2011年12月アーカイブ

このブログでは文房具の紹介も46本の記事を書いてきてきましたが、2011年にこのブログの記事経由で売り上げが多かった製品を5つ紹介します。

【5位】スマートフォンで撮影してデジタル化するノート コクヨ CamiApp
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/camiapp.html

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これは今も常用しています。キャプチャした画像をメールする設定にしておき、メール先をMLのアドレスにしておくと、アナログなノートを簡単にグループ共有することができるようになります。

【4位】
・マルマン A4 ノート ニーモシネ IMAGINATION 5ミリ方眼罫 N180 ブラック
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/03/-a4-imagination-5-n180.html

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マルマンの高品質な高級ノート。見た目がいいということが発想の道具ではとても重要。

【3位】
・普段使いのボールペンの研究。JETSTREAM、ENERGEL EURO、Uni Powertank
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/11/jetstreamenergel-eurouni-power.html

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一番好きなボールペンです。太めの0.7や1.0mmはコクヨのCamiAppとも相性がいいです。

【2位】
・A4 コーネルメソッドノート 5mm方眼
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/03/a4-5mm.html

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セミナーや授業で講師の考えと自分の考えを分けてメモしておきたい時に大変いいですね。

【1位】
・帆布製のDELFONICS ロールペンケース
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/delfonics.html

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くるくるっと丸めて持ち運ぶロールペンケース。文具を見せびらかしたい人におすすめです。

今年このブログの紹介記事を経由してAmazonで販売された本の売り上げ冊数ランキングです。このブログの読者のみなさんが実際に読んでいる本のランキングと言ってもよいと思います。

順位の後のURLは書評記事へ、表紙イメージをクリックすると直接Amazonへ飛びます。

【1位】コクヨの1分間プレゼンテーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/1-9.html

・コクヨの1分間プレゼンテーション
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【2位】ヤバい統計学
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/11/post-1542.html

・ヤバい統計学
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【3位】マンガでわかるWebマーケティング ―Webマーケッター瞳の挑戦!―
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/05/web-web.html

・マンガでわかるWebマーケティング ―Webマーケッター瞳の挑戦
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【4位】一万年の進化爆発 文明が進化を加速した
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/07/post-1472.html

・一万年の進化爆発 文明が進化を加速した
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【5位】ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/12/-87.html

・ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム
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2011年のはてなブックマーク数ランキング

2011年に書いた記事に限定して、各記事のはてなブックマーク数を調べました。アテンションエコノミーのネット空間上で目を引くタイトルとは何かを、毎年、このランキングを見て考えています。

【1位】
スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/100-4.html

【2位】
コクヨの1分間プレゼンテーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/1-9.html

【3位】
「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/post-1433.html

【4位】
ヤバい統計学
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/11/post-1542.html

【5位】
iPhoneのデータのバックアップ先として便利な無料30ギガ Nドライブ App
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/11/iphone30-n-app.html

【6位】
英語のページを辞書引きしながら読む Webブラウザー Tap English in the web
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/03/webtap-english-in-the-web.html

【7位】
天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1390.html

【8位】
ブスがなくなる日
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/06/post-1464.html

【9位】
Gmail、Facebook,Twitter、Evernote、Dropboxなどパーソナルクラウドを高速に横断検索するGreplin
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/gmailfacebooktwitterevernotedr.html

【10位】
教養としてのゲーム史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/09/post-1501.html

【11位】
脳科学は「愛と性の正体」をここまで解いた---人を愛するとき、脳内では何が起きているのか?
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1532.html

【12位】
かぜの科学―もっとも身近な病の生態
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/06/post-1462.html

【13位】
「痴呆老人」は何を見ているか
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/11/post-1539.html

【14位】
創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/07/post-1486.html

【15位】
希望のつくり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/03/post-1410.html

【16位】
人は皆「自分だけは死なない」と思っている -防災オンチの日本人
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/post-1422.html

【17位】
ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1370.html

【18位】
「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/09/post-1503.html

【19位】
なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1383.html

【20位】
Dropboxを使ってiPhone連絡先をバックアップ&リストア
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/dropboxiphone.html


参考 2010年度のランキング

2010年のはてなブックマーク数ランキング
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/12/2010-4.html

清盛

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・清盛
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「一介の武士にすぎなかった清盛が、いかにして太政大臣にまで昇りつめ、歴史を動かすに至ったのか。その人物像を具体的なイメージとして描きたいというのが、この作品を書こうと思い立った動機である。この作品は小説のようなスタイルとなっているけれども、なるべく史料に沿って歴史的な事実を再現し、政治的なメカニズムが読者に伝わるように配慮した。従って完全なフィクションではなく、評伝といっていいものになっている。」(文庫版あとがきより)

大河ドラマの予習はしたいがネタバレするから原作は読みたくない。別の小説で清盛について理解を深めたいという人におすすめ。芥川賞作家 三田 誠広が2000年に史料重視で書きあげた作品。権謀術数で入り乱れる多数の登場人物たち、めまぐるしく変転する政治状況を、長編歴史小説にまとめた。人物の内面を描くことは重視されていないが、かなり正確に人間関係や事実関係が反映されている。院政や摂関政治とはそもそも何かという知識も自然に頭に入るように書かれている。

清盛の時代、頂点であるはずの天皇は名ばかりで、天皇の母方の祖父の関白、天皇の実の父の上皇、武家の長である清盛らの駆け引きで政治は動かされている。彼らが頼りとする陰陽道の学者や寵愛を受ける女御たちも大きな影響力を持っていた。

日本という国は昔からひとりの独裁者というのを許さない国だったのだなと思った。アレキサンダーとかナポレオンとかチンギスハーンみたいな強すぎる独裁者は出てこない、調整能力と集団意思決定が好きな国なのだ。そんな複雑な人間関係の力学の中で、天皇の御落胤かもしれない自身の出自を巧妙に使ってセルフブランディングして、権力の階段を登りつめていったのが清盛であったようだ。


・平清盛 -栄華と退廃の平安を往く-
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/12/post-1565.html

・平家の群像 物語から史実へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1533.html

・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html

・安徳天皇漂海記
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/09/post-445.html
平家物語のバリエーション。

・琵琶法師―"異界"を語る人びと
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1034.html

第二回「スマート読書入門」出版記念セミナー ~ブクログの仕掛け人と考える、ソーシャルメディアと読書の未来

来年、1月25日(水)下記セミナーに出演することになりました。あたらしい読書のかたちをディスカッションしたいと思います。無料イベントです。本とソーシャルメディアが好きな方、ぜひご参加ください。

セミナー詳細 お申込み
http://gs.dhw.ac.jp/event/20120125/

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デジタルハリウッド大学大学院では、修了生・まつもとあつし氏による第二回 出版記念セミナーを開催いたします。

ascii.jpなどに連載を持ち、メディアとITについての現場を追うジャーナリストのまつもと氏は、2011年9月に書籍「スマート読書入門―メモ、本棚、ソーシャルを自在に操る『デジタル読書』」を、技術評論社より出版いたしました。

10月20日に開催しました第一回セミナーでは、アルファブロガーのコグレマサト氏、Lifehacking.jp主宰の堀正岳氏と、読書のみならず、情報術・ノート術・メディアとのつきあい方まで幅広い意見が交わされ、盛況のうちに終了いたしました。

