Culture: 2010年12月アーカイブ

・[Disney@HOMEオリジナル・ブランケット2010付] Disney's クリスマス・キャロル ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray] (初回限定)
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う、怖いが第一印象。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ/一期一会 』『ベオウルフ/呪われし勇者 』などを撮ったロバートゼメキス監督作品。主演はジム・キャリー。

ディズニーのクリスマスキャロルだからいいかなと思って小学校1年生の息子と見たのですが、失敗。ちょっと怖すぎてファミリー視聴には向きません。主役の老人スクルージの皺の質感までリアルに感じさせる高精細CGが売りの作品ですが、マーレイの幽霊やクリスマスの精霊の恐ろしい姿もまた超高精細に描かれています。ささやき声が多いため、サラウンドで大きめの音で視聴していましたが、迫力がありすぎて幽霊と精霊の登場シーンは子供が泣きそう。ほとんどホラーでした。

大人の目ではなかなかよかったです。

ディケンズ原作の再現を重視していて、時代背景やキリスト教などの説明的な演出は控えめになっています(だから子供にはわかりにくい)。当時の人々のファッションやヴィクトリア朝時代のロンドンを、考証の上で美しくCGで再現しています。これまでに50作品以上も映画が作られてきた作品だそうですが、これはディズニーのアニメCGなのに、まるで視聴者に媚びない、本格派、メッセージ性の高いクリスマス・キャロルといえます。

ジムキャリーは主役のスクルージの声と同時に、過去・現在・未来のクリスマスの精霊の声を担当しています。その事実に私はキャスト情報を見るまで気がつかなかったのですが、精霊はそもそも内面の声なのですし、よく練られた設定だなあと思いました。

クリスマスキャロルの意味を真面目に深く考えさせる作品だと思います。

ディケンズの小説が好きな大人のカップル向け、でしょうか。

・ミッキーのクリスマスキャロル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/post-494.html

ラース・フォン・トリアー監督脚本の「機会の土地-アメリカ」三部作のうちの既に公開された2作品を観た。演劇舞台とナレーションを使った前衛的な表現にひきこまれた。

両作品とも倉庫のようなだだっ広い空間のみが映画の舞台。床には白線が描かれていて、それが家の境界線を表す。後は簡易的なセットがあるだけ。十数人の村人たちは、壁があるふり、ドアがあるふりをして、それぞれの家での家族の生活を演じている。カメラはその演技を追うのだ。

・ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
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大恐慌時代のロッキー山脈のさびれた鉱山町ドッグヴィル。貧しく保守的で平和な村に、ある日、ギャングに追われた娘グレース(ニコール・キッドマン)が迷い込む。村人たちは道徳心から彼女をかくまってやることにする。グレースはその代わり、村人たちのために奉仕労働をすることを約束した。

親切な村人たちと献身的なグレースの間に平穏な日々が続くが、ギャングの追手や警察の捜査が始まると、村人たちはグレースをかくまっていることに不安を感じ始める。当初は歓迎されたグレースの奉仕労働も、日常化することでだんだんとありがたみが薄れていき、奉仕を受けるのは村人たちはそれが当然の権利であるかのような冷たい態度に変わっていく。

ドッグヴィルは現実社会の縮図である。

経済的、法律的基盤を持たない善意、道徳の限界
多数決による意思決定で行われる暴力
異質を排除するムラ社会の宿命

村人たちとグレースの間の小さな軋轢は、日がたつにつれ雪だるま式に大きくなって、やがて目を覆いたくなるような残酷な悲劇を引き起こす。衝撃のラストに唖然とする。

・マンダレイ デラックス版 [DVD]
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マンダレイは続編。ドッグヴィルを去って、アラバマ州の大農場マンダレイにやってきたグレースの物語。

マンダレイの農園では80年前に廃止されたはずの奴隷制度が続いていた。自由を愛するグレースは、ちょうど女主人が倒れたのを機に、白人に支配されている黒人奴隷たちを解放してやる。そして、どう生きていったらよいか不安に感じるという黒人たちとともに、民主的コミュニティを設立して、自分たちの農園を作る共同生活を始めた。

自由と束縛。支配と服従。権力と暴力。

白人のグレースは古いアメリカ的な精神の象徴である。よかれと思って、黒人たちを解放してやり、民主主義を教えてやろうとする。だが黒人たちはグレースの行為に対して不信感や疑念を隠さない。解放されると本当に自分たちの生活はよくなるのか?生活基盤を失っただけではないのか?、と。それでもグレースは自身の信念を推し進めていく。

民主主義を支えているのは実は暴力装置としての権力なのであるということ
被支配と服従が必ずしも不幸ではない。自由ならば必ず幸せということではない。
おしきせの善意がときとして暴力となること

これも深く人間集団の本質を考えさせられる作品である。

このシリーズは3部作で完結編『ワシントン』は未公開。一話ずつで完結しているが、最終作品がどうなるのかが楽しみである。