2008年10月アーカイブ

極道めし

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・極道めし
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刑務所で年に一度の最高の贅沢"おせち料理"を賭けて、懲役の男達がうまいもの話バトルを繰り広げる。くじで決めた順番でそれぞれが人生で一番うまかった食べ物の話を話す。同室の懲役仲間の喉をゴクリと鳴らすことができたらポイント獲得。さあ何人の喉を鳴らすことができるか。

これほどまでに、ものがうまそうな漫画って読んだことがなかった。読みながら思わず喉を鳴らしてしまうのは私だけではないはず。美食道楽指向の「美味しんぼ」などと違って、この漫画にはカツ丼や焼きそば、立ち食いそば、のような庶民的な食べ物ばかり出てくる。日常の食の方が、高級な非日常の料理よりもシズル感が強いのだ。(少なくとも庶民の私には。)

塀の中という設定も垂涎度に拍車をかけている。刑務所は入ったことがないけれど、健康診断の日とか、合宿研修の日とか、仕事中の深夜とか、自由行動が制約されている状況って、異常にお腹が減る気がする。普段は滅多に食べないのに、深夜にカップ焼きそばが食べたくなって困ったりする。もう遅いからやめておこうと自制するが、制すれば制するほどに食べたい衝動は強まっていく。そういう空腹時の切迫感が、各話に登場するのだ。

当然のことながら男達の話は懲役囚になるまでの転落人生の紆余曲折と絡めて語られる。不遇の時に食べたうまいものの味は引き立つ。人情とあわさって「一杯のかけそば」みたいなノリのときもある。ホロリとさせつつゴクリとさせるのがこの漫画の基本路線だ。

・選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか?
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ノーベル経済学賞受賞の経済学者ケネス・アローは、いかなる投票方法を持ってしても、票割れなどの好ましくない状況を完全に排除することはできないということを論理的に証明して見せた。アローの不可能性定理は民主主義の致命的欠陥ともいわれる。民衆が三人以上の候補者から最適な一人を選ぶことは、とても難しいことなのだ。

公正な投票を実現すべく多くの投票方法が考案されてきた。相対多数投票、コンドルセ投票、是認投票、即時決選投票、単記委譲式投票、範囲投票、ボルダ式得点法、累積投票など、数の多さに驚かされる。

だが、どの方法を使っても欠陥はある。代表的な問題はたとえば、

・票割れの問題
考え方が似ている投票者集団が、類似した主張を掲げる二人の有力候補者(クローン)の間で分裂し、マイナーな第3者が当選してしまうなど好ましくない結果を生じさせる。相対多数投票の最大の欠陥。この状況を意図的に引き起こすために落選覚悟で立候補するマイナー候補者はスポイラーと呼ばれる。

・コンドルセ循環の問題
他の候補者一人一人と一騎打ち投票を行い、最後まで過半数を獲得して残った候補者をコンドルセ候補と呼ぶ。コンドルセ候補は理想的な当選者だが、一騎打ちの多数決選挙ではAがBに勝ち、BがCに勝ち、CがAに勝つことがあり真の勝利者が確定しない問題がある。

などである。これらは理論的な欠陥にとどまらず、実際の選挙でもよく発生する現実的な問題であることが明かされる。

米国大統領選は過去45回行われたが、スポイラーのせいで二番人気の候補者が当選したケースが少なくとも5回はあるという。直近ではブッシュがゴアを破った2000年の選挙だ。ラルフ・ネーダーがいなければ、あるいは耐スポイラー効果のある投票システムが使われていたら、結果はゴアの勝利になったという計算がある。

多数の投票方法の長所と短所が実例や特殊な想定を使って検証されていく。常識的に思える投票方法が、ときには結果を非常識に逆転させてしまうことがある。たとえばこんなケースだ。

「投票者1万人とA、B、Cの三人の候補者がいるとする。候補者Aは、九九九九人からはっきりと好まれている。この人々は、Aは優秀でBは凡庸、Cは最悪だと考えている。  ただひとりはぐれた変わり者の投票者はまったく正反対の好みを持っている。彼はCが大好きで、Aを嫌っている───そしてBについてだけは同じで、ミスター凡庸だと考えている。」

投票者が一人だけ適任者を選ぶのならば、A(9999票)対B(0票)対C(1票)で、当然ながらAが圧倒的勝利を収める。コンドルセ式、ボルダ式、即時決選投票方式などでもAが勝利する。これは一見、常識的に思える。

ところが、もしも三人それぞれに対して「こいつは"あり"」印をつけさせる是認投票を採用した場合、得票数はA(9999)、B(10000)、C(1)となってBが当選してしまうのである。なぜならBは凡庸だが全員が少なくとも"あり"だとは思っているからだ。一方、Aには敵がいるから失う票がある。全員が二番手だと思っているBが当選できるのだ。この問題に関しては「是認投票であれば、クリントンが最下位になり、ペローが1位になっていたかもしれない」という研究論文もある。

投票システムの欠陥は全体が最も満足する候補者ではない者を選び出すことがある。当然、多くの投票者は結果に不満足である。統計用語では「人間の不幸のうち、回避可能だったと予測される不幸」をベイズ後悔(Bayesian regret)というそうだ。仮にすべての投票者の脳を電気的に計測して満足度を測ることができるとする。選挙後に全員の満足度の総和が最大になる選挙システムが最良の選挙システムとする研究が紹介されていた。

そして、なんとも意外な投票方法がベイズ後悔を最小化する最良の方法の一つだということが判明する。それはネットの美人投票サイト Hot or Notが採用している範囲投票なのである。投票者は1から10までのスケールのどこかにチェックをする単純な仕組み。

・Hot or Not
http://www.hotornot.com/
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美人を10段階で評価する有名なサイト。他人の評価を確認したり、美人ランキングをみることができる。あ、もちろん写真を投稿して参加もできますが。

単純な方法だが、範囲投票はランキング投票や是認投票に比べて、自分の気持ち(支持の度合い)を正確に表現できる。さらに投票者が特定の誰かを勝たせるために(あるいは落とすために)"戦略的"に投票したとしても、投票数の多さ=支持者の多さになるので、意味のある結果になるという大きなふたつの長所があるという。範囲投票は記入フォームも集計もネットだと実現しやすい形だ。電子投票が普及していくとき、Hot or Notが未来の民主主義を支える方法に進化するなんてこともあるのかもしれない。

選挙区制、比例代表、選挙人制など国内外の選挙のたびに、なんでこんなに投票は複雑になっているんだろうと思っていたのだが、この本で何が問題なのかがだいぶわかった。いい本だ。

・味覚と嗜好のサイエンス
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味覚は視覚や嗅覚と並ぶ人間の感覚のことで、嗜好は過去の食体験に基づいて決まる好悪判断のこと。本書は食体験にかかわる、このふたつの要素を科学的に解明する。

味覚には原味と呼ばれる基本要素としての味が5種類ある(甘味、塩味、うま味、苦味、酸味)。この組み合わせで味ができる。味覚は生存の上で重要な感覚のように思えるが、意外なことにそれぞれの味覚には受容体がひとつずつしか発見されていない。

これに対してにおいの受容体は388種類もあるという。実はにおいこそおいしさの決め手だったのである。口から鼻に抜けるにおいを風味と呼ぶ。鼻をつまんで風味を感じられないようにすると、何を食べているのわからなくなる。(試しにウナギでやってみたら全然おいしくなかった。)そして味わいの記憶もまた大半が風味の記憶で占められているそうだ。

