Books-Miscの最近のブログ記事
文学的で、静かに感動を呼ぶ、上質な漫画。よいです。
静かな日常の下に隠れた暗くて激しい底流というものがテーマ。
銭湯を経営する関口かなえは、何の兆しもなく失踪した夫のことを、できるだけ考えないようにしながら、日々の仕事に追われていた。人手不足の銭湯に組合の紹介でやってきた寡黙な男 掘さんが、店に住み込みで働き始める。おかげで一息つけるようになったかなえは、抑えていた自分の感情と正面から向き合うようになる。
なぜ夫は出て行ったのか?。他に好きな人がいたのか、何かやりたいことがあったのか、自分を嫌いになったのか、銭湯の仕事が嫌いだったのか。考えてもよくわからない。彼のことをまったくわかっていなかったのではないかと思うのがつらい。そんな葛藤のかなえのもとに探偵を使って調べてみないかという誘いがやってくる。そして失踪の真相が少しずつ明らかになっていくのだが。
淡々とした日常が物語の3分の2を占めるので、一話一話を取り上げると地味な印象を受けるが、通しで全部を読むとしっかりと残るものがあって、よくできた映画や小説のような厚みがある。個性的な脇役も活きている。コマ割は映画のようだ。これは映画化される、に一票。
2005年3月、ドイツのハンブルク応用科学大学デザイン=メディア=情報学部の卒業審査で、学生アイナール トゥルコウスキィが提出した作品の出来栄えの見事さに教授たちは目をみはった。たった一本のシャープペンシルで400本の芯を使って3年かかって描き上げたという細密画と、独特のシュールさ漂うストーリー。世に出た作品はたちまちドイツの有名な絵本賞を連続受賞した。
絵本とはいっても対象は大人向け。ある日、町のそとの砂丘の廃屋に、奇妙な男が住みつく。男はわけのわからぬ仕掛けで漁のようなことをしている。没交渉のまま裏で監視を続ける町の住人たちは、わけのわからぬものへの恐れや嫉妬から、よそものの男を排斥するムードに傾き始める...。
ムラ社会の創造性のなさを悲しい目で見ているのは、おそらく作者アイナール トゥルコウスキィ自身の実体験からくる感慨なのだろう。卒業制作といっても当時すでに33歳。誰にも理解されないまま、黙々と細密画を描き続けてきた画家は、雲をつかむような仕事をひとりで続ける主人公の姿そのものだったのじゃないだろうか。
この話からは無理解のムラに対する怒りや批判はあまり感じられない。あるのは外に対しては諦めと悲しさ、内には孤高の創造行為に没頭する充実感。表現に激しさはないが、姿勢はある種のアウトサイダーアートといってもよいのかもしれない。ここ数年で作者は社会的評価を受けて、広く人気も出て、ポピュラーになりつつあるようだが、次はどんな作品を描くのかを見てみたい。
・「百頭女」「慈善週間または七大元素」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/post-771.html
・アウトサイダー・アート
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-739.html
以下は大人の絵本系
・『終わらない夜』と『真昼の夢』
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1049.html
・なおみ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-895.html
・大人な絵本 「天才の家系図」「裁判所にて」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-812.html
・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html
・ちいさなちいさな王様
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/eel.html
<70名の選考委員+500名以上の読者投票で選ばれたビジネス書ランキングの決定版>
私も選考委員の一人として参加させていただいビジネス書大賞の結果が本になった。
「ビジネスパースンにとって学びや気づきがある本」ならなんでもノミネートできるので経営やスキルアップ本以外からも、おもしろい本がリストアップされた。そのすべてと約350本の推薦文とともにこの本に収録されている。(私の著書『情報力』も二人に推薦していただいたようで、感謝感激です。)。
・ビジネス書大賞 Biz-Tai 2010
http://biztai.jp/
ランキングだけならウェブで確認できるが、本書は収録されたインタビューが楽しい。1位の『ブラック・スワン』の翻訳者のインタビューが、インタビュアーに対してかなり斜めに応えていて、受賞インタヴューと思えぬ毒舌ぶりでかなり笑える。読者賞を受賞した勝間和代の「... 5歳、10歳年上の同じ職場の先輩のことだけを聴いていると、かえって間違うことが多い」から自分で考えるための材料としてビジネス書は重要という推薦も独特だなあ。
