおすすめだ。
・「みんなの意見」は案外正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/05/post-381.html
・会議はモメたほうがいい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/06/post-241.html
・すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003427.html
・会議が絶対うまくいく法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000203.html
いわゆる「飛ばし読み」でなく最初から最後まで「全部読み」で、
1分間に1万字以上を読む速度、1ページを3秒、1冊を10分で読む計算
で本を読めるようになるという速読メソッドの本。
私は多読だけれどもいわゆる速読はできないので、興味津津で読んだ。
まず「速読眼」そして「速読脳」をつくる。
「速読眼」とは、
1 眼力 まばたきが少ない
2 弾力 高速で目を動かす
3 リズム 深く集中できる
4 速度 自在に速度を変えられる
5 合焦力 文字に焦点を合わせる
という視覚機能を強化すること。
「ゆっくりとしか読めない人に多く見られるのは、まず文章の1行を読んだら、次の1行に移る前にひとやすみしてしまうのです。」。速読するは「行末を読んでいるとき、次の行が見えている必要がある」そうで、そのための練習フォーマットが紹介されている。行の上端と下端の1文字目だけを見る練習などを繰り返すことで、行戻りがない読み方ができるようになるという。実際、速読者は視野が広いという研究もある。
そして交通標識を一瞬で理解するように、文章を読めというアドバイスも興味深い。速く読める時は確かに単語や文章をイメージ的にとらえているというのは本当のような気がする。音声化しないから速いわけでもある。
「瞬間的に理解できる文字の量を増やしていけばいいのです。まず単語から始まって、フレーズ、文章、段落を理解できるようにし、さらに最初から最後まで速読して、普通の読書と同じように理解できるようにトレーニングしていけばいい」
よく読む分野の本というのは、これができるようになっているから、速く読めるのだろう。
さて、私はこの本を読んだだけで練習していないので、別に1冊を10分で読めるようになったわけではないのだが、重要なポイントは把握できた気がする。読書という行為はフィジカルな側面があるから、スポーツ同様にとらえて、科学的な練習によって、そのスピードを上げていくことができるはずだ。「速読眼」づくりは挑戦してみる価値がありそうに思った。
ただ、速読眼ができても、本の内容が難しければ理解は遅くなるわけだし、どんな本でも10分でとはいかないだろう。天才秀才やデキル人がみんな速読かといえばそうじゃないわけだし、速読術を習得しても曲芸、大道芸みたいに終わってしまうかもしれない。目的意識を持って取り組むといい術だろうなあ。
ちなみに著者の勧める「速読脳開発プログラム」はこちら。
http://sokudoku.co.jp/program.html
私が教員をしている大学・大学院では、ここ数年で、20人に1人くらいの割合で授業ノートをマインドマップでとっている学生を見かけるようになった。世界では教育分野とビジネス分野で2億5千万人が使っている思考ツールであるといわれる。この本はマインドマップ発案者トニー・プザンによる、世界1千万部突破のオフィシャルガイド。
マインドマップの利点はなにか?
