Books-Management: 2010年12月アーカイブ

・帝国ホテルの不思議
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帝国ホテル120周年。打ち合わせや宿泊で使う人、とても面白い本なのでおすすめ。

VIP担当の部署「プロトコール」
「国連のアナン事務総長をお部屋へご案内するとき、急に早足で私を追い抜こうとされるので、先導する役のプロトコールがうしろを歩くのはぐあいがわるいですから、あわてて抜かれまいと早足に(笑)。するとさらに早足で歩かれて、お部屋の前に到着したときに、「いい運動になったよ」と肩をたたかれました(笑)。」

電話オペレーター
「お客様ってほとんど、第一声にキーワードをおっしゃるんです。その最初のキーワードを絶対に聴き逃さないようにしないと。お客さまとの誤解があったりして何かのミスにつながるのが、最初のキーワードを聞き逃していたことにはじまっているっていうケースが多いんです。」

メインのレストラン「レ セゾン」
「外国の方は99%、コースを注文されないですね。前菜とメインディッシュ、あるいはスープとメインディッシュといったように、二皿なんです。コースで注文されるのは、ほとんど日本の方。」

というように、直木賞作家の村松 友視が、帝国ホテルのマネージャーやスタッフら30人にインタビューして、「さすが帝国ホテル」と言われる洗練サービスの秘密を探った本。
総支配人や施設部長、総料理長、ソムリエ、ベルマン、宴会チーフ、婚礼クラーク、靴磨き、ランドリー、フロント、ピアニスト、ブッチャー、氷彫刻担当、神主など組織のトップから末端まで全員が、高い意識で最高峰のホテルサービスを実現しようとしている様子がよくわかる。

ホスピタリティの最高峰と言うと、よくディズニーランドも取り上げられるが、帝国ホテルとディズニーランドの洗練は方向性が違うもののように思えた。ディズニーランドは完璧なマニュアルでアルバイトを教育する。テーマパークを訪れたファミリーはあらかじめ考え抜かれた対応に満足して帰る。それは主にレディメイドの洗練である。

だが、帝国ホテルにきてマニュアル対応に満足する大人のお客はいないのだ。だから帝国ホテルのスタッフはお客の顔を憶え、臨機応変に考えて、特別対応のサービスをする。正社員やプロフェッショナルとして長年の経験を積むから、オーダーメイドの洗練を高めていくことができる。

それぞれが帝国ホテルに入社した理由、新人時代のエピソード、思い出深いハプニング、サービスの秘訣、追究している理想、帝国ホテルならではのストーリーなど、インタビューの過程で引き出される情報も興味深いが、その声からスタッフひとりひとりの素顔が見えるのがいい。

・帝国ホテル 伝統のおもてなし
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004861.html

・モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
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重鎮フィリップ・コトラーが『マーケティング3.0』を提唱して驚いたが、ダニエル・ピンクによるとモチベーションも3.0になる。2.0ではもはや古いものを意味するようになった。

著者はモチベーションを人類の行動のOSにたとえて、

モチベーション1.0 生存を目的とする人類最初のOS
モチベーション2.0 アメとムチ=信賞必罰に基づく、与えられた動機づけによるOS
モチベーション3.0 自分の内面から湧き出る「やる気!」に基づくOS

という進化を遂げるのだという。

これまでの信賞必罰2.0は現在のビジネスの事業形態と一致していない。21世紀の人間の行動と一致しない。現代の仕事の多くと相いれない。といった理由で、時代遅れであり、ありがちな目先の報奨プランや成果主義に基づく給与体系は、多くの組織で機能せず、有害な場合さえ多いのだと教える。しかし2.0は理解しやすく、容易に監視でき、適用しやすいという理由だけで、組織は安易に採用を続けている。

アメとムチの致命的な7つの欠陥として、

1 内発的動機づけを失わせる
2 かえって成果が上がらなくなる
3 創造性を蝕む
4 好ましい言動への意欲を失わせる
5 ごまかしや近道、倫理に反する行動を助長する
6 依存性がある
7 短絡的思考を助長する

というリストを挙げて2.0組織に警鐘を鳴らす。

要するに人間はそんなに単純じゃないのだ。イヌじゃないのだからブザーが鳴ってもよだれはでないし、ウマじゃないのだから目の前にニンジンをぶらさげられれば屈辱的に感じてしまう。豊かになった社会の会社では社員のことを全人的にとらえて、もっと人間的に対応していかねばならないということなのだ。全人的という意味では『マーケティング3.0』と似ている部分がある。

モチベーションのタイプを、2.0が想定するタイプX(extrinsic 外発的)と3.0が想定するタイプI(Intrinsic 内発的)に分けるとすると、タイプIは、

