Books-Trivia: 2012年4月アーカイブ

・私が愛した大河ドラマ
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「NHK大河ドラマですかぁ、うーん.....観てないですねえ、ここ二十年くらい」という書き出しではじめたみなもと太郎が、草創期の大河ドラマへの熱い思いを語っていたり、NHK大河ドラマが「もはや米の飯のようなもの」という小谷野敦が、自分が原作者になりたいと言い出したり、松村邦洋がやたら大河マニアとして「次は足利義満の時代を」と提言したり、大河ドラマ好きの著名人や元製作者たち15人のエッセイ集。第一作『花の生涯』から第50作『お江』までの資料集もついている(視聴率一覧も含む)。

大河ドラマに対しては大きく、歴史忠実派とホームドラマ派があることが鮮明になる。

著述家 宝泉薫氏が初期の大河ドラマは時代背景の説明にも時間を費やして、今日と人間の考え方が違いますからという注釈が前提となっていたが、「現在の大河は、今も昔も人間は変わらないという視点に立ち、ホームドラマ感覚でその時代を身近に引き寄せようとする。」と指摘している。

ジャーナリスト田岡俊次氏は「また概して大河ドラマには主婦層を引きつけようとの狙いか、あるいは脚本家に女性が少なくないためか、少女的な情緒性が感じられる場面がよくあって品格を下げている」と批判する。

松村邦洋氏の大河ドラマの楽しみ方には深く共感。「大河ドラマは、それだけで見てももちろん楽しめますが、ボクはたとえばドラマで描かれた時代を解説した本などを脇に置いて、照らし合わせて楽しむのが好きです。相乗効果というか、ドラマの背景をより深く理解することで、物語の楽しさが何倍にも膨らむような気がするんです。」

有識者たちの意見を読み込むと、要は歴史性とドラマ性のバランスをとることが重要ということになる。で、私は熱心に毎週欠かさず見ている『平清盛』がなぜ低視聴率なのか、考えてみた。

・視聴者の歴史知識が不足
 戦国時代の武将や幕末の志士と比べると、源平合戦は背景知識が十分に共有されていない。

・登場人物の関係が複雑
 天皇家、藤原摂関家、源氏、平氏と勢力が入り乱れるうえ、院政と摂関政治で権力構造も複雑。平家は名前が○盛と似た人物が十人以上いるため、とにかく名前と関係を覚えにくい。

・エキセントリックな人物像が多い
 白河法皇、鳥羽上皇、藤原道長、後白河法皇など、かなり魑魅魍魎的エキセントリックな人物像が強調されていて、共感しにくい。

・近親相姦や男色をもろに描いてしまった
 現代とは違う倫理観があったことを描こうとして、日曜夜のお茶の間で子供と見るにはやっかいな展開がいっぱいになってしまった。藤原道長の男色趣味などは資料に残っているし、正しいのでしょうが。

・清盛が活躍しない前半
 30代終わりの保元の乱、平治の乱で頭角を現すまで平清盛は歴史の表舞台の人間ではなかったといえる。前半は目立った活躍をせず、大物に振り回される役割に見えてしまい、応援したいキャラになっていない。

といったことがあるが、この本の軸で考えると歴史重視に振り過ぎて、ドラマを忘れてしまったのがおそらく敗因なのだ。

この本のエッセイでは、過去50作で視聴率的には不発に終わったが、有識者には高い評価を受けているものがある。物語の中盤から後半、保元の乱、平治の乱で栄華を極めてから壇ノ浦で滅亡するまでが、一番盛り上がるところなわけで、これからの立て直し次第では、後世の評論家の高い評価も得られるのではないかと思った。

・先祖を千年、遡る
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家系図作成と先祖さがしを仕事とする行政書士が書いた方法論。年間50件以上の先祖さがしを依頼される著者によると、日本の現在の家の半分くらいは藤原氏や天皇家の末裔だという。1000年もさかのぼっていけば、多くの家が、天皇家、源氏、平氏、その他有力氏族につながってしまうらしい。要するに1000年以上もの平たんではない歴史の荒波を生き残ってきた我々は、何らかの形で過去の勝ち組であり、エリートの血筋なのだ。万歳。

まずは200年を遡る。明治期の戸籍まで取得できれば幕末生まれのご先祖様が判明してそれくらいまでいける。次の目標が400年で、過去帳や人別帳、古い墓を探し当てられれば
わかるが、戦国時代に資料が焼失していることが多いそうだ。そしてさらに古い家系図とつなぐことができたら最終目標の1000年前の先祖がみつかる。もちろん簡単ではなさそう。そこで戸籍の読み方、古文書の探し方、墓石の拓本とりまで、先祖さがしを自分でやる際のノウハウがまとめらている。

500年以上遡ると今とは違う名字になるのが一般的だという事実ははじめて知った。たとえばもともとは藤原家であっても、佐藤さん(左衛門尉の藤原氏)、伊藤さん(伊勢守の藤原氏)、工藤さん(なんだっけ)みたいに変化している。現代の名字と中世の先祖の名字は違うかもしれないのだ。名字を一字変更して分家するというのは現代人にはよくわからない感覚だが、昔はありだったわけだ。おかげで先祖を調べるのが大変になる原因となっている。

面白い本だった。絆ブームの現在、家系図探しに興味を持つ人も増えていそうだ。

ところで家系図探しは日本より海外のほうが盛んだ。渡来民はいるものの、だいたい列島の中に住んでいた日本人と比べたら、欧米ではグローバルに人間の移動があるから、家系図はさらにダイナミックになる。世界最大の家系図作成サイトのMyheritageには9億8000万人もの人間が登録されていて、日々つながっていっている。最終的には日本人もまたこのグローバル家系図とつながって、出アフリカまでたどれるようになるのかもしれない。

Myheritage
http://www.myheritage.com/