Books-Managementの最近のブログ記事
不況でモノが売れない時代はプロデュース力で売る。
ポニーキャニオンで制作ディレクターや宣伝プロデューサーとして「チェッカーズ」や「おニャン子クラブ」、「中島みゆき」「だんご三兄弟」等の大ヒットを手がけた、現デジタルハリウッド大学大学院教授 吉田 就彦氏が語るビジネスプロデュース、コンテンツプロデュースの理論と秘訣。元デジタルガレージ副社長。最近はテレビでも活躍されている。
「R25」「おくりびと」「相棒」「ALWAYS三丁目の夕日」「モンスターハンター」など有名なプロデューサーたちの名前と成功事例がいっぱい挙げられる。いまどきの売れっ子プロデューサーたちが日々何を考え、行動しているか、具体的にわかるのが魅力の本。
吉田先生の独自のプロデュース理論は、まずHS(ヒットシグナル)をみつけて花開かせるというもの。その過程に「0から1を生む「創造」、1を100に育てる「実現」、 そして、二つのプロセスの「融合」。 ビジネス・プロデューサーとは、「0-1創造」したものを「融合」させ大きくして、「1-100実現」ができる人材、すなわち、アイデアをカタチにできる人材であるという。
ビジネス・プロデューサーの7つの能力として、下記の要素を挙げている。
| 発見力 | チャンスやヒットの芽や新しい人財などを発見する力 |
|---|---|
| 理解力 | 世の中の動きや物事の本質を理解する力 |
| 目標力 | ビジョンを描きゴールをイメージできる力 |
| 組織力 | さまざまなビジネス資源を組織して有効活用する力 |
| 働きかけ力 | 「人」や組織を励まし、力を吹き込み、目標に向かって育てる力 |
| 柔軟力 | トラブルや環境変化に対応するなど、柔軟に物事を調整する力 |
| 完結力 | さまざまな事を乗り越え実行し、達成して、次への蓄積とする力 |
幅広い能力が求められる。では、どうすれば能力をそれぞれの開発できるのか?本書ではデジハリ大学院での授業で行われているワークセッションが紹介されている。これがかなり面白そう。
たとえば
・目の前の人に座っている人たちを「立ってください」という言葉だけで立ち上がらせる。
・一人に好きな人、嫌いな人を思い浮かべさせて、残りのメンバーはその顔の表情からどちらを想像しているかを当てさせる。
などなど。
結局、プロデューサーというのは人の心を読み、働きかけて、動かすことが基本なのだと再認識させられた。
・ブログ ヒットコンテンツブログ
http://hitcontentlab.jp/blog/
吉田 就彦氏のブログ。
価値があるから消費者に選ばれてブランドになるいう「ブランド自然選択説」。ブランド自体の世界観やビジョンが価値を創造するという「ブランドパワー説」。ブランドに対しては対照的なとらえかたがあるが、消費欲望や権威に還元するだけでは説明できない「何か」こそブランドのブランドの本質であると説くブランドの本質論と、有名ブランドをケースにしたブランドマネジメント論。
「ブランドと製品群とはまさに相互に支えあって、ひとつの世界をつくりだしている。それはいわば、どちらかがどちらかを支えているという一方的な関係に還元して理解できず、お互いがお互いを前提とすることで根拠づけられるという自己言及的な関係だといえる。それは、ひとつの社会的実在としての意味世界を形成するきっかけでもある。」
アップルが価値があるのはアップルだから、ソニーがいいのはソニーだからでもある。ブランド価値の定義は無限循環の自己言及プロセスになる。メディアはメッセージであるというマクルーハンの思想が、ブランドという概念にもあてはまる。ブランドパワーは制作者や経営者がこめる思いや夢が想像する意味世界が、実体の世界を動かす力になる。
この本ではブランド・パワーの構成要素として以下のようなものが挙げられている。
「そのブランドは、どれだけ消費者に知られているか」(ブランド知名度)
「その内容を、消費者はどれだけ理解しているか」(ブランド理解度)
「それは、どれだけの試行購入を喚起するか」(トライアル喚起力)
「それは、どれほどの再購入意図を生みだしているか」(リピート喚起力)
「消費者は、それに、どれほどの新しさや驚きを感じているか」(情緒尺度)
「それは、価格面で、他のブランドにひけをとらないか」(相対価格)
こうした要素ではかられたブランドパワーアメリカの上位ブランドは、半世紀以上続いたものがほとんどだ。そこでは一度作られたブランドに対して常に絶えざるブランド価値の再構成が行われてきた。認知されたブランドを企業はどう拡張していくべきか、成功例と失敗例、経営におけるブランドのマネジメント論が語られている。
1999年初版の本なので目新しい事例はないが、ブランドってなんだろうと改めて本質を振り返ってみたいときに役立つ教科書的な内容。
プロが教えるアート批評の書き方。美術、音楽、絵画、映画をどう言葉で表現するか。