・自律性 自ら方向を決定したい
・マスタリー(熟達) 自分の能力を上達させたい
・目的 自分よりも大きな何かの一部になりたい

というような意識で動く。後半は組織や家庭で、社員や子供たちをどうタイプIとして、モチベートしていくかの方法論がまとめられている。本人をどう刺激するかではなくて、、よいフィードバックがかかる環境を用意することが大切なようだ。人間を本当の意味で育てるのが3.0であるが故に、組織にとっては2.0よりも育成するコストが高いものになるかもしれない。

・ミドルの対話型勉強法―組織を育て、自分を伸ばす
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日産で人事を長年担当し、外資系大手PR会社の役員となり、経営大学院教授として場のマネジメント論を教える徳岡晃一郎氏の最新刊。冒頭で"サラリーマン・マトリクス"が示される。自律か他律かというビジョナリー軸と、外界探求か自己限定かのドメイン軸で、組織内の人間を「共創リーダー」「タスクファイター」「待ち受けくん」「博士くん」の4つのタイプに分類する。核となるのは自律×外界探求の共創リーダーだが、重要なのはすべてのタイプが力を合わせてそれぞれの持ち味を発揮することで組織の成果を高めること。

タイプは違えど仕事ができるミドルには対話が必要なのだ。

本書は部長・課長向けに、ミドル間や部下との対話を通じて

1 個人の力を計画的に高める「自分のマネジメント」
2 多様なメンバーをつなげる「場のマネジメント」

という二つの目的を達成する方法を示す。

実践的に自分自身と職場を同時に活性化するSECI対話セッション・プログラム(SDS)を提案している。SECIとは一橋大学名誉教授の野中郁次郎教授が提唱した暗黙知と形式知の相互作用を核とした創造プロセスのこと。多忙なミドル同士が腹を割って、自分たちの役割ややるべきことを、徹底的に話し合うことで、豊かな経験を深いレベルで共有させる全10回のプログラムだ。

各回90分は4つのフェーズ(リフレクション、ダイアローグ、ディープダイブ、ラップアップ)で勧められる。各回のテーマ、実践例、対話例が多数紹介されている。実践的なので、ミドルの研修を企画する立場の人に特におすすめだ。

自分スタイルを磨く具体的勉強法「書評ライティング」という面白い方法論も提唱されている。本を読んだら、「自分の問題意識」、「著者の主張の特徴・学べる点」、「自分の問題を考えるヒントとしてどう活かせるか」、といった要素を1000字程度の書評にまとめる。自分自身の知識の定着につながるだけでなく、ミドル同士の対話のコミュニケーションに書評を使うことで知識の共有や深化にもつなげられる。

・MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1250.html

・世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1003.html

・人事異動
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-947.html
徳岡 晃一郎氏の著書。


ところで、著者の徳岡先生と私は多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を一緒に運営しています。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。
・多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所
http://www.ikls.org/

そして現在、本書の内容とも関連して、

・現役マネジャー
・次世代リーダー候補
・人事・教育担当者

向けのスペシャル研修プログラム

・MBBスキルプログラム
http://www.ikls.org/archives/239

を2011年2月26日に企画して、現在参加者を募集しております。

・村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則
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元米グーグル副社長兼日本法人社長、現在はグーグル日本法人名誉会長の村上憲郎氏が語った仕事論。

基本となる大局観とお金の流れの自覚+デールカーネギー『人を動かす』『道は開ける』+マンキューの経済学+キリスト教の知識+仏教の知識+西洋哲学+アメリカ史の理解+量子力学......。本質を見抜く能力を鍛え、グローバル社会における知識教養を幅広く蓄えよ、という。多分野の王道を束ねた帝王学。要求スペックは高い。

心優しき日本人の陥りがちな陥穽として「原理的な根拠よりも心情的、情緒的な部分に比重を置き過ぎるのではないか」と言ったり、経済の目的は「世代間順送りで人類が存続するために、世界67億の人類に衣食住に代表される財とサービスが行き渡る社会を作る」ことであると言うなど、今の日本人が持つべきグローバル視点を気づかせてくれる。

村上氏自身の言葉とともに、深く知りたい人のためにおすすめの本を何十冊も紹介している。グーグルに引き抜かれるような人材を目指すなら、まずはこのリストを読みまくるとよさそうだ。

本の選び方や読み方についてのアドバイスもある。

1 薄くて濃くてやさしい本をみつける
2 それを集中して、一気に読み上げる(速読)
3 とりあえず、分かったところだけをピックアップする
4 分かったところを繋ぎ合わせる

そして一知半解読書法。

「その分野の中で一番薄くて、でも基本的なエッセンスは詰まっている本を1冊探し出して、それを一気に読むのです。」

アカデミズムの知識がベースにある図解中心のやさしい本で大局をつかみ、全部が分からなくても、自分なりに理解できたコアで勝負していけというのは、ビジネス的な実践の知の活用法として深く納得である。

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