Books-Media: 2011年2月アーカイブ

・電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命
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元『本とコンピュータ』総合編集長の津野 海太郎氏が語る出版の新時代論。

口承から書記への「第一の革命」、写本から印刷本への「第二の革命」、そして紙の本と電子の本が共存するというのが同氏のいう「第三の革命」である。電子出版革命論者のなかではかなり穏健な革命である。

「書物史上、というよりも人類史上はじめて、本が二つのかたち、二つのしくみ、二つの方向に分かれて、それぞれの道をたどりはじめる。その分岐点の光景を、いま私たちは目にしている。」

確かに著者が言うように、電子書籍が紙の印刷本をすぐに滅ぼすことは起きそうにないと感じる。電子本が一般化しても、紙の本の良さは残る。レコードがCDに、VHSがHDレコーダーになったように、旧メディアが新メディアを置き換えて殺してしまったメディアもあるが、本の場合は共存の余地は大きそうだ。

「ビジネスとしての出版は今後も二つのかたちで存続していくと思う。一つは旧来のものの縮小的延長として、もう一つは、無料情報の大海から直接にたちあげられるであろう新しい出版ビジネスとして。」

紙と印刷の本の世界が斜陽化しているが「産業としての出版のおとろえと電子化の進行のあいだに直接の因果関係はない」という分析も同感。その原因を「売れる本がいい本、売れない本はわるい本」という「市場がすべて」主義が出版を衰弱させたと論じている。ベストセラーのランキング上位に並ぶ本が、読書好きにとっては、つまらない本ばかりになってしまったなあと私も思っているので、多いに納得。

ボイジャーの萩野正昭氏と電子書籍の歴史(案外に長い)を振り返る記事も、今、改めて読むと、電子書籍にまつわる様々な議論が、いまに始まったわけじゃないのだということに気がつかされる。

電子書籍の革命前夜である今、見通しをえるのによい本。

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