おいしさには次の4種類があると分類されている。

1 生理的な欲求が満たされるおいしさ
2 食文化に合致したおいしさ
3 情報がリードするおいしさ
4 やみつきになる特定の食材が脳の報酬系を刺激する

疲れたときに甘いモノがうまいのが1で、日本人は味噌汁を飲むと落ち着くのが2、松茸やらフグがうまいというのは3である。4はかっぱえびせん(嘘)。一口においしいといってもいろいろあるのだ。

多くの種類の味わいが複合して単独の味が識別できなくなった状態をコクと呼ぶ。これには同心円状に囲むイメージで3種類があるという。真ん中の原型は直接的だが、外周には舌ではなくて脳が味わう仮想的なコクがある。

1 報酬の快感を引き出す原型のコク
2 原型を想起させる学習のコク(第2層)
3 抽象化された比喩のコク(最外層)

たとえば3にあたる懐石料理の吸い物の薄いコクには、ネズミは反応しないそうだ。上品なコクは、味わう側にそれを感じる素養が必要なのだ。

「「上品なコク」とは、そこにはガツンとくるような強烈なコクの直接の要因がほとんどなく、その面影だけが存在する風味といえるでしょう。味わうものに実体の肉付けを求める味と表現することも可能です。このコクを存分に味わうためには修練が必要であり、この厳しさが品位なのだと思います。」

つまり学習によって、おいしさは拡張されるということのようだが、逆もありそうだ。たとえば学生時代に最高においしいと思っていた食堂があった。社会人になって多少は舌が肥えてから久しぶりに訪れてみると、それほどのものではなかったと失望したことがある。まずさの拡張やおいしさの不感症という現象もあるのではないか。

ま、思い切り、お腹が空いていれば何でもおいしいものではあるが。

しみじみ味って深いんだな~と味わい深い本である。

・オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで
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オークションの研究から人間の不合理性が次々に明らかになる。面白い。

冷静に考えれば、オークションにおいては、自分にとっての私的価値を明確に持ち、他の参加者がどんな入札をしようとも、自分の評価値を超えたら入札しない、というのが支配的戦略のはずである。そして早期入札は避けるべきだ。ライバルに情報を与えず、競り上げを回避するためには、終了直前の狙い撃ち入札がベストの方法になる。早めに入札することで買い手が得をすることはほとんどないといってよい。

ところが、実際のオークションは早期入札と競り上げ現象によって沸騰している。落札者がオークション後に高値落札を後悔する現象「勝者の呪い」はあまりに一般的だ。入札者の評価値は大抵の場合は漠然としていて入札中に変動してしまう。私もよくネットオークションには買い手として参加する。この支配戦略のことは頭では理解しているのに、いつのまにか不合理な入札を繰り返してしいる。

この本はこうした現象について、

「買い手が商品ついて確固たる価値を付けられない状況は、共通価値モデル、もしくは採掘権モデルと呼ばれる数学的なモデルで表すことができる。採掘権モデルは、原油採掘権がオークションにかけられたとき、採掘者は確実な利益を得ることができる一方、買い手は油田に対して見込んだ利益しか手にいれることができないという状況から名前が付いた。買い手は原油採掘から得られる本当の価値とランダムに作用するノイズから成るシグナルを入手すると考えることができる。共通価値モデルでは、買い手の評価値が相互依存しているという点が重要である。言い換えると、買い手の価値は統計的にみると相関しており、早い段階で公にされた入札額は、他の人にとって有用な情報をもたらすのである。」
と説明している。これで自分の不合理な行動の理由が分かった。

私の場合、入札するのは中古フィルムカメラだ。この商品には希少性によって決まる機種別の相場がかなり明確にあるのだが、個体のコンディションによっても価格がかなり上下する。入札の公開情報だけでは確固たる価値の算定がなかなか難しいのだ。迷いがある。そこへ早期入札者が現れて高い価格をつけると、私の私的価値に強烈な影響を及ぼしてしまう。IDを調べれば商品に詳しい人物(多くは業者)かどうかが分かる。すると、そうそう、これはこのくらいの価値はあるよなと思えてきて、再度入札してしまうのだ。

・競争相手に負けたくない
・一時的にせよ最高の入札者になるのが気分が良い
・明日は忙しくて入札できないかもしれない

などの心理も過剰な入札につながる。

この本には、ネットオークションを分析した結果、

・オークション開催期間は1週間で週末に終わる設定が買い手に有利(週末効果)
・買い手は送料のことは忘れていることが多い(心の勘定)
・ネットオークションにも(米国なのでほとんどがイーベイの事例)買い手の談合などの不正が蔓延している

ことなどが紹介されている。売り手、買い手が不合理を積み上げた結果、オークションは盛り上がっているということなのかもしれない。

プリンストン大学コンピュータサイエンスの教授が、行動経済学、実験経済学、ゲーム理論を総動員して、オークションの不合理性の正体を次々に明らかにしていく。そして、効用や均衡などの考え方から、買い手、売り手にとって何が最適な戦略かを分析する。数学モデルも明解に提示される。人間の欲望や感情による不合理性が計量化されているのだ。

・文章をダメにする三つの条件
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文章術の類書は多いが、こうすると文章がダメになるという作文の「べからず」という視点で書かれているのが本書の特徴だ。著者は元読売新聞社のデスクで、大学や文化センターで作文を教えるベテラン。豊富な授業経験から学生たちが陥りがちな悪い傾向を3つみつけたという。

1 文章の意図がつかめない事実や印象の羅列
2 読み手が退屈する理屈攻め
3 読み手の興味をひかない一般論

私も学生時代は作文はあまり得意ではなかった。今思えば、授業という文脈では、書く動機が弱すぎるのだ。提出した作文にはそもそも書く意図などなかった。だから、原稿用紙を埋めるために理屈と一般論を展開していた。

こうした傾向を避けるためのコツとして、書くポイントをひとつに絞ること、書き手の特異な個人的体験に逃げ込むこと、細部の観察にこだわること、など多くのポイントが、学生の作文例を肴にして明解に語られている。

著者の特異体験である新聞記者時代の経験談がやはり光っている。

「記者時代に先輩からこういわれたことがある。「取材が完全にできたときは、できるだけ易しく書け、どこか腑に落ちない取材のまま書かなければいけないときは、理屈っぽく難しく書いておけ」と。理屈は不完全な取材をごま化す一つの手法であり、逃げの一手でもあるのだ。」

材料が十分でなくても書かなければいけないという事態は、新聞記者でも学生でも一緒といえる。そんなときは高度な名文のコツよりも、まずはダメにしないコツの方が、多くの作文シーンで役立つものであると思う。

特異な体験をベースにせよという指摘はやっかいであるが肝である。

「よく"お役所仕事"という言葉が悪いイメージで使われる。これは"前例がないのでできません""人が一般的にやらないことなので、できません"といった消極的な態度を指していうのだが、作文では"前例のないこと""一般的でないこと"を掘り下げて書いてこそ、読むに耐えるものとなるのだ。」

著者の生徒には、自身の堕胎体験を綴った人がいたということだが、人生経験の棚卸しと同時に、内面をさらけだす勇気やノリが大切ということだろう。だからよく書かれた文章には自然と人柄がにじみ出てしまうのだ。

後半で、著者は、自分にはできないがと前置きした後、実は主語が明確に出ていない文章こそ、日本語の非論理性を自然に表した文章であると述べている。ただしそれは文章の巧みな人にのみ許される高度な技である、とも。

私もこのブログで、なるべく文頭が「私」にならないように書こうと日々気をつけていたりするのだが、かなり難しい。主語を隠すと文章の骨格がぐずぐずに崩れてしまうのだ。こればかりは天賦の才能か、相当の練習努力が必要なのだろうな。このブログは1900日を超えたがまだまだ私の文章修行は続く。

