1905年、ベルリンの上流階級の青年が見聞を広めるために休職し世界一周旅行に旅立った。アメリカ、日本、朝鮮、中国、インドネシア、インド、スリランカなどを1年半かけて周遊し、各地の風景、風物をカメラで記録に残した。彩色が施されて疑似カラー化された写真はどれも傑作ぞろい。100年前の世界中にタイムスリップできる写真+紀行文のビジュアルブック(ナショナル・ジオグラフィック刊)。
シルクハットやロングスカートの人々が行きかうニューヨークや、カウボーイが馬車に乗り西部劇の舞台のようなアメリカの町、辮髪の男たちが闊歩する中国の道、など古い歴史物の映画を見ているような気分になるが、セットではなくすべてが本物。
4カ月滞在した日本の印象は特に素晴らしかったようで、「この上なく清潔で異国情緒にあふれ、細かい心遣いが行き届いた旅館」に感動し、「一気に体にまわり、華やいだ気分にさせる」燗酒に酔って、「エロチシズムを感じさせない女優や歌手のよう」な芸者たちと楽しく交流したことが記録されている。
「当時日本では、ビフテキはヨーロッパ人に対する最高級のもてなしだと信じられていた。直立不動の役人と通訳の脇で、私はこの巨大なビフテキを食べ始めた。幸い私はまだ若く、食欲は旺盛で胃も丈夫だったので、さほど苦労せずに食べることができた。この儀式に時間をかけては失礼にあたる、と同時に一口噛んでは会話を続ける必要に迫られ、それがさらに状況を複雑にした。」
30歳の時の世界旅行だったが、紀行文が書かれたのは実にその50年後、著者80歳の時だったそうだ。50年の間に著者は結婚し、子供をもうけた。世界大戦があり、ナチスを嫌った著者はドイツ国籍を捨てた。兄弟や友人の多くは亡くなっている。遠い日の思い出として自分の青春時代を回想してこれを書き下ろした。こんな走馬灯が見られる晩年ってうらやましい。若い時にいい旅をするってことは意味があるのだ。
写真が本当に素晴らしい。2時間ほど意識が時空を飛んだ。
ジャック・アタリが「21世紀の歴史」で示したビジョンから、金融危機後の世界を予測する。金融危機を2007年2月から時系列で追ったドキュメント「世界金融危機」と、近い将来に発生しうる最悪の事態の描写、それを避けるための提言からなる。
「危機へと導いた一連の出来事は、アメリカをはじめとする、すべての先進国における社会的不平等の拡大からスタートした。すなわち、社会的格差の拡大こそが、需要にブレーキをかけたのだ。こうした事態が進行したのは、アメリカが、自国の金融システムを「公正なる」所得分配制度として採用することについて、社会から暗黙の了解を取り付けたからである。 さらにはアメリカの金融システムの潜在能力により、監視(規制)されることのない新たな金融商品が開発された。これらの金融商品により、アメリカの金融システムは、儲けまくると同時に借金を膨らませることができた。こうして自らが抱える諸問題は隠ぺいされ、問題を、ロンドン市場・ウォール街・オフショア金融市場などを経由して、他に移し変え、また輸出することができた。」
アタリは現代の金融危機とはアメリカと金融業界の節操のなさが原因であり、結果として「若年層の相対的な減少と所得の偏りによる危機」を招いたと要約している。このまま社会的不平等の拡大と無軌道な金融商品の開発が続くならば、ハイパーインフレや世界大戦という最悪の事態が訪れるぞと警鐘を鳴らす。
今、各国政府は民間機関の債務を政府(納税者)の債務につけかえることで、問題を先送りしているが、それではカタストロフは避けれれない。じゃあ、どうするというところで、
「世界的危機を回避するためには、グローバル化した市場を政治化することが必要であり、地球規模の法整備が求められる。また、経済の主役の座から金融を降板させる必要がある。」
というのがアタリの考え方だ。そのための改革プログラムが後半ではいくつも提案されている。国際金融システムへの規制と、世界統治システムの構築、地球規模の大型公共事業...。フランス大統領顧問だけに政策提言のスケールは大きい。
アタリは前著「未来の歴史」に詳しいが世界を動かす根本原理に、自由に向かう人類の普遍的な性質をおいている。"アメリカ"も金融市場も、自由を求める欲望がつくりだしたものだ。意思も持たない目的ももたない「ゴーレム」としての市場原理や民主主義が暴走した場合、誰がそれを止めるのか?という難問とアタリは格闘している。
感想としては、道徳でそれを制するというのは、かなり難しいことなのではないだろうかと思った。欲望を欲望で制するような、したたかなプラン、欲望経済のオルタナティブな(しかもエコな)収束点を未来ビジョンとして提示してみせること、それができるリーダーの登場が必要なのだと思う。オバマではまだ足りない。
・21世紀の歴史――未来の人類から見た世界
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/21-1.html
名著