今回の第二回セミナーでは、ヴァーチャル本棚「ブクログ」、電子出版サービス「パブー」を展開するpaperboy&co.の吉田氏、ブログ「情報考学」で書評を蓄積し、デジタルハリウッド大学教授をつとめる橋本大也氏をお招きし、まつもと氏の進行のもと、新しい「読書」の姿を探ります。

ソーシャルメディアを通じた読書にご関心がある方は、ぜひご参加ください。

セミナー内容

AmazonのKindleの国内サービスの開始もまもなくと言われる中、日本でも電子書籍がようやく一般化のきざしを見せています。デバイスだけでなく、ソーシャルメディアを通じた読書体験が、そこでは重要な鍵を握ります。

震災からの復興は道半ば、経済の混乱も続き、既存の価値観では先行きが見通しにくい現在において、読書のもつ役割と、電子化がそこにもたらす変化は、学生・ビジネスパーソン・出版関係者にとって大きな意味を持ちます。

本イベントでは、ヴァーチャル本棚「ブクログ」、電子出版サービス「パブー」を展開するpaperboy&co.の吉田氏、ブログ「情報考学」で書評を蓄積し、情報学にも詳しい橋本大也氏をお招きし、「スマート読書入門」の著者の進行のもと、新しい「読書」の姿を探ります。

「スマート読書入門」
http://gs.dhw.ac.jp/event/20120125/
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ゲストプロフィール


プロフィール
吉田 健吾 氏
株式会社paperboy&co. 取締役副社長。1974年大阪府生まれ。同志社大学商学部卒業後、応用通信電業株式会社を経て2004年paperboy&co.入社。無料ブログ作成サイト「JUGEM」、web本棚サービス「ブクログ(booklog)」、電子書籍作成・販売プラットフォーム「パブー」を企画・プロデュースし、幅広いユーザーから多くの支持を集めている。

プロフィール
橋本 大也 氏
デジタルハリウッド大学 教授。データセクション株式会社 取締役会長。ITビジネスの起業家。早稲田大学在学中にインターネットの可能性に目覚め技術ベンチャーを創業。主な著書に「情報力」「情報考学―WEB時代の羅針盤213冊」「新・データベースメディア戦略。」「アクセスを増やすホームページ革命術」等。(株)早稲田情報技術研究所取締役、(株)日本技芸取締役、多摩大学大学院経営情報学研究科客員教授等を兼任。

プロフィール
まつもと あつし 氏
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。アスキー.JPにて電子書籍やアニメビジネスを追った「メディア維新を行く」を連載中。この連載をまとめた新書『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。

【ホームページ】 松本淳PM事務所[ampm]
【Twitter】 @a_matsumoto

セミナー詳細 お申込み
http://gs.dhw.ac.jp/event/20120125/

日時 2012年1月25日(水)19:30~21:00(開場19:15)
会場 デジタルハリウッド大学大学院 秋葉原メインキャンパス

ゲスト
吉田 健吾 氏
橋本 大也 氏
まつもと あつし 氏

定員 50名
費用 無料
主催 デジタルハリウッド大学大学院

・平清盛 -栄華と退廃の平安を往く-
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2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』の予習。といってもドラマの情報はあまりなくて、歴史上の人物としての平清盛についてまとめたビジュアルムック。

源平合戦はまず名前をおぼえるのが大変。平家方の「盛」がつく名前の人物を挙げると清盛、家盛、経盛、教盛、頼盛、重盛、基盛、宗盛、知盛、光盛、維盛、資盛、有盛、師盛といっぱいいて、主要な登場人物として登場してくる。この本にあるような系図は必須である。

それから平家の時代を開いた保元の乱と平治の乱、そして源氏争乱の幕開けとなる宇治合戦から勝負が決した壇の浦まで主な合戦の解説がある。天皇と上皇、源氏と平氏の誰がどちらの勢力についたのかが説明されている。権謀術数の時代なので、とにかく人間関係が複雑に錯綜している。

厳島神社、六波羅蜜寺、祇園、八坂神社、東大寺、興福寺、清水寺、平等院などゆかりの地の歴史と今も紹介されている。今回は関西を中心に広がりを持ったエリアが舞台となりそう。

紅白戦のルーツは源平合戦にあったとか、平安貴族の1日の過ごし方とか、蘊蓄記事もある。どのページにもグラフィックが満載で、ドラマや小説を読み解く予備知識を楽しく学べる。

・平家の群像 物語から史実へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1533.html

・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html

・安徳天皇漂海記
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/09/post-445.html
平家物語のバリエーション。

・琵琶法師―"異界"を語る人びと
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1034.html

毎日使うアプリが久々に一本増えた。グーグルニュースを一括ダウンロードして軽快に読めるニュースビューアー。本家のWebよりアプリが明らかに便利。

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数秒から数十秒で直近のニュースが画像も含めて一括ダウンロードされる。電波の入らない地下鉄内でもイライラせずに使うことが出来てうれしい。文字のフォントやレイアウトが統一されるので、記事を次々に読みやすい。

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素晴らしいのはキーワードを設定することで、自分のニュースカテゴリをつくることができる機能。たとえば藤沢市というカテゴリをつくってみた。地元ニュースばかりが読める。

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Read It LaterやInstapaper、Twitter、メールなどと連携することができる。

G!ニュース - Sekilai

・贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ
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クリスマスプレゼントを渡す日ですね。

「贈与の最盛期」である15世紀後半の日本の贈与儀礼を研究することで、日本独特の贈与文化が浮かび上がってくる。お中元のやりとりが若者層で低調になっても、まだまだ日本人は贈答好きだ。結婚祝い、香典、出産祝い、入学祝い、年賀状...。バレンタインデーができたら、返礼のホワイトデーもすぐに定着した。日本の民法はいかなる理由があっても贈与の撤回を認めていない。贈与の保護が厚いのはなぜか?。起源は中世にあった。

世界の歴史をみると贈与は「神にたいする贈与」から始まる。それが国家や領主に対する税に転化していく。キリスト教と密接に結びついていた中世ヨーロッパの贈与と異なり、日本では比較的早い段階で贈与が宗教と切り離され、より世俗的な用途が主体のかたちに変容していった。

贈与は、贈与者と受贈者の二者だけで完結するものではなく両者の関係を律する外部の別の支配者があったと著者は指摘する。それは神とは限らない。広義の「法」であり「先例」がそれに変わった。

中世武家社会で贈答は経済的な側面がつよく、見返りを期待する功利的な贈答儀礼の性格が強くなった。賄賂ではなく前例によって受ける当然の報酬「役得」という言葉もこの時代にうまれた。中世の人々は損得勘定に敏感でつり合いが取れる「相当」であることを強く求めた。対称的返済、同類交換の原理は、現金の贈与にまで発展する。現代でもそれは結婚祝いや香典のような形で続いているが、現金が平気で贈答されることは日本の贈与の特殊性であるそうだ。

現金の贈与もまた中世がはじまりだ。さまざまな贈与の形態が解説されている。たとえばこの時代には「折紙」が発明された。贈与をする側はまず金額を記した「折紙」を先方に贈り、現金は後から届けることができた。この「後から」の時期は記録によると1年以上後であることもある。だから贈与者は手元に現金がなくともとりあえず贈与ができる。そして大抵の場合、それは賄賂であったから、相手が期待にこたえてくれるかを現金を渡す前に確認ができ、贈り損もなくなるというわけだ。後年、この折紙は債権として流通することもあったという。現代では祝儀や香典に金額を書いた紙を使うのが名残のようだ。

