Books-Management: 2011年2月アーカイブ

・なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
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この本の批判する「ビジネス書」というのは、いわゆる自己啓発系や能力開発系ではない。『エクセレント・カンパニー』『ビジョナリー・カンパニー』のような、本屋の経営学コーナーの真ん中に、経営の科学書としてディスプレイされている本のことである。

「経営者も記者も大学教授もコンサルタントも含めて、私たちが企業パフォーマンスを決定する要因だと思っている多くの事柄は、業績を知ってそこに理由を帰した特徴に過ぎないのである。」

原題の「The Halo Effect」(ハロー効果、後光効果)とは、物事の特徴的な側面を見ると、その他の面に対する評価も影響を受ける認知バイアスのこと。多くのビジネス書は、好業績の企業を分析して、成功要因を抽出するが、著者はその方法論に異を唱える。

企業の財務業績が良いと、戦略も企業文化も人事制度も商品品質もCEOの能力も人柄も、すべてが光輝いて見えてしまうのだという。経営者やアナリストがマネジメントの質やサービスの質、投資価値など8項目を評価する「世界で最も称賛されている企業」(フォーチュン誌)の調査がある。著者はこのデータを分析して、8つの項目は強い相関関係にある上に、主に財務実績が大きな影響を与えていることを明らかにした。プロの目にも業績良ければすべてよしに見えているのだ。

好業績企業を何千社も調査して成功要因を抽出した大ベストセラー『エクセレント・カンパニー』『ビジョナリー・カンパニー』の追跡調査も面白い。これらの本で取り上げられた世界の超優良企業群の「その後」は、株価収益率(市場の期待)においても、資本利益率(企業の実力)においても、市場平均以下であるという驚異的な事実が指摘される。エクセレント、ビジョナリー銘柄に投資するよりも、ランダムに選んだ銘柄群に投資した方が儲かっていたのである。

ビジネス書の多くがわかりやすいストーリーを売りにしている。「得意なことに専念する」「歩き回るマネジメント」「顧客志向」「士気の高い企業文化」「ゆるぎない価値観」などベストセラーには必ず印象的なストーリーや○○の法則が伴う。だが「よいストーリーの条件は、事実に忠実であることではない。それよりも、ものごとが納得いくように説明されていることが重要なのである。」。科学の仮面を被ったストーリーがはびこっているビジネス書の状況に警鐘を鳴らす。

ハロー効果のほか、相関関係と因果関係の混同、理由は一つと思いこむこと、成功例だけを取り上げること、間違った手法の"徹底的な調査"、成功が永続するという幻想、競合企業を考慮に入れない業績向上の評価、戦略を絞り込んだから成功したとする解釈の間違い、組織に自然法則を当てはめて予測する間違い、など、経営の科学系ビジネス書の陥る間違いを指摘している。

大きな企業の活動は複雑で、これをやれば成功するという結論に落とし込むのは無理なのだが、本の読者はそれを求めているので、一部の学者はサービス精神と商売根性で、科学的には間違っているが、わかりやすくて売れる本を書いてしまう。事情を知った上でビジネス書を楽しみましょう、という話。

・ビジネス書大バカ事典
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1375.html

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