・図説「愛」の歴史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1104.html
これもアタリ
・リンケージ Infinity リチウムポリマー内臓 AC充電器 大容量2000mAh 海外対応 USB接続タイプ 携帯電話、iPod、iPhone、mp3プレーヤー、DSi、DSLite、PSPなどに ブラック ACLD-04B
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iPhoneの最大の弱点は電池であると思う。普通に使っていれば結構長持ちするのかもしれないが、アプリをたくさんいれてガンガンつかってしまうと半日しか持たない。外出先での充電は必須になる。
このリンケージ Infinity リチウムポリマー内臓 AC充電器は、iPod、iPhone、mp3プレーヤー、DSi、DSLite、PSPに対応したモバイル充電器。各機器に対応したUSBケーブルを使って接続する。
この充電器の特徴はバックライト付き液晶表示で、電池残量をわかりやすく表示していること。iPhoneなら2回充電できる大容量だが、残量表示があることで安心感がさらに倍増する。おかげで外出先で電池切れした知人を、私は何度もこれで助けてあげることができた。残量がわかるからこそ太っ腹に提供できるのだ(笑)。
家庭用コンセントを内蔵しており、単体で充電が可能。本体充電中でもUSB機器充電が可能(機器が優先らしい)なので、家や会社ではとりあえず、この充電器経由で充電しておけば間違いない。
注意:この製品にポンデライオンはついてきません。
妻が絶賛愛用しているiPhoneケースを紹介。
このケースは「クレジットカードや 「Suica」 「TOICA」 「ICOCA」 などの電子マネーカードを入れれば、iPhoneが、おサイフケータイになる」というのが売り。iPhoneをタッチするだけで、電車の改札を通ることができる。携帯電話時代にはできていたけど、iPhoneにしたらできなくなってしまった便利を取り戻せる。
カードは2枚重ねて入れることができる。妻の場合は、SUICAとNANACOを併用しているが、2枚重ねにするとSUICA使用はOKだが、NANACOは読み取り時に干渉するらしく、取り出して使っているそうだ。
液晶保護シート・本体保護シート、クリーニングクロスが付属している。それを考えるとそれほど高くはないか。
ちなみに上の写真ではポンデライオンのマスコットがぶらさがっているが、このケースにストラップ穴があるわけではない。細い紐でジャケットの端に無理やり結び付けている。保証外でしょうが、こういう使い方もあります、ということで。
・人間集団における人望の研究―二人以上の部下を持つ人のために

俗に「人望がある」とか「人徳がある」というが、俗にではなくて厳密にそれってどういうことなのか、明解な答えを学べる本。「空気の研究」山本七平による昭和に書かれた名著。
その答えとはすなわち次の「九徳」を備えているタイプだという。
寛にして栗 寛大だが、締まりがある
柔にして立 柔和だが、事が処理できる
愿にして恭 まじめだが、ていねいで、つっけんどんでない
乱にして敬 事を収める能力があるが慎み深い
擾にして毅 おとなしいが内が強い
直にして温 正直、率直だが温和
簡にして廉 大まかだが、しっかりしている
剛にして塞 剛健だが内も充実
彊にして義 強勇だが義しい
9つの徳は朱子学の入門書『近思録』よりきている(この本は戦前は広く読まれたものであったらしい。)。これらの徳にすべて欠ける(寛大でなくて、締りがないのような状態)と十八不徳といって最悪の人間だが、大体は寛大だが、締りがない、のように一方が欠けた九不徳が普通の人間になる。人望のある有徳の人になるには「中庸」というバランスが大切なのだ。「中庸」という自己統御を通じて、それを他に及ぼしていく状態を現出した人が「人望のある人」なのであると説いている。
「人気」と「人望」が混同されることがあるが、この二つは別物だという指摘が鋭い。舞台では人気役者だが楽屋裏ではまったく人望がない人というタイプがいる。そういう人は部下に慕われない。日本型の平等社会でリーダーに選ばれるのは、学歴や能力を超えた評価基準としての人望を備えた人なのである。人気がある人は非常識であるが故に人気があるということも多い。非常識では人望は取れない。同じ能力ならば中庸な人が選ばれるということになる。
読んでいて思ったのは、でも日本の国政選挙って人気で選ばれてしまうよなあ、ということ。中庸というのは、つきあってこそわかるもので、メディアやネットを通すとなかなか伝わらないものなのではないだろうか。中庸な人の落ち着き・風格というのは、目立ちたがり屋の競争社会=アテンションエコノミーにおいては不利に働く属性なのだと思う。