『贈与論』のマルセル・モースやモーリス・ゴドリエは、贈与には4つの義務があると定義した。

1 贈り物を与える義務(提供の義務)
2 それを受ける義務(受容の義務)
3 お返しの義務(返礼の義務)
4 神々や神々を代表する人間へ贈与する義務(神に対する贈与の義務)

世界にはこれらの組み合わせの強弱からさまざまな贈与慣行や儀礼が生まれてきたが、とりわけ中世の日本では功利的で商取引のような贈与慣行が発達してきたことがわかる。東南アジアの人類学で取り上げられるポトラッチ(競争的贈与)のようなエキゾチックな贈与儀礼ではなく、キリスト教圏の神への贈与でもなく、現代の私たちの文化と地続きの、贈与文化が中世にあった。贈与には国民性がでるものということがよくわかる本であった。

・小説 ファイナルファンタジーXIII-2 Fragments Before
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ファイナルファンタジーXIII-2のファンで小説が好き向け、相当に読者を選ぶ作品であるが、ゲームのノベライズ作品としては品質が結構高いので、期待して読む人は満足できる内容。

XIIIのときに出版された『エピソード0 -約束-』と同じで、XIII-2の本編ゲームシナリオが始まる直前のエピソードを描く。だからこれを読むことでゲームのネタバレはなくて、むしろ感情移入がしやすくなるように設計されている。

ファイナルファンタジーの物語は独自の世界観が構築されていてとても複雑である。XIIIは特に話がややこしかったが、XIII-2はさらにタイムトラベル要素が加わる。前作の終盤部の復習からはいるのにこの小説がいいと思う。相当、本編に対する伏線も隠されていそう(これを執筆時点で私はXIII-2は導入部分2時間程度やった段階なのでよくわからない。)

ヴァニラ、セラ、スノウ、ホープの父、ノエルの視点で語られる5本のエピソードが収録されている。ホープの父と臨時聖府代表のリグディの章は、ゲーム本編ではあまり扱われなさそうな政治ドラマが印象的だった。

この小説は、最後が

"To be continued
Final Fantasy XIII-2 Fragments After"

という記述で終わっているがAfterも出るのだろうか?

・小説 ファイナルファンタジーXIII エピソード0 -約束-
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/-xiii-0.html

・ファイナルファンタジーXIII-2 ワールドプレビュー
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/12/iii2.html

・ファイナルファンタジーXIII オリジナル・サウンドトラック(初回生産限定盤) [Limited Edition]
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/05/xiii-limited-edition.html

・ファイナルファンタジーXIII
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/2010xiii.html

箱根駅伝

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・箱根駅伝
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『駅伝がマラソンをダメにした』(2005)を書いたスポーツライターによる最新の箱根駅伝論。私は毎年往路も復路も沿道応援している。ファンは観戦前に読んでおくべき本。

箱根駅伝は10区もあるので何より区間配置が重要である。かつては花の二区が肝であったが、最近は距離が延びた山登りの五区の区間順位と往路の成績に強い関連性があるそうだ。これにより王道だった往路一区二区でリードする「先行投資型」以外の戦術をとるチームが増えてきているという。

監督たちは区間配置に戦術を練る。スピードがあって競り合いに強くて派手な「往路キャラ」、距離が延びてこそ味が出る地道で自分ペースの上級生「復路キャラ」なんていう考え方があるらしい。早稲田大学の渡辺監督、東洋大学の酒井監督、駒澤大学の大八木監督にロングインタヴューが収録されていて、今年の監督たちの思惑がわかって楽しい。渡辺監督ちょっと戦術を喋りすぎじゃないかと思うが、実はブラフかな...。

箱根駅伝は大学受験の出願期間に近く、新興校にとって大学としての宣伝効果が抜群なため、監督のプレッシャーは重いそうだ。勝ち始めると高校から優秀な選手が来なくなる、とか、日本人が強くなり留学生の存在感が薄れてきた、エースは養成できるものではない、なんていう現場の事情や本音も聞ける。駅伝はかなり長丁場なので、こういう蘊蓄を知っていると、沿道やテレビ観戦が一層楽しくなる。

なんといっても2012年は東洋大学の「山の神」柏原竜二が最終学年でラストランの年。著者も駅伝史上最強の選手として高く評価している。しかも柏原は福島県出身であるそうだから、来年の走りは気迫のこもったものになるのが間違いない。

・駅伝がマラソンをダメにした
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/12/post-327.html

・中国共産党 支配者たちの秘密の世界
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世界最強の組織の裏側を外国人ジャーナリストが暴く。第23回アジア・太平洋賞大賞受賞、英エコノミスト、フィナンシャルタイムズのブック・オブ・ザ・イヤー受賞作。

中国共産党は2009年半ばの党員数7500万人(国民の12人に1人)。世界最大の人口と多くの問題を抱えながらも、共産党が導く中国は、短期間に著しい経済成長と近代化を実現してきた。間違いなく世界最強の組織だ。だがその内側のことはほとんど世界に知られていない。著者は共産党や大企業幹部への取材活動を通して、現代の共産党の実態を明らかにしていく。

「わずか一世代のあいだに党のエリート層は、陰気な人民服を着た残忍なイデオロギー集団から、スーツを着た、企業を支援する金持ち階級へと変身した。それとともに彼らは自分たちの国を変容させ、世界をも作り変えようとしている。今日の中国共産党は、グローバリゼーションの道を邁進することに専念し、それによって経済効率と収益率を高め、政治的影響力をより強固なものにしようとしている。」

中国共産党は何かに登録された組織ではない。憲法前文にある「共産党の指導のもと」という一文以外に、共産党を組織として存在させる法律や登録は存在していない。だから誰も正式には党を訴えることはできない。法体系の外にある超法規的存在なのだそうだ。その力はあまりに強大だ。

「すべての国有大企業では通常、役員会に先だって党会議が開かれます。経営コスト、資本拠出義務などについては役員会で討議されますが、役員人事を握るのは党です。」

共産党の幹部たちは党の要職とともに大企業の役員も歴任していく。党は企業人事に関与していないというフィクションを作り上げるため、表向きの発表は普通の企業の役員交代であるが、実質は党内の人事異動に過ぎないのだという。

中東では民主革命を実現させたソーシャルメディアや検索エンジンでさえ、中国共産党は支配のツールとして活用している。中央権力を強化するために、地方の政治的腐敗や過剰投資を敢えてブロガーに暴かせ、粛清していくのだ。

「ゴマ粒官僚たちを従わせるためには、最新のツールも巧みに利用されている。国内のジャーナリストやブロガーが地方の役人による権力の乱用を暴露することを許したのだ。もちろん、中央政府の最高幹部はその対象に入っていない。中国で言うところの「人肉検索エンジン」によって、地方の役人たちが次々に失脚させられたのは2009年のことだった。」

中国共産党の目指すのは「経済成長」と「ナショナリズムの再興」。経済成長の成功によって自信を取り戻した中国は、もはや西欧型の民主国家+市場経済を見習おうとしているわけではないと著者は結論している。経済大国となりつつある中国は社会主義国家でさえない。まったくユニークな中国共産党の独裁国家なのだ。

・年号電卓
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年号と西暦の変換は日常生活でも、仕事でも結構必要になる作業だ。その割に決定版のツールがない。いやあった。このアプリはシンプルでいい。まず年号電卓と言う名前がわかりやすい。

履歴書作成には、もちろん使えるが、

昭和○○年生まれということは今何歳?
関ヶ原の1600年って元号は何だった?
いま70歳の人は何年生まれなんだっけ?