最初に普通のノートの4つの欠点
・キーワードが明確でない
・記憶しにくい
・時間を無駄にする
・脳の創造性を刺激しない
が挙げられている。
授業内容を最初から最後まで時系列でノートをとるよりも、自分が気になったキーワードを軸にして、関係性をネットワーク状にまとめていく方が、頭に定着する。読み返した時も効率よく想起することができることが魅力であるという。
同じ講義を聴いていても10人いれば10通りのマインドマップができあがる。まったく同じものができてしまうことはない。個性が発揮され、頭を使えば使うほど個性的な思考ができることがマインドマップの素晴らしいところだと思う。
そして「マインドマップ作成のプロセスから答えが出る」ということ。きれいにノートを取って終わりではなく、考えながらマップを描くことで自分の思考が整理されていく。ただ記録するだけの方法論ではないのだ。
実は私はマインドマップが苦手である。直観的に自分に向いた思考ツールだと思って何度も挑戦しているが、なかなか定着しない。それでオフィシャルガイドブックを読んで再挑戦してみようというわけ。きれいにマップを描こうとする心理がいけないらしい。見やすさ、美しさを意識しないことが大切のようだ。心がけてみよう(そうは言われてもこの本の例は見やすくて、美しいんだよなあ...。)
巻末のおまけが豪華。アインシュタインやエジソン、ニュートンやダヴィンチ、ベートーベン、ミケランジェロ、コロンブスにピカソなど、歴史的な天才たちのノートが写真で収録されている。天才はみんなビジュアルなノートを取っていることに改めて気がつかされる。
20年間無敗の雀鬼 桜井章一の語る人生哲学。努力と書いて「努めて力まない」ととく、そのココロは?。ポジティブシンキング、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング全部試したけどダメ、肌に合わないよっていう人は、この本でうまくいくかもしれない。
「この本では「努力する」「求める」「つくる」といった足し算へと向かうさまざまな発想や行為を俎上に載せている。そしてそれらがどれだけ無理で不自然なものを孕んでいるか、それゆえ破綻しやすく、かつ人生に対していかに破滅的なものになりうるかを述べたつもりである。」
確かにどんな分野でも達人の極意は、いかに力を入れないか、にある。
「つまり、麻雀にせよ、何にしろ、そこにあったのはいつも「努力」ではなく「工夫」だったと思う。「工夫」があれば何事も楽しくできるのだ。「努力」をしようとすればかならず余計な力が入る。練習して上達を続けるには力が入っていてはダメだ。」
努力の嘘っぽさが嫌いだと著者ははっきり言う。
この本の中身は、持たない、得ない、壁を超えない、頑張らない、悟らない、満たさない、才能を磨かない、覚えない、急がない、意味を求めない、計算しない、集中しない、育てない、など数十の「○○しない」ノウハウの集積だ。しかし、姿勢はちっともネガティブでもニヒリズムでもない。ポジティブでもネガティブでもなくて、しなやかな生き方論なのだ。
「私は道場で「勝つ」ことを求めず、「負けない」気持ちでやれと言っている。「勝つ」は人がつくりだす欲望だが、「負けない」は野生の動物がもっているような本能に近いところからくるものだ。」
自然に潜在能力を引き出すための方法論として、努力しない、があるわけだ。目標は前にではなくて、両脇に置くような感覚がいいという。目指したら負けなんだよ、と。
でも、努力しないだけじゃダメ人間じゃないの?いやいや違うのだ。伝説の勝負師である著者には数々の修羅場体験がある。そして自ら好んでサメの海に入ることを楽しむ。生命の危険と隣り合わせになることで本能的な生きる力を引き出しているのだ。努力しない生き方は何もしない生き方とはまったく違う、デンジャラスなにおいを感じた。
勝間でも香山でもないオルタナティブな方法論が桜井にはある。
わかりやすい極意の書だ。
「集中力がスキルである以上、テクニカルスキルと同様に、目的意識の強さ、教育、訓練、努力、工夫、習慣などによって、いくらでも何歳になっても伸ばすことができるのです。」
著者は日本航空で常務歴42年の元機長。総飛行時間1万8500時間(地球800周相当)。引退まで一度も病気で休んだり自己都合でスケジュールを変更したことがなく、この4月、63歳まで現役で機長を務めた。日本航空の国際路線すべてを飛んだ伝説的パイロットが語る集中力発揮の方法論。
集中力とは捨てる技術だという。自分が好きなこと、やりたいこと、やるべきことに集中し、それ以外をいかに捨てるかが重要だという。具体的に著者は長年のパイロット生活においてどう心がけてきたかを教えている。
「パイロットが一般の職業に比べて、集中力の発揮の仕方がうまい、スゴイと言われるのは、数百名の尊い生命をあずかっている、という使命感があることはもちろんですが、常に時間というものを意識して仕事をしていることも、大きな要因のひとつです。 そしてフライトに関わるすべての業務を、出発の時間、あるいは到着の時間から逆算して、それぞれの仕事、手順、操作、打ち合わせなどに時間の制限をつけて実施しているのです。 このように、一般の仕事でも常に時間を意識して実施すれば、必然的に、集中力を発揮せざるを得なくなります。」