で、本書にも掲載されているが、私の推薦作品は以下の5冊。選考委員の数が多いので、他の委員とかぶらない本を挙げたつもりだったが、結構かぶっていた。さすが本好き集団。実は私、5冊の推薦文全部に"歌謡曲"を入れるという工夫をしていたのだが、紙ではバラバラに掲載されたため気がついた人はいないだろう...。
なので、ここに再掲載させてもらう。
■デジタルネイティブが世界を変える
ドン・タプスコット (著), 栗原 潔 (翻訳) 出版社: 翔泳社 (2009/5/14)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1138.html
ボブ・ディランの名曲に「The Times They Are A-Changin'(時代は変わる)」という歌があった。子供の世代が古い価値観の親の世代に交代を迫る社会派の歌詞は時代は変われど普遍的なものだ。21世紀初頭の社会のChangin'とは、PCやネットを自在に使いこなす"デジタルネイティブ"と、旧世代の"デジタルイミグラント"の交代劇である。ネイティブ層1万人へのインタビューをもとに、8つのキーワードが浮かび上がる。次世代の行動原理を知らずに未来を考えることはできない。
■脱「でぶスモーカー」の仕事術
デービッド メイスター (著), 紺野 登 (監修), 加賀山 卓朗 (翻訳) 出版社: 日本経済新聞出版社 (2009/9/11)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1079.html
肥満も喫煙も"わかっちゃいるけどやめられない"からずるずる続く。会社組織だって「スーダラ節」なのは一緒で、短期的誘惑や満足感に負けてためになるとわかっていることをしないから、利益が出ないのだ。プロフェッショナル組織のリーダーシップ論の世界的権威である著者が、プロ意識を持つ集団において互いに意欲や決意を引き出す方法論を語る。「人に弱みを認めさせ、改善させるのに最悪の方法は、その人を批判することである。」北風でなく太陽のアプローチ。著者は組織の空気を創造的に入れ替える天才である。
■人を幸せにする話し方―仕事と人生を感動に変える言葉の魔法
出版社: 実業之日本社 (2009/4/10) 平野 秀典
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1070.html
講演や授業が生業の一部になっている人は、話術の最低限のテクニックは身につけているものだ。だが、聴衆と、どのような関係性をつくるべきかという点で根本を誤っているケースは結構多いなと思う。壇上のスピーチや日常の会話で、聴く人を幸せにする話術とはなにか?。それは美空ひばりの「愛燦々」の歌詞の如く「人生て
うれしいものですね」としみじみさせるような言葉だ。共感を抱かせ、心の琴線を震わせるための心構え。情報の伝達と心理操作を主としたMBA的な話術とは対極にあるものだ。
■グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略
出版社: 翔泳社 (2008/11/18) シャーリーン・リー (著), ジョシュ・バーノフ (著), 伊東 奈美子 (翻訳)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/post-875.html
インターネットコミュニティの大きなうねり(グランズウェル)を、どう企業戦略に活かすことができるのか。フォレスターリサーチの二人のアナリストが大規模な企業実態調査の結果から抽出した戦略論は、現代の経営者、新規事業関係者、必読である。著者はコミュニティに対するコミット度合によって、人々を創造者、批評者、収集者、加入者、観察者、不参加者と7段階に分類している。そのレベルを引き上げることに成功したグローバル企業の発想の転換ケースがどれも見事だ。現代は"Power
To The People"な時代だが、さらに"to the company"を続ける企業が勝ちなのだ。
■落語論
出版社: 講談社 (2009/7/17)
堀井憲一郎 (著)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1050.html
落語家の自己の面子にかけて、今この場をとにかくどうにかするんだという気迫。紅白の大トリで北の漁場を歌う北島三郎の如く。ビジネスの会議やプレゼンの場でも、そういう姿勢は本当に重要だと思う。ポジション、能力にかかわらず、一緒に仕事をしたいと思う人はそういう人だ。往々にしてその手の人はポジションも能力も既に高いし、それは才能でもあるのだが...。これは落語分析の本なのだが、著者の深い洞察によって明らかにされる場の演出、ライヴの極意は、ビジネスシーンでも活用できそうだ。