「そもそもすぐれた芸術作品は、本質的にその芸術固有の媒体(音楽なら音、絵画なら色彩)によってしか表現できないことを表現しています。それを言葉で写し取ることは根本的に不可能なのです。この意味で批評の言葉は本質的な無力をうちに抱え込んでいます。ボードレールは、批評の言葉が理性的な言葉であることはできず、批評自体がひとつの芸術作品となるほかはないというようなことを書いています。」
メディウム・スペシフィックな性質を乗り越えて、言葉にできない感動を敢えて言葉で伝えようとするのがアートの評論行為だ。そこでは普通は悪文とされるものがアートの批評としては名文とされたりする。映画評論家としてのジャン=リュック・ゴダールの華麗なレトリックの例が紹介されていた。これ。
「イングマール・ベルイマンは瞬間の映像作家である。......イングマール・ベルイマンの一本の映画は、こう言ってよければ、一時間半にわたって自らを変貌させ、引きのばし続ける二十四分の一秒である。まばたきとまばたきの間の世界であり、心臓の鼓動と鼓動の間の悲しみであり、拍手のひと打ちとひと打ちの間の生きる喜びなのだ。」
私はこの映画を知らないが、この一説を読むと何かイメージが伝わってくる。引きのばし続ける二十四分の一秒や、心臓の鼓動と鼓動の間の悲しみとは何なのか、実は語っていない不明瞭な文章なのだが、批評対象の魅力は伝わってくる。ある程度は支離滅裂な構成もありなのだ。
「ことは美術に限った話ではないが、批評とは個人の主張を前面に押し出した言説であり、しかも多くの場合、その習慣は客観的な根拠に乏しく、個人の勝手な思い込みに由来している。」
まずこれを認めてしまった上で、さあ、どう書こうかと始める。それが結局、言葉にできないものを言葉で伝える挑戦の第一歩ということらしい。ロジカルさを追究するだけでは感動を呼ぶ文章にならない。そして最終的にはその書き手なりの文体を獲得することが大切だと教えている。
この本はプロのアート系ライターが、いくつものノウハウや試行錯誤、悩み所を解説する小論集。本来は、評論ライターのプロを目指す人向けの本だ。だが、こういう技術はいまや少数の評論家だけの問題ではない。ブログでアートを紹介したり、食べログや価格コムみたいな掲示板に書き込みをするときだって使える"百万人の"技術でもあると思う。
知識創造のダイナミズムとケースリサーチに基づく経営学の有効性を語った新書。暗黙知をビジネスにおいていかに扱うかが大きなテーマ。
「社会の現実は自然界のそれと違って、現在の判断が未来の現実を作っていく」。だから過去を見るだけでは将来の確実な見通しを作ることはできない。ビジネスは常に状況に依存する。法則が再現しないことが多い。実証的な経営には限界がある。しかし、だからといって闇雲に、場当たり的な解決や試行錯誤に頼るのは非合理だ。そこでこの本の言う総合的に情報を勘案して将来を見通す力=ビジネス・インサイトが重要になる。
「そうそう、そういう商品が欲しかったんだ」という需要創造型の商品・サービスは、市場調査の結果からでは作り出すことができない。それまでになかった新しい価値の創造は演繹でも帰納でもないアブダクションからこそ生まれてくる。
「消費者が、どのようなインサイトをもっているのかを、言葉で質問しても答えは返ってこない。無意識の中で行われがちな生活課題設定と課題解決だからだ。そこに、「オブザベーション」という手法の価値がある(西川英彦2007)。消費者を観察し、それを通じて彼の生活を追体験し、彼の課題を自分の課題として理解・共感できることが必要になる。これは、次の章で言うところの「対象である消費者への棲み込み」にほかならない。そうして初めて、その商品に向けてのインサイトが現われてくる。」
ビジネスインサイトを得るには、消費者を観察し、その生活を追体験し、その課題を自分の課題として理解・共感できることが必要になるという。成功したITベンチャーの創業者がしばしば技術者であり、自分が最初のユーザーとしてサービスを設計していたという事実は、まさに対象への棲みこみの典型例だと思う。
現実の経営者はどこかで見切って跳ぶ必要がある。そのとき有能な経営者は跳躍の先に何かが潜んでいることを感じ取り、しかもそれが経営的努力に見合う「価値ある何か」であることの確信を持っているものだという。なんだか超能力みたいに思えるが、人間の才能の真理を突いた表現であるように思える。多くの道で達人と呼ばれる人は、暗黙知の直観で対象を正確に見極めることができる。経営者でも同じことが言えたっておかしくはないのである。
名著。文章を磨きたいと考えている人は必読。
著者は、物事に深く感動して書くと力強い文章が書けるとか、物事を完全に理解すればいいものが書けるという常識を否定する。
「どんなに感動が深くても、どんなに苦悩が深くても、それは、それとして、文章がいいことの保証にはならないんです。すごく苦しんだ人がすごく凡庸にすごい苦しみを書く、なんて、文章の世界ではザラです。むしろ、すごく苦しむとそれに囚われちゃいますから、余り、苦しまない人のほうがいいかな、というくらいのことさえ言われているんです。」
感動の重力から自由になれ、いったんその感動は伝達不能と思ってあきらめろ。するとヨソから書く契機がやってくる。それは実は「書けない」という抵抗や、間違いのような、一種の妨害者のようなものだと著者はいう。書けないで苦しむと、自分自身のなかではなくて、外から思いもつかぬ方向からゴミが降ってくる。それにぶちあたっていくべきだと言っている。
