Books-Management: 2011年3月アーカイブ

・なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力
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問題解決力と問題発見力は別物。

ケネディ政権で国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏は、ハーバード・ビジネススクールで行った講義の中で、MBAのケーススタディは役に立たない。なぜなら学生に何が問題なのかを教えてしまうからだ、と言った。

解決すべき問題が何か、なかなかわからないことが現実の問題なのだ。

原題は"Know What You Don't Know. How Great Leaders Prevent Problems Before They Happen"(あなたが知らないことを知りなさい 偉大なリーダーたちはいかにして問題を未然に防いだか)。自分の知らない何かに常に注意を向けること、自分が何を知らないのかを追求し続けること、それがリーダーの問題発見力の基本だという。

「効果的に問題を見つける7つの行動」として、

1 フィルターを避ける 
2 人類学者になる 
3 パターンを探す 
4 点を結びつける 
5 価値のある失敗を奨励する 
6 話し方と聴き方を教える 
7 ゲームの録画を見る 

が挙げられ、それぞれに一章が割かれ詳しく解説されている。たとえば第一章では、

「フィルターを避ける」ための5つの手法として、

・自分の耳で聴く
・さまざまな意見を探して聴く
・若い人とのつながりを持つ
・周辺部にも足を伸ばす
・利害関係者でない人と話す

という具体的な方法レベルまで語られる。人の上に立つリーダーになればなるほど、フィルターを通して状況を把握することになる。だからこそ意識的に、組織の外にある多様な情報、生の情報に意識的でなければならない。ソーシャルメディアに触れるというのは、手軽な方法である気がする。

リーダーの陥りがちな失敗も事例がいっぱい紹介されている。「価値のある失敗を奨励する」の章ではサンクコストの過ち(損失を取り戻そうとしてますます深みに落ち込む)が語られる。音速ジェットのコンコルドプロジェクトは有名なケースだ。

「かなり早い段階で、このプロジェクトは金銭的に成功する実質的な見込みがないことが明らかになった。英国とフランスの政財界のリーダーたちは、あと一歩のところでプロジェクトを中止しそうになった。けれども、過去に支出した莫大な金額が「無駄遣い」になることをおそれて継続の道を選んだ。最終的にコンコルドの開発費用は当初予算の500%を超えた。この投資はいかなるプラスの金銭的リターンももたらさなかった。」

ビジネス、政治、軍事、スポーツ、医療など各界のリーダーたちの意思決定の成功と失敗から、要点が抽出整理されていて読みやすい。不確実な状況の到来、組織のリーダーにとって危機管理、意思決定がとりわけ重要な時代になった。今読む本だと思う。

新文章讀本

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・新文章讀本
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川端康成が大正から昭和初期にかけて書いた文芸時評と文章論をまとめた本だから「新」とついているけれども古典である。当時川端が高く評価していた「現代」作家の徳田秋声、泉鏡花、葛西善蔵、志賀直哉、横光利一、谷崎潤一郎、佐藤春夫、里見弴らの文章が引用されて、良い文章とはこうあるべきという要点が語られる。

「俗に芸術的文章と実用的文章と二つに区別がありようにいわれるが、これは果たして如何であろうか。結論を先にいえば、私はその差別を認めぬ。先ののべたように、文章とは、感動の発する儘に、自己の思うことを素直に簡潔に解り易くのべたものを良しとする。古来文章の規範として「華を去り実に就く」といわれたのも、このところであろうか。」

「私は芸術的文章の秘密はわからないので、わかりやすい実用文のコツを述べます」なんて言い訳で始まる文章指南書も多いのだが、さすがノーベル文学賞はそんなことはいわないのである。わかりやすくて、感動させる文章がベスト、そりゃそうだ。

概して川端がよしとするのは、耳で聞いて解る文章であり、文語の型を破る口語的な文体である。説明的と表現的という表現法の違いや、センテンスの長短による効果の違い、自然描写系と人物描写系の作家の違いなどを具体例を引用して読者に鑑賞させてから、持論を展開する。新しい文章の創造への試みを肯定的に評価する傾向が強い。

収録されている「文章学講話」には川端が講義するレトリックへの強いこだわりがみられる。修辞学の歴史を古代ギリシアから近代までを振り返り、日本の修辞学の未発達を嘆く。創作家と鑑賞家の間の心理活動に、修辞学的技巧が与える影響を調べたいという情熱を燃やしている。

修辞学の技巧論ということもあるのだけれど、まえがきに、この川端の「耳で聞いて解る」文章へのこだわりのヒントらしきものが書かれている、と思った。

「少年時代、私は「源氏物語」や「枕草子」を読んだことがある。手あたり次第に、なんでも読んだのである。勿論、意味は分かりはしなかった。ただ、言葉の響や文章の韻を読んでいたのである。 それらの音読が私を少年の甘い哀愁に誘いこんでくれたのだった。つまり意味のない歌を歌っていたようなものだった。 しかし今思ってみると、そのことは私の文章に最も多く影響しているらしい。その少年の日の歌の調は、今も尚、ものを書く時の私の心に聞こえて来る。私はその歌声にそむことは出来ない......。」

「少年時代」に「手あたり次第」で体得した「歌声」が「聞こえてくる」。これがたぶん川端の才能の秘密なのだろう。名文のリズムを自分の呼吸に取り込むということが、名文を書く土台を作っているのではなかろうか。読み手の心理を知りぬいていればこそ、よい書き手になれるというこの本の主張にも近い気がする。

文章をめぐる探究のことばも多数引用されている。

「人間は、言葉でほか、自分の心が表わせない。その言葉が信じられない時。───昔の女の人は死にました。」とある女が云った。ゲエテは「言葉が何時も抵抗する」と云っている。ストリンドベルヒは「夢幻劇」で詩人に、「塵の子に、天に達し得る程純潔なる言葉が見出し得るものだろうか───? 神の子よ?。」と云わせている。イタリイの情熱的な美学者クロオチエなぞは「心象即表現即芸術」と云った。」

この本は一言で言うと、上の文の最後にでてきた「心象即表現即芸術」を目指す本である。


・日本語作文術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/post-1287.html

・<不良>のための文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1275.html

・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html

13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html


・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html

・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html

・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html

・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html

・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html

・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html

・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html

・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html

・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html

・「書ける人」になるブログ文章教室
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