山本は「「空気」の研究」で、日本的な組織では、ホンネの投票とタテマエの投票を二回やって平均をとれば良い決定ができるというアイデアを披露していた。そこで私も考えてみたのだが、選挙では、候補者の身近な人の360度評価の開示とともに普通の選挙を行うというような改善案はどうだろうか。へえ、あの人は有名人だけど人望度は低いのね、投票するのはやめておこう、なんて判断ができるようになるのではないか。
・「空気」の研究
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1115.html
プロが教えるアート批評の書き方。美術、音楽、絵画、映画をどう言葉で表現するか。
「そもそもすぐれた芸術作品は、本質的にその芸術固有の媒体(音楽なら音、絵画なら色彩)によってしか表現できないことを表現しています。それを言葉で写し取ることは根本的に不可能なのです。この意味で批評の言葉は本質的な無力をうちに抱え込んでいます。ボードレールは、批評の言葉が理性的な言葉であることはできず、批評自体がひとつの芸術作品となるほかはないというようなことを書いています。」
メディウム・スペシフィックな性質を乗り越えて、言葉にできない感動を敢えて言葉で伝えようとするのがアートの評論行為だ。そこでは普通は悪文とされるものがアートの批評としては名文とされたりする。映画評論家としてのジャン=リュック・ゴダールの華麗なレトリックの例が紹介されていた。これ。
「イングマール・ベルイマンは瞬間の映像作家である。......イングマール・ベルイマンの一本の映画は、こう言ってよければ、一時間半にわたって自らを変貌させ、引きのばし続ける二十四分の一秒である。まばたきとまばたきの間の世界であり、心臓の鼓動と鼓動の間の悲しみであり、拍手のひと打ちとひと打ちの間の生きる喜びなのだ。」
私はこの映画を知らないが、この一説を読むと何かイメージが伝わってくる。引きのばし続ける二十四分の一秒や、心臓の鼓動と鼓動の間の悲しみとは何なのか、実は語っていない不明瞭な文章なのだが、批評対象の魅力は伝わってくる。ある程度は支離滅裂な構成もありなのだ。
「ことは美術に限った話ではないが、批評とは個人の主張を前面に押し出した言説であり、しかも多くの場合、その習慣は客観的な根拠に乏しく、個人の勝手な思い込みに由来している。」
まずこれを認めてしまった上で、さあ、どう書こうかと始める。それが結局、言葉にできないものを言葉で伝える挑戦の第一歩ということらしい。ロジカルさを追究するだけでは感動を呼ぶ文章にならない。そして最終的にはその書き手なりの文体を獲得することが大切だと教えている。
この本はプロのアート系ライターが、いくつものノウハウや試行錯誤、悩み所を解説する小論集。本来は、評論ライターのプロを目指す人向けの本だ。だが、こういう技術はいまや少数の評論家だけの問題ではない。ブログでアートを紹介したり、食べログや価格コムみたいな掲示板に書き込みをするときだって使える"百万人の"技術でもあると思う。
上野千鶴子の"処女喪失作"が四半世紀ぶりに文庫化。カッパブックスから岩波現代文庫へ。
「男は「女らしさ」を振つけし、読みとり、鑑賞し───そしてもちろん、発情する。この「らしさ」のカタログは、男たちの作ったマスメディアの中に、うんざりするほど登場する。いまからお目にかけるのは、広告というもっともポピュラーな媒体に登場する、女たちの「らしさ」のカタログであり、その隠されたメッセージを読みとく手引きである。」
四半世紀経っても男の目から見てのセクシー=「女らしさ」はあまり変わっていないように思える。四つん這いだとか、体をくねらせるとか、流し目、濡れた唇に、男はついついそそられてしまう。広告はそうした男性の心理を利用して、巧妙に商業的メッセージを発信してきた。
「女らしさ」は男性が文法をつくりだす。こんな面白い研究が紹介されている。
「女性がオールヌードでいるところに、突然、男性が現れたとき、彼女は二本の手でまっ先にどこを隠すか?」をある比較行動学者が調べところ、3つの選択肢が見つかった。
1 両手で胸を隠す
2 両手で性器を隠す
3 片手で胸を、片手で性器を隠す
調査結果では先進国の女性はほとんど例外なく両手で胸を隠した。未開社会でトップレスで暮らす女性が下半身は必ず腰巻で覆っているのと対照的な結果になった。これは先進国の文化では乳房がセックスシンボルに変わったからだという。
もともとルイ王朝時代のフランスでは貴族女性のドレスはトップレスで、女性は乳房を堂々と誇示するものであったそうだ。形のよい乳房をつくるためのブラジャーが登場してから、それは隠すものになり、シンボルとしての価値を高めていった経緯があるなんていう歴史も紹介されている。
男性によって規定されたセックスシンボルだが、とっさに女性が胸を隠すようになったというのは興味深い。論理的に考えているわけじゃなくて、自然にそうした行動に出る。俗に性的本能と思われているものは実はかなり深くまで社会的、文化的な創造物なのだ。そして乳房を隠そうとして、体をくねらせる防衛姿勢もまたセクシーのメッセージとして文法に織り込まれていく。