「話が、その時のいきおいで、ずれる。ヨットが東に行く風を帆に受け、その風で北に行こうとするときには、バタバタと震えるでしょう。そんなふうに、そういうときの文章は、力を持ちます。」
わかったことを書くだけではメッセージを伝えるメッセンジャーボーイにしかならない。立て板に水では、力のないものになりやすい。「さらに考えて、つぎのわからなさまで到達して、そこから書くことが大事です。」という極意が披露される。
まっすぐに書いても伝わらないテーマもある。社会正義のような主題は真っ向から取り組んでも説教くさくて退屈で読み手に伝わらない。この本では、仕事に貴賎はないというテーマを書く際に、その仕事に誇りを持つ父親を娘の視点からドキュメンタリタッチで書いた記事が取り上げられている。するとテーマが嫌みなく自然にはいってくるのだ。
「「ほんとう」のことは、大事だし、それをめがけてしかヒトは生きられないが、しかし、その「ほんとう」のことは、笑い飛ばされる必要があるのです。そうでないと、「ほんとう」のことは、何ものもこれを否定できない僭主のような存在になってしまうでしょう。それは、「ほんとう」のこと自身の望まないことではないでしょうか。その僭主化をふせぐもの、そこに風穴をあけるものが、僕の考えではフィクションなのです。」
この講義が素晴らしいのは、このような極意を概念的な説明に終わらせず、プロの名文や学生の作例を通して、実物で示してくれるところだ。そして多くの書き手が陥りがちな罠にも警句を鳴らす。
たとえば、終わりに美辞麗句を書くな。著者は学生に作文を読んでこう指摘する。
「皆さんの文章、いつも、終り近くになると改行になるんです。気がついているかどうか、原稿が規定の枚数に近づくと、終了モードに入る。そして、最後、だいたい、「こういう世の中は、早く変えられないといけないと思う」か「明るい明日を信じて、なんとかやっていきたいものだ」か、「そんなことを思って暮らしている今日この頃である」かで終わる。 そして、この「まとめ」が、たとえそれまで個人の声を伝えようとしていても、それを台無しにしてしまう。」」
この本は深い。大学の講義を書籍化したものだが、情報伝達のための文章指導に終わっていない。プロの書き手として読ませる文章を追究している。文章を日々書いている人が上を目指すのために効きそう。ここで駄文を日々書き続けている私なんかは、ページをめくるたびにアイタタタと反省しまくりだ。
・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html
・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html
・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html
・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html
・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html
・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html
・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html
・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html
・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html
・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html
・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html
・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html
・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html
・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html
・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html
・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html
・さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

先日の忘年会議2009のゲストとして勝間和代さんと広瀬香美さんにトークセッションをしていただきました。高速回転の勝間さんと天然系の広瀬さんによるアドリブセッションはスピード感とユーモア、そしてしっかり情報量もいっぱいで、参加者一同引き込まれました。天性の才能とはこういうものか、と感じました。
