Books-Trivia: 2011年6月アーカイブ

・かぜの科学―もっとも身近な病の生態
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これは素晴らしい。全人類に強くおすすめ。

統計によると私たちは一生に200回風邪をひくそうだ。成人は少なくとも年に2回、小児は10回以上かかる。

「もちろん、一回一回の罹患そのものは大したことではない。けれども、一人の人が平均寿命のうちにこの取り立てて悪性でもない病原体に苦しむ期間を合計すれば、およそ五年間にわたって鼻づまり、咳、頭痛、喉の痛みに襲われ、おおまかに言って一年間床につく計算になる。」

全人類が長い間悩まされてきた風邪には俗説の療法も多い。どうするとうつるのか、どうすると予防できるのか、どうすると治るのか。この本は科学的観点からいえることを整理してくれる。

一般常識を打ち破る事実も多く、目からうろこな本である。

たとえば、

・咳やくしゃみによって発生する飛沫が風邪を広めるという証拠はないに等しい
・鼻をかんでも鼻が詰まった感じはとれない(鼻水のせいではなく奥の炎症が原因だから)
・歳をとるとウィルス抗体を得て風邪を引きにくくなる。50歳以上は10代の半分。
・寒さと風邪のかかりやすさには何の関連もない。寒くしたのが風邪の理由ではない。
・睡眠7時間以下の人は8時間以上の人の3倍も風邪をひきやすい
・0から6歳の間にお金持ちの家に育った子供は一生風邪をひきにくい体質
・外向性の人は内向性の人より風邪をひかない
・マスクは感染予防の効果がほとんどない
・総合感冒薬は役に立たない(ウィルスはいっぱい種類がある)
・風邪は防衛反応であり、活発な免疫系を持つ人が弱い免疫系を持つ人よりも風邪の症状に苦しむ

ざっと結論だけ列挙してしまったがこれらの科学的説明が読み物として非常に面白い。

大半の風邪ウィルスは鼻と目が侵入口で、直接の接触で感染しているそうだ。だから、なによりも風邪を予防するには、手を洗って、顔を触らないこと。観察調査によると、私たちの大半が5分に1~3回顔を触っており、1日に換算すると200~600回にもなる。具体的には目をこすったり、鼻をほじったりする。指にウィルスが付着する。鼻でウィルスが増殖すると増殖して風邪を発症する。目と鼻はつながっているので、目をこするのもいけないのだ。

ウィルスは指から、ドアノブ、電気のスイッチ、エレベーターのボタン、紙幣、お菓子を食べる女性のオフィス机などを介して広がっていく。私たちが心配しがちな空気感染というのは、インフルエンザではない一般的な風邪ウィルスでは、あまり起きないものだというのは役立つ知識だ。一緒に暮らしたり熱烈なキスをしても8%くらいしかうつらないという実験結果がある。それから予防ではマスクはあまり効果がない(そもそも日本以外ではマスクが一般に普及していないという事実も)。

そして風邪をひいてしまったら?。喉の痛みにはティースプーン2分の1杯の塩水でのうがいが効く。総合感冒薬ではなく、症状に的を絞った単成分の薬で治す。そしてしっかり眠る。まあ当たり前のことではあるが。

風邪は数百種類のウィルスによるものであって、ピンポイントな特効薬が存在しない。この本によると、世にある多くの治療法は科学的には効かないのだが、効くと思えば効くというプラシーボ効果もある。読んでしまうと、これまで効いていたプラシーボ効果も消えてしまうかもしれないのだが、少なくとも予防部分は風邪の季節を安心して過ごすために必読だと思う。

・トゥーランドット 蝶々夫人 ラ・ボエーム
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里中満智子が名作オペラを漫画化するシリーズ。

ヤマハの楽器屋さんでみつけて、プッチーニの巻を手に取ったら意外にもはまった。

なかなか見に行く機会がない有名なオペラ作品を、漫画で、ああ、こういう話なのね、とあらすじを知ることができる。一流の漫画家の里中満智子なだけあって、あらすじがわかる以上に、鑑賞に値するレベルの作品に仕上げている。少女マンガとオペラはかなり相性がいい。

『トゥーランドット』の舞台は中国、『蝶々夫人』はの舞台日本。求婚者に謎かけをして答えられなければ殺す王女と、外国人の夫を従順に待ち続ける日本女性。どちらもかなり西欧人バイアスで誇張された創作世界なのだけれど、その分、実にドラマチック。

他にも名作オペラがいろいろある。

・椿姫―アイーダ/リゴレット/マクベス
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フィガロの結婚―魔笛/ドン・ジョバンニ/セビリアの理髪師
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カルメン/トリスタンとイゾルデ/サムソンとデリラ
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