今読んでも面白い、「らしさ」という社会的衣服の読み方、読まれ方、読ませ方を語る本。つまるところ、いい女って何かという問題には、「口説けば落ちる」と男に思わせること、もっというなら「やらせる女」(ビートたけし)のイメージだと答えられている。美術の歴史を古代まで遡ってみても、それってかなり普遍的な真理のようだ。日本神話のイザナギ、イザナミだって誘う男、誘う女という意味があるわけだから「セクシィ・ギャル」は浮ついた話題なんかじゃなくて、人類の大問題なのであるよ。
・裸体とはじらいの文化史―文明化の過程の神話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1064.html
・セックスと科学のイケない関係
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-987.html
・性欲の文化史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1020.html
・日本の女が好きである。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html
・ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-972.html
・ウーマンウォッチング
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-958.html
・愛の空間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/oso.html
・性の用語集
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004793.html
・みんな、気持ちよかった!―人類10万年のセックス史
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005182.html
・ヒトはなぜするのか WHY WE DO IT : Rethinking Sex and the Selfish Gene
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003360.html
・夜這いの民俗学・性愛編
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002358.html
・性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004747.html
・武士道とエロス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004599.html
・男女交際進化論「情交」か「肉交」か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004393.html
「パラダイム」概念の創始者トーマス・クーンの研究。
一般にパラダイムという言葉は「考え方の枠組み」や「新しい物の見方」という程度の意味で使われているが、クーンの原義は「その領域の研究活動を特徴づける模範例となる科学的業績」を指す。枠組みや見方ではないのである。この誤解はクーン自身の乱用も原因だったらしい。クーンは文献の中で21通りもの異なる意味で使っていると他の研究者から指摘されている。そこで「専門母型」という厳密な概念も生み出したが、こちらは流行らなかった。
クーンによると科学の歴史的展開は「前科学→パラダイムの形成→通常科学→変則事例の出現→危機→科学革命→新パラダイムの形成→通常科学」というサイクルを繰り返す。器官として長いのは知識を累積させて連続的に進歩を重ねる通常科学の時代だ。だが、地動説、重力、相対性原理の発見のような新たなパラダイムが形成されると世界観は革新される。クーンはその模範例の出現に科学の断続的で飛躍的発展のきっかけをみた。
同時にふたつのパラダイムを信じることはできない。しかし、通約不能な新旧パラダイムを奉じる科学者同士は、まったくコミュニケーションができないわけではないとクーンは考えた。「あるパラダイムから別のパラダイムへの移行は、それゆえ論理学の問題ではなく、クーンによればそれは社会学や心理学が解明すべき問題なのである。」ともいう。
「コミュニケーションの途絶状態にある参加者たちにできることは、お互いを異なる言語共同体のメンバーと認めた上で、翻訳者となることである」。
その時、翻訳者は常に「唯一の正しい翻訳」を確定できないことを前提としいる。"トンデモ"とか"異端"に対して寛容であることが一流のイノベーターの条件ということになるのだろう。(寛容度を極限まで高めるファイヤアーベントの「知のアナーキズム」も後半でパラダイム論と絡めて論じられている。)