・プロアクションリプレイMAX2
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5歳の息子がDSのゲーム「美文字トレーニング」に4ヶ月以上もはまっている。毎日毎日、出題される漢字を書いている。既に収録漢字3099文字を超えて「裏面」へ突入してしまった。最初の頃は、親としてはシメシメ漢字を覚えさせる良い機会だと思っていたのだが、最近は明らかにやりすぎである。確かに息子の文字は学習教室でべた褒めされるほどにキレイになったのだが、放っておくと何時間でもやるので30分に制限している。

・美文字トレーニング
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/ds.html

で、その3099文字+αの記録されたゲームデータだが、以前1000文字くらいのときに、カートリッジの抜き差しに失敗してか、飛んでしまったことがある。そのときは息子をなんとか説明して泣かさずに済んだのだが、記録達成した今また飛んだら大騒ぎは必至。DSのゲームデータのバックアップ方法を探した。

で、見つかったのがこれだった。

DSとカートリッジの間にこのアダプターを差し込む。アダプターにはmicroSDカード(別売り)を挿入しておく。そしてDS起動すると、カートリッジ内のゲームデータをmicroSDへ複製できるようになる。もちろん復元も可能。USB経由でPCへ取り込むこともできる。

実はこれ、ゲームのバックアップはおまけ機能。本来はゲームデータを改造して、キャラクターを無敵にしたり、レベル100にしたりする"チートコード"マシンなのだ。多くのDSゲームのパラメータ改変ツールが内蔵されている。

PC専用ソフトも付属しており、ネットから最新ゲームのチートコードをダウンロードすることも出来る。下がその画面。ゲームの種類は物凄い数だ。げ、カルドセプトで魔力99999という誘惑...うむむ。

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無事、ゲームのバックアップが完了した。(復元を完全に試してないが、とりあえず一安心である。)。アクションリプレイの噂は昔から聞いていたがまさか自分で買うことになるとは。裏技ツールだが内容は充実していた。DSゲームを大量に持っている人は飽きたソフトをチートを使って遊び直してみるといいかも。

ヒミズ

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・ヒミズ
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ヒミズ=モグラに似た小動物。落ち葉の下や浅い地中に棲息し、昆虫やミミズを食べてくらす。日の当たらない場所で一生をすごすから「日見ず」と呼ばれる。トガリネズミ目モグラ科に分類される哺乳類。日本固有種。(Wikipediaで調べた。)

ギャグ漫画「行け!稲中卓球部」の古谷実が、うってかわって、暗いシリアス路線で描いた傑作。

・ヒミズ2
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中学生3年生の住田は川べりで貸しボート屋を営む母親と二人で住んでいる。両親は離婚しており、だらしない父親は金の無心のときだけたまに訪れる。母親には別に男もいて、家庭の居心地はよくない。

住田は決して大きな夢を見ない。望まないようにしている。特別を嫌う。ただただ自分は平凡な人生を普通に生きたいと願う。友人との交流もほどほどにして目立たぬように生きるつもりでいる。しかし、普通でありたいと思う彼の視界には、ときどき存在するはずのない怪物が見えることがあった。

・ヒミズ3
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住田と仲の良い中学3年生の夜野 正造はスリの常習犯だ。ついつい手が動いて人の財布を盗ってしまう癖がある。仲間のいじめられっこ赤田 健一は、従兄弟で漫画が上手い小野田 きいちに影響されて、自分も漫画家を目指してみるが才能はない。同級生の茶沢 景子は大人びたクールな性格だが、内に熱いものを秘めている。住田に内心惹かれている。

住田らは、それぞれが不幸な事件を通して、殺人や犯罪に巻き込まれ、絶望的な状況へと追い込まれていく。親に逃げられ一人住まいとなった住田のボート小屋まわりには、ヤクザやホームレス、変質者などが現れて不穏な雰囲気が濃厚になっていく。

・ヒミズ4
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絶望がテーマのダークな中学生日記。心の闇の中に写るものをストレートに描き出している。全4巻。大変読みごたえがある。おすすめ。小説化、舞台化された。

・アルケミスト 夢を旅した少年
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スペインの平原に住む羊飼いの少年が、夢のお告げを信じてエジプトのピラミッドに旅立つ。お告げはピラミッドの近くに宝物が埋まっているから掘りに行け、というのだ。少年は羊を売り払って海を渡り、遠い遠いエジプトの地を目指す。

これは人生の教訓がたくさん散りばめられた寓話の玉手箱みたいな作品だ。羊飼いの旅というメインストーリーは「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」とか「前兆に従え」というDream Comes Trueなポジティブ指向のメッセージだ。

これに加えてサブストーリーや脇役が持ち込む寓話が多数ある。その数多ある中の挿話の一つに過ぎないのだけれど、賢者から幸福の秘密を盗んでくることになった若者の話が、私には一番印象的だった。

それを要約してみると...

若者は長旅の末、賢者の宮殿にたどりついた。賢者は若者に、今私は忙しくて幸福の秘密を話している時間がないので、美しい宮殿内部を2時間ほど見てきなさいと命じた。そして二滴の油が入ったティースプーンを渡して「歩き回る間、このスプーンの油をこぼさないようにしなさい」と言った。

だから若者は2時間ほどスプーンに目を釘付けにして宮殿の中を歩いた。そして賢者の元に戻った。賢者は宮殿の素晴らしい織物や庭園や書物を見たかと若者に尋ねた。若者は油をこぼさぬことばかり考えていたから何も見ていなかったと答えた。

賢者は、では戻ってもう一度見てくるがいいと言った。若者は今度はしっかりと素晴らしい美術品や庭園を鑑賞して感動した。そして賢者の元に戻り報告した。賢者は言った。「しかし、わしがおまえにあずけた油はどこにあるのかね?」。スプーンの油はどこかに消えてなくなっていた。

『幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ』と賢者は教えた。

という話。

いやあ、この部分だけでもかなり深いと思った。

・目先の利益追求ばかり考えていると本質を見失う。(企業経営も同じ)
・ワークライフバランスを大切に
・自分の初心や原点を忘れてはならない
・旅は目的地だけでなく途中の車窓の景色も楽しめ
・なぜスプーンの油は二滴なんだろうか?

解釈や展開はいろいろできる。読者が多義的に教訓を引き出せるのが寓話の良さ。

羊飼いの少年は旅の途中で幾多の苦難に見舞われる。出会いと別れ。成功と失敗。そのたびに印象的なエピソードから人生の教訓を学んでいく。そしてとうとう、宝の埋まるピラミッドにたどりつく。彼がそこで見つけた真実の宝とは?。

・文章は接続詞で決まる
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「「てか」を好んで使う人は、すぐに新しい話題に移りたがる飽きっぽい人かもしれませんし、「ようするに」が口癖の人は、結論を急ぎたがるせっかちな人なのかもしれません。「でも」をよく使う人は、他人の言うことを素直に受けいれるのが苦手な頑固な人である可能性があります。「だから」を使いたがる人は、自分の主張を人に押しつけたがる押しの強い人かもしれませんし、「だって」を好む人は、言い訳が癖になっている、自己防衛本能が強い人かもしれません。」

接続詞の使い方を見ると隠れた性格がわかるという話。特に講義のような独話では接続詞は書き言葉の2,3倍も多く使われるそうだ。シーン別によく使われる接続詞ベスト5の比較が面白かった。文章のらしさは接続詞が決めている部分も多そうだ。

新聞:しかし、また、だが、一方、さらに
小説:しかし、そして、それで、だが、でも
講義:で、それから、そして、つまり、だから

著者は、対話では接続詞の多用はリスクが高いと注意する。相手の発話権を奪う、言い方を訂正して気分を逆なでする、逆接の使用で無用な対立を生む、自己正当化を目立たせる、という危険性に気をつけて使うべきだと説いている。(私は気をつけていないと「要するに」「つまり」「絶対に」を多用してしまう癖があるなあと自覚した。この注意は耳が痛い)。