勝間さんがメディアでおすすめされていた書籍にこの「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす 」があります。この本は、他人が真似することができない才能を見つけるための強力なツールです。
私はとても感動して(現実の会話で使う持ちネタとして、これまでブログに書いてこなかったのですが)、今年10冊以上も周囲の人にクチコミで買わせまくりました。そして試した人たちが、皆さん納得し高く評価していました。
本は読まなくていいのです。1冊にひとつ付属するIDを使ってWeb上のテスト「ストレングスファインダー」を受験してください。180問の質問に答えるとぞれぞれの強みが5つわかるというものです。書籍はその説明書にすぎません。
数十万人のビジネスパースンに対する調査データから、受験者の生来の資質を指摘するというもの。自分の美点を5つみつけてもらえます。そしてその美点がいかに素晴らしいものであるかを説明してくれます。読んでいてうれしくなります。
素晴らしいテストだと思い、2冊目を妻用に買いました。そして会社の共同経営者全員にも購入させて、お互いの資質を評価しあいました。転職する人たちにも買わせました。お互いの短所を直そうとするのではなく、長所を活かすことにしようね、という前向きなムードが作れます。
人生の転機にいる人はぜひやってみてください。
なお、私の強み分析の結果は、
着想、最上志向、戦略性、収集心、内省。
でした。
元吉本興業プロデューサー。年商1億円、年間300回以上の講演をする人気女性講師の「話し方のコツ」。そんな数字が示されているとつい計算してしまうのだが、基本は90分50万円で講演を引き受けているそうだ。
「わたしは、五分のネタを180本以上持っています。180本くらいのネタのストックがあると、その日のお客さんの状況や年齢層などによって、話しをアドリブで組み替えることもできます。」
60分話すのではなく「5分ネタを12本話す」と考えて5分ネタを徹底的に磨きあげろというのが著者の方法論である。特に磨くのは「ツカミ」である。これは3分である。漫才師が最初の3分で笑わせられなかったら放送されることはないのだから、と元吉本興業らしいノウハウを話す。
「「ツカミ」のネタは、必ず台本を書いてください。文字にして、推敲してください。アドリブに任せるのはあまりにも危険です。そしてそのネタを必ず自分でビデオ撮影して、客観的にその三分で心を奪われるかどうかをチェックしてください。」
そこまでやるのか...。
講演では5つのSが大切といい、
1 Story
2 Simple
3 Special
4 Speed
5 Smile
の5ポイントを挙げている。最後のSmileはお客さんを笑顔にするという意味である。ユーモアや笑いというのは、経営者向けの堅めの講演でも、実はかなり重要な要素だと思う。
成功体験を「誰でもできるスキル」に落とし込め、「うなずきくん」を探してその人を見て話せ、余韻を残すには3分のシメを考えろ、など、講演をブラッシュアップするための実践的な知恵が伝授される。講演料の決め方、プロフィールの書き方、マネージャーやエージェントとの付き合い方など、プロ講師のマネジメントノウハウもちゃんと書かれていて参考になる。タイトルに「はじめて」とあるが、普段講演をよく引き受けている人でも、学ぶところの多い本である。そしてこの本自体が、著者が理想とする講演のように大変わかりやすい構成だ。
この本は好きだなあ。全編に共感。
書店でぱらっとめくったページにあった文章にひかれた。
「クライアントでの会議で沈黙が3秒以上続いたら、広告営業が口火を切り、沈黙を破ること。 これは営業としてのマナーの問題です。」
ベテラン広告営業マンの著者が語るプロフェッショナルの流儀。
「もちろん、本来営業として一番良いのは、日々のコミュニケーションだけでアカウントを取り「戦わずして勝つ」ことです。その次に良いのが、プレゼンになったとしても「戦う前から自分たちの勝ちを確信できる状況」」に持っていけていること。「自分の会社にこの仕事が落ちてくる」という土壌がすでにできている状態です。」
広告営業は形のない物を売る。クライアント、メディア、クリエイティブなど関係者の調整が重要な仕事だ。ロジカルなだけではうまくいかない。ロジカルでありつつも、良好なコミュニケーションをベタに維持していくことが大切な世界。
「キャラで生きられるのは30まで」「嘘はいいが騙してはいけない」「勝敗は、プレゼンの前と後で決まる」「プレゼンで負けても、何か取ってくる」「企画書がなくても相手を説得する」など、行動力+交渉力+計算力=営業力。二十数年の経験から生まれた営業の50個のキーワード解説がある。見開きでひとつずつ形式で読みやすい。
この本は数年間営業を経験した人が読むと受け入れやすいのじゃないかと思う。一見、オーソドックスな箴言にもみえるが、奥が深い考察が多い。広告業界に限らず、あらゆる企画や営業の仕事をする人にとっての基本がある。
仕事を教えてくれる先輩がいないと感じている人に特にお勧め。