高橋源一郎の明治大学大学院における「言語表現法」講義の書籍化。全13回の授業が学生とのやりとりを含めて収録されている。とてつもない名講義。言葉で語らず、インタラクションで考えさせるという高度な教授法を、毎回繰り出す。
初日、スーザン・ソンタグの「若い読者へのアドバイス」という名文が配られる。死期が近いことを悟った思想家が若者に向けて「心の傾注」という言葉をキーワードに真摯な忠告を短い手紙のように書きつづったものだが、「読み終わったら、その紙から目を上げ、窓の外を眺めてみてください。なんて美しい風景でしょう。このキャンパスのいいところは、こういうものが見られることです。すぐ横に、そんなに美しいものがあるのに、活字ばかり追いかけてはいけません。読んだものは忘れて、見ることに、傾注してください。」と先生。
オバマ大統領の演説、斉藤茂吉のラブレター、しょこたんのブログなど、古今東西の名文を取り上げて読ませる。私は毎回それだけで感動してしまった。読ませた後、その解説講義が始まるのかなと思っていると、この授業では大抵はそうではない。何が大切なのかを考えさせる対話が始まる。考えることが、書くべきことを生みだすのだ。
よく出される宿題もユニークだ。カフカの『変身』と日本国憲法前文を読ませた後に、『変身』の国に憲法があったらどういうものか、次回にみんな書いてこい、と異界の憲法前文を書かせる。一般に詩として認められていないが、あなたが詩だと思うものを集めてきなさいという出題には意外な傑作が日常の中から採取されて集められる。
そして1日だけ休講がある。この日、著者は深刻な人生の困難に見舞われるのだが、それさえも授業の題材として、その次の回で題材に取り上げる。教授と学生の間のライヴな緊張感が伝わってくる。学生から引き出される言葉にも、「本当に君、ただの学生?」と問いたくなるような、名文が飛び出してきたりして、驚きだ。結局、自己や他者との真剣でライヴな対話からこそ、名文も生まれてくるのだと、この授業自体が教えている。
この大学の学生がうらやましい。
・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html
・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html
・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html
・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html
・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html
・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html
・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html
・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html
・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html
・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html
・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html
・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html
・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html
・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html
・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html
・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html
・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html
・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html
・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html
・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html
