Books-Management: 2006年6月アーカイブ

・ビジョナリーカンパニー【特別編】
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全米200万部のベストセラー「ビジョナリーカンパニー2」の付属論文。

前著で語られた偉大な企業組織とは何かというテーマを、医療、教育、役所、NPOなどの社会セクターに適用する。非営利組織においてもビジョナリーカンパニーの「偉大な」組織への飛躍の法則ははたらいていることを説明する。

・ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
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目次

一 偉大さの定義 経営指標が使えないなかで、偉大さを判断する
二 第五水準のリーダーシップ 分散型組織構造で成功を収める
三 最初に人を選ぶ 適切な人をバスに乗せる
四 針鼠の概念 利益動機のないなかで、経済的原動力を見直す
五 弾み車を回す ブランドを構築して勢いをつける

社会セクターの偉大さは金銭的指標では測れない。企業にとってはコストや利益の数字が偉大さを測るインプットであり、アウトプットであるが、社会セクターでは金銭はインプットではあってもアウトプットではないからだ。

社会セクターでは、投資した資本に対しどれだけの利益が得られたかではなく、使った資源に対してどれほど効率的に使命を達成し、社会に際立った影響を与えたかで偉大さを測るべきだという。たとえば楽団であれば、年間のスタンディングオベーションの数、演奏できる高度な演奏技術を必要とする楽曲の数、音楽祭に招かれた回数、チケットの需要。社会セクターの実績測定は、経営指標のように数量化できる必要はなく、厳然たる質的事実を集めて証拠とする弁護士のような仕事となる。

人材の流動性が企業組織よりも小さい社会セクターでは何より、優秀な人材を選別し「バスに乗せる」ことが大切になる。重要なのは報酬をどう支払うか(あるいは、いくら支払うか)ではなく、だれに支払うのか(誰がバスに乗っているのか)なのである。偉大な社会セクターがどのようにして、意識が高く能力のある一級の人材を集めているかの実例がいくつか示される。

そして志の高いビジョンと経済的原動力の関係、組織を際立たせるブランド構築法など、ビジョナリーカンパニーのやり方を、社会セクターの経営に最後まで翻訳していく。偉大な組織のあり方は、どちらの世界にも共通であり、普遍性を持つということがわかる。

ドラッカーの「非営利組織の経営」にも通じる部分が多くあった。要するに高い志と優秀さが鍵なのだ。こちらも学生時代にNPOの支部代表をしていたとき、読んで感銘した。NPO活動に従事する人にはどちらもおすすめ。

私が所属している団体がNPO法人になって、法人の理事になるので、読み直した次第。
・非営利組織の経営―原理と実践
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・通勤電車で寝てはいけない!―通勤電車と成功の不思議な法則
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先日、朝の通勤電車の話。

老夫婦が満員の電車に乗っていた。私が乗り込んだ駅で、ちょうど席がひとつ空いて、おばあさんは座ることができたようだった。だから私はおじいさんの方と並んでつり革につかまった。

おじいさんの前には若いサラリーマンが足を投げ出して座っていた。席を譲る気はないらしいが、後ろめたいのか、自分の携帯をじっと見ている。次の駅を過ぎた頃から、おじいさんがサラリーマンに、「足をひっこめろ、ばかもん」と仕切りに怒り始めた。足を蹴飛ばしている。

おじいさんはかなり頑丈そうな体格で、サラリーマンの方がひ弱そうにも見えた。この場合、席を譲る、譲らないは、飽くまで好意であって、最初に私が違和感を覚えたのは、譲るのを当然とでも言っているような、おじいさんの態度なのだった。

おじいさんの罵声は次第に大きくなっていく。「聞いているのかお前」。サラリーマンは携帯の画面に逃げ込んで一層の無視をきめていた。席を譲らせるにしてはおじいさんのやり方、強引である。まあ、しょうがないよね、とサラリーマンに同情しかけたとき、おばあさんがすっと席を立った。

おばあさんが席を譲った相手は、おじいさんではなく、その隣、私の視界の外にいた、見るからに身重の妊婦さんだった。「ありがとうございます」と本当にうれしそうに譲られた席に座った。並んでつり革につかまる老夫婦と私と、足を投げ出し、携帯を見つめるサラリーマン。それを睨みつけているおじいさん。優しく妊婦に何ヶ月なの?と話しかけるおばあさん。

そう、おじいさんが怒っていたのは、サラリーマンの斜め前にしんどそうに立っていた妊婦さんに席を譲らない行為に対して、だったのだ。私はおじいさんに当初抱いた反感が申し訳なくなり、次の駅で私の前の席が空いたら、絶対に老夫婦に座ってもらおうと思ったのであった。

ところが次の駅で、老夫婦も妊婦もサラリーマンも降車していった。一緒に降車するのが決まりが悪いのか、サラリーマンは老夫婦がドアから出るのを見届けてから、慌てて自分も降りていった。