知っていれば、助かるかもしれない。
秋葉原無差別殺人事件、十四歳少年バスジャック事件、池田小児童殺傷事件、阪神大震災、和歌山毒カレー事件など日本を震撼させた数十の殺人事件や事故、災害における死を検証して、どうしたら生き残れるかをアドバイスする内容。著者は30年間東京都の監察医をつとめ二万体もの変死者の検死解剖を行った人物。
刃物でいきなり刺されたらどうするか?。とりあえず腕の外側で防ぐ。出血したらまず色を見る。黒ずんだ血なら静脈をやらてたのであわてなくてよい。鮮紅色の赤だったら早急に対処しないと危険。動脈の位置は知っておけ。
人質として首にナイフをつきつけられたら、喉を切られても即死しないが、頸動脈を切られると死ぬと考え、万が一でも耳の下を切られないように意識せよ。プロの殺し屋は喉笛をかき切ることはしないのだそうだ。
私が年に1回くらいで危険を感じる将棋倒しでは、
「満員状態におけるエスカレーターの急停止や逆走は本当に危ない事故だ。それで将棋倒しがおきてしまうと呼吸ができずに圧死してしまう。もし助かりたいと思ったら瞬間的に腕で胸をかばうようにするといい。呼吸ができるように胸の動きを確保するのである。あるいは肺を守るために、身をかがめるような姿勢を取るといい。」
というアドバイスがある。
火事にあったら。海に投げ出されたら。熱湯や薬品がかかってしまったら。誤って毒を飲んでしまったら。有毒ガスが発生したら。動けない状態で放置されたら。拳銃を向けられたら。喧嘩に巻き込まれたら。
そもそもそうした状況に陥らない予防と、遭遇してしまった時の対処法が書かれている。結果的に死んでしまった人たちを調べた研究成果なので説得力がある。いざというときに生き残る確率を少しでも増やすための知恵がいっぱいである。
・死なないための智恵
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-757.html
感動した。連作短編集だが全作が傑作ではずさない。
スキエンティアはラテン語で「知識」という意味。クローン、ロボット、惚れ薬など、未来の禁断の科学技術が、人々の生活にどんな影響を与えていくかを描いたサイエンスフィクション。基本はSFなんだけれども、とてもヒューマンドラマしている。
「ボディレンタル」
「媚薬」
「クローン」
「抗鬱機」
「ロボット」
「ドラッグ」
「覚醒機」
クローンにしても人工知能介護ロボットにしても、ここで取り上げられる技術は、人間心理の微妙な領域に入り込んでくるものばかり。生と死、性、家族、恋愛などを変革するイノベーションが登場したとき、私たちはそれをどう受け入れて行くか、あるいは拒絶するかのシミュレーション。
一話目。四肢が動かなくなった大富豪の老女が、人生をもういちどやり直すために、若い女の身体を借りる「ボディレンタル」。映画『アバター』みたいな設定だが、こちらの設定では、二人の意識はひとつの身体に同居する。起業家としてパワフルに生きてきた老女と、何事にも流され気味だった女の、二人の心がせめぎあう。
どの話も人間の命や尊厳と関わっていて、重たく切ない内容なのだが、すべて希望をもたせる終わり方をするのがいい。ほろっ、じわっ系。どらえもんの未来技術とブラックジャックのヒューマニズムを足して2で割って、絵はちょっと諸星大二郎的劇画調。
連続ドラマ化されたらいいなあ。
・著者 戸田誠二氏のサイト
http://nematoda.hp.infoseek.co.jp/
・文化庁海外展 大英博物館帰国記念 「国宝 土偶展」
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6908

開催期間:2009年12月15日(火)~2010年2月21日(日)
東京上野の国立博物館で開催中の「国宝 土偶展」を見てきました(昨年末の話ですが)。国宝級の有名な土偶・土器が勢ぞろいで、縄文造形マニアにはたまらない内容です。裏表がはっきり見られる配置とライティングもよかった。見学時には必ず音声ガイド(日本語のみ、300円)を借りることをお勧めします。展示につけられた対応番号を押すと、音声解説が聞こえるわけですが、これがよくできていて鑑賞の楽しみが倍増します。
・〈文化庁海外展 大英博物館帰国記念「国宝 土偶展」〉音声ガイド
http://www.ca-mus.co.jp/myguide/myguide-dogu.html
なんとこの音声ガイドはサイトから有料でダウンロードしてiPodなどで聴くこともできるそうです。国立博物館進んでますね。これからは先に音声ガイドを聴いて、おもしろそうだったら展示を見に行くという逆転の発想もありかもしれません。
で、この土偶展は大英博物館からの帰国記念なのですが、同様に昨年、英国博物館に展示されたのが、この宗像教授なのです。ついに星野之宣もグローバルにデビューだと長年のファンとして感動しました。
・日本漫画、大英博物館に大抜擢 「宗像教授」展開催へ