「今、この瞬間から、自分の行動すべてをマーケティングリサーチだと思ってみて、いつも通りの生活をしながら、ただほんの少し意識する。たとえ今は必要のないように思える情報もいつかきっと仕事に生きる場面があるはずです。」
共感しまくり。マーケティングは仕事と思ってやっている限りだめということだと思う。
・こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる

2001年から2006年まで日本コカ・コーラ代表取締役社長、2006年より取締役会長を務める"Mr.コカコーラ"魚谷雅彦氏直伝のマーケティング経営論。世界一のブランドを背負いながらも果敢にイノベーション創出に挑戦してきた同氏の話は、どんな学者や評論家の意見よりも、本物だ。本物である証拠に、論旨明快でわかりやすい。
新卒でライオンに入社した一人の若手マーケッターが、幾多の冒険と困難を乗り越えて、外資企業でトップに登りつめるまでの、経営者の履歴書としても読みどころが多い。常に現場を意識し、常識を疑い、逆境に燃える、そしてすべてを楽しむ、そんな生き方が魅力的だ。
日本コカ・コーラはグローバルな同グループの中でも異彩を放っている。単に炭酸飲料のコカ・コーラを販売するだけでなく、ジョージア、爽健美茶、紅茶花伝など日本独自のブランドを創造して、トップブランドに育て上げてきた輝かしい歴史を持つ。時代の精神を代弁するかのような「男のやすらぎ」「明日があるさ」といったCMキャンペーンは、何千万人もの日本人の共感と支持を得てきた。(男の安らぎキャンペーンは懸賞応募者4400万人!)。
日本コカ・コーラの製品を買う客は1日5000万人という。自動販売機で2000万人、スーパーコンビニで1600万人、ファストフードやレストランで900万人、残りがその他という内訳である。缶コーヒーのデザインや味を少し変えるだけでも、日本人の気分に影響を与えうる圧倒的ポジションに同社はいるのだ。そんな会社の舵取り役として著者は何を守り、何を変えようと考えたのか。
「実際、コカ・コーラという製品に関して言えば、「intrinsic value」=基本的な価値は100年以上変わっていないということになります。しかし、「extrinsic value」=付帯的情緒的な価値はどうか。コカ・コーラはまさにこれを時代に合わせて大きく変えてきたのです。」
同社は120年間、コーラの味は変えていないが、時代の変化に対応してブランドの中身を常に最適なものに変えてきた。では「付帯的情緒的ま価値」を創造するには?著者は「顧客は見えているか」「現場に足を運んでいるか」「飛びぬけた商品を展開しているか」という問いかけを忘れるなという。現場や対象に棲みこむことで、顧客の潜在的な心理やニーズ、インサイトを発見することがまず重要なのだ。
そして常に先取りで創造すること。部下に提案書に書いてほしいのは「何が新しい価値か。それだけ」。長たらしい"市場の背景""現状分析"が必要な企画ではお客の心を一瞬でとらえられない、だからだめだ、と教える。根っからの価値創造型マーケッターだ。
「市場の変化に対応することが重要だ、という話がよくされます。でも、それが意味しているのは、お客さまが変わったから、自分たちも変化する、というのではなく、何かそのヒントになるような現象を見て、自分たちからその変化を先取りするということです。 そうでなければ、お客さまは驚かない。もっと言えば、世の中にないものは生まれえない。自動車がないときに、自動車をつくった人がいたのです。ソフトドリンクがないときにコカ・コーラを作った人がいたのです。」
世界で最初に大西洋を横断したのはリンドバーグ、では2番目は誰?と著者は問う。一番手のイノベーターのブランド優位性は追随を許さないものがある。そういう意味でコカ・コーラはまさに王者だが、なお経営トップは新価値創造に挑戦しようとする。恐るべきマーケティングマインド、それが120年繁栄の原理なのだろう。
著者は現在は会長職と兼任して、ブランドヴィジョンという会社を創業し、マーケティングソリューションの事業を展開されているそうだ。NTTドコモなどを顧客に持つらしいが、日本政府やJALがブランド構築の仕事をここに頼むべきだなあ。
・ブランドヴィジョン
http://brandvision.co.jp/
読書というテーマ、10月27日の毎日新聞朝刊で、学校図書調査へのコメンテーターとして、私は写真入りのインタビュー記事を掲載していただきました。Webでもテキストだけ公開されています。
特集:第55回学校読書調査(その1) ブロガー・橋本大也さんに聞く
http://mainichi.jp/enta/book/news/20091027ddm010040173000c.html
私は基本的に面白いからたくさん読んでいるだけで、面白いと気づいていない若者に本の読み方を敢えて語るというのは難しいものです。それで、読書術についてこの本の紹介です。
文芸評論家、作家、元都立中央図書館長の加藤周一著。1962年初版、半世紀前に書かれた本だが内容はなお古びていない。端坐書見なんてとんでもない、本は寝て読めという著者が、ユーモアをたっぷり交えた文章で、楽しむ読書の極意を教える。