普段は意識することがなかった文章や会話の中の接続詞について、深く考える機会を与えてくれる良書である。そもそも接続詞って何?から、「しかし」「だから」「たとえば」「あるいは」「ところが」「さらに」「また」「まず」「したがって」など多数の接続詞のひとつひとつを用例から説明する。「しかし」や「だから」の説明なんて初めて読んだが新鮮である。

接続詞の一般的な定義は「接続詞とは、文頭にあって、直前の文と、接続詞を含む文を論理的につなぐ表現である」というほどのものだが、本書では「接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現である」と再定義している。接続詞は必ずしも論理的ではないということでもある。

接続詞の読み手のための機能として次の6つを挙げる。

・連接関係を表示する機能
・文脈のつながりをなめらかにする機能
・重要な情報に焦点を絞る機能
・読み手に含意を読みとらせる機能
・接続の範囲を指定する機能
・文章の構造を整理する機能

そして接続詞を論理の接続詞、整理の接続詞、理解の接続詞、展開の接続詞、の4種をさらに10類にグループ化して、それぞれに豊富な用例と効能書きが続く。こんなにあるのかというのが素直な感想。著者曰くこれだけ接続詞だけを語った本は類例がないそうだ。接続詞のすべてがここにあるといってもよいかもしれない。というわけで、つまり、だから、それで、とりあえず、まずは........これだけ読んでおけば、もう一生接続詞で困ることはない、でしょうね。

・表現力のレッスン
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演出家 鴻上尚史が早稲田大学などで教えてきた表現力向上のレッスンを書籍化したもの。20のワークショップを紙上で体験できる。舞台出身らしく声と身体を使った表現力に徹底的にこだわる。

レッスンでは身体接触がやたらと多い。後ろのパートナーの支えを信じて倒れ込む「信頼のエチュード」に始まって、パートナーを彫刻に見立てポーズを作る、とか、目隠ししたままパートナーの姿勢を手で触って真似する、など、自分や他人の身体で遊ぶレッスンが基本である。こうした日常にない身体体験を通して、隠れていた自分の身体の表現力や感情を発見するのがねらい。

これを男女混ざった大学の授業でやっていると学生達はさぞドキドキ・ワクワクだろうなと、想像してしまった。実際、授業では過剰に意識する男女がいるので、鴻上が「異性を触りながら飢えてるぜ光線を出さないように気をつけましょう」などと注意している様子が可笑しい。

日本人の身体接触下手について鴻上は「中学生のフォークダンスの無残さ」をひきあいにこう言う。「日本人は、セックスを前提としない男女は皮膚接触しない」という文化を持ちながら、無条件にフォークダンスを輸入してしまったのです。驚愕の自殺行為です(笑)。体育の時間や運動会の時のフォークダンスが、どうしてあんなに恥ずかしく、居心地が悪かったのか、今なら分かります。」

でも、このちょっとドキドキの高揚感や楽しさがあるから効果がありそうなのである。ここに紹介されているレッスンのほとんどは真面目な顔で一生懸命やるよりも、楽しみながら生き生きとした表情で遊ぶ方が効果がありそうなのだ。生き生きとした表情や感情を見つけることが趣旨なのだから。

教育関係者から「楽しいだけでいいんですか?」と質問されて鴻上は少しムッとしたという。

「ムッとしたのは、「楽しければいいのか、教育目標はないのか?」という考え方が、日本人をどんどん表現下手にしたからです。<中略>表現とは、まず、本人が楽しむことが大前提です。楽しければ、放っておいても、本人はそのことを続けるのです。音楽が楽しければ、作文を書くのが楽しければ、放っておいても、音楽や作文を続けるのです。続けることで、どんどんと表現は上達するのです。」

鴻上のまとめたレッスンはどれも実際に試してみたくなる。ムチャクチャ語で意思疎通をはかるとかその横で勝手に通訳をするとか、ひと言も話さず目だけ手だけ足だけ胸だけで会話するとか、遊んでいるうちに表現法が自然に開発されていきそうだ。この授業を受けたかったなあ。

・真実の言葉はいつも短い
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-787.html

・大人の時間はなぜ短いのか
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もうすぐ今年も11月だ。子供の頃はあんなに1年が長かったのに今はあっという間だ。

大人になると子供の頃に比べて時が経つのが早くなる。これは万国共通の実感のようだ。実験室でも検証されている。数十秒から数時間という経過時間を被験者に評価させると、加齢に従い短い時間を報告するという事実があるという。なぜ年を取ると時が経つのが速いのか、なぜ楽しい時間は退屈な時間よりも短く感じるのか。実験心理学を専門とする著者はこの時間の知覚の謎に迫った。

時間評価に影響を及ぼす主な要因としては次の4つが挙げられていた。

・身体の代謝
代謝が高まると時間をゆっくりに感じる。1日の内でも代謝の関係で午前がゆっくりで午後が速く感じられるものだそうだ。代謝は加齢に伴い低下する。年を取るほど時間経過を速く感じる一因。

・心的活性度
緊張や興奮によって時間経過は速く感じられる。実験ではクモ恐怖症の人をクモと一緒の空間に閉じこめると時間が長く感じられたそうだ(凄い実験だ)。

・時間経過への注意
時間を気にすると長く感じられる。時間経過への注意が時間を分節化してしまい、分節化された時間帯の数を多く感じることで、長いと感じるのではないかという仮説がある。

・他の知覚様相の状態
広い空間では時間はゆっくり。刺激が多い時間は速い。受け取る情報に脈絡やまとまりを感じていると速く感じる。

著者は視覚や聴覚の錯覚を研究している。この本にも興味深い事例が多数掲載されている。目や耳で感じる印象と物理的実在のずれは案外に大きいことがわかる。そして時間感覚のずれも錯覚の一種としてとらえようとしている。今後、研究が進んでいけば、錯視パターンのように、人間の時間経過を操作する技術が発見できるのかもしれない。

それからとても気になったのは人間には心地よいと思える「精神テンポ」が備わっているという話。個人差があって0.4秒から0.9秒の間にあり、歩くペースや会話の間合いなどと正の相関があるという。私は歩くのも話すのも速い方なのだが、やっぱり、せっかちということなんだろうか。

この本は読書時間が短く感じられた。つまり面白い本だった。

・5秒スタジアム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/5-7.html

・マインド・タイム 脳と意識の時間
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005226.html

・「時間」を哲学する―過去はどこへ行ったのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/07/post-110.html

・津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇
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岡山県苫田郡西加茂村大字行重部落。昭和13年5月21日午前1時40分頃、農業 都井睦雄(22歳)は寝所から起きだすと、黒詰襟の服を着込み、足にはゲートルと地下足袋、頭に二本の懐中電灯をとりつけた。猛獣狩用猟銃を持ち、日本刀を腰に下げて、外に出ると、まず村の電線を断ち切り村を停電させた。世界的にも類例がないほどの単独犯による大量殺人事件の始まりであった。

犯人は最初に自分の祖母の首を斧ではね体に銃弾を大量に撃ち込んだのを皮切りに、次々に恨みのある家々を襲撃してまわり、深夜2時間ほどの間に村人30人を惨殺していった。何人かには逃げられたが、周到な予定通りの復讐を完了すると犯人は山に隠れて長い遺書を綴った(この本にはその全文も引用されている)。そして「もはや夜明も近づいた、死にましょう」と書き上げると自らの胸を銃で撃ち抜いて自殺を遂げた。