http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY200910240185.html
最新刊『宗像教授異考録 12』ではちょうど縄文土器の謎に迫る話が二編収録されています。土偶はなんのために作られたのかはいまもまだ不明のままですが、女神イザナミの神話と結び付けた宗像説、結構説得力ありました。宗像教授を読んでから土偶展へ行くのがおすすめです。
iPhoneのカメラ関連アプリだけを集めたムック本。食べ物がキレイに撮影できるアプリ、パノラマ撮影ができる簡単にできるアプリ、撮影した画像を加工するアプリ、Flickrなどにアップロードするアプリ、などなど100種類もある。アプリ画面と写真の作例が豊富に掲載されていて選びやすい。紙で出版する意味のある本だなあと思った。
この本のおかげでまたインストール数が10本くらい増えてしまった。なかでも楽しい体験ができたのが、心霊カメラ。撮影した写真の暗い部分に心霊を浮かび上がらせることができるイタズラアプリ。
・心霊カメラ:これぞ夏の風物詩、奇っ怪な写真アプリで遊ぼうぜ!544
http://www.appbank.net/2009/05/22/iphone-application/26803.php
説明はAppbankが詳しい
以下は私の作例。
↑これは鎌倉の八幡宮で夕方に撮影した池の写真。いかにもなかんじで仕上がった。何もコメントをつけずにFlickrにアップしたら、見ず知らずのイタリア人のおじさんから「un bel lavoro 」というコメントをもらった。驚かせちゃったかなと思ったが、翻訳してみたら「いい仕事!」という意味だそうで...。
こちらは表参道にある青山セントグレース大聖堂の写真。ムンクみたいなゆがんだ顔のゴーストは大聖堂にマッチしている。
ホテルの廊下。完全に真っ暗でなくても出る。個人的にはこれが怖いんですけどね。
本書は出版社より献本いただきました。ありがとうございます。中身はおもしろかったのですが、この本を献本されちゃう立場というのが、なかなか複雑なのです。精神的にはともかく外見的に脱オタは果たしていると思うのですが...?。どのような意図で献本していただいたのでしょうか、出版社殿。
ええ、ええ、私は確かに大学入学時に"バンダナ"をしていた過去がありますよ。80年代から"マイコン"をいじっていた人なんて、100%オタクだったのですから。"ハイテクシューズ"も大好きで、実は今も土日は履いています。"通勤・通学中の一人観賞会"も通勤電車でiPodで映画観てますが私の勝手でしょ。誰かがジョークを言ったら「ワラワラ」って声に出して言うのは"不自然な言葉遣い"ですが、いけませんか?。結構楽しいと思うのですが、という私見はともかく...。
これはオタクに向けて、脱オタ(モテ化)するためのファッションガイド。"改"がつくぐらいのベストセラー最新バージョン。オタク男子が幼馴染の女の子のアドバイスで洗練されたファッションを身につけていく成長物語。マンガとキーワード解説で構成されている。
バンダナ、ウエストポーチ、ハイテクシューズ、リュックサック、ツータックチノパン、大量ポケット付きベスト、指貫グローブ、十字架アイテムなど、まずこれを外せばオタク臭さが抜けるというバッドアイテムと、とりあえずこれを選んでおけば大丈夫という無難なアイテムが紹介されている。小物や身だしなみ、日常の動作や行動パターンに対する指導もある。かなり実用的。
「勘違いしてはいけないのはオタクだから批判されるのではなく、オタクのイメージが悪いから批判されるという点です。「オタクで何が悪い!」と声を荒げてみても、そのイメージを変えられなければ虚しいだけです。マイナスのイメージをプラスに持ってくる、その一番手軽な方法が「脱オタクファッション」なのです。」
ファッションは学校で教えてもらえない。著者が言うようにオタクっぽい格好はその他の人々を遠ざけるというのは事実だ。この本で救われる若い人って結構いると思う。マンガだし、幼馴染の女の子が話すという形式で、まったくおしつけがましいところがないため、とっつきやすいと思う。
とはいっても、オタク、なかなか自分では買わないんだよね、こういう本は。だから出版社さんは私に好意で送ってくださったのかもしれませんが、私自身はそんなにひどくないと思いますし、もう我が道を行くから結構です。でも、いい本ですね(他人事)。
・愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN V シャア・セイラ編

毎年ガンプラとともに一冊ずつ読んでいる愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGINも5冊目(敢えて連載中のガンダムエース誌は読まないことにしている)。ついにアニメでは語られなかった登場人物たちの過去が描かれる部分に突入した。感動的でほとんど泣きそう。安彦良和はやはり天才だ。