とても思い当たることがひとつある。私は普通の人よりも多くの本を読むから、しばしば「どうやったら本を速く読めますか?」という質問をいただく。答えは簡単で、30分おきに何ページ読めたかをチェックすれば自然と速くなる。速読メソッドなんて不要で、人は文字を速く読もうと意識すれば、少なくとも意識しているうちは速く読めるものだ。そのうち忘れて遅くなるので、一定間隔で読み進めたページ数を確認すれば、それだけで何割かは速くなる。私の場合は電車内での読書が中心なので、時間内に何ページ読めるかが特に重要なのだ。
また「間」の使い方にもパイロットならではの秘訣がある。
「ノーマル・オペレーション(通常操作)では、「間」をとりながら、ひとつひとつ確実に操作をしていくことに、注意力・集中力を使っています。トラブルや緊急事態が発生した場合は、逆に迅速に対応しないと、手遅れになってしまいます。このように、「平時においては、ちょっと『間』をとり、緊急時には迅速な対応」が「間」のとり方のポイントです。」
著者はアスリートのような一瞬の集中力と同時に、長時間にわたる持続的な集中力も常に意識している。小さなことを見逃さない注意と、本質と重要度を見極める注意を同時に持つことも重要視している。虫の眼、鳥の眼、魚の眼、心眼の4つの眼をバランスよく使うことが大事だと説く。
著者の話す秘訣は、当たり前に聞こえるものが多い。だが42年間、人命を預かって飛行機を運航してきた機長の実績は重い。長期間にわたって高い集中力を発揮してきた達人の振り返りの言葉はまさに金言であると思う。日常の中で自己の集中力を客観的にコントロールすることが、仕事や人生を大きく変えうるということに気がつかされる。
・集中力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/03/post-64.html
・20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

著者のティナ・シーリグはシリコンバレーの中心に位置するスタンフォード大学で、学生に起業家精神を教えるアントレプレナー・センターのエグゼクティブ・ディレクター。「機が熟すことなどない」「早く何度も失敗せよ」「及第点でなく最高を目指せ」「ルールは破られるためにある」。集中講義を書籍化した本書は、たとえ20歳でなくても、挑戦心を焚きつけられるメッセージがいっぱい見つかる。
スタンフォード大のようなエリート養成校で、こうした「異質なこと」をする能力を魅力的に教えるコースがあるということが、アメリカのイノベーション創出能力(アップルやグーグル)の源泉にあることは間違いない。
情熱とスキルと市場が重なり合うあなたにとってのスウィートスポットを探せ、という。それは趣味と仕事の境がない世界。「ライフワークバランス」なんていう軟弱発想とは無縁の世界。
「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、つねに仕事あり遊びでもあるのだ。」という老子の言葉が引用されている。
自慢話としての成功者の話というのは、すべての経験が今につながるように辻褄が合っているように聞こえるが、現実は当然ながら偶有性の連続だと話す。ガイドブックにない場所、偶然の出会い、やってみたから見えた驚きの事実。旅行と一緒で予定になかったことが一番面白い。
「自分のキャリア・パスは、振り返ってみると、ちゃんと筋道が通っているのです。でも、将来の道はぼやけていて、不確実なことの連続です。視界が開けないとイライラしてきます。それでも、大きなチャンスが巡ってくる確率を上げるように行動することはできるのです。」
人生50年計画を作って自己満足するなど無意味、しっかり目を見開いて今起きていることを見ろ、今あるものでどうにかせよ、自分で自分に許可を与えよ、「機が熟すことなどない」。大人の私もすっかりアジテートされてしまった。
起業家精神というのは世の中の数パーセントくらいの人間が持つ資質だろう。最高の能力を持つ人材となるとさらにわずかだ。潜在的な資質を持ったエリート層を、有名大学において適切に開花させていくシリコンバレーの孵化プロセスの一端が、この集中講義録から見えてくる。
日本でありがちなベタな起業家養成講座(フランチャイズ話とか混ざっている)と違って、ベストアンドブライテストのノブレス・オブリージュと起業家精神を融合させて語るところが凄いのだ。選ばれた人たちの、責任感とプライドのあるシリコンバレー流の起業が日本ではまだまだ少ないと思う。
個人的には、判断に迷ったときは将来そのときのことをどう話したいかを考えて、胸を張って話せるように、いま物語を紡ぎなさい、という話がぐっときたなあ。