「私は学生のころから、本を持たずに外出することはほとんどなかったし、いまでもありません。いつどんなことでえらい人に「ちょっと待ってくれたまえ」とかなんとかいわれ、一時間待たせられることにならないともかぎりません。そういうときにいくら相手が偉い人でも、こちらに備えがなければいらいらしてきます。ところが懐から一巻の森鴎外(1862-1922)をとり出して読みだば、私ぼこれから会う人がたいていの偉い人でも、鴎外ほどではないのが普通です。待たせられるのが残念などころか、かえってその人が現われて、鴎外の語るところを中断されるのが残念なくらいになってきます。」
待たされる時間をポジティブな気持ちで読書時間にあてることで得した感じを味わう。この読書術には、本を必死になって読む、勉強のために読む、能力開発のために読むなんてシーンはほとんど登場しない。
このほか、いくつかのタイプ別の攻略法がある。
おそく読む「精読術」
はやく読む「速読術」
本を読まない「読書術」
外国語の本を読む「解読術」
新聞・雑誌を読む「看破術」 聖書(真理)と雑誌(事実)
むずかしい本を読む「読破術」
最後の「むずかしい本」というのは、難解さの攻略法ではなくて、むずかしい本なんて読むなという話である。むずかしく感じられる本というのは、著者自身が内容を十分に理解できていない「悪い本」か、いまの読者にとって「不必要な本」のどちらかなので、わからない本は読まないことが大切なのだよと説く。
読書をする人が減っているそうだが、読書の実利効用を説く方法と同時に、読むこと自体が快楽になる愉しい読書術こそ読書人口増加にはきっと重要である。
・読書論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-932.html
・読書について
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-913.html
・読書という体験
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-569.html
読書の歴史―あるいは読者の歴史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1047.html
「事務局とは、組織横断活動などの企画・運営を行う、目的先行・期間限定の機関である。ご存じの通り、事務局は参加メンバーの日程調整、司会進行、議事録発行などの雑務全般を引き受ける。つまりは裏方だ。本書では、この事務局が戦略的に動けば、組織を巧みに動かすことができることを伝えたい。」
組織の中で権限なしに人を動かす方法論を述べた本。著者は裏方から会社のあらゆる人を動かす能力を「事務局力」と定義する。まず大切なのは人の置かれた立場でその人の感情を想像し、社長や社員の課題意識を明解な言葉にすること。事務局の仕事はコンサルタントの仕事と本質的に近いものだと述べられている。
事務局自体には権限がないわけだから、人を心で動かさざるをえない。人を動かすには北風よりも太陽だ。著者はこういう。目立たない雪かき仕事を進んでするような人になれ →30分くらいでやれる仕事でも相当感謝されるものだ →実は目立たない仕事をしている人ほど目立つものだ、と、性善説と確信犯を掛け合わせたような実践的なノウハウが論じられている。
・「説得して向かわせるのではなく、そちらに向かってしまうような状況をつくっておく」
・「意思決定者に花を持たせる」
・「置き石、水やり、待ち伏せ」
・事務局力は、効果的な「立ち位置をとること(ポジショニング)」がすべて、
など事務局力の秘訣や、
1 ケアするメール
2 アガペー(神の愛)モード
3 鍋奉行ホワイトボード
4 付箋ワークセッション
5 内職プレゼンテーション
6 あこがれベンチマーキング
7 あとづけバイオグラフィー
という7つの仕掛けが解説されている。
人をいい気持にさせて動かす。そういえば心当たりがありますよ、私は。
著者の野村恭彦氏は富士ゼロックスのフューチャーセンターのプロデューサーである。このプロジェクトは先日、2009年度 グッドデザイン賞を受賞した。下記ページに概要と受賞理由があるのだが、この写真のど真ん中に写っているのは、実は私である。
・フューチャーセンター・サービス
http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35596
私はこのプロジェクトの多数の参加者のうちの一人にすぎないのだが、毎回、野村氏らの事務局に乗せられて、いい気分になり、写真のように調子に乗って相当しゃべっている。これだけ見たら私は司会のようだ(笑)。そうか、これだけのノウハウが背後にあったのか、そりゃ踊らされるよなあ、仕方ないよなあ、と妙に納得した。
大組織の中で、確信犯的に戦略的な裏方になりたい人におすすめの一冊。
