Books-Trivia: 2011年4月アーカイブ

・本当は怖いだけじゃない放射線の話
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「放射線を正しく怖がる」ためのガイドブック。

福島第一原発事故よりもだいぶ前に出版されている内容。テレビやネットの情報を読みこんでいる人には常識となってしまった知識もあるが、まとめとして意味あり。

著者は放射線を「塩」みたいなものだ、とたとえる。

「生命は海で生まれたから体内に海水と同じ濃度の塩分を持っている───という有名な話をご存じのはず。だから何を食べても塩分を摂取していることになるし、適度の塩分がないと生命を維持することもできない。 しかし、摂取量が多すぎると高血圧を引き起こしやすくなる。一日あたり十グラムを超えるあたりから、高血圧になる可能性が"確率的"に上がってくるとされる。 さらに摂取量がヒトケタ上がると、生命が危険にさらされる。一度に二百グラムを超えて摂るようなことがあると、ほぼ"確定的"に死に至るとされる。」

自然放射線は一年間に平均2.4ミリシーベルト、一週間に0.04~0.05ミリシーベルトあるが、1年間に20ミリシーベルト、つまり年間平均の10倍ほどならば、50年間にわたって浴び続けても、急性の影響はない。逆に微量の放射線が、がんや白血病を抑える可能性があるとする「ホルミシス効果」という説を紹介している。

ホルミスシス効果が本当だとすると首都圏の人間は今回の被曝の影響で健康になるかもしれず心配がなくなるが、低線量の長期被曝の人体への影響は研究者によって異なっている。微量でも十年後のがんの発病率を高めるという研究結果もあるので注意は必要である。この本は基本的に"本当は怖いだけじゃない"というスタンスで解説している。

最悪の事故として報道されるチェルノブイリについても、

「事故が発生した翌日に、チェルノブイリ周辺の空中では、一時間に平均して十ミリシーベルトの放射線量が測定されたことから、住民に避難命令が出されている。発電所を中心とした、三十キロ圏内から避難した住民が受けた放射線の量は、平均して三十三ミリシーベルトと評価されている。」

という実態とともに、事故から十四年後でも住民のガンは、事故時の小児ガン以外は増えなかったとし、遺伝的影響もなかったとする。

放射線は異常で怖いものではない
人間の身体は放射線を出している
自然放射線の強い地域ではガンの死亡率が低い
放射線で損傷した細胞は修復される

など、放射線についての過度の不安を解消してくれるガイドブック。

未解明の部分も多そうな低線量被曝は、注意するに越したことはないが、心配し過ぎるとストレスでガンになる可能性もある。