ジオン建国の政治的指導者を父に持つ姉妹が、どうして姓の異なるシャア・アズナブルとセイラ・マスになったのか。ガンダムが大地に立つ一昔前の時代が今回の舞台。幼い二人がザビ家との政治抗争に巻き込まれていく悲劇が緻密に展開される。よって今回はアムロらはほとんど登場しない。本編ストーリーはほとんど進まない。
この過去編の脚本の完成度の高さに絶句した。アニメ放映時にはそこまで深く考えられていなかったであろう背景ストーリーが、四半世紀してから精緻化された。後付けでつけられた陰影のはずなのだが、ファーストガンダムの世界に圧倒的な厚みを持たせることに成功している。
過去編によって特に存在感が高まったのが、ランバ・ラルとハモン。ランバ・ラルは「見ておくがいい。戦いに敗れると言う事はこう言うことだ」という最期のセリフ(劇場版)が印象的だったが、その「戦い」というのが、直近の戦闘という意味ではなくて、ラルが10年以上も戦ってきた長い負け戦を指していたんじゃないかな、だとするとあの言葉はなおさら重いなあ、ちゃんと受け止めろよ、ホワイトベースの諸君、なんて思ってしまった。安彦良和は昔から情念を内に秘めた強い女を描くのがうまい。愛人ハモンの人生も泣けた。
ここ数年続いている年末年始のガンダム三昧、自ら気分を盛り上げるために同時購入していたのが、話題のMS動画図鑑。Vol.1はファーストガンダム(+一部のOVA)に登場するすべてのモビルスーツ、モビルアーマーが一体60秒の動画(テレビアニメから)とナレーションで収録されている。
・ガンダム MS動画図鑑 [宇宙世紀]編 Vol.1 [DVD]

要するにモビルスーツのプロモーションクリップ集なのだが、うーん、なんというか、いまひとつ楽しみ方がわからない。ナレーションにも新しい情報はないし単調。せっかくアニメの映像が使えるのだから、もう少し付加価値をつけてほしかったなあと残念に思うが、ときどき自宅作業の環境映像として流している。
・MG 1/100 ゴッグ MSM-03
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/mg-1100-msm03.html
・ラーメンズ・片桐仁のガンプラ戦士ジンダム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1007.html
・ザク大事典 All about ZAKU
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/-all-about-zaku.html
・MG 1/100 ズゴック MSM-07と愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV ジャブロー編
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/mg-1100-msm07-the-origin-iv.html
・HGUC 1/144 MSM-10 ゾックと機動戦士ガンダムTHE ORIGIN
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/02/hguc-1144-msm10-the-origin.html
・機動戦士ガンダム THE ORIGIN、MGアッガイ、ターゲット イン サイト
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/the-originmg.html
・ガンプラ・パッケージアートコレクション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-820.html
・俺たちのガンダム・ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/11/post-662.html
・ガンダム・モデル進化論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003091.html
紅白歌合戦は今年で第60回。大晦日は子供のころから紅白歌合戦をみて過ごしている。それ以外の番組で年を越したことがない。このムックは1951年の第1回から59回までを写真とデータで振り返る。懐かしいエピソードがいっぱい。
「紅白おもしろ検定」全100問というのもあって、第1問は、第1回の開催日について選択式で選ばせる。答えは1月3日。第1回から3回まではお正月番組で、テレビはなく、ラジオ生放送だった。大みそかのテレビ番組になったのは第4回からなのである。男女が紅白に分かれて対決する形式は当初からであったが、4回目にしてはじめて紅組が優勝。敗れた白組は「テレビは怖い。衣装に負けた」と悔しがったそうだ。