など、いろいろな計算がすぐにできる。

年齢入力、西暦入力、最近の年号入力(平成・昭和・大正・明治)、過去の年号入力(リストから選ぶ)という入力方式が自由なのが使いやすい。プラス1年、マイナス1年と動かすことも可能。

年号表は、年号がつくられる前の神武天皇の時代から始まって、しばらく天皇名がつづき、日本最初の公年号「大化」で正式に始まる。そして延々と年号が平成までつづく。これは歴史好きなら見るだけでも楽しい。

年号電卓 - Tsuzuki-kobo

姑獲鳥の夏

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・姑獲鳥の夏
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京極夏彦のデビュー作。京極堂シリーズはここから始まった。

雑司ヶ谷の古い産院の娘が20か月も妊娠したままでいるという。そして夫は自宅の密室で謎の失踪を遂げている。事件の解決を依頼された主人公らが、病院に巣食う魑魅魍魎と対決する推理ミステリの傑作。

「仮想現実と現実の区別は自分では絶対につけられないんだよ、関口くん」

冒頭で主人公の関口と、その友人で古本屋を経営する陰陽師 京極堂の小難しい哲学問答が延々と100ページも続く。なかなか事件の話にならないのだが、この問答が心脳問題に深く踏み込んでいて、小説の一部だということを忘れて読みふけるほど読み応えがある。

「つまり人間の内に開かれた世界と、この外の世界だ。外の世界は自然界の物理法則に完全に従っている。内の世界はそれをまったく無視している。人間は生きて行くためにこの二つを巧く添い遂げさせなくちゃあならない。生きている限り、目や耳、手や足、その他身体中から外の情報は滅多矢鱈に入って来る。これを交通整理するのが脳の役割だ。脳は整理した情報を解り易く取り纏めて心の側に進呈する。一方、内の方でいろいろ起きていて、これはこれで処理しなくちゃならないのだが、どうにも理屈の通じない世界だから手に負えない。そこでこれも脳に委託して処理して貰う。脳の方は釈然としないが、何といっても心は主筋に当たる訳で、いうことを聞かぬ訳にいかない。この脳と心の交易の場がつまり意識だ。」

こういう議論が好きな人で、怪奇ミステリが好きな人にはたまらない600ページの超長編だ。最初の100ページ読んでみて好きなら最後まで読んで間違いない。逆にぴんとこない人はそこで止めるのが正解。

文士の関口、古本屋の京極堂、探偵の榎木津らが奇怪な事件の複雑な全容を解明していく。3人とも主役を張れるくらいキャラが立っていて、その後のシリーズ化は既定路線だったのかもしれないなあと思った第一作。

・化けものつづら―荒井良の妖怪張り子
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/09/post-630.html
京極夏彦の表紙と言えばこの作家。

・PlayStation Vita (プレイステーション ヴィータ) 3G/Wi‐Fiモデル クリスタル・ブラック (初回限定版) (PCH-1100 AA01)
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VITA発売日に購入。ファーストインプレッション。

凄いプラットフォームが登場したというのが全体的な印象。問題は何のプラットフォームなのか、だが、それはまだわからない。キラーアプリ、キラーゲームは現段階ではこれといったものが本体と同時発売されていないからだが、触ってみてすぐに、ハード的にとてもよくできていることがわかった。

1 大画面液晶がきれい。

まず感動したのが大画面液晶の表示。DSの比ではない。

2 タッチパネル操作の反応が素晴らしい。

これはアプリにもよるのだろうが、反応の良さはiPhoneに匹敵する。それからユニークな背面タッチパネルは、背面にまわってゲーム機をおさえるだけになっていた指を活かすことができるので、新しい可能性だ。

3 本格ネットワークネイティブなゲーム機の登場

いきなり発売日にオンラインのシステムアップデートがあったのは閉口したが、ネット接続を前提とするアプリが多数ある。ソーシャルメディア対応も発表されている。PS3やPSP向けに充実させてきたPS Storeは既に充実しているが、そこへVitaが加わる。ゲームやコンテンツの購入のメインがパッケージよりもダウンロードになりそうな予感。

以下はスクリーンショットを並べながらコメント。

・デスクトップ
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これがデスクトップ。動作が軽快なのでとにかく触っているだけで楽しい。"ウェルカムパーク"ではVitaのインタフェースをひととおり覚えるミニゲームが用意されている。

・PS Store ゲーム
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羊の木(1)

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・羊の木(1)
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すごい傑作が誕生する予感の第一巻。

『がきデカ』の山上たつひこが原作、近年は『アイ』や『かむろば村へ』で傑作を出している『ぼのぼの』のいがらしみきおが作画。ふたりのギャグ漫画巨匠が取り組んだ青年漫画。

かつては海上交易で栄えた魚深市。いまは住民の高齢化、企業の撤退、過疎化、人口流出が進み人口は13万人に減っている。

魚深市長は、凶悪事件の受刑者11人を市に受け入れることを決めた。公共事業が減る中で出所者の社会復帰にかかわる事業は成長を見込めると考えたのだ。受刑者の更生政策をすすめたいという国の思惑もあり、受け入れ自治体への特別交付金も見込める。市長の先祖は江戸時代に多くの囚人の更生の面倒を見たことで知られる地元名士でもあったこともあって更生促進に特別な使命感を持っている。

極秘の試行プロジェクトなので、受刑者を受け入れることは市民には一切知らせない。受刑者にも誰が他の受刑者なのかは教えない。市長は親しい友人の市民3人に世話役としての協力を依頼して、密かに受け入れを開始する。

市にやってくる受刑者たちは表面的には更生しているものの、強盗殺人、強姦魔、詐欺、恐喝傷害、覚醒剤、窃盗、誘拐、殺人死体遺棄など、ひとり残らず相当ヤバイ過去を持っている。情緒不安定が露見するものもいる。

受刑者たちは知ってか知らずか、町のあちこちでつながりはじめる。性質のよくない新聞記者も、市長まわりになにかあるなと嗅ぎつけてきた。愛を持って取り組んだプロジェクトであったが、しだいに不穏な空気が漂い始める。そしてもうすぐ運命の「のろろ祭り」の日が近づく。

ということで、まだ物語の本筋もみえないが、極めて面白そうな展開が期待できる予告編みたいな一巻であり、二巻は2012年の夏ごろとのこと。

・かむろば村へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/09/post-1513.html

・【アイ】 第1集
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/i-1-1.html

・Sink
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/sink.html

・回転寿司の経営学
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TVチャンピオン優勝者で回転寿司評論家が書いた回転寿司屋の経営実態。経営の合理化の典型的な成功例がみえて楽しいニッチなテーマの経営書だ。お客が回転寿司ではどう振る舞うのがお得かわかる内容もあって経営者でなくても楽しめる。

原価率30%以下が一般的な飲食業界にあって、回転寿司は原価率が40%~50%が当たり前の世界。人件費や管理コストをシステム面でのハイテク化、IT化によって徹底的に合理化して、競合店が熾烈な競争を繰り広げている。

