Books-Religion: 2011年6月アーカイブ

・神饌 ― 神様の食事から"食の原点"を見つめる
418BX0DSatL.jpg

神饌とは神様の食事のこと。伊勢神宮、石清水八幡宮、住吉神社、北野天満宮、美保神社、日吉神社、諏訪神社、香取神社...日本各地の神社の神饌を美しいカラー写真で紹介し、各社の神事の様子を詳細に伝える。特別な許可を得て撮影された貴重な写真も含まれる。

この日本の食の伝統は半端ではない歴史を持っている。究極の神饌と言われる伊勢神宮の神饌では「日別朝夕大御饌祭の神饌は、新鮮の究極であり基本である 神宮では、一年三六五二地、台風が来ようが、雪が降ろうが、一日も休むことなく約一五〇〇年(豊受大御神が、天照御大神の御饌都神として鎮座されたのは、天照御大神の御鎮座から約五〇〇年後のこと)、外宮の御饌殿で、朝に夕に神饌をお供えする日別朝夕大御饌祭(常典御饌ともいう)が行われている。」という

神饌は清らかで美しいと同時にグロテスクでもある。獣の匂いにむせかえる猪の頭や羽のついた野鳥の肉、生の魚貝がいかにも獲りたて状態で供される。赤飯や焼き鳥のような調理されておいしそうなものもあるるが、目立つのは土地で獲れる命のお供えである。たとえば琵琶湖の老杉神社では"めずし"なるものをつくるが、これは酒粕のボール状に丸めたものに生きたタナゴを突き刺して窒息死させたもの。日本の神饌の原点というのは、荒らぶる神に捧げる生贄だったのだろうなと思えてくる。(実際、住吉神社では一夜官女といって村の娘を神の生贄に差し出していたなんて伝承が由来として紹介されている。)

お供えした後の神饌はどうなっちゃうのだろうと疑問に思ったが、儀式が終わればちゃんと人間が食べるのだそうだ。神様が召しあがったものと同じものを食べることで、神と一体となり霊力をいただくという意味があるとのこと。