Books-Management: 2010年10月アーカイブ

・創造性とは何か
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KJ法の創始者 川喜田二郎教授による創造性論。大著から創造性に関する一章だけを抜粋した新書なので読みやすい。

著者は創造行為を保守と創造の循環としてとらえる。保守に循環しないものは創造ではなくて単なる破壊なのだ。ただし偉大な創造は循環のスケールが大きいので破壊のようにみえることがあるともいう。

創造とは非合理を世の中に認めさせることという捉え方もしている。知られていることから論理的に導かれるような当たり前のことは創造ではない。非合理さを実践で納得させることこそ創造なのだ。それを混沌→矛盾葛藤→本然というプロセスであらわしている。一見非合理だと思うものが矛盾葛藤を経て、まさにそれこそ自然だと思えるように至るという意味だ。

仕事で創造性を発揮する条件しては3つ

 1 自発性 2 モデルのなさ 3 切実性

を挙げている。前例のないことへの主体的な挑戦が創造につながる。ここで面白いと思ったのが、著者の主体性の考え方だ。

「主体性については、よく人に強いられてやるのは主体的でないと言われるが、それは一般論であって、本当は全体状況が自分にやれと迫るから、やらざるをえないというほうが、じつは真に主体的だと私は思うのである。」

自分はこれがやりたいからやるというレベルじゃ、まだまだなのだ。祖国を救えという天の声に立ちあがったジャンヌダルクのように絶対的受身のほうが高い主体性と考えるのである。天命、運命、使命感を切実に感じることが、イノベーションにつながる。坂本龍馬は時代状況の中で輝いたというわけか。

・えっ!? ビジネスで成功し続けるためのサプライズ・マーケティング

「サプライズは現代のビジネスにおいて最も重要な要素である」

サプライズマーケティングのパイオニアで、世界最大のコメディー・フェスティバルを運営し、テレビプロデューサーとしても活躍する現エアボーン・モバイル社長のアンディー・ナルマン著。言葉を失う驚きの瞬間=POW!モーメントをプロデュースして、ビジネスを成功させる秘訣を語る。

ビジネスにおいて"サプライズを用意しましょう"というとき、穏健なのと過激なのと2種類ある。消費者が設定した基準よりも高機能とか低価格でしたというのが、予測可能で穏健なサプライズ(WOW)。この本が指南するのは、いきなりクルマをタダで配るとか、ずっと男だと思っていたら実は女でした、みたいな消費者が思わず言葉を失う衝撃のことだ。

POW!は、

WOW=グレードアップ、期待を超えること
POW!=クォンタム・リープ(量子的飛躍)、まったくの衝撃

と定義され「「WOW」がエコノミークラスからファーストクラスへの移動だとすれば、サプライズは何キロも先へのテレポーテーションだ。」と表現されている。

もちろん絶句させるだけではだめで、

驚き(サプライズ)─── 喜びをもたらすコンスタントな極限の拡大

であるべきと説いている。相手の頬を張ってからすぐに抱きしめるようであれ、と。

ビジネスでPOW!を用いて成功したキャンペーンがたくさん紹介されている。奇抜な発想を、どのように営業利益獲得へのリードにするかの参考になる話が続く。ただし本書のマーケティング手法は相当に高度である。普通の人が真似できるかというと、かなり難しいのじゃないだろうか。

「サプライズの創出という実際の仕事はビジネスよりもアートの世界に位置する」という。この著者は日常生活からして相当にハイテンションで、周囲にサプライズを提供することに人生を懸けているタイプの人間のようだ。既存のフレームを破壊して、別の次元から言葉を繰り出すためにはどうしたらいいのか、をひたすら考えている。

そのアートのための戦術が第7章で9つにまとめられている。「バージンのコンタクトレンズ」を装着する」「衝撃とぁぁ」「言葉は重要」「バックミラーを見る」「時限爆弾を仕掛ける」「ビジネス痴性」「パズルのピース」「物事を文脈から切り離す」。

誰の心にもある遊び心や不良マインドを、ビジネスで許される限界ギリギリまで解放しながらも、飽くまで社会的規範を超えないことが大切ということかな。ぶっとぶけどタイホはされないレベルととうか...。アテンション・エコノミー時代に、企業はいかにして目立つべきかを考えるための、少々過激な参考書。かつての「ゲリラ・マーケティング」が好きだった人におすすめ。

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