たとえば、ここで紹介されていたあきんどスシローの導入した「開店すし総合管理システム」は、

「皿の裏側にICチップを付け、単品管理を行うと共にリアルタイムの売れ筋状況を把握することで、いま流すべきネタをコンピュータが指示するという画期的なシステムである。客の性別、年代などを来店時に打ち込み、さらに滞在時間により来店したばかり、30分経過、帰る間際等に分類し、どの寿司をどれくらい流せばいいのかをPOSデータをもとにコンピュータ制御するわけだ。三人連れの親子が40分以上滞在している場所にたくさんの寿司を流しても食材ロスになる確率が高くなるし、子供が多ければ、子供が好きな寿司やデザートを流すなどの調整ができる。」

なんていう内容。回転寿司が職人の勘や技に頼っていた時代はとっくに終わっている。そしてこうして絞ったコストを食材の調達に使う。いま回転寿司業界は大手100円寿司チェーンと、高価格グルメ系回転寿司店が二分しているそうだが、後者では銀座の高級店より鮮度の良い美味な魚を味わうことができることもある、という。

三貫盛りはお得、メバチマグロはおいしい、「当店の人気ベスト3」は主に店が売りたい高利益商品、全国ご当地回転寿司など、お客にとっても有益な情報も満載。

・すべて真夜中の恋人たち
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人づきあいが苦手な校閲者の女性が主役の恋愛小説。

校閲というのは他人が書いた文章から間違いを発見する地味な仕事。校閲者は読むだけであり、自分の言葉で語ることは決してない役割。孤独な主人公の冬子は暇つぶしにカルチャーセンターへ出かけ、そこで初老の教師三束と出会い、自分の仕事をこう説明する。

「はい。つまり、...どんな場合であっても、その文章にのめりこんだり入りこんだりすることは、校閲者には禁じられているんです。」

「...なので、わたしたちは物語をどれだけ読まずに...、もちろん校閲ですから、あらすじや前後関係や時系列なんかは徹底して読まなくちゃいけないんですけど、とにかく、感情のようなものはいっさい動かさないようにして、...ただ、そこに隠れてある間違いを探すことだけに、集中しなくちゃいけないんです。」

冬子は三束が異性として気になるが、彼は教師らしく紳士的な態度を崩さない。指一本触れずにときどき会って喫茶店で上品な会話をするだけの二人。表面上は何も起きないが、抑制された感情の水面下で、少しずつ芽生えていくプラトニックな恋愛感情を、静かに淡々と描く。展開が速い恋愛小説が多い中で、とてもスローなのが逆に新鮮に感じる。

ただでさえ他人との距離の取り方がわからない主人公が、年の差のある異性との関係に、不器用にふるまう様子は、誰にもある初恋の頃を思い出させる。

不思議な文体で話題になった芥川賞受賞作『乳と卵』、壮絶ないじめを描いた『ヘヴン』、そして純粋な恋愛小説の『すべて真夜中の恋人たち』。川上 未映子の引き出しの多さにおどろき。

・乳と卵
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/12/post-1552.html

・ヘヴン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1132.html

・Ghostery
http://www.ghostery.com/
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WebページのHTMLコードにはさまざまなユーザー行動トラッキングツールが埋め込まれている。そうしたトラッキングコードをブラウザー上でリアルタイムに検出するのがGhosteryというアドオン。MSIE、Firefox、Chrome、Opera、Safariなどの代表的Webブラウザー用のプログラムが用意されている。

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トラッキングツールとは、たとえば、企業サイトにも個人サイトにもよく使われているGoogle Analyticsは、アクセス解析のためにユーザーのサイト内の移動ログを記録している。他に国内サイトでよくみるのは、

DoubleClick 広告表示の分析にユーザープロフィールを分析するコード
Facebook Social Pulgin Facebookにいいね!を送るコード
Google Adsense Googleアドセンス(コンテクスト広告)の分析コード
Linkshare リンクシェアのアフィリエイトコード
Google +1 Google+に投稿する機能を与えるコード
Twitter Badge, Twitter Button ツイッターに投稿する機能を与えるコード
MicroAd ターゲティング広告のためのユーザープロフィールを分析するコード

など数えきれないほどの種類のトラッキングコードが存在している。

ユーザーの訪問回数
ユーザーがほかに見たページ
ユーザーが直近にいた外部サイト
ユーザーの位置情報
ユーザーの検索した文字列
ユーザーが買ったもの
ユーザーがいいね!を押したもの

など。

気が付かないところで情報がサービス運営者に送信される。多くは広告配信やリコメンドの精度を高めるためのもので、悪意のあるものではないが、どんな情報を取られているのかは知っておきたい。

Ghosteryはこうしたコード600種類以上に対応していて、今見ているページに仕掛けられているコードをリストアップする。

・「しがらみ」を科学する: 高校生からの社会心理学入門
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高校生(から)に「しがらみ」の真理を教える社会心理学入門書。人間の信頼関係の研究で知られる北大大学院特任教授 山岸俊男氏が書いた。

まず本書の主題である「しがらみ」とは、社会心理学的には「インセンティブ構造」のことであると指摘する。自分がある行動をすると、他人がそれに対してどう行動するかが決まっているということ。そして「しがらみ」が、人々の行動によって生み出されているのが「社会」なのだ、すなわち社会とはインセンティブ構造であると。

「世間では人々の行動が契約で縛られているわけではなくて、人々がまわりの人たちの反応を読み合った結果として一定の行動をとり合っている。だから、みんなが本当に望んでいることと、ほかの人たちはこう思っているだろうと思われていることが食い違ってしまう可能性があるんだよ。そのために、いろんなおかしな結果が生まれてしまう。」

本当は誰もそうしたいと思ってはいないのに、全体としてヘンなことになってしまうインセンティブ構造のパターンをいくつか取り上げる。クジャクの羽根の話、いじめの螺旋の話、赤ちゃんをぐるぐる巻きにする社会の話。説明に使う例が、どれもユニークであると同時に適切で、印象に深く残る。

この本は、生きづらい世の中としてのしがらみ社会を生きていくための知恵を若者に与える意図を持って書かれている。空気を読み合う「心でっかち」な世間から、少し距離をおいて物を考える資質を論じる。世間がダメなら、社会でいきよう、というのが著者の提案だ。世間の上にある社会では決まり事や法律を守っていさえすれば自由な生きていい。だから本当は社会に出ることを怖がる必要なんてないんだよ、と。

私は小中高と学校の友達づきあいが苦手な子供だったので、クラスがない大学に入ってほっとしたし、社会にでてフリーランスで仕事を始めて、活き活きとした気分になったのを覚えている。いまは自分の会社で仲間たちと仕事をするのが好きであるが、最初からそうだったわけじゃあないのだ。

会社の歩き方、世間の渡り方ではなくて、もっとフリーな生き方モデルや社会で稼ぐ武器を高校生に教えてもいいのではないかと強く思った。世間のしがらみにとらわれて悩んでいるよりも、とりあえず何らかの武器を持って社会に飛びだした方が、きっと人生は甘い気がするのだ。世間よりも社会の方が甘いよ、自由だよ、楽しいよ、と教える著者の姿勢に大変共感した。高校生や大学生に読ませたい。