・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html
・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html
・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html
・文化庁海外展 大英博物館帰国記念 「国宝 土偶展」
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6908

開催期間:2009年12月15日(火)~2010年2月21日(日)
東京上野の国立博物館で開催中の「国宝 土偶展」を見てきました(昨年末の話ですが)。国宝級の有名な土偶・土器が勢ぞろいで、縄文造形マニアにはたまらない内容です。裏表がはっきり見られる配置とライティングもよかった。見学時には必ず音声ガイド(日本語のみ、300円)を借りることをお勧めします。展示につけられた対応番号を押すと、音声解説が聞こえるわけですが、これがよくできていて鑑賞の楽しみが倍増します。
・〈文化庁海外展 大英博物館帰国記念「国宝 土偶展」〉音声ガイド
http://www.ca-mus.co.jp/myguide/myguide-dogu.html
なんとこの音声ガイドはサイトから有料でダウンロードしてiPodなどで聴くこともできるそうです。国立博物館進んでますね。これからは先に音声ガイドを聴いて、おもしろそうだったら展示を見に行くという逆転の発想もありかもしれません。
で、この土偶展は大英博物館からの帰国記念なのですが、同様に昨年、英国博物館に展示されたのが、この宗像教授なのです。ついに星野之宣もグローバルにデビューだと長年のファンとして感動しました。
・日本漫画、大英博物館に大抜擢 「宗像教授」展開催へ
http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY200910240185.html
最新刊『宗像教授異考録 12』ではちょうど縄文土器の謎に迫る話が二編収録されています。土偶はなんのために作られたのかはいまもまだ不明のままですが、女神イザナミの神話と結び付けた宗像説、結構説得力ありました。宗像教授を読んでから土偶展へ行くのがおすすめです。
来週木曜(2月4日)夜に、久々のイベント『テレビとネットの近未来カンファレンス』を開催することになりました。
今回は日本印刷技術協会(JAGAT)様との共催ということと、先日のAppleiPadの発表を受けまして、電子書籍についてお詳しい特別ゲストを招いての緊急番外編という位置づけで開催致します。
差し迫った告知で大変恐縮ですが、ご都合があえば是非お越しください!
・開催概要&申し込みフォーム
https://spreadsheets.google.com/viewform?formkey=dFZfS01MbnVVb3J6cGJwQWR1V0RQdEE6MA
※なお、今回のセミナーについては早期に定員が埋まることが予想 されるため、なるべく早いタイミングでの申し込みをお願いします。 (定員に達し次第、受付機能を停止予定です)
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●開催概要
・日時:2010年2月4日(木) 18:00開場、18:30開演、20:00終了予定
・場所:池袋サンシャインシティ文化会館710号室
・参加人数:例年通り100名程度の来場を想定しています(入場無料)
・二次会については今回は特に企画しません
● 進行予定
1)神田敏晶、橋本大也より2010年のトレンド大予想
2)メタキャストからのクロスメディア提言
(TV 視聴+Twitterの現状、Facebook日本上陸によるソーシャルアプリケーションの展望)
3)緊急開催:ディスカッションの部
「アップルタブレット登場でどうなる、電子出版?」
● 登壇予定者
神田敏晶
ビデオジャーナリスト。神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の企画編集とDTPに携わる。その後、 CD-ROMの制作・販売などを経て、1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオカメラ一台で、世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。現在、impress.TVキャスター、関西大学総合情報学部非常勤講師、デジタルハリウッドスクール非常勤講師。2002年4月1日より日本で法人化。世界で初めての"SNS"をテーマにしたIT-BARを渋谷で展開し、現在は世界で初めてのビデオ投稿スタジオを併設した BAR
「BarTube」を展開中!2007年参議院議員選挙東京選挙区無所属で出馬11200票で落選!
