Books-Psychology: 2011年12月アーカイブ

・「しがらみ」を科学する: 高校生からの社会心理学入門
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高校生(から)に「しがらみ」の真理を教える社会心理学入門書。人間の信頼関係の研究で知られる北大大学院特任教授 山岸俊男氏が書いた。

まず本書の主題である「しがらみ」とは、社会心理学的には「インセンティブ構造」のことであると指摘する。自分がある行動をすると、他人がそれに対してどう行動するかが決まっているということ。そして「しがらみ」が、人々の行動によって生み出されているのが「社会」なのだ、すなわち社会とはインセンティブ構造であると。

「世間では人々の行動が契約で縛られているわけではなくて、人々がまわりの人たちの反応を読み合った結果として一定の行動をとり合っている。だから、みんなが本当に望んでいることと、ほかの人たちはこう思っているだろうと思われていることが食い違ってしまう可能性があるんだよ。そのために、いろんなおかしな結果が生まれてしまう。」

本当は誰もそうしたいと思ってはいないのに、全体としてヘンなことになってしまうインセンティブ構造のパターンをいくつか取り上げる。クジャクの羽根の話、いじめの螺旋の話、赤ちゃんをぐるぐる巻きにする社会の話。説明に使う例が、どれもユニークであると同時に適切で、印象に深く残る。

この本は、生きづらい世の中としてのしがらみ社会を生きていくための知恵を若者に与える意図を持って書かれている。空気を読み合う「心でっかち」な世間から、少し距離をおいて物を考える資質を論じる。世間がダメなら、社会でいきよう、というのが著者の提案だ。世間の上にある社会では決まり事や法律を守っていさえすれば自由な生きていい。だから本当は社会に出ることを怖がる必要なんてないんだよ、と。

私は小中高と学校の友達づきあいが苦手な子供だったので、クラスがない大学に入ってほっとしたし、社会にでてフリーランスで仕事を始めて、活き活きとした気分になったのを覚えている。いまは自分の会社で仲間たちと仕事をするのが好きであるが、最初からそうだったわけじゃあないのだ。

会社の歩き方、世間の渡り方ではなくて、もっとフリーな生き方モデルや社会で稼ぐ武器を高校生に教えてもいいのではないかと強く思った。世間のしがらみにとらわれて悩んでいるよりも、とりあえず何らかの武器を持って社会に飛びだした方が、きっと人生は甘い気がするのだ。世間よりも社会の方が甘いよ、自由だよ、楽しいよ、と教える著者の姿勢に大変共感した。高校生や大学生に読ませたい。