・ラーメンと愛国
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「戦後の日本の社会の変化を捉えるに、ラーメンほどふさわしい材料はない。ラーメンの変化は時代の変化に沿ったものである。本書が試みようとしているのは、そんなラーメンの変遷を追って見た日本の現代史の記録である。」

都市下層民の夜食だった「支邦そば」がわずか100年で日本の「国民食」となるまでの歴史が語られている。戦後のアメリカの小麦輸出戦略があり、安藤百福(日清食品創業者)のパン食文化への抵抗としてのチキンラーメンの発明と大量生産があり、田中角栄の国土開発と「ご当地ラーメン」による地域振興があり。昭和の時代、インスタント、カップラーメンも含めて「ラーメン」という呼称が確立されてマスメディアにものり、当時大量発生した独身の都市生活者を中心に、受験生や機動隊員など幅広い世代に親しまれるようになった。

この本はラーメン現代史を総括するだけではないのが面白い。

ラーメン文化は幾度ものブームによって発展してきたが、著者は80年代以降のラーメン博物館、「TVチャンピオン」、「ガチンコ!ラーメン道」あたりが捏造したラーメン列島神話に異議を唱える。

ご当地ラーメンは地域の個性や特性を反映したものではなく、全国均質のファストフードの流れから出てきた食べ物だという事実。「作務衣」を着るラーメン屋の主人のスタイルは、「日本の伝統」「伝統工芸の職人の出で立ち」を再現しようとして、まったく正統性のない捏造された伝統である、とか。最近の店に目立つ、相田みつお的前向きメッセージを店内に飾る宗教色や、「麺屋武蔵」以降の国粋主義的傾向も指摘されている。

「1990年代末以降、日本のラーメンは、かつてラーメンが持っていた中国的な意匠をはぎ取って、「日本の伝統」らしきフェイクで塗り替えていった。」。伝統の捏造のリアリティショーが現代ラーメンカルチャーの本質にあるという指摘が鋭い。私は常々、ラーメン屋の"ノリ"がよくわからないと思っていたが、すっきり整理された。

ほかにも北海道の札幌ラーメンと九州の博多ラーメンは、中国の北方料理と南方料理が別ルートで伝わったものではないかという仮説。ラーメン二郎におけるコミュニケーション消費論などラーメンを愛好家の興味をひくテーマがいっぱい。

・遠い町から来た話
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文字がない大人の絵本の大傑作『アライバル』のショーン・タン最新作。

今回は長文のテキストとイラストの短編集だ。

町のはずれに住んでいて人間が相談すると向かうべき道をおおざっぱに指し示してくれる水牛の話。異次元から来た影絵の小人のような姿をした交換留学生のホームステイの話。町をうろつく潜水服の男の話。みんなが書いて読まれずに終わった詩の言葉が集まって、雪だるまのようにふくらんでいく話。家の庭に突然巨大なジュゴンが寝転がっていた話。家の屋根裏が別世界の中庭とつながっている話。どこかで当たり前のように異世界とつながっている日常を描く幻想譚。

一番印象深かったのは『棒人間たち』。町のそこかしこにいるけれど大人は気にとめない謎の生物 棒人間。こどもたちは正体不明の存在が気になって、いたずらしたり壊したり。人はふと「何の理由があってここにいるのだろう?」と棒人間をみつめるが、実は棒人間たちだって人間に対して同じ問いかけをしたいのではないか?という考察で終わる。

ショーン・タンは中国系マレーシア人の父とアイルランド・イギリス系移民3世の母を持つ1974年生まれのオーストラリア人。前作『アライバル』と同様に異文化体験、多様性と包摂の本質を語っている作品が特に素晴らしいなと思う。

額に入れて飾りたい絵が素晴らしいが、岸本佐知子氏の翻訳による名文も光っている。

・アライバル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/post-1499.html

iPhone版の公式Gmailクライアント gmail
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ついに先日、Gmailのアカウントのディスク使用率が90%を超えたので有料の追加容量を購入した。

GoogleがiPhone版のGmailクライアントをリリースしたというので試してみた。

新着メールの通知バッジを受信する。
スレッド表示でメールを閲覧する。
アーカイブ、ラベル、スター、削除、迷惑メールの報告などの機能を使用してメールを管理する。
優先トレイで重要なメールを追跡する。
オートコンプリート機能を使用して連絡先の名前を入力する。
添付ファイルを送受信する。
すべてのメールを対象に検索する。

といった機能ができる。

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標準メールでGmailを使った場合との差だが......。普通に読み書きする上では実はあまりない。標準メールもよくできているから。ラベル管理とか宛先オートコンプリートとか、グーグルの細かい機能をiPhoneでもっと活用したいという人向け。

それから稀に標準メールで文字化けするメール(主にメーリングリスト)が、このクライアントでは化けずに読めた。文字化けに悩まされる人は試すと解決するかもしれない。メールについては代替ツールを用意しておくべきでもあるし、とりあえず入れておく一本。

Gmail - Google

iPhoneからFTPサーバを管理する FTP Client Pro
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私は、資料の管理や配布をレンタルサーバを借りてWebサーバ上で行っている。いわゆるクラウドサービスもいいのだけれど、容量や権限を気にせず、本当に自分だけのスペースを持てる利点はまだまだ大きいと感じている。

ただし一般向けクラウドサービスはインタフェースがよくできている。自分でサーバを管理する場合、自分で管理ツールを揃えないといけない。このiPhone向けのFTPクライアントはとてもよくできていてうれしい。クラシックなFTPクライアントの機能が、当たり前のようにiPhoneで軽快に動く。

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ファイルの表示、移動、リネームのほか、ファイルをメールで送る、ファイルのリンクをメールで送るなど、サーバ上に置いたファイルの活用を主な目的として機能がある。iPhoneの写真や動画などのファイルもアップロードが可能。

Webを更新するとか、Webアプリを開発するといったプロ用途には向かないが、個人のファイルの管理にはシンプルでわかりやすくて気に入っている。

FTP Client Pro - LessIsMore Development

ユリゴコロ

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・ユリゴコロ
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余命幾ばくもない父だけが残った実家で、息子の亮介は誰が書いたのかわからない古いノートをみつける。「ユリゴコロ」と名づけられたノートには、一人称で猟奇殺人の記録がびっしりと綴られていた。なぜ父はこんなノートを隠し持っているのか。これは誰が書いたものなのか。ここに書かれているのは事実なのか。亮介は4冊にわたる内容を読み進めるうちに、忌まわしい家族の秘密を知ってしまう。

心の闇を抱えた子供時代から次第に邪悪な猟奇殺人鬼へと変化していく手記「ユリゴコロ」ノートが、読者を暗い闇に吸い込む。家族の狂気は自分にも宿る。倫理も法律も超越した絶対的な愛。亮介は裁けない罪があることを知る。この劇中劇だけでもかなりミステリとして高評価に値するが、さらに亮介の現実と内容がリンクしていき、後半で物語は予測不能な展開を見せる。

最初から最後まで不穏な緊張感が持続する。ミステリとしての驚かせる仕掛けも成功している。間延びすることなく一気に読めた。系統としては湊 かなえ『告白』みたいなかんじといえるか。映画化しても面白いかもしれない。

・猫鳴り
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1373.html
こちらも沼田 まほかる。作品。

・パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ
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『フリー』『シェア』の次が『パブリック』