NHKの重鎮制作者たちによる座談会では昭和51年頃は、歌詞だけ書いてある台本だけで勢いで進行していてのんきだったという舞台裏が明かされる。紅白の応援合戦は相手を驚かさるために内容は秘密だったので「時間のキープなんてめちゃくちゃ。だからどんどん時間が足りなくなって、用意していたコーナーがカットされたり、応援の出演予定の人が出られなくなったり。」。出演者と舞台裏のスタッフは5000人以上もいて、緻密な台本による進行が行われる現在の紅白とはずいぶん違ったようだ。
「CD100万枚売れましたといっても、その歌を100万人しか知らないかもしれないですものね。みんなヘッドフォンで聴いているから、広がらないんですよ。」と20年間紅白にかかわった島田源領氏は「歌が飛ばない」現象を嘆く。第1回では1時間番組だったが、時代がくだるとともに、多様化にこたえるため長時間化し、ジャンルも広がった。そして視聴率は下降していった。紅白歌合戦の構成と視聴率は日本人の多様性のバロメーターなのだ。
小林幸子の衣裳の変遷をカラー写真で追うなどの特集記事。出場回数、分布、トリ歌手一覧、連続出演などの記録を集めた紅白データ百科などのコーナーもある。オフィシャル編集なので詳しい。紅白ファンは大晦日に家族で読むと団らんネタによさそう。
・100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

グローバルで物事を考えたいなら読む価値あり。ジャック・アタリあたり(洒落じゃないよ)が好きな人は必読。
#個人的には久々にむさぼるように読んだ本。
各国政府、軍機関、多国籍企業、ヘッジファンドなどを顧客に抱え、「影のCIA」と呼ばれるインテリジェンス企業ストラトフォーのCEOジョージ・フリードマンが書いた長期未来予測。文字通りの100年の計である。著者に言わせれば2008年の金融危機などありふれた景気循環の山にすぎない。
主な予測は以下の通り。
・21世紀はアメリカの時代になる。
・日本、トルコ、ポーランドが新たな覇権国として台頭する
・意外にも中国が世界的国家になることはない
・海洋、そして宇宙を制する者が覇者となる
・2050年頃に勃発する世界戦争は宇宙戦争である
・21世紀後半のアメリカの脅威は隣国メキシコである
10年先だって怪しいのに、100年後の予測など当たるわけがないというのが常識的な見方である。だが、著者の地政学的見地に基づく勢力地図の変化の予想は、結構な説得力がある。国の置かれた地理的な属性というのは不変であるし、水が高い場所から低い場所に流れるように、位置エネルギーは存在するように思えるからだ。攻めにくい国もあれば攻め込まれやすい国があるということは歴史が証明してきた。フランスとドイツのように歴史的に戦争を繰り返す隣国関係も多い。
「国家や政治家は、ちょうどチェスの名人がチェス盤、駒、ルールに制約されるのと同じように、現実の制約の中で、当面の目標を追求する。そのように取る行動が国力を高めることもあれば、国を破滅に導くこともある。」と著者は説明する。これは未来の国家の指導者や国民がどのような意思決定をするかではなくて、むしろチェス盤や駒、ルールに着目しての、枠組みから導かれる予想なのである。
基本的に人口が多く経済規模が大きい国が強いという原則があるようだ。
「一人当たり国民所得は確かに重要だ。だが国際的な影響力にとっては、経済全体の規模の方がより一層重要である。軍事関連費に充当できる原資の規模を決定するのは、経済規模なのだ。ソ連と中国は、どちらも一人あたり国民所得は低かったが、経済規模がとてつもなく大きかったために、強国になることができた。実際歴史を振り返れば、貧しくても巨大な経済と莫大な人口を併せ持つ国が、侮れない国になっている。」
島国で、人口が多く、経済規模が大きな日本は、だから今後も強いのである。2020年頃からアジア進出を目論むだろうと予想されている。平和主義を掲げる日本だが、増長するアメリカが日本の産業の原材料確保を脅かしたとき、軍事的に積極的な国家にガラッと変身するという不穏な内容だ。日本の現在の平和主義は永遠の原理ではなく順応性のあるツールに過ぎないと指摘している。
「日本が大きな社会変革を経ても基本的価値観を失わずにいられるのは、文化の連続性と社会的規律を併せ持つからである。短期間のうちに、しかも秩序正しいやり方で、頻繁に方向転換できる国はそうない。日本にはそれが可能であり、現に実行してきた。日本は地理的に隔離されているため、国家の分裂を招くような社会的、文化的影響力から守られている。その上日本には、実力本位で登用された有能なエリート支配層があり、その支配層に進んで従おうとする、非常に統制の取れた国民がいる。日本はこの強みを持つがために、予測不能とまでいかなくても、他国であれば混乱に陥るような政策転換を、何なく実行することができる。」
そして日本はトルコと同盟してアメリカに対抗する連合の盟主となると予言されている。本書には2050年代のアメリカとの宇宙戦争、その結末まで興味深い未来が記述されている。日本が軍国主義化するというのはともかく、21世紀の主要国家のひとつであり続けるという話はなんだか嬉しい内容である。
