Books-Management: 2007年8月アーカイブ

・ダメな議論―論理思考で見抜く
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「人はなぜ特定の考え方を正しいと思うのか」に関する考察。よく考えれば間違いがわかるのに、常識や空気にとらわれて、根拠のないダメな議論を受け入れてしまう理由について、チェックポイントと対策を示す。

一番、気になったのは読書について。

著者はありがちな読書についてこう述べている。

「私たちは、「自分の知らないことを知る」本を探しながら「自分の知っている(漠然と感じている)ことが書いてある」本を購入し、読書を「自分の役に立てる」ことを目標としつつ、「自分の思想・行動に何ら影響のない(読んでも読まなくても変わらない)」本を読んでいます。つまりは、自分が日頃から抱いている「信仰」にお墨つきを与えてくれる、「自分が読んで心地よいと感じる」本を選んでいるにすぎないというわけです。」

たとえば高所得の成功者は、成功するかどうかは自分の才能・努力によって決まるという考え方を支持するが、低所得者層は運によって決まるという考え方への支持が多いという。「実際に成功している人はそれが自分の実力によるものだと思いたがるのに対し、成功していない人はそれが自分の実力のせいだと思いたくないという心理によります。」

科学的に検証が必要な話題でない限り、私たちは信じたいものを信じてしまう。常識や空気によって「まぁ、ホントは間違いかもしれないけど、どっちでもいいや」や「何となく常識なことは何となく正しいと思っておくのが賢い」という経験則、処世術へ流れてしまう。

これは私もよく実感する。ときどき食事や飲み会などでマイ箸を持ち歩いている人がいる。割りばしが環境によくないからという理由なわけである。自治体や企業レベルで割りばしを使わないようにしよう運動もある。しかし、実際には割りばしが環境に与える影響はほとんどないらしいことを、私は知っている。環境を気にするのは良いことだし、マイ箸を持ち歩く害はないから、私が敢えてその人に「それって意味ないですよ」と言う必要はない。だから言わない。そうすると、割りばしは環境に悪いという説は、「常識」のまま残っていってしまう。

保守の力というのは多くの場合、こうした、信じたいものを信じる心理と、「まぁ、どっちでもいいや」の心理によって形成されていくのだろう。こういう決め方をこの本はダメな議論と呼び、

・定義の誤解・失敗はないか
・無内容または反証不可能な言説
・難解な理論の不安定な結論
・単純なデータ観察で否定されないか
・比喩と例話に支えられた主張

などの見抜き方を教えている。有名な評論家たちのダメな議論の実例もたっぷりで、面白く、ためになる本だった。

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