その空いた席に複雑な気分で私が腰掛けた。

そうして広げたのがこの本であった。通勤時間をコストではなく自己投資として有意義に使え、そのために敢えて通勤1時間以上かかる遠くに住んだらいい、そして電車の中ではこんなことができると、薦める本である。


片道一時間としても、一週間で十時間、一年だと約五百時間もの時間になる。この時間をただぼーっと過ごすのか自分を高める時間にするのか。この通勤という”継続の力”はあなどれない。寝てなどいられないはずである

この計算は私もしたことがあった。私の試算では、500時間は8時間労働ならば62.5日分に相当する。週休二日制ならばざっと3ヶ月の仕事量である。人月150万円のシステムエンジニアの仕事に換算するとざっと450万円。なにかビジネスを始められそうな投資に相当する。数人の長距離通勤仲間を集めれば「電車法人」が設立できるかもしれない。

問題は細切れの時間をどう集約するかなのだが、この本では、1日のシミュレーションや、情報収集、読書と勉強にあてたらよいとアドバイスがあった。私もかなり通勤時間活用派なので、著者の実践とこころがけには共感する部分が多かった。

満員電車で座れない日は、冒頭に紹介したような人間観察と、吊り広告の文章分析をするのもいいと思う。人間観察は少なくともブログのネタになるし、気になる広告キャッチコピーを集めておけば、企画立案に応用できる。。

やっぱり、寝てはいけない。

関連:

・通勤電車で座る技術!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003233.html

以前に書評した同テーマの本。この書評、その後、日経新聞記者の目に留まり、「橋本さん固有のワザは他にないのですか?」と取材され、後日にITコンサルタントの橋本さんのアイデアとして朝刊のコラム内で紹介されたりした。通勤ワザを通勤時間に考えることで通勤コンサルタントになるという道もあったりするかも。

・仕事は、かけ算。
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日々、楽しみにしているメールマガジンがある。

これまで人に教えず自分だけで楽しんでいたのだが、本になってしまったので、しぶしぶ紹介する。

・メールマガジン 平成・進化論。
http://www.2nd-stage.jp/

実はこのメールマガジンはまぐまぐ発行部数第1位であって、知る人ぞ知るというわけではない上に、この本はアマゾンでは6月7日発売直後に総合ランキング1位にもなった。

・『まぐまぐ!』週間総合ランキング
http://www.mag2.com/ranking/rankingw.html
週間総合ランキング

(2006/06/07 21:56:40 現在のデータ)

1位  151580部 1億稼いだ■最強方程式を毎日10秒で⇒平成・進化論。
2位  140168部 ネットで収入と自由な時間を手に入れる方法
3位  135068部  セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術

著者の鮒谷さんは、失業から3年で広告代理店など3社を起業し収入を20倍にした経験を持つ。そのノウハウを、メールマガジンで配信したところ、爆発的な人気を呼んでいる。今話題の”持続可能な”という点でも2年半以上継続で1000号を超えている。この本はその1000号から読者に好評だった約60本を選び編集を加えたエッセンスである。

各エッセンスは4ページなのでテンポよく読める。共感と感銘するページが多くて、うなずきながら読んだ。気づかされる部分も多かった。

たとえば次の3箇所。

1 「泣きたくなるほどの辛い経験も、「これは生涯にわたってのネタになる」と思えば、成長の糧に早変わりする。」の章から引用。


実際、倒産ネタは、もう何度もメルマガのネタとして使わせていただいています。ダメな会社の特徴、倒産したときの身の振り方、失業時代の時間の使い方......。ネタがなくて困ったときも、この倒産劇を思い出すと、次から次へと書きたいことがあふれ出してきます。この倒産ネタはまさに打ち出の小槌で、角度を変えることで死ぬまで何度でも使える私の一生の財産なのです。

この精神は見習いたい。

2 「「明日からやろう」は禁句にして「いますぐやる」と自分に言いきかせる。」の章から引用。


真顔で言うのはちょっと恥ずかしいのですが、じつは私、
「すぐやる共和国の大統領なのです」
を務めています。
<中略>

なかなか行動に移せないでいるときに「あ、俺はすぐやる共和国の大統領だった」と一言つぶやいてみると、不思議なことにその気になって、すぐに体が動くのです。

3 「夢を言葉にして、周囲に決意表明を。」 の章から引用。


そんな怠け者がなぜメルマガの発行で変わったのか。それはメルマガで格好をつけて、「勉強は大切だ」「時間管理を厳密に行おう」なんて言い切ってしまったがために、自分もその言葉に引きずられて、やらざるを得なくなってしまったからなのです。

ブログに置き換えると私も似たところがあるなあと共感。

この本が気に入ったら、メールマガジンをライブで読むのがおすすめ。鮒谷さん流にいうと「自分の思考を瞬間的に切り取る言葉のベスト」でメールマガジンが構成されている。意味が圧縮されているので読みやすいし、改行でリズムをとっている。また広告と本文の融合が見事で、大量の広告がむしろ楽しい。ネットで売れる文章術の見本としても参考になる。