FacebookにTwitterにFoursquare。ネットのサービスは、〇〇さんが、△△さんと、どこどこで、××していました、なんてことが表示されるサービスが大人気で"情報大公開時代"を迎えている。Facebook以外にも"パブリックであることが価値を生みだす"多くのサービスが紹介されている。

Goodreads 読書中の本
Last.fm 好きな音楽
Scribd 作成した文書
Slideshare 作成したプレゼンスライド
Covester 投資した株取引
Blippy 購入した商品履歴
などなど。

著者はパブリックであることの意味と価値を総括する。

私たちはパブリックであることのメリットと引き換えに、プライバシーを失うかもしれない。そのときプライバシーとはそもそもなんだったかとはじめて考えることになる。アメリカの不法行為法の権威ウィリアム・プロッサーのプライバシー侵害の四類型によると、
1 ひとりで他人から隔絶されて送っている私的な生活状態への侵入
2 知られたくない私的な事実の公開
3 一般の人に誤った印象を与えるような事実の公表
4 氏名または肖像を、自分の利益のために盗用すること

ということだそうだ。プライバシーが制限されても、それ以上にパブリックのメリットが大きいならば、私たちは情報大公開ツールのネットを使うだろう。

本書にはパブリックの時代の法則がいくつも整理されている。

たとえば、面白いなと思ったのを3つばかり挙げると

・タトゥーの法則 ネットに出した情報は刺青のように消えずに残る
・一面の法則 新聞の一面にでて困ることは言うべきではない、一面に載せられることをいうべきだ
・社会的破算の法則 多くの人とつながれば多くの人に煩わされる

ソーシャルネットワーク全盛になると社交術、処世術は大きく変わるだろう。パブリックについては社会規範もまた変わっていくのかもしれない。今の世の中はパブリックにすると都合が悪いことが多すぎる。ささいな発言が、うっかりすると炎上して、退学や退職につながりかねない。
 
「僕らが一層パブリックになった今、お互いの恥をさらして生きることがそのうち社会の規範になるかもしれない。君の恥ずかしい写真を笑わないであげるから、君もそうしてほしい、と。『大きすぎてわからない』(Too Big to Know)の著者、デビッド・ワインバーガーは言う。「透明性の時代は、許しの時代に他ならない」と。」

著者は自分の前立腺がんについてもネットで公開するパブリック派だが、本書の執筆に当たってはパブリックネスに対する肯定・否定の両方の見方を冷静に検証しており、とてもよい本だと思った。

・スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
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国際的なマーケティングコミュニケーション企業のヤング&ビルカムが、17年間で120万人以上を対象に継続実施してきた「ブランド・アセット・バリェエーター」(BAV)という調査がある。50カ国4万を超えるブランドイメージについて四半期ごとの購買・消費者意識アンケートを行うものだ。

著者はBAVの分析もとに、リーマンショック後の、世界の消費者心理と購買行動に大きな変化があったと結論する。危機を乗り越えた消費者たちは、まるで御札が投票用紙であるかのように、絆や夢や未来のために、消費活動を行うようになった。社会をよくするための選択としての消費へのシフト。それが本書のタイトル「スペンドシフト」だ。

この本で紹介されるデータ的には「富裕層向け」「お高くとまった」「感性に訴える」「大胆な」「トレンディ」だったかつての人気ブランドへの評価が下降して、代わりに「親切で思いやりのある」「親しみのある」「高品質の」「社会的責任のある」「リーダー」といったイメージを持つブランドが高く評価されている。

物質主義から精神性や社会性の追求がはじまった。消費者の価値観は「不屈の精神」「発明・工夫」「しなやかな生き方」「協力型消費」「モノ重視から実質重視へ」。じっくり考えるソクラテス流の消費の時代。自分の理念に合うかどうかを基準にしてブランドを選ぶ時代。さまざまな調査の数字がそうした新しい時代精神を示している。

クチコミによる評判を重んじ、良き企業市民であること、地域社会や従業員を大切にする企業が愛される。コミュニティづくりと親和性の高いブランドは主要指標のすべてにおいて他のブランドを上回っている。ソーシャルメディアが「顔の見える」企業をつくるための有効なツールになる。

「次の選挙を待つまでもなく、消費が新しい傾向を示す背景には価値観の変化があるとわかるはずだ。アメリカは借金による消費やモノの過剰と決別して、節約と投資へと向かっている。わが国のGDP(国内総生産)の三分の二は消費支出によって支えられている。つまり、消費の風向きは、文化と経済の両方に変化を及ぼしているのだ。わたしたちは、消費しない社会に向かっているわけではなく、消費のもたらす変化をとおして社会をよい方向へ導こうとしている。」

ここに取り上げられるデータは欧米のものが多いのだが、日本でも3.11以降、コミュニティ、絆、未来の共創が大きなテーマとなった。2011年がスペンドシフト元年と言っていいかもしれない。

消費者が何を買うか、何を買わないかで、社会を変えていく。マーケティングの役割が大きく変わるということでもある。視野を広く、志を高く持たないと、マーケッターという仕事はつとまらない時代になった。

・ファイナルファンタジーXIII-2 ワールドプレビュー
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12月15日発売のファイナルファンタジーXIII-2のプレビュームック。

『XIII(前作)』完全リプレイで、記憶を巻き戻してから、次回作の予習ができる。飽くまで熱心なファン向けの特集本。

XIII-2では前作では序盤でクリスタル化してあまり出番がなかったセラが主人公。あれから3年。ライトニングはセラの記憶の中にだけ生きていて、他の登場人物にとってはなぜか死んだことになっている。時空の歪みを旅して、姉を探すのが今回のゲームの目的。
XIIIとのゲーム上の主な違いは、

1 モンスターを仲間にできる

150種類以上のモンスターを仲間にできる。どうやら従来の攻撃補助の召喚獣にあたる存在はいなくて、ともに戦う味方として、常にごろごろいるということらしい。

2 イベントシーンがすべてリアルタイムレンダリング

新要素としてダウンロード・コンテンツが用意されるが、その衣装やアイテムがイベントシーンにも反映されるとのこと。ダウンロードサービスに有料課金するかどうかは不明だが、リアルタイムレンダリングはビジネスモデルになりうるのだなと、へんな気づきがあった。

3 進行の自由度が高い

前作は一本道であることへの批判が多かったらしく、今回は物語の進む段階ごとに設定されていたプレイヤー能力成長の限界値を撤廃して、好きなように育成できる。物語もタイムトラベルの仕組みによって、選ぶ選択肢で多様なストーリーを体験させるとのこと。

前作同様に小説も出版される。第2話がこのムックに収録されていた。

・小説 ファイナルファンタジーXIII エピソード0 -約束-
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/-xiii-0.html
・ファイナルファンタジーXIII オリジナル・サウンドトラック(初回生産限定盤) [Limited Edition]
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/05/xiii-limited-edition.html
・ファイナルファンタジーXIII
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/2010xiii.html

・ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム
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あまりに内容が濃くて熟読していてレビューが遅くなってしまった。

この本は現代の知識創造のバイブルといっていいと思う。「共創」とか「創発」という言葉は概念レベルでよくつかわれるが、それを具体的にどうやって実現するかを書いた本をはじめて読んだ。なるほど、こうやるのかという方法(ゲーム)が80種類も紹介されている。いくつか試してみたが、私の周囲では大好評で成果を挙げている。