創業125年の老舗大企業 古河電工。人事総務部門の担当者とコンサルティング会社のコンサルタントが二人で書いた業務革新の一大プロジェクトの回顧ノンフィクション。構成のアイデアが素晴らしい。同じ場面を担当者の視点と、コンサルタントの視点が交互に描いている。それぞれの言動がそのとき相手の立場からはどのように見えていたか、そして何を考えていたかが明らかになる。
コンサル会社側は得意のファシリテーションで円滑に進めるべく準備万端で挑んだ会議でも、クライアント側では「なんで、ひとつの会議に三人もコンサルタントがいるんだ?これじゃあお金かかるよなぁ」などと思っていたりもするわけだ。現場目線の素直な心理描写から、ビジネスの発注側、受注側の両者の心の動きが再現されている。
古河電工は09年3月時点で従業員数3万7427人の大企業。多数の工場と子会社を抱える。多くは独自に発達してきた人事制度や給与体系を持つ。残業する社員には栄養補給にパンを配るなどという時代錯誤な仕組みもあるが、労組の反対もあって容易にはやめられない。120年間も個別最適でやってきた大組織に、業務集約センターを設立して効率化をはかろうというのが本プロジェクトの目的。業務改革やITシステム導入は、当然のことながら各方面からの抵抗も多い。
著者らプロジェクトメンバー達は2300回の会議、3万通のメール、111のシステムとの連携、年間220日の出張で、全国の部署と交渉と調整を行って理解を得ながら、ついにシステム稼働にこぎ着ける。5年間の長大な人間ドラマである。
その成功に至るプロセスでコンサルタントにも社員にも、スーパーマン的な人物は一人も出てこない。状況は「当たり前のことを当たり前じゃないレベルでやりきる」という担当者の言葉が表している。徹底したコミュニケーションと信頼構築によって、大企業の不可能を可能にしていく。
"ファシリテーション"というと会議の盛り上げ方みたいな小手先の技術と誤解しがちであるが、本書のテーマはもっと長期的で本質的な組織論である。クライアントとコンサルタントの幸福論である。組織でビジネスをする人、プロジェクトをやる人はぜひ読むと良いと思う。いっぱい気づきがあるはず。
「たとえば、「○○鉄道の料金が上がることになりました」という原稿が出稿されてきますと、キャスターの私は、「○○鉄道をご利用の皆さん、料金が値上がりしますよ」と言い換えるのです。」「「誰か警察に連絡してください」では誰も通報してくれないが「あなた、警察に連絡してください」なら動く。」
明解な説明に定評のある池上 彰氏が、テレビの現場で培った情報伝達ノウハウを公開する新書。わかりやすい説明のルール「聞き手に地図を」「対象化」「階層化」というステップを、署名に偽り無く実にわかりやすく説明する内容。広く応用が効きそうな方法論が多く、ビジネスプレゼンの参考にもなった。
たとえば「相手に自分が体験したことを面白く伝えたい。自分の気持ちをわかってほしい。そんなとき、まず、「ねえ、ねえ、大変」という言葉から始まる文章を考えましょう。文章ができあがったら、冒頭の「ねえ、ねえ、大変」という言葉は削除してしまいます。そうすると、勢いのある、説得力のある文章がつくれます。」という方法。
これは平板な話に勢いをつけるのに効きそうだ。わかりやすいけどつまらないというのも問題だから、「面白い」は重要なのだ。そうやって冒頭でつかんでおいて、最後にまたつかみネタに戻ると話がきれいにまとまるというアドバイスもある。数十秒から数分で印象的な話をするための秘訣が満載である。
極めつけの極意だなと思うのが「接続詞を使わない」。これは確かに有効なテクニックのように思うのだが、実際には組み合わせる素材が豊富に揃っていないとできない技だと思う。素材同士をくっつけようとするから接着剤としての接続詞が必要になるのであって、並べて話せば自然とつながる素材がいっぱいあれば不要だ。著者は大量の情報収集でも有名な人物。イディオムやネタを貯蔵しておく日常の心がけもまたわかりやすさのために重要なことのように思う。
元ハーバード・ビジネス・スクール教授でコンサルティング会社経営のデービッド・メイスターの新刊。
でぶスモーカー症候群(短期的誘惑や満足感に負けてためになるとわかっていることをしない)を克服し、成功するための方法論。意欲や決意をどう引き出すかの組織論でもある。著者はプロフェッショナル・サービス・ファーム(PSF)研究の世界的な権威。PSFとは、コンサルティング、会計・法律事務所、建築、エンジニアリング、ITサービスなどの専門分野で、物理的な製品を作るのではなく、人々の才能を使ってアイデアと価値を生み出していく、ナレッジーワーカーの組織のことだ。
プロフェッショナルとはいえ一人一人は弱い人間である。目標達成の報酬は将来にあるが、我慢や不快や規律は目の前にある。だから、わかっちゃいるけどやめられない、とか、明日やることにしよう、ということになる。そうした「でぶスモーカー症候群」を克服することが、ナレッジワーカー組織の生産性を飛躍的に高めることに繋がるのだ。プロ意識を持つ人間とその集団の心理に対して深い洞察にもとづく鋭いアドバイスが続く。
「私たちは自分に甘い。やましさを抱いて生きることはたやすい。かなり強い罪悪感でさえ、人を変えるとはかぎらない。ところが恥ずかしさとなると、たとえそれがわずかでも効果は絶大である。」
