Books-Science: 2008年2月アーカイブ

・+6℃ 地球温暖化最悪のシナリオ
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+1℃ 2100年には地上の水の3分の1が失われる。
+2℃ グリーンランドが融けだし、ロンドンの中心部が水に浸かる。
+3℃ 北極の氷は80%失われ、ニューヨークは浸水し、オランダは島に。
+4℃ 永久凍土の融解により二酸化炭素5000億トンが大気中に排出。
+5℃ メキシコが砂漠化。深海のメタンガスが大気中に放出。

第1章が「1℃上昇」、第2章が「2℃上昇」というように各章がそれぞれの温度上昇時の変化を語っている。平均気温がたった1度上がっただけで、新たな由々しき事態が発生する。

「世界の平均気温が5℃上昇すると、まったく別の惑星が登場することになる。われわれが知っている地球とは似ても似つかぬ星だ。氷床は両極から完全に姿を消し、熱帯雨林は焼失。海面が上昇して沿岸の都市をのみ込み、内陸部まで海水が押し寄せる。人類は旱魃と洪水のために、縮小していく居住可能な地域へ集まる。内陸部の気温は今よりも10℃以上も高くなる。」

そして+6℃ではさらに大きな変化が起きる。地球はかつての白亜紀にも同様の急激な気温上昇を経験している。そのとき、海は無酸素になって生物は激減する。海底からメタンガスが空に向かって噴き上がり大爆発を起こす。人類を含む地球の生態系は壊滅するというのが、科学的な予想であるらしい。

気温上昇は現在よりも2℃を超えると不可逆的な変化とになってしまい修復不能になる。それよりも前に温暖化現象を止めないと人類に明るい未来はないのだ。困ったことに明日二酸化炭素の排出をゼロにしても、これまでの排出の効果で1度上昇までは避けられないらしい。つまり、残る猶予はあと1℃であり既に瀬戸際なのである。

政治経済的にはともかく技術的には豊かな国での二酸化炭素排出量の90%削減は不可能ではないそうである。その上で排出権の国際取引市場を設立し、豊かな国が貧しい国の排出量を買い取ることに合意することが極めて重要な温暖化回避策であると著者は述べている。

昨年、シリコンバレーに出かけたら、最近のベンチャーキャピタルはITではなくてクリーンテクノロジー分野のベンチャーに注目していると聞いた。ベンチャー投資による技術革新に期待したいところである(本書は夢のような技術の出現に期待してはいけないという論調だが...)。排出権取引市場に加えて投資家の市場も使って、市場が引き起こした問題を市場で解決するというのは賢いと思うのだが。

・成長の限界 人類の選択
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003701.html

・地球のなおし方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003752.html

・世界の終焉へのいくつものシナリオ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004729.html

・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004210.html

・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004218.html

・感染症は世界史を動かす
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004403.html

・インフルエンザ危機(クライシス)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004247.html