顔面技術

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■脳には生まれつき顔を認知する機能がある

プロデューサのW氏と仕事の打ち合わせ。アイデアマンのW氏は話題が豊富。いつも必要なことを決めてしまうと、後は話題は脱線して、延々と話してしまう。私とW氏は過去に24時間不眠休憩なしでぶっつづけの企画会議をやった過去がある。話は尽きない。この人とは雑談から生まれたアイデアが仕事になってきた過去もあり、今日も気合をいれて雑談する。

彼の会社はビデオカメラで顔のパーツの配置を機械的に読み取り、似顔絵を描く技術や、顔写真にお化粧を施すリアルタイム合成技術を企画開発していたりする。名刺と名前が一致しないという話題から、顔にまつわる話になった。ちょうど私も人間の顔について考えていたのだ。

私は記憶力があまり良くない。特に顔は苦手で、パーティなどで会った人、過去の取引先の担当者の顔を忘れる。こちらは分からないのに、相手は分かっている。この非対称な関係はビジネス上で、それだけで大変弱い立場に立たされてしまう。名刺など差し出そうものなら「あれ?何か変わられましたか?」と返されて、深手を負うこと間違いなし。

昔読んだ記事に、ある著名ホテルのドアマンは1万人以上のお客の顔と名前を一致させることができ、20年以上その記憶を保持し続けるという話が載っていた。そういうことができれば私の営業力もだいぶ違っているんだろうなと羨ましく思う。

だが、ComputerSocietyに掲載された論文を見て、それもやがては機械が解決してくれるかもという希望も見えてきた。

・DegitalDoorman Argus
http://www.computer.org/intelligent/ex2001/pdf/x2014.pdf
digitaldoormanargus01.JPG

「デジタルドアマンシステム」のArgusは、ドアを通過する人物をカメラで認識し特定する。撮影角度や風貌の多少の変化があっても見分ける、アルゴリズムを試験している。私の眼鏡にこの機能が搭載されれば、もう大丈夫だ。

さて、実現の遠い冗談はさておき、人間の顔認識力を使った今使える応用技術は幾つかある。

■チャーノフの顔グラフ

グラフ表示の多彩さで定評のある統計処理ソフトにSTATISTICAがある。このソフトは科学的なデータを、さまざまな統計計算手法を使って分析し、グラフ化するものだが、出力オプションのひとつにチャーノフの顔グラフ形式がある。

・STATISTICA
http://www.statsoft.com/base.html

Chernoff Faces01.JPG

これが、顔グラフである。顔のタテヨコの大きさ、目や鼻の大きさ、口角や眉毛の傾き、輪郭種などに各データの数値の大きさを割り当てることができる。顔の表情の違いは見分けやすいから、平均顔の中に、特異な顔があればすぐ見つかるという脳の顔認知特性を使ったグラフ化手法だ。

さて、どう使うか?。例えば学校の試験の科目別成績を考えてみる。各科目を顔のパーツに割り当てる。国語はクチの大きさ、数学は目の大きさなど。すべての科目で平均点を取った生徒のデータは、すべての顔のパーツが中くらいになるから平均的なタマゴ型の特徴のない顔になる。逆に得意、不得意がはっきりしている生徒の群は、同じように偏った顔になるだろう。全校の生徒の全科目の成績分布の散らばり具合、集団の別れ具合を把握できる。

と、書いたが、本当は私の説明はあまりよくない。さらにうまく使うと、理想的なデータはニッコリ微笑み、良くないデータは泣いた顔になるように割り振るとさらに人が認識しやすくなったりもする。

統計のプロの事例として次のページがある。ここでは居酒屋の見栄えや価格や味に顔のパーツを割り当てて顔グラフを効果的に使っている。

・居酒屋チェーン店のアンケートデータをマイニングする
http://www.doyukan.co.jp/kigyou/datama/datama.04.pdf

■顔によるパスワード認証

こんな実用的な使い方もある。RealUserは、人間の顔記憶の強さをパスワード代わりに使う製品である。

・RealUser
http://www.realuser.com/

ユーザはパスワードの代わりに、5人の見知らぬ顔の組み合わせを設定する。最初に3×3の升目グリッドに無作為に9人の顔が表示されるので、そのうちの1人をPassfaceと決める。これを5回繰り返し、5人のPassfaceを選び、記憶する。練習セッションが終わって記憶が確認できたら、Passface認証が使えるようになる。

realuser01.JPG

ユーザはシステムにログインしようとすると、9人の顔から1人のPassFaceを選ぶ作業を5回連続で試され、5回とも連続して当てれば認証される仕掛けだ。

一見3×3のグリッドパターンは単純すぎるようにも思えるが、実際には、3×3のグリッドからPassfaceを5回、無作為に選んだだけでは59049回に一度しか認証をパスすることはできない。これならば日常的な認証機構としては十分に使えるレベルのセキュリティを持っている。また3×3のグリッドは数字入力キーに割り当てることが可能なのでインタフェースとしてもちょうどよい大きさである。 デモで体験できるので試してみると面白い。

・RealUserの科学的根拠論文
http://www.realuser.com/published/ScienceBehindPassfaces.pdf

このペーパーには、

・人間の赤ん坊は生後1時間で顔を認識できる
・生後2日で赤ん坊は母親の顔を見分けることができる
・人はよく知っている人の顔は20ミリ秒で認識できる
・ある実験では35年ぶりの同窓会で90%の参加者が顔を正しく認識できた

といった事実が述べられており、顔を見る能力は生得的なものであり、他のモノを見るときとは異なる特別な能力であるという。

他の脳科学の本を読んでも、人間にはうまれつき顔に対しては特別な認知モジュールがあると書かれている。生物は生存のために環境に適応するが、進化した人間にとっては人間社会こそが生存環境であり、そこでは顔を見分ける能力は必須といえる。だから、人間の顔認知と記憶の能力は突出していると言われる。

■似顔絵をランダム自動作成するフリーソフト

こんなものもある。

・モンタージュ似太郎

http://www1.mahoroba.ne.jp/~matumoto/soft.html
nitaro01.JPG

似顔絵作成ソフト。線画でまるで警察の手配モンタージュのような似顔絵を作成できる。福笑いのように目鼻や口のパーツを配置するのだが、楽しいのは顔を指定人数分ランダムに合成してしまう機能。一定間隔で次々に、どこかにいそうな顔が表示される。

絵心がある人間でないと、福笑いで誰かに似た似顔絵を作るのは難しいものだが、何百人も似顔絵をランダム合成していくと、そのうち似た顔が見つかる。そのデータをベースに似顔絵を整形していくと目的の顔が出来上がるから便利。


と、幾つか紹介してみたけれどまだまだあるので顔面技術第2弾をそのうちに。

そーいえば、お札が道端に落ちているとすぐ気がつきますね?(守銭奴か私は...)。この認知も特別なものだとしたら、何か応用はないかな?。

参考URL:

顔といえば顔のウィルスに気をつけてください。ところで誰なんでしょう?彼女。

・メール本文に女性の顔写真を表示するウイルス「BackDoor-AWQ.b」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/08/1690.html

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関沢 :

こんな記事もあります。

・サルの顔も見分ける?赤ちゃんの認識能力
http://www.sciencenews.org/20020518/fob1.asp

確かに自分の親を見分けるのは、生き残るために必要な能力だったのだと思います。

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このページは、daiyaが2004年1月 9日 00:00に書いたブログ記事です。

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