これは「八つ墓」のモデルとなった津山三十人殺し事件のドキュメンタリだ。捜査資料の精査と関係者へのインタビューを積み重ねて、事件の真相を解明していく。大昔の話とはいえ不謹慎を承知で感想を書くが、この本は読み物として最高レベルで面白かった。情報の整理と語りの順序が完璧で、物語のような進行感がある。よくできたドキュメンタリとはこういうものかと感心した。

前半は客観的な事実と村人の証言によって事件当日起きたことが明らかにされる。後半では丹念な取材情報を使って犯人の22年間の人生を振り返る。この二つのアプローチによって事件のリアリティが生々しく感じられる。事件は起こるべくして起きたのだと。

犯人は幼くして両親を亡くしたが祖母によって大事に育てられた。子供時代は優等生であった。しかし青年期からは病弱な体質と弱い性格が災いして、世間との折り合いが悪くなる。年を重ねるごとに内面に鬱憤を蓄積していく。村の女性達との関係悪化がきっかけで遂に心が決壊し、村人皆殺しの決意に至る。犯人自身が決行の前後に遺書を書いており本人の心情も明らかになっている。

「決行するにはしたが、うつべきをうたずうたいでもよいものをうった、時のはずみで、ああ祖母にはすみませぬ、まことにすまぬ、二歳の時からの育ての祖母、祖母は殺してはいけないのだけれど、後に残る不びんを考えてついああした事をおこなった、楽に死ねる様にと思ったらあまりみじめなことをした、まことにすみません、涙、涙、ただすまぬ涙がでるばかり、姉さんにもすまぬ、はなはだすみません、ゆるして下さい、つまらぬ弟でした、この様なことをしたから(たとい自分のうらみからとは言いながら)決してはかをして下されなくてもよろしい、野にくされれば本望である、病気四年間の社会の冷胆、圧迫にはまことに泣いた、親族が少く愛と言うものの僕の身にとって少いにも泣いた、社会もすこしみよりのないもの結核患者に同情すべきだ、実際弱いのにはこりた、今度は強い強い人に生れてこよう、実際僕も不幸な人生だった、今度は幸福に生れてこよう。」

犯人は自己中心的で弱い性格だが、数ヶ月前より周到に計画を準備し、犯行後も長文の遺書を書く判断力や冷静さを持っている。昭和初期だから舞台設定は今とは異なるものの、現代の、通り魔大量殺人事件の犯人らの精神構造と似通ったものを感じる。

・ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層
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日米事情に詳しいエコノミストの経済比較、文化比較。

アニメ一作品の売上高を比較するとディズニーやハリウッドの予算は大きい。大きいが故にコンテンツとしての弱点ができる。「ビッグビジネスは大きな興行収入を目標に掲げなくてはならないので、市場の最大公約数的な需要・好みを対象にして製作される。」。わかりやすいがエッジが立ったものが出てこない。

「ところが日本のアニメや漫画には、「ラーメン屋的供給構造」が根強く残っている。最大公約数の需要(好み)よりも、製作者が自分らのセンスにこだわって、多種多様なものを創出、供給している。従って、ひとつずつのビジネスの規模(売上)は小さいが、多様でユニークなものが供給される。その結果、意外性や驚きのあるものが多く、面白い。」

漢字や仏教、民主主義など異文化を巧妙に内側に取り込んできた雑多性のダイナミズムが日本のアニメの創造力につながっているのではないかと分析されている。人種のるつぼでありながら何かと収斂傾向のあるアメリカとは対照的である。

「私のリーダーシップを受け入れるならば、難局は打開できる」と希望を語る大統領と「日本はこのままではダメになる」と危機を語る総理大臣という対比も面白い。実際に総理大臣の国会での発言を言語分析すると危機や難局などのネガティブなキーワードが多いそうである。危機を煽って国民を動かす。

日本人は論理的なディベートよりも情緒の共有を重視する。不祥事の際の対応として経営者の「慟哭の謝罪」とかが好きな国民なのだと著者は嘆き口調。著者自身の米国経済人たちとの積極的なディベート武勇伝をいくつか披露する。ブログでは日本人は世界一のカキコミ数を誇る。「俺にも言わせろ」衝動は日本人にも十分にあるのだから解き放てとすすめる。

「日本人よ、万羽のミニハゲタカとなって瀕死の巨象を啄もう!」が笑えた。「金融・投資の「専門家」達が投げている今こそ、ミニハゲタカ気分で大幅下落した米国のREITや大手金融株の物色を考えてみようではないか。」という前向きな日本人への提案。そのとおりかもしれない。

さまざまなデータで日本と米国のイメージを検証していく。日本の格差拡大はウソとか、個人の投資行動が慎重というのもウソとか、俗説を覆すデータが提示されていて、それぞれ説得力がある。

かつて米国が日本の経済や経営を成功例としてお手本にした時代があった。立場は時代によって入れ替わる。経済力の高い国のやり方がなんでも正しいとは限らない。著者の強気の日米比較論を読むと、もはや米国に見習うのではなく、どう互角にやりあうかを考える時代への突入のような気がしてきた。

・カルドセプトDS
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このブログで2004年正月に

・私の好きなゲームたち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/01/post-47.html

というエントリを書いて1994年から2004年の10年間のベストゲーム10作品をリストアップしました。その中にエントリした「カルドセプト」がNintendo DSで発売されました。

DS版、早速遊んでみましたが、これはよい出来です。基本は移植なのでPS版で慣れ親しんだカルドセプトを、DSでプレイしたいという人は違和感なくはまると思います。私がそうでしたから。

カルドセプトを知らない人に説明するとモノポリーとトレーディングカードゲームを組み合わせたようなゲームです。プレイヤーはサイコロを振って出た目だけ双六盤を進みます。止まった領地に何も配置されていなければ。手持ちカードからクリーチャーを選んで置いて占領することができます。自分の領地に他のプレイヤーがとまれば通行料を要求できるのです。通行量はプレイヤーの魔力で支払います。

自分が他のプレイヤーの領地に止まってしまったら素直に通行量を払うか、クリーチャーカードを出して、敵クリーチャーと戦うかを選べます。アイテムやスペルカードを組み合わせて、勝つことができれば領地を奪取することができます。プレイヤー達はカードを使うたびに魔力を消費しています。

双六盤を一周して開始地点の城に戻ると魔力ボーナスをもらえます。領地占領や周回を繰り返し、総魔力を勝利条件値より多く貯めて最初に城に戻った人がゲームの勝者になります。そう、基本はモノポリーですね。

しかし、このゲームにハマる最大の理由はカードの魅力です。クリーチャーやアイテム、スペルなどのカードは370枚もあります。ユーザーはシナリオ攻略や対戦によって対戦相手から新しいカードをもらうことができます。手持ちカードから50枚を選抜して「ブック」を編集します。いくつかのオリジナルブックを用意し、双六盤や対戦相手に応じて最適なブックを選択できるようになれば初心者脱出です。

そして何より私がこのゲームが好きなのは、ゲーム史上最高のゲームバランス(当社比)を達成していることでしょうか。何度やっても飽きないのです。強いクリーチャーばかりのブックをつくると消費魔力が多すぎて実践では勝てるとは限りません。50枚の中にクリーチャー:アイテム:スペルの比率をどう設定するかも悩みどころです。常勝ブックというのは存在せず、対戦相手や環境に応じた最強があるのみです。

DSなのでワイアレス対戦機能があります。その場に集まった仲間もしくはネットワークを介して国内の見知らぬプレイヤーと対戦したり、ネットからカードやマップがダウンロードできます。ボイスチャット機能もありです。ネット対戦も興味はありますが、ボイスチャットででてきた相手が小学生だと困るので、修行中の私はまだやっていません。

長いつきあいになりそうなゲームです。


・カルドセプトDS 公式ガイド~カード&タクティクス~
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カード全部解説!