橋本大也
データセクション株式会社取締役会長。起業家。株式会社メタキャスト 取締役。大学時代にインターネットの可能性に目覚め技術ベンチャーを創業。主な著書に『情報力』『情報考学--WEB時代の羅針盤 213冊』『新・データベースメディア戦略。』『アクセスを増やすホームページ革命術』等。(株)早稲田情報技術研究所取締役、(株)日本技芸取締役、、デジタルハリウッド大学准教授、多摩大学大学院経営情報学研究科客員教授等を兼任。
山崎隆広
群馬県立女子大学文学部専任講師/株式会社キャスタリア研究員・編集委員。大学卒業後、出版社での書籍編集、企画等の仕事を経て、ニューヨーク支社立ち上げの為、渡米。その後ニューヨーク大学大学院にてメディア論修士号を取得。帰国後は電子書籍ビジネスの企画・編集などに携わる。2009年より現職。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得
井上大輔
1996年、早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。情報システム部門、マサチューセッツ工科大学(MIT)社費留学、IT企画室、新規事業開発室、経営企画室を経て2005年3月同社を退職。同年4月、メタキャスト社設立
※電子出版の部(ディスカッション)については、当日発表の飛び入りゲストも登場予定です
※入場は無料です。申し込みが定員に達し次第、受付を停止致します。
・開催概要&申し込みフォーム
https://spreadsheets.google.com/viewform?formkey=dFZfS01MbnVVb3J6cGJwQWR1V0RQdEE6MA
iPhoneのカメラ関連アプリだけを集めたムック本。食べ物がキレイに撮影できるアプリ、パノラマ撮影ができる簡単にできるアプリ、撮影した画像を加工するアプリ、Flickrなどにアップロードするアプリ、などなど100種類もある。アプリ画面と写真の作例が豊富に掲載されていて選びやすい。紙で出版する意味のある本だなあと思った。
この本のおかげでまたインストール数が10本くらい増えてしまった。なかでも楽しい体験ができたのが、心霊カメラ。撮影した写真の暗い部分に心霊を浮かび上がらせることができるイタズラアプリ。
・心霊カメラ:これぞ夏の風物詩、奇っ怪な写真アプリで遊ぼうぜ!544
http://www.appbank.net/2009/05/22/iphone-application/26803.php
説明はAppbankが詳しい
以下は私の作例。
↑これは鎌倉の八幡宮で夕方に撮影した池の写真。いかにもなかんじで仕上がった。何もコメントをつけずにFlickrにアップしたら、見ず知らずのイタリア人のおじさんから「un bel lavoro 」というコメントをもらった。驚かせちゃったかなと思ったが、翻訳してみたら「いい仕事!」という意味だそうで...。
こちらは表参道にある青山セントグレース大聖堂の写真。ムンクみたいなゆがんだ顔のゴーストは大聖堂にマッチしている。
ホテルの廊下。完全に真っ暗でなくても出る。個人的にはこれが怖いんですけどね。
知識創造のダイナミズムとケースリサーチに基づく経営学の有効性を語った新書。暗黙知をビジネスにおいていかに扱うかが大きなテーマ。
「社会の現実は自然界のそれと違って、現在の判断が未来の現実を作っていく」。だから過去を見るだけでは将来の確実な見通しを作ることはできない。ビジネスは常に状況に依存する。法則が再現しないことが多い。実証的な経営には限界がある。しかし、だからといって闇雲に、場当たり的な解決や試行錯誤に頼るのは非合理だ。そこでこの本の言う総合的に情報を勘案して将来を見通す力=ビジネス・インサイトが重要になる。
「そうそう、そういう商品が欲しかったんだ」という需要創造型の商品・サービスは、市場調査の結果からでは作り出すことができない。それまでになかった新しい価値の創造は演繹でも帰納でもないアブダクションからこそ生まれてくる。