著者にかかると私たちが普段重視している経済、技術、文化などというソフトな問題は大局的にみると重要な問題ではないようにさえ思えてくる。地勢、軍事力、人口、制海権などハードな問題が本質にあるという考え方。読みながら何度もうならされた。
・21世紀の歴史――未来の人類から見た世界
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/21-1.html
・未来ビジネスを読む 10年後を知るための知的技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/03/10-4.html
・二十年後―くらしの未来図
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/04/post-68.html
・歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000778.html
・22世紀から回顧する21世紀全史
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000419.html
孔子の生涯を描いた漫画全3巻。人間ドラマ。
孔子の人生を知れば知るほど『論語』が面白くなる。孔子は見方によっては時代の敗北者だからである。不遇の一生を過ごしたが決して世を捨てなかった。孔子の孤高さというのは、隠者としての老子の孤高さとは違うものだ。孔子は最初から最後まで現実の政治で腕をふるうことを追い求めた。そして挫折した。武士は食わねど高楊枝的な、心意気なのである。
なぜ孔子は賢者でありながら仕官の道が開けなかったのだろうか。おそらく孔子自身とその教えがあまりに堅物であったからじゃないだろうか。孔子のような強いポリシーを持つ人間と、毎日一緒に仕事をするのは、きっと窮屈である。
では、なぜ放浪の旅には付き従う人が大勢いたのか。それは放浪の旅の供なら孔子の見ていない場所である程度息抜きができること、とか、世なれていない孔子が一人旅をするのを見ていられないという心理が働いていたのではないだろうか。
論語は死後に弟子によって聖典として編纂されたものだから、多分に美化されたところがあると思う。このマンガは孔子を、弱いところもあるし失敗もする人間として描いていて、リアルに感じられるところがいいなと思う。
・孔子
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002572.html
井上靖著。
・孔子伝
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004804.html
漢学研究の白川静著。
サブカルを追う写真家 吉永マサユキの写真集。
記念写真の構図のみでこんなに面白いことができるなんて驚き。
暴走族、右翼団体、ボクシングジム、矢沢永吉ファン、ホストクラブの黒服、空手道場、地域の祭り、応援団。いかついお兄ちゃんお姉ちゃん達が数十人並んでいる。写真を撮られることを意識してか、一層気合いの入った衣装と表情で、こちらをにらみつけている。威嚇力抜群である。そしてキャバレーホステス、レースクイーン、ガールズクラブ、ストリップ劇場における、女子の淫靡な集合写真もある。この写真集では、男は男らしく、女は女らしくが徹底している。過剰に漂うセックスアピールにむせそう。
その男らしさ、女らしさが強い集団ほど、構成員が似通ったファッションや顔つきに収束していくのが一目瞭然になった。「族」というのは所「属」から生まれるのだなと思う。だが、制服指向の一方で各自がアクセサリー的な個性を発揮して主張もしている。つっぱり高校生が、学ランを同じように改造して髪を染めながらも、一人一人、つけるピアスがちょっと違う、みたいな。そういう細部の個性が味わい深い。
そのほか、ちんどん屋、ウクレレクラブ、大学生のサークル、子供会、花見などの集合が記録されている。最近話題の「ヤンキー文化論」のビジュアル資料というイメージ。
・ヤンキー文化論序説
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-951.html
・ヤンキー進化論 不良文化はなぜ強い
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1019.html
日常じっと見てはいけないものを、写真だから、一方的にじっと見ることができる。路上観察をじっくり家で楽しめる写真集だ。
ぐいぐいひきこまれた。