「人に弱みを認めさせ、改善させるのに最悪の方法は、その人を批判することである。」
「人はあなたとつき合いたいと思うのは、あなたに好印象を抱いているからではない。あなたといるとき、自分に好印象を抱くからこそいっしょにいたいと思うのだ。」
チームワークの本質を突いた視点に頷かされる。PSFの人材にとって、問題の解決法を見出すことはやさしい。大抵は自分がどうすべきか理性的にわかっているが、それを実行しようとするときの実践の知恵が不足している。ダイエットが続かない、タバコをやめられないという状況にそっくりなのだ。
PSFのケースから抽出された方法論がたくさん紹介されている。
「むしろ、誰かを改善の道へと誘いこみたいなら、将来に控えた仕事の全体像にはまったく触れないで、目前の小さな改善のみに焦点を当てるべきだ。すぐれたコーチはどんな分野の人でもそうしている。」
年寄りは自分ができることを若手ができないのを見ると、ついつい全体像をしゃべって説教みたいになりがちだ。だが、それでは教える方の自己満足である。自主性で楽しみながら発見する道へと、自然に導く方がずっと立派なボスなのだ。メイスター自身が受けて感動したメンターの教え方("このリストに電話してみると良いよ")も具体的に示されていて、わかりやすい。
なお巻末には知識経営の専門家で、多摩大学大学院教授の紺野登氏が「知識時代におけるリーダーの実践経営学」として、本書を含むデービット・メイスターの過去の仕事を振り返っている。時代は製造業からサービス業へ、知識労働を通じて経済的価値を生み出す企業の時代へと向かっている。そんな中でメイスターが探究してきたPSF型組織は一部の業種のものではなく、未来の創造的な企業の姿としてとらえなおす価値のあるモデルなのである。
・脱「でぶスモーカー」の仕事術 公式サポートサイト
http://www.knowledgeinnovation.org/publi/Maister_book.html
何故、今PSFなのか?などデービット・メイスターと紺野教授の対談。
カメラ好きでベンチャー精神の人は絶対に読もう。面白すぎる。
著者は1997年に、たったひとりで世界最小のカメラメーカー「安原製作所」を設立し、「安原一式」「秋月」という名前のフィルムカメラ2機種を世に送り出した伝説の人。元京セラ出身のエンジニアなので技術は分かったが、経営は素人、カネはないし、会社を離れたら信用もない。ないないずくしの状態から、過去に例がない零細カメラメーカーを興していく起業物語。
「今は良いメーカーの良い製品だけが存在している時代だ。人の生き死にに関わる製品ならそうあるべきだが、それ以外ならあやしいメーカーのあやしい製品があったほうが面白いと考えるのは私だけだろうか。安物の服を買って洗濯したらばらばらになった。これを友達に話すネタができたと考えるのは心が豊かなことではないだろうか。」
ユニークな会社であるが故にマスコミには200回以上取り上げられ「一式」は最初の1ヶ月でネット予約3000台が入った。定価は一台5万5000円。予約金5000円をとってひやかしを防いだ。開発と中国の契約工場での量産は難航し3て、すべて納品するのに2年もかかったという。その苦労から学んで2台目の「秋月」をリリースするが、結局、マニアックなフィルムのレンジファインダーカメラでは、採算は合わなかったらしくカメラ生産の事業は2004年に撤退する。この本はその全プロセスの回顧録なのだ。
カメラ職人ならではのカメラ評論が楽しい。
「昔のレンズは味のある写りをする。物は言いようで、「味」というものの多くは工業的に言えば欠点のことである。コンピュータが無い時代に高度な光学設計ができるはずがなく、レンズの製造技術も今から考えるとひどいものだ。たとえ元は良いレンズであっても製造されてから何十年も経っているものが性能を維持しているとは考えられない。ただレンズの良し悪しを評価するのは最終的に人間の感性なので、その人が良いと思えばそれで良い。」
と味のあるクラシックレンズの幻想を打ち砕き、
「第一そのドイツのカメラ業界は日本に全く歯が立たないから衰退したわけで、滅ぼした側の日本人がいまだにドイツの光学製品を信仰しているのはある意味笑い話だ。」
と、ドイツ信仰を笑い飛ばす。
「私は職業柄友人にプロのカメラマンが沢山いるが、彼らは必要な物しか買わないし、あまり買い換えず長く使う。商売の相手としてはどんどん買ってくれるカメラマニアの方が有り難かったことも本音である。」
マニア向けの製品を幻想と喝破しつつも、開発者として誠実にその幻想につきあう物作りをしていたのが、一時的にせよ、ブームを作ることができた理由なのだろう。
ところで著者は小さなメーカーが存在することがフィルムカメラでさえ難しかったが「デジカメでは全く無理」と書いているのだが、2009年現在、少人数の家電ベンチャーが、新製品をリリースしようとしている。安原製作所が果たせなかった夢を、Cerevoはかなえることができるだろうか。
・Cerevo
http://cerevo.com/
カメラファンとして発売がとても楽しみだ。両社の対談も実現されたらいいなあ。