「消費者が、どのようなインサイトをもっているのかを、言葉で質問しても答えは返ってこない。無意識の中で行われがちな生活課題設定と課題解決だからだ。そこに、「オブザベーション」という手法の価値がある(西川英彦2007)。消費者を観察し、それを通じて彼の生活を追体験し、彼の課題を自分の課題として理解・共感できることが必要になる。これは、次の章で言うところの「対象である消費者への棲み込み」にほかならない。そうして初めて、その商品に向けてのインサイトが現われてくる。」
ビジネスインサイトを得るには、消費者を観察し、その生活を追体験し、その課題を自分の課題として理解・共感できることが必要になるという。成功したITベンチャーの創業者がしばしば技術者であり、自分が最初のユーザーとしてサービスを設計していたという事実は、まさに対象への棲みこみの典型例だと思う。
現実の経営者はどこかで見切って跳ぶ必要がある。そのとき有能な経営者は跳躍の先に何かが潜んでいることを感じ取り、しかもそれが経営的努力に見合う「価値ある何か」であることの確信を持っているものだという。なんだか超能力みたいに思えるが、人間の才能の真理を突いた表現であるように思える。多くの道で達人と呼ばれる人は、暗黙知の直観で対象を正確に見極めることができる。経営者でも同じことが言えたっておかしくはないのである。
・「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち

嫌消費とは、1979年から83年までに生まれた(現在20代後半)バブル後世代に強く現れた消費行動パターンのこと。彼らの生活を調べると、収入が十分にあって、さらに増えても、消費を増やさない傾向が顕著に出ている、という。独自の大規模調査により、欲しがらない若者たちの実態を明らかにし、企業が彼らに物を買わせるにはどうすべきか有効な戦略を分析する。
嫌消費世代の62%は独身社会人で、22%は子育て中、14%は既婚子なし、全体の58%は親と同居している。正規雇用は48%。平均年収は300万円未満が62%を占める。ただし、嫌消費傾向が強いのは、中でも300万円~400万円の常時雇用層であり、必ずしもお金がないから物を買えないというロジックでの消費抑制ではない。むしろ彼らは買い物好き、みせびらかし好きという傾向が認められるそうだ。
嫌消費世代が買わないのは3K(自動車、家電、海外旅行)。逆にゲーム、ファッション、食、家具インテリアなど日常性、必需性、ローリスク性の高いモノを積極的に求める。衣・食・住が3種の神器だ。本書後半では彼らの停滞した消費意識に対して需要刺激の方法論を著者は提案している。
劣等感と、上昇志向、他者指向、競走施行が彼らの世代意識だと著者はいう。14歳で阪神大震災、地下鉄サリン、17歳で金融ビッグバンと相次ぐ金融機関の破たん、大学卒業時に就職氷河期を迎えた彼らは、未来に明るい希望を持てない。10歳以降インフレ体験がなかったため、物価はゆるやかに下降するもの、発売後すぐ買うより待った方が得という経験知を体得してしまった。物を売りたい企業にとっては難敵であり、こうした層がさらに拡大していけば、日本経済の発展に影響する。
「嫌消費は、企業や産業に市場の量的な縮小をもたらすが、変革の機会ももたらす。そして製品革新、売り方やマーケティング革新、産業イノベーションによって、過少消費を最適消費へと変えることができる」と著者は前向きなとらえ方も示している。
嫌消費は恋愛市場における「草食男子」に通じるものを感じる。良い悪いというよりは、もはやそういうものなのであり、がんばって肉食を売るのでなくて、洗練された草食食品をつくってうるべきなのだ。彼らに売れるものは外の世界でも通用するものかもしれない。
ところで本屋でこの本をみたとき、嫌消費というネーミングは、著者やこの本の想定読者層(おじさん、おばさん)の消費は美徳という価値意識を表しているなあと思った。「堅消費」とか「賢消費」だったらだいぶ印象が異なっただろう。余暇と浪費の世代と比較したら、彼らのほうが道徳的に(地球環境的にも)まっとうなのだから。














