Books-Management: 2009年1月アーカイブ

板書の極意

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・板書の極意
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本書の板書は学校で生徒がノートに写すために先生が書く黒板の話ではない。ビジネスシーンで、聴いて、書いて、考える、そして協働をうながすための「板書」=ファシリテーショングラフィックである。だからファシリテーション・グラフィッカーはみんなの話す内容を書く役割であり、受け身の記録係「書記」ではない。

「文字を囲んだり、矢印を使ったり、これは誰でもごく自然に、あたりまえのようにやっていることですが、その意義が「話の展開を見せるためにある」と考えてやれるようになると、今まで以上にわかりやすく、打ち合わせの場をリアルタイムに映し出す表現方法となります。」

よくつかうテンプレート、囲みや矢印、簡単なイラストのサンプル、アイデアがいっぱい紹介されている。線を引いて升目をつくり日付を書き込んで即席カレンダーにするというワザを早速使ってみた。ホワイトボード上で予定をつくるのが簡単になった。みんなの話を絵や図にするパターンをいくつか知っているだけで、自然とその人物は議論をリードしやすくなる。そして何より絵にするために人の話を聞くようになる。

「実は、人の話を聞きながら、自分の話したいことを考えている間は、本当に相手が言いたいことが頭に入っているとは言えません。ひと呼吸入れるつもりで、まずは人の喋っていることに集中して意識を向けてみる。板書の極意は、この「聴く」姿勢にあります。」
私はある大企業の研修に講師として参加したときに、プロのグラフィックファシリテーターの人と仕事をしたことがある。グループのディスカッション内容がリアルタイムにわかりやすい絵や図に変換されていく高度な技術に参加者は感嘆していた。自分が話すことがそのまま絵にしてもらえるのは楽しいし、実のあることを話そうという気にもなる。意見がいっぱい涌いて出てきた。

・モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション
http://gihyo.jp/lifestyle/serial/01/graphic-facilitation

・グラフィックファシリテーション
http://www.graphic-facilitation.jp/

そのプロのグラフィックファシリテータ ゆにさんのサイト。プロのワザを見ることができる。

論理より感性で組織をリードしたい人に向いているメソッドだと思う。

・読書について
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読書家と文筆家に向けられた厳しい箴言の書。19世紀の哲学者ショウペンハウエルによる古典。

「1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく。」

ショウペンハウエルは人間には思索向きの頭脳と読書向きの頭脳があるという。思索とは自らの思想体系でものを自主的に考える精神の深い行為だが、読書は思索の代用品であり、他人の思索の跡をなぞるだけの浅い行為に過ぎないのだと指摘する。

「即ち精神が代用品になれて事柄そのものの忘却に陥るのを防ぎ、すでに他人の踏み固めた道になれきって、その思索のあとを負うあまり、自らの思索の道から遠ざかるのを防ぐためには、多読を慎むべきである。かりにも読書のために、現実の世界に対する注視を避けるようなことがあってはならない。」

思索によって獲得した知識は自身の思想体系に固く併合されて精神に確固たる位置を占める真理になる。だが読書によって流し込んだだけの雑多な知識は、精神の血肉にならないばかりか、思想の混乱を招く弊害を持つ。だからこそ本を読みすぎるのは愚かな行為なのだ。

「ほとんどの思想は、思索の結果、その思想にたどりついた人にとってのみ価値を持つ。」。私は日々多読に耽っているわけで、大変に耳が痛い内容である。思索の時間をとれないほど読書をしてはいけないとは分かりつつも、読書の楽しさに負けてしまう自分がいる。

「さらに読書にはもう一つむずかしい条件が加わる。すなわち、紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。」

こうして多読に耽る読者を厳しく戒めた後、ショウペンハウエルの矛先はさらに著者や編集者、批評家らが結託して多読文化を作り上げる出版界に向けられる。彼らこそ諸悪の根源だと痛烈に批判する。

「現代の文筆家、すなわち、パンがめあての執筆者、濫作家たちが時代のよき趣味、真の教養に対して企てた謀反は成功した。それは奸智にたけた悪事ではあったが、めざましいものであった。すなわち彼らは、上流社会全体の手綱をとることに成功したのであるが、その秘訣は時代遅れにならない読書法に励むように、つまりいつも皆で同じ新しいものを読んで、会合の際の話題にこと欠かないように、上品な連中を訓練したことである。」

金や地位欲しさのために著述家達は目新しいだけの無価値の内容で新刊本を濫発し、批評家と結託して互いに称賛することで、読まなければ時代遅れになるかのようなムードを作り上げていく。ほとんどの新刊本に価値はないから、読者はもっと古典を読むべきだとショウペンハウエルは勧めている。

