Books-Psychology: 2009年5月アーカイブ

・なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学
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なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか?。10歳の子供にとって1年間はこれまでの人生の10分の1だが、50歳の人間には50分の1に過ぎない。だから年をとるにつれて時間は短く感じるようになる。これはジャネの法則と言われる有名な説だが、主観的描写に過ぎず、説明ではない。

加速する時間については

1 望遠鏡効果
一般に人は過去の出来事に実際より最近の日付をつけることが実験でわかっている。

2 レミニセンス効果
年少の頃は「はじめて」で印象的な出来事が多く、利用できる時間標識が多いため想起する量も多く、結果として最近の事だと感じてしまう。

3 体内の生理時計のリズム
体内メトロノームが加齢にともない減速していく。

が本当の原因であると著者は心理実験データを根拠に解説している。記憶と想起にかかるバイアスの種類と原理がよくわかった。

ある実験では18歳以上のアメリカ人に「国家的に、あるいは国際的に重要な出来事」を挙げさせると、大恐慌や第二次世界大戦、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争など幅広い答えが返ってきた。だが年齢別で分析すると各年齢層が20代の頃に起きた事柄を挙げていることが判明する。つまり「世界を揺るがす出来事は20歳のときに起きる」という見方ができる興味深い結果である。

青年期と成人初期はその後の人生に影響を与える重要な選択があると同時に、社会に出て「はじめてのこと」に満ちている。後から思い出すと人生のクライマックスになるわけである。10代後半から20代前半までがやはり青春なのだな。

ほかにこの本では、なぜ1歳までの記憶がないのか、既視感がおきるのはなぜか、臨死体験時の人生の走馬燈レビューが人類共通なのはなぜか、サヴァン症候群の驚異的記憶力の秘密、匂いと記憶の強い結びつきなど、記憶と心理に関する研究がバラエティ豊かに、一般向けにやさしく解説されている。

・大人の時間はなぜ短いのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-854.html

・「時間」を哲学する―過去はどこへ行ったのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/07/post-110.html

・マインド・タイム 脳と意識の時間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/post-689.html