ブスがなくなる日

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面白かった。美容ジャーナリストによる男女の見た目格差研究。ブスと美人の定義の歴史、それぞれの時代の両者の生き方など興味深い論点が満載。井上章一の『美人論』が好きな人は、現代版としてこの本をおすすめ。

著者いわくメイクの進化や安カワ服のおかげで街からブスが消えたという。"規格外れ"の顔を、美しいとされる理想顔に近づけるのが庶民でも簡単になったからだそうだ。空気を読む人が増えたのと連動して、自身の容貌に気を使う人が増えてきたというのもあるかもしれないと思う。

明治初期の日本人の顔は「貴族階級は細長く、庶民は丸ないし四角い」だったと当時の外国人の記述がある。日本の原住民としての丸顔の縄文人と、細長の渡来弥生人。しだいに前者が後者を支配するようになって「色白で鼻筋が通っていて、細面」が美人の基本形となった。今もその影響は続いている。

「弥生時代の埴輪顔、平安時代の引目鉤鼻、江戸後期のうりざね顔、明治時代の大きな目、そして戦後の立体的な顔と、美人は有史以来ずっと支配者の顔でした。「強いものが美しい」。美醜の価値観の仕組みって、実はとてもシンプルです。」

江戸時代までは美人であっても下層階級の女は正妻になれなかったが、明治時代には美貌で玉の輿に乗って上流階級へ上っていけるようになったという。民主的になると同時に、美を巡る女性の競争もし烈になる。美容の市場はここで誕生したわけだ。

戦争に負けてアメリカ人女性が一時期理想の顔になったが、高度経済成長で日本人は自信を取り戻し、日本人女性の特徴をとらえた美人像がふたたび生まれた、それがかわいいアイドル顔だと著者は説明する。

「アジア人は、体格が小さく頬が丸く声が高いといった、子どもに似た特徴、生物学でいうところのネオテニー(幼形成熟)という特徴を持っており、大人っぽい白人とは根本的に違うのです。このネオテニーを誇張したのがアイドルで、日本特有の"カワイイ文化"を体現したのが彼女たちだったのです。」

弥生時代から現代の可愛いにいたる美人史はなかなか説得力がある。

現代日本には「美しい」と「可愛い」のふたつのベクトルがあるなあと思う。海外で高く評価されるのが美しい系美人で、国内で評価されるのは可愛い系美人。アジアっぽいエキゾチックな顔というのも国内ではあまり評価されないが、海外ドラマのアジア系の女優には多く登場する。美人、ブスは相対的なものに過ぎないから異文化に行くと評価が異なる。

国際化の時代「○○国へ行けば美人」ということがわかる顔写真分析アプリとかあったら、本当に世界からブスはなくなるかもしれないな。

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このページは、daiyaが2011年6月21日 23:59に書いたブログ記事です。

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