深いなあ。とりあえず岩波文庫の古典を10冊注文した(そしてまた多読に...)。

・はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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ストレスなくパッパと仕事を片付けるための方法論"GTD"の入門書。百式管理人が監修で大変読みやすい翻訳になった。ライフハックに興味のある人は必読である。

GTDメソッドの要点が冒頭で要約されている。

・頭の中の「気になること」を"すべて"頭の外に追い出そう
・それらすべての「気になること」について、求めるべき結果と次にとるべき行動を決めよう
・そうして決めた、とるべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう

GTDではその第1プロセス=「気になること」の徹底的な棚卸しが重要だ。自分が気になることを網羅するのは意外に難しい作業である。あれもやりたい、これもやりたい、時間があったらさらにあっちも、などと発想を広げていくときりがないような気がしてくる。そのほかにどんなカテゴリがありましたっけ?と悩んで作業が止まることも多い。

そのような状況を打破するのにこの本に掲載された「済んでいないことを思い出すためのトリガーリスト」が素晴らしく役立つ。気になることを網羅的に洗い出すための、膨大な数のカテゴリとキーワードがあるので、このページをコピーして半日くらい考えれば念願の網羅リストをつくることができる。これはやった人の人生にとって結構な財産になると思う。

「頭の中に「気になること」を保存しておくことこそがムダなのである」

こうして頭がすっきりしたら、そのリストをinboxにいれて(メールの受信箱みたいなもの)分類する。具体的には行動を起こす必要がない「ゴミ箱」「保留」「資料」、行動を起こす必要がある「プロジェクトリスト」「プロジェクトの参考情報」「カレンダー」「次に取るべき行動のリスト」「連絡待ちのリスト」の8つのカテゴリにおさめていく。

具体的なコツとして、状況に応じた行動のリスト分類という考え方が紹介されていた。これはカレンダー管理一辺倒の私にとって、今日からでも実践してみたいと思った発見であった。

「これは長年の経験からたどりついた結論だが。「時間が出来たときにやるべき行動」のリマインダーは、その行動に必要な"状況"で分けておくのがいちばん効率的である。具体的には、実行に必要な道具や場所、人ごとに分類するわけだ。たとえば、パソコンが使える状況でないとできない行動は、「@パソコン」のリストに分類する。外出先でやることならば「@買い物・雑用」のリストに入れる。共同経営者のエミリーと直接話す必要があるなら、「@エミリー」のファイルやリストに入れておくといい。」

GTDはなにか特別なツールを必要とする方法論ではない。大量の仕事をがしがしさばいていくための普遍的な考え方である。だからこそ実現するには各プロセスにおける具体的なノウハウが求められる。この本にはそうした実践者のためのコツと小技が本文中に大量に散りばめられている。

シャア専用の如く3倍速くなりたい人に。

情報力

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・情報力
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大学・大学院での講義内容をベースにして、個人の情報力を極めるための本を書きました。パソコンをフル活用した新しい情報の活用ノウハウと50以上の思考支援ツールの紹介です。

私は学生時代から、物を調べる仕事に従事してきました。

1 複数のベンチャー企業での創業役員体験
2 企業や大学、官公庁の調査プロジェクトでの経験
3 ベンチャーキャピタリストとして投資の判断をする側の経験

これらの経験から学んだことを今回一冊にまとめてみました。

私はこの本の冒頭で"ハイパー個人"という言葉を造りました。デジタルとネットワークで情報処理能力を飛躍的に増大させた人を意味します。

圧倒的に大量の情報の中から自分の意志決定に必要な適合情報を抽出し、分析して仕事と生活に役立てること。それがハイパー個人のための情報術です。

この本には総論の後、情報収集、情報整理、情報分析、情報活用の4つの章があります。それぞれのフェイズで必要な考え方とやり方を本書に書きました。

情報収集    情報整理   情報分析   情報活用
データ  →  情報  →  知識  →  知恵

情報は広げて集めたら収束させる必要があります。膨大な量の断片的なデータを収集し、整理することで情報に変え、分析を加えて知識に昇華し、汎用的に使える知恵にまで高めることが大切と考えます。それをどうやるかというのが主な話です。

本の内容をもうすこし詳しく紹介すると

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・Evernote、Dropbox、FrieveEditor、FreeMind、OneNote、iEditなど思考支援アプリの使い方
・欲しい情報がすぐに見つかる検索テクニック
・速読術を使わずに速く読むハイパー読書術
・メモや発想を外部脳に保存するノウハウ
・ネット上にあなた専用私設顧問団を持つコツ
・集合知を機能させるハイパー・フェルミ推定

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読書論やブログ論についても触れました。

定価は980円。見ての通りイラストたっぷりで読みやすくしあげました。コンパクトで1、2時間で読めてしまう本ですので、ぜひ情報力増強ののドーピング剤として一度お試しください。

よろしくお願いします。

著者 橋本大也

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