「ゲームストーミングはゲームのアルゴリズムと視覚的効果および効用を利用してグループワークを促進させる手法・技術・行為の総称です。ブレインストーミング、ファシリテーション手法、アイスブレイキングといったテクニックと同様、ゲームストーミングも会議、セミナー、ワークショップなど協働において優れた効果を発揮します。」

この本はビジネスの会議で使えるゲーム的なワークショップ、ファシリテーション技法のマニュアル集だ。主要なゲーム、参加者の心を開き発想を拡げる開幕のゲーム、深く掘っていく探索のゲーム、収束させる閉幕のゲームの4パートで合計80以上のゲームの進め方が紹介されている。

3つほど簡単なゲームを紹介してみると、

「ペチャクチャナイトとイグナイト」。限られた時間で、たくさんの発表を、たくさん公開できるアイデア。

「ペチャクチャナイトのコンセプトは単純で、プレゼンテーションに使う「スライド(画像)の枚数と1枚あたりの表示時間を制御することによって情報を素早く簡潔に伝えるというものです。具体的には20×20、つまりスライドはひとり当たり20枚、1枚あたりの表示時間は20秒です。スライドの切り替えは自動的に行われ、発表者は制御することはできません。ペチャクチャナイトに触発されて生まれたイベント「イグナイト(ignite)」も同様にペースが決められています。」

参加者の理解度を確認する「5本指コンセンサス」。

「進行役は参加者に、議題についてどのくらい合意が取れているか5段階で評価するように依頼します。完全に合意が取れていると思う」場合は5本の指を上げ、「まったく合意が取れていないと思う」場合は5本の指を閉じます。これは特にその場で作られたグループの場合には効果的です。同時にいろいろな話題が議論されがちだからです。指が1本、2本、3本というように、いろいろなレベルの人がいるグループは進め方をもう少し検討する必要があるでしょう。」

問題の根本的下人を見つけ出す「なぜなぜ5回」

参加者に5枚の付箋を配って「なぜこれが問題なのか自問してみてください。そしてその答えを付箋1に書いてください」「付箋1に書いた答えがなぜそうなのか自問して、その答えを付箋2に書いてください。」「付箋2に書いた答えがなぜそうなのか自問して、その答えを付箋3に書いてください」...。全員の5枚の答えを縦に並べて、共通点と相違点を話し合う。

ゲーム的なセッションはアウトプットが曖昧に終わりがちであるが、この本のゲームを組み合わせて閉幕のゲームを後半に配置していけば、上司への報告も可能な創造的なミーティングができると思う。

監訳者の野村恭彦(富士ゼロックスKDIシニアマネージャー)は日本に「フューチャーセンター」という未来探索の方法論を紹介している国内有数の凄腕ファシリテーター。所属する会社での実践例が日本語版には収録されている。

デジタルの時代は、ツールの使い方に習熟するだけでは他人と差をつけることが難しい。こうしたアナログでアイデアを引き出す、チームで創発するやり方を知っている人こそ、クリエイティブなリーダーになれる。来年は"ゲーミフィケーション"より"ゲームストーミング"だ。

・星を継ぐもの 2
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昔、小説の原作を読んだ時以上にマンガ版で興奮している自分に驚く。

木星の衛星・ガニメデで発見された謎の宇宙船を目指す第一線の科学者たち。長い旅程で地球に5万年前まで月がなかったというとてつもない仮説を検討する。そして太陽系にもうひとつの幻の第5惑星ミネルヴァの存在が浮かび上がる。第1巻、月面で見つかった深紅の宇宙服をまとった死体はミネルヴァに由来するものなのか。前半は科学者たちの議論が長く続くが、圧倒的な画力で飽きさせない。

ついにこの巻では、科学者チームがガニメデに到着して、100万年前に消えた宇宙人ガニメアンと遭遇する。そのガニメアンの造形が素晴らしい、素晴らしすぎる。西洋、東洋の古代神話の異形の神々や魑魅魍魎を描き続けてきた作家だけあって、いかにも人類の神話に巨人伝説として残っていそうな、深層意識を刺激するデザイン。星野之宣が描く理由が十分にあると思った。

原作小説。
・星を継ぐもの
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この物語は雑誌ビックコミックで連載中だが、7月に第1巻、12月に第2巻が出た。次は春か。来年内には完結する、かなあ。楽しみ。第一巻を読んで傑作の予感がしたが、第二巻で傑作確定である。

星を継ぐもの
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/07/post-1470.html

乳と卵

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・乳と卵
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2008年に新たな言語感覚で話題になった川上 未映子の芥川受賞作。今頃ですが文庫で。

東京に棲むひとりぐらしのわたしのところへ大阪から姉の巻子とその娘の緑子がたずねてくる。もうすぐ40歳の巻子は、ホステスをしながら母子家庭の生計をたてているが、この夏、豊胸手術がしたくて上京してきた。久々に会う緑子は言葉を話さず、親と筆談でコミュニケーションをしている。親子関係はうまくいっていないらしい。

「卵子というのは卵細胞って名前で呼ぶのがほんとうで、ならばなぜ子、という字がつくのか、っていうのは、精子、という言葉にあわせて子、をつけてるだけなのです。図書室には何回か行ったけど本を借りるためになんかややこしくってだいたい本が少ないしせまいし暗いし何の本を読んでるのんか、人がきたらのぞかられうしそういうのは厭なので、最近は帰りしにちゃんとした図書館に行くようにしてる。パソコンも好きにみれるし、それに学校はしんどい。あほらしい。いろんなことが。」

一文が数ページも続く文章。最初は読みにくいのでは?と思ったが、独特のリズムを持っていて、慣れてくるとユーモラスで親しみやすく感じた。標準語の"わたし"の地の文と巻子の関西弁の会話、言葉を話すことができない緑子の、幼くて少し情緒不安定な手紙の文体。標準語×関西弁×こどもの内面の不思議語のリミックス文体がこの作品の魅力。朗読作品にしても面白そう。

併録された『あなたたちの恋愛は瀕死』は都会で疲れた女と、ティッシュ配りの男の不可能な関係性を描く滑稽な短編。人間がいっぱいいるのに、関係性が希薄な都会の雑踏では、一方的な思い込みで、話したこともない相手に対して、恋愛感情とか敵対感情とかを持ってしまう。つながりまくりの時代には、逆につながらないことがドラマになる。

・sticky phone memo
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要するにiPhoneみたいな付箋。メモを書いて貼ることができる。

退席中の同僚に伝言メモを渡す時に、PCの画面にでもペタっと貼り付けておけば絶対に目立つ。50枚入っている。箱にはスマートフォンの裏側もデザインされていて凝っている。お遊び商品であるが、スマートフォンの大きさと言うのは手帳サイズのメモ用紙と同じサイズだから使いやすい。

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ただ私はこの付箋を買ってから半年以上経過するのだが、もったいなくてなかなか使えない。こんなのあるのですよーとパッケージをみせびらかして遊んでいるだけだ。付箋なら便利なものはいろいろあるし...。

付箋以外の用途としては、新しいスマートフォンアプリのインタフェース設計に使えそうである。誰が一番面白いアプリを発想できるかコンテストでもやってみようかと思っている。

そういえばyPadあったな。最近使っていないな。

・yPad チマチマした電子アプリが真似できない スケジュール+ノートパッド
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/12/ypad.html

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