カルドセプトDS公式サイト
http://ds.culdcept.com/
Culdcept DS

・カルドセプト10周年記念サイト
http://www.culdcept.com/10th/

・Dropbox
https://www.getdropbox.com/
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使っていることを感じさせないのが最高のツールである。Dropboxはまさにそうしたツールの一つだ。Dropboxをインストールすると、マイドキュメントの下にDropboxというフォルダが作られる。ユーザーはこのフォルダにファイルを入れておくだけで、その内容は自動的にDropboxのサーバと同期する。別の場所、別のPCからでもネット上のDropboxを開けば同じ内容のフォルダにアクセスできる。

Dropboxはネットに接続していなくても通常のフォルダとして使える。見かけも一般のフォルダと同じである。外出先で作業した内容はまたネットに接続されたときに自動的に同期が行われる。差分更新方式なので短時間で処理が完了する。ユーザーはDropboxを使っていることをほとんど意識しないですむ。

他者とフォルダを共有することが可能。巨大ファイルのやりとりをセキュアに行う用途で最適。本来はコラボレーションツールなのだろう。でも、私のように誰ともファイル共有をしない人も大変便利に使える。私はここ数ヶ月、メモ保存場所、草稿箱として使っている。あらゆるファイルの保存場所をDropboxフォルダにすると決めておくだけだ。家での思いつきや仕掛かり作業を会社で続行すること、あるいはその逆が簡単にできる。

バージョン管理機能があるのが凄い。ファイルを右クリックして「Rivisions」を選ぶとファイルの変更履歴が表示される。任意のバージョンまで戻すことができる。削除ファイルを取り戻すこともできる。プログラムや原稿を書く人にとって最高にありがたい機能だ。

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Dropboxは2ギガバイトまで無料で使える。月額9.99ドルで50ギガバイトまで使える有料版がある。

・心のきれはし―教育されちまった悲しみに魂が泣いている
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絵本作家の教育論。五味太郎の大人問題も良かったが、これもユニークな視点で教育のあり方を根本から変えようとしていて面白い。名作「はれときどきぶた」の児童文学作家 矢玉四郎が書いた教育論。

著者は子供のことを「子ども」と書く表記法を改めよと強く訴えている人である。教科書では小学校5年生までは「子ども」と書かれている。子という字は1年生で習うが、供は6年生まで習わないからである。だが一時的にせよ「子ども」「れん習」のような日本語の慣行にない醜悪な交ぜ書きを使うのは間違っている、日本語への冒涜だという。そういう欺瞞が大嫌いな人なのだ。(子ども表記問題には論点が複数ある。)。ストレートに本質に迫る物言いが爽快。

代表作のはれぶたと続編は私も大人になってから出会って以来、大ファンである。


・はれときどきぶた
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1980年に出版以来、子供に圧倒的に支持されて130万部のベストセラー。はれぶたシリーズ一作目。日記に書いたことが翌日、現実になる。主人公の日記はどんどんありえない内容にエスカレートしていく。明日の天気は「はれときどきぶた」と書いたら本当に天から豚が降ってきた。

はれときときぶたの後書きには「多くの人がまちがっていて、ひとりだけ正しかったということもよくあることだ。だから自分の感じたこと、考えたことはちゃんといえるようにならなくちゃいけない。」とある。

「仮に、創造性を養う授業がはじまったとする。子供は頭が柔らかいから、とんでもない発想をするだろう。肝心なのは、その評価だ。とんでもない発想を、教師が認めてほめるなどとは、とても思えない。結局、生徒は恥をかかされて、黙るのがオチだ。結果、創造性の授業が子供から創造性をうばうことになるのは目に見えている。 創造性というのは、現在あるものを否定する毒物だということがわかっていない。」

創造性を危険な毒物だと看破する部分に感動した。イノベーションは古い枠組みの破壊を伴う。飼い慣らされていない発想が必要なのである。敷かれたレールの上を走っていてはたどりつけない。だから登校拒否である!。

「日本の学校は、小賢しい人間を製造する工場となりはてた。世界が求める大愚大賢は育ちようがない。大愚とはたいへんなばかで大賢はとてもえらいということだ。「大賢は大愚に似たり」と、昔の人はいった。 登校拒否は大賢大愚のはじまりであり、子供が自分をつくりあげるための第一歩だ。この世にきて六年目に、教育工場のベルトコンベアーにのせられた子供は、成人するまで、むち打たれながら、品質向上の道筋をたどらされる。 登校拒否は自分の意志でベルトコンベアーをおりることである。行きたくないから行かない。こんなわかりやすく人間らしい行動があるか。」

個人的な教育改革者といえる全国何十万人の登校拒否経験者たちが、日本の未来を変えるだろうという。著者は終始、学校教育への痛烈な批判とそれから外れたものたちの可能性を熱く論じる。

「いちばん過酷な状況を生きた者こそが、子供になにを教育するかを述べるべきなのだ。」

この発想だけでは駄目だがこの発想がなくては駄目。そんな気にさせられる斬新な教育界へのメッセージ集。


・大人問題
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-798.html
これも絵本作家が語るオルタナティブな教育論として面白かった。

双生児

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・双生児
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複雑、緻密な構成にうならされること間違いなしの大傑作。私などは読み終わって1時間くらい紙に物語の構造を図式化しながら考え込んでしまった。それがまた最高に楽しい時間だった。英国SF協会賞とアーサー・C・クラーク賞を受賞。

1999年、英国のノンフィクション作家スチュアート・グラットンは、第二次世界大戦中の記録に登場する空軍大尉J・L・ソウヤーなる人物のことが気になっていた。チャーチル首相の回顧録にその名前はあった。ソウヤーは良心的兵役拒否者であると同時に空軍爆撃機操縦士でもあったという。そんな矛盾したことはあり得ないはずである。ソウヤーの娘と名乗る女性があらわれグラットンに父の書いた古い原稿を託していく。

タイトルから推測できるように、案の定、ソウヤーの正体はジャックとジョーという双生児であった。この二人の人生が複数の記録や証言によって少しずつ明らかになるのだが、そのプロセスは一筋縄ではいかない。伏線の縄が十本、百本ある感じでそれらが錯綜している。メビウスの輪のように不思議な結び目が幾つもあらわれる。

この作品は物語りというより物騙りである。読者は少しずつずれた同時期の物語を何度も聞かされる。矛盾する語り。それは記録が虚実入り乱れているからなのか、平行世界が幾つも存在しているからなのか。根本的な疑問を抱えたまま現在と過去を何度も往復するうちに、緻密に設計された物語の重層的な迷宮構造が少しずつ姿を現していく。

とてつもないものを読まされたというのが素直な感想。

この読書体験はアゴタ・クリストフの「悪童日記」三部作に似ている気がした。このシリーズの騙り感覚が好きな人に特におすすめである。

・「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/02/post-529.html

・プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?
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タイトルから内容がわかりにくいが、タフツ大学の小児発達学部教授で読字・言語研究センター長が書いた「読書脳」の本である。

私たちが字を認識して読書をする能力は、脳の特殊化と回路の自動化のおかげだという。人間は生存に必要な物体認識の古い回路を特殊化して文字認識の回路に再構成した。やがて視覚が受け取った情報を言語として理解するプロセスは高度に自動化されて流暢に読み書きをする能力になった。人間の読字能力の獲得には2000年を要したが、現代人は生まれて2000日でこの言語能力を身につける。

使用言語によって脳の使い方が異なるという点が興味深い。漢字とアルファベットでは脳の別の領域を使う。漢字と仮名が交ざった日本語を使う日本人の脳は、漢字を読むときは中国語に近い経路を使うが、平明な音節文字である仮名部分ではアルファベットに近い経路が活性化する。バイリンガルの人が脳梗塞になると片方の言語能力だけを失う症例もあるそうだ。脳の読書機能は多くが後天的な学習で構成されているのだ。

「流暢に読解する読み手の脳は今まさに、進化した文字を読む脳の最も重要な才能を手に入れようとしている。時間である。解読プロセスをほぼ自動化させてしまった若い流暢な脳は、隠喩、推論、類推、情動というバックグラウンドを経験から得た知識と統合させて、そのたびに時間を1ミリ秒ずつ縮めることを学ぶ。読字発達の過程で初めて、脳が思考と感情を別々に処理できるだけの速さを手に入れるのだ。」

私たちは学校や家庭でこの流暢に読む能力を自然に身につけていくように思える。しかし米国では人口の15%程度が読字能力に問題を抱えているという事実がある。日本でも近年の学習障害研究で、読字能力に問題を抱えるこどもの数が意外に多いことがわかってきた。後半は著者の専門であるディスレクシア(読字障害)の探究の章が続く。

エジソン、ダ・ヴィンチ、アインシュタインなど世紀の大天才達がディスレクシアであったといわれる。読字能力の欠落は天才的な能力と結びつくこともある。そして著者は自身の子供がディスレクシアであると同時に、それが遺伝する家系であること告白している。学者としても個人としても真剣な研究なのだという情熱がこの本からは伝わってくる。

読書脳の可塑性はデジタルメディアの出現によって新たな展開を生むかもしれない。新しい読みの体験は脳の再構成と自動化を進めていくからだ。

「文字を読む脳によって磨かれたスキルが、今、コンピュータの前に座り、目を画面にくぎ付けにして読んでいる新しい"デジタル・ネイティブ"世代のなかで形成されつつあるスキルに取って代わられることになったら、私たちはいったい何を失うのだろう?。」

と著者は心配しているが、私は、失うものよりも何を獲得しつつあるのかのほうが気になる。検索とザッピング、マルチメディアとハイパーリンクを前提とした読みの行為が人生の読書体験の過半を超える時代はもうすぐやってくるだろう。そのとき人間の脳はどう変貌していくだろうか。

それとこの「プルーストとイカ」。プルーストについては詳しいのだが、イカについて記述が少なすぎてよくわからなかった。私の読解能力不足のせいではなさそう。イカについてもっと書かないとイカん。(あ、書いちゃった)

読字に関する最良図書としてマーゴット・マレク賞を受賞。

・快適睡眠のすすめ
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国民の50%が起床する時刻を調査したところ、60年代には曜日にかかわらず朝は6時起床、夜は10時に就寝していたそうだ。ところが、この35年間で起床も就床も30分から1時間遅くなり国民全体で夜型が進行しているという。

同時に睡眠時間は60年代に8時間13分だったのが1時間以上短縮された。国際比較によると日本人は1日当たりの平均睡眠時間が453分(7.6時間)で、世界でも目立った短眠民族である。(特に家事や育児に忙しい40代の日本女性が睡眠時間を切り詰めて世界一級とのこと。)

・平均睡眠時間
日本 453分
カナダ 489分
アメリカ 496分
イギリス 511分
オランダ 492分
デンマーク473分
フィンランド496分

個人レベルでみると朝型・夜型、短眠型・長眠型には一長一短の特徴があるそうだ。朝型人間は生活習慣の堅さが強く融通性がなく、夜型は生活パターンの変化に耐性を持つ。長眠型は内向的で非社交的、神経質な傾向が強く、短眠型は外向的で活動性に富み、こまかいことに無頓着な傾向がある。

実は短眠型の睡眠は効率がよく、深い徐波睡眠もレム睡眠も、長眠型と同量にとっているそうだ。長時間寝ることが健康によいとは限らないのである。眠るために横になった時間と正味の睡眠時間の割合を睡眠効率という。この数字は20代まではほぼ100%だが、年齢が上がるにつれて減っていき60代以降では70~80%まで下降してしまう。眠りの質も大きな問題だ。

夜にわずかにしか眠らず、1日中短い睡眠を繰り返す「多相性睡眠」という睡眠傾向の人もいる。エジソンやナポレオンがそうであったと言われる。1日の睡眠を4時間ごとに15分とって1日の睡眠時間が合計90分でも人によっては大丈夫らしい。実践者の話が紹介されていた。競技中のヨットレースの乗組員たちは多相性睡眠が一般的だともいう。1日中夢うつつな意識で過ごすのだろうか。

睡眠中の脳と身体のはたらきが詳細に解説されており勉強になる。睡眠中にも意識は目覚めている「見張り番メカニズム」は興味深い事実だ。レム睡眠では刺激の意味によって反応の正確さが変わる。たとえば雷が鳴っても起きない母親が、子供の泣き声ですぐに目覚める。睡眠中でも特定の音が聞こえたらボタンを押すという反応も可能のようだ。

身体には時計も内蔵されている。人間はあらかじめ何時に起きようと決めて眠ると時刻ぴったりに起きることができるものなのだという。これは私もよく体験していたから納得した。重要な予定のある日は目覚まし設定時刻の数分前に起きて、鳴る前に止めることが多い。体内で時刻がカウントされているのだ。不思議なことである。

この本は睡眠の研究者が、眠りの科学とそれに基づく睡眠の質改善のためのアドバイスが解説する内容。健康とのからみだけでなく、生産性と睡眠という観点からも興味深い事実が満載。たとえば眠気を測る技術として眠気スケールというものが紹介されている。

・スタンフォード眠気スケール

1 やる気がある、活発、頭がすっきりしている、はっきり目ざめている
2 よく目ざめているが最良の状態ではない、物事に集中することができる
3 ゆったりくつろいでいる、まあまあ目ざめており、物事に集中できる
4 やや頭がボーっとして気がぬけている、横になりたい気分
5 頭がボーっとしていて気が散りやすい、目ざめているのがむずかしい
6 眠い、横になりたい、頭がぼんやりしている
7 まどろんでいる、起きていられない、すぐに眠ってしまいそうだ

この自覚的評価法でもある程度は再現性のある測定ができるものらしい。これは個人差もあるが一般的には「眠気のていどは二時間リズム、十二時間リズム、二十四時間リズムと強くなり、眠気のピークは早朝の四から六時がもっとも強く、つぎに午後の二~四時が眠い。」。交通事故や重大ミスの発生時間はこのパターン通りに発生する。

眠気、居眠りによるミスを防ぐには、早い午後にコーヒー、緑茶、紅茶、チョコレートを摂取して、20分ほど仮眠するとよいと教えている。20分なら本格的な睡眠に入らずに起きることができ、カフェインの効き目は30分後にあらわれるから目ざめやすいそうだ。今度やってみよう。

・アイ・オー・データ ミラーリング/ストライピング RAID対応USBハードディスク 1TB HDC2-U1.0
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自宅PCのバックアップ用の外付けハードディスクを探しに量販店にでかけて発見。いまやRAIDで1テラバイトでこの値段なのかと驚いた。1ヶ月ほど使っているが高評価。特徴を述べてみる。

■各種RAIDが使える

RAID関連設定は以下の3つの設定ができる。背面の切り替えスイッチのみで設定可。

(1)ストライピング(RAID 0) ※ 出荷時設定
2台のハードディスクに分散書き込みすることで、2台分の容量を1台として認識します。
(2) ミラーリング(RAID 1)
2つのハードディスクに同じデータを書き込むため、万が一片方のハードディスクがクラッシュしてもデータは安全に保護されます。

(3)マルチディスクモード(RAIDを使わない)
2台のハードディスクを別々のハードディスクとして認識します。

■ファンレスで静音

2台のHDDの間に空間をつくり熱を逃がす「中空エアフロー構造」を採用しているため、ファンを内蔵していない。よって動作音がほとんどしない。テレビの横に置いても問題がない。

■「安全な取り外し」処理が簡単なファンクションボタン

前面のファンクションボタンが便利である。デスクトップ上のタスクトレイ「ハードウェアの安全な取り外し」を実行しなくても、本体のファンクションボタンを2秒間長押しするだけで安全な取り外しが行える。接続時に押せばHDDのフォルダを開く。(ファンクションボタンはこのほか、任意のアプリケーション起動に割り当てが可能)。


■各種デバイス対応と付属ソフト

東芝ハイビジョン液晶テレビ<レグザ>、SANYOデジタルムービーカメラ「Xacti」に対応している。PCを使わずに直接接続で映像を録画再生できる。HDDの状態監視と管理ソフトI-O Drive CenterやバックアップソフトSync with、動画管理ソフトQuick:FLOなどが付属している。

なかなかお買い得な外付けHDDだったと思う。重量級なので固定据え置きで使うことが前提。

・Magic Moving Images: Animated Optical Illusions
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これは久々にヒットの錯覚錯視系の絵本。

イメージが縞模様状に重ねあわされた図の上に専用のフィルムをスライドさせると、不思議なことに絵がアニメーションのように動き出す。掌の中で画像が動くというのはiPodやゲーム機と一緒ではあるのだが、動き方が全然違って印象的だ。


YouTubeにアップされていたMagic Moving Imagesの動画。

この方式でヒットしているのがGallop!だ。上のMagic Moving Imagesは専用フィルムを本の上で動かす必要があるのだが(原理理解にはよいのだが)それが少し面倒だった。Gallop!は本のページ自体にフィルムを組み込んでしまっており、普通にページをめくるだけで動き出す。こどもびっくり。

・Gallop!
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こちらもYouTubeに動画があった。

サブダの立体絵本に続いてヒットの兆しがある錯覚アニメーション絵本。

・この写真がすごい2008
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コンセプトがナイスな写真集。特定のフォトグラファーや特定のテーマではなく、編者が「すごい」と思ったという視点で、雑誌や広告、写真展、投稿写真などあらゆるメディアで目にとまった写真をピックアップしている。写真の横にはどこがすごいかの短評がある。文章は読まなくてもすごさは一目瞭然のインパクトがある作品ばかりだが。

凄いと言っても芸術的にとか、ナショナルジオグラフィック的に凄いというのではない。ほとんどはおバカだったり、怖ろしかったり、シュールだったり、雰囲気ありすぎだったり、どれもこれもヘンな方向に凄いのだ。芸術性ではなく娯楽性に富んでいる。バラエティ番組みたいに楽しい写真集。

こういうやり方で写真集を構成するには、本来は紙ではなくて、インターネットが一番適しているはずだ。Flickrやフォト蔵にある大量の写真の中にも、凄い写真はたくさんみつかる。コメントをつければ他力本願ギャラリーができあがる。

実は私、2年くらい前からFlickrで、これはすごいと思った写真をお気に入りに登録している。ただしこれは「すごい美しい」の意味。この本のようなヘンな写真はない。いつのまにか200枚近くになった。短評をつける作業は大変でなかなか手が出せないわけですが...。

・私がこれはすごいと思ったお気に入り写真一覧
http://www.flickr.com/photos/datasection/favorites/

そのうちせめてこれらの写真にタグくらいつけて、自分が何を美しいと思うのかを分析してみようと思っている。

眠れる美女

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・眠れる美女
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川端康成の官能小説3編収録。それぞれが書き出しから大いにひきつける(下記にそれぞれの作品冒頭部を引用)。

■「眠れる美女」
「たちの悪いいたずらはなさらないで下さいませよ、眠っている女の子の口に指を入れようとなさったりすることもいけませんよ、と宿の女は江口老人に念を押した。」

江口老人(65歳)は若い娘が一晩裸で添い寝してくれる館に通う。女は薬で昏睡させられている。その身体は男の思うままであるが、客は枯れ果てた老人ばかりで、飽くまで添い寝を楽しむのが趣旨である。一線は越えないことになっている。ところがこの江口老人には男の部分がまだ少し残っているのであった。眠れる美女の身体を見るたびに若い頃に抱いた女達のことを思い出す。

6人の昏睡した女がでてくる。江口老人と女の間に会話はない(寝言はあるが)にも関わらず、女の身体描写だけで6種類の官能的な夜の模様が、ちゃんと書き分けられているのが凄いと思う。川端流6種類のそそり方がある。

■「片腕」

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。 「ありがとう」と私は膝を見た。娘の右腕のあたたかさが膝に伝わった。」

妙齢の娘から片腕を借りた男は家に持ち帰って愛でる。腕なのだけれど心が通じて話ができる。男は自分の腕をはずして付け替えて血の通うのを楽しんでみたりする。腕というのは女の腕でも社会生活の中で見えている部分だ。単体では嫌らしいものではなかろう。しかし、男が家にそれを一人で持って帰るという状況が、いきなり淫靡な雰囲気を醸し出していくのだ。

■「散りぬるを」

「滝子と蔦子が蚊帳一つのなかに寝床を並べながら、二人とも、自分達の殺されるのも知らずに眠っていた。」

眠っている間に顔見知りの侵入者によって殺された二人の知人女性のことを振り返る小説家の独白。犯人や被害者の心理を妄想して物語化する衝動が抑えられない小説家の深い業が主題といえる。この登場人物は川端康成自身のことだろう。メタ視点で短編集が終わる。

解説は三島由紀夫。表題作について「『眠れる美女』は、形式的完成美を保ちつつ、熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の逸品である」と評した。川端康成の奇想と官能が短編で3つ味わえるお得な文庫本。

・人はいかに学ぶか―日常的認知の世界
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おもしろいです。これは。

私たちは学校教育で教師から知識を学ぶ。一方で習わないこともたくさんある。日常を生きる上で必要な基本能力を私たちは「教え手なし」で獲得できる。学校に行かなくても生きていく基本能力は自然に備わる。発達心理学と認知科学を専門とする著者は、人間はこれまで一般に考えられてきたよりもずっと有能な学び手なのだという。

現実的必要から学ぶとき人は教師から学ぶのとは異なる強力な学習をする。この本はそうした日常的認知の能力を解明しようとしている。

たとえば英語学習である。日本で英会話学校に通ってもなかなか身につかないものだ。しかしアメリカ社会に単身で放り出されて会話能力が生存に必須の状態になれば、多くの人は自然に短期間で英語を習得してしまうだろう。メキシコの路上で商売をするストリートチルドレンたちは学校に通ったことがないのにおつりや利益率の計算ができる。それは彼等にとって生存に必要な重要事項だからである。

研究から判明した日常的認知による学習の2つの条件が整理されている。

1 その「必要」は、あくまで学び手自身が、自己の現実の問題を処理する上で不可欠だと実感したものであること。

2 「必要」によって作り出された目標と、それを達成する手段として学ぶこととの間に切り離せない関係があること。

勉強の成績が良かったら両親からお小遣いがもらえる、という状況はこの条件にあてはまらない。お小遣いをもらえる条件は他にもあるから「切り離せない」関係といえないし、「不可欠」でもない。生きていく上で切実に必須となったとき、教室とは異なる学習原理が発動するのだ。

二つの学習では獲得する能力の性質も異なっている。

「教室での学習場面のように