Books-Trivia: 2009年9月アーカイブ

・佐野実のラーメン革命― 麺は男、スープは女
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裸の少年のラーメン紹介コーナーの書籍化。佐野実が厳選した「今食べるべき」ラーメン店を解説する。"佐野JAPAN"座談会と、"ラーメンの神"山岸一雄氏(大勝軒会長)との対談も収録。この番組が発掘した店も多いらしい。

佐野実というのは、私の地元藤沢に最初の店を開いた人ということで、昔から注目しているのだが、正統派のあっさりしょう油ラーメンをつくらせると感動的にうまい。目新しいだけの新具材だとか、こってり系の味噌でごまかすなんてことを絶対にしない人である。この本でもやはりクラシックなこだわりのラーメン店を紹介していく。

中華そば屋伊藤(王子)
六厘舎(大崎)
麺処くるり(市ヶ谷)
きら星(武蔵境)
町田汁場 しおらーめん 進化(町田)

などなど。首都圏中心の30店舗。一般的な百科事典的ガイドブックと違って、ひとつの視点と価値基準で店を厳選しているから、行ってみたい店ばかり見つかった。

収録されている対談ではちゃぶ屋(この店も相当うまい)の森住康二が経営者としての感慨を率直に述べているところが印象的だった。新世代の売れっ子なのに厳しい認識。

「森住
 経営者と職人の違いって、身を削れるかどうかですね。経営者って、やっぱり身を削るんです。社員に給料を払うために自分はとれない時が必ずあるし、個人保証とか、重いものを背負っていかなきゃいけない。身を削るというのは経験しないとわからない。今月の支払いがたりなくても顔に出さない。その積み重ねでね、現場に立つ人間とは違う所で交感神経を使うようになる。命がけですから、ホント。しかも自分の命だけじゃないから。リスクは大きいですよ。博打とか、そんな生やさしいものじゃない。」

これに対して巨匠 大勝軒山岸氏は、修行期間に対して柔軟な考え方をみせていて、意外である。勘のよい人をいかに見つけて育てるか、ということらしい。

「佐野
 昔は10年だったけど、今は1年で店ができますね。
 山岸
 私は3ヶ月でものになる人はなると思っている。軽々しく出展させるなと文句を言われたこともあるけどね。3年、5年とやらせなきゃ本当はだめなんだけど、本人が一番燃えているときに「来い、教えてやるぞ」と言ってすぐ来させる。その短期間でぱぱっと教えて、「人生の試練に打ち勝て」と書いた色紙を持たせて送り出しちゃうわけ。」

佐野実の支那そばや本店は戸塚にあるそうで、この連休にでも食べに行く予定。この本は予習なのでした。

・公認野球規則 2009
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初めて読んだが予想外に内容が面白くて飛ばさず読破。野球観戦が一層楽しくなった。

1.01
野球は、囲いのある競技場で、監督が指揮する9人のプレーヤーから成る二つのチームの間で、一人ないし数人の審判員の権限のもとに、本規則に従って行なわれる競技である。
1.02 
各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。

1.03 
正式試合が終わったとき、本規則によって記録した得点の多い方が、その試合の勝者となる。

<中略>

1.10 バット
(a) バットはなめらかな棒であり、太さはその最も太い部分の直径が二インチ四分の三(七・〇センチ)以下、長さ四二インチ(一〇六・七センチ以下)であることが必要である。バットは一本の木材で作られるべきである。

1.11
(e)ユニフォームには、野球ボールをかたどったり、連想させるような模様をつけてはならない。


規則を知らなければ"正式試合"を開始することさえできない。野球で試合を開始するにはまず何をすべきか知っているだろうか。答えは、

「まず、ホームチームの監督が、球審に二通の打順表を手渡す。」

である。へええ。次にビジティングチームの監督が同様に球審に渡し、球審は同一を確認した後、両チームに手渡すのである。

「5.03 まず投手は打者に投球する。その投球を打つか打たないかは打者が選択する。」なんていう、あったりまえじゃねえかという項目もある。規則だから全部書いてあるのだ。

野球規則のなかで特に思想が感じられるのが「6.07 打撃表に誤りがあった場合」の「ただし」以降である。

「打順表に記載されている打者が、その番のときに打たないで、番でない打者(不正位打者)が打撃を完了した(走者となるか、アウトとなった)後、相手方がこの誤りを発見してアピールすれば、正位打者はアウトを宣告される。 ただし、不正位打者の打撃完了前ならば、正位打者は不正位打者の得たストライクおよびボールのカウントを受け継いで、これに代わって打撃につくことはさしつかえない。

つまり攻撃側が打順を間違えても、守備側が相手の誤りを球審に指摘せず、次の打者の「投手の投球」が行われてしまうと、不正位打者は正位打者と認定されるものなのだ。そして審判は誤りに気づいても指摘してはいけない。プレイヤーの不断の注意とアピールが野球精神の原則となっているのだ。

競技場や用具の細則、用語の定義など細部も面白い。ボークの規定、準備投球の制限、監督が投手のもとへ行く制限、審判員の報告義務、など、あまり考えてみなかったところも細かく決まっているのである。