三大将軍家光の頃。若い男ばかりに伝染する死の病が大流行し、国の男女比は大きく変わっていた。舞台となるのは男性が4人に1人しかいない女ばかりの社会。貴重な男の子は大切に育てられ、すべての労働は女たちが受け持つことになった。貧しい女は結婚することができなくなり、売春宿で男に種づけを求めることで、子供を作っている。あべこべ世界の最高権力者である将軍も女性であり、大奥には3000人の美男子を集めていた。という奇抜な設定で始まる男女逆転の時代劇ドラマ。
女将軍のお成りにざっとひれ伏す若く美しい男たちの逆ハーレム。いかにも女性向きの少女漫画家の作品なのだが、読んでみると中身は案外に男性も楽しめる内容になっている。もともとSF的な設定である上に、主人公の視点が切り替わる物語構造など、飽きが来ない。男と女、男と男の入り乱れた色恋沙汰の背後で進行する権力闘争の政治ドラマ。複雑な時代状況の中で一途に行きようとする主人公。
女性中心の社会。男女逆転にさせることによって、女性って男性が優位多数の場では、こんな風に感じているのかな?と気がつかされるところが多い。大奥の美男子達は将軍の寵愛と出世を求めて競い合い、競争相手に嫉妬する。粘着質の嫉妬という感情は女性っぽさと思いがちだが、これを読むと、女性の特性ではなくて、自分で自分の運命を決められない人間の情動なのかもしれないと思ったりした。
この先どうなるのか楽しみな連載中。第13回手塚治虫文化賞 マンガ大賞受賞。
・大奥 出版社の紹介サイト
http://www.hakusensha.co.jp/women/com.html
私は60~70年代のロックが大好きだ。この本は1964年の『ミート・ザ・ビートルズ』から1969年の『アビー・ロード』までの5年間の中から、ロックの名盤50枚を選び、録音または発売順で並べた評論集。ロックがもっともおいしかった時代の濃縮ダイジェスト。
「事はそう単純なものではないかもしれないが、アメリカで生まれた「ロックンロール」が「ブルース」をたっぷり含んでイギリスに漂着、やがて「ブリティッシュ・ロック/ブルース」となり、それがビートルズによってアメリカに輸出されたことによって「ロック」が生まれたと規定するなら『ミート・ザ・ビートルズ』こそその幕を切って落としたアルバムといっていいだろう。」
ビートルズ『ミート・ザ・ビートルズ』
ビーチ・ボーイズ『オール・サマー・ロング』
デイヴ・クラーク・ファイヴ『ザ・ヒッツ』
アニマルズ『シングル・EP・コレクション』
ヤードバーズ『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』
ボブ・ディラン『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』
ベンチャーズ『ベンチャーズ・イン・ジャパン』
バーズ『ミスター・タンブリン・マン』
ポール・バターフィールド・ブルース・バンド『ポール・バターフィールド・ブルース・バンド』
ラヴィン・スプーンフル『魔法を信じるかい?』
ほか。
ロックファンにはおなじみの定番ラインナップの中に、著者の趣味が隠し味的に混入する。初心者はガイドブック情報として受け取り、マニアは趣味の部分を議論のネタづくりのために読むことができる。
個人的には音楽評論の文章術研究資料としても参考になった。対象への想い、熱さをどう表現するのか。アーティストが好きです、愛してますと書いたって伝わるわけがない。たとえばボブ・ディランの『追憶のハイウェイ61』のイントロを語る部分。
「いってみれば「たんなるスネア・ドラムの一打にすぎない、しかしその一打は、時代に投げかける大きな疑問符のように聴こえることもあれば、歓喜の感嘆符として響くこともある。このディランのセッションが初のロック担当となったエンジニア、ロイ・ハリーが施したエコーも絶大な効果を上げている。さらにこの一打は、時代に打たれた句読点でもあり、その瞬間、時代は半ば強引に改行を余儀なくされたように思う。」」
イントロのスネアドラム一打でこれだけ語れる。蘊蓄やデータも提示しながら。個人的にはここで紹介されるアルバムの大半は保有しているか、聴いたことがあるものだったが、紹介文の視点がいいので、楽しみながら読めた。
ちなみにこの文庫本を買ったのは池袋駅のホームだった。文庫本の自動販売機という珍しいものを発見して、ついつい何か買ってみたくなったのが購入動機。ちょうどこの本は、1アルバムを数ページで語るので、電車でちょっとずつ読むのにも向いていたなあ。
朝日新聞では2007年に記事になっていた。
・本の自動販売機、キオスクで人気 首都圏JR5駅
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200712190101.html
「人気があるのは女性向けの軽めのエッセー。自販機では女性の利用者が多くなり、20~30代が中心という。恵比寿駅なら月に450冊、約20万円と予想以上の売り上げ。 」
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池袋駅の写真。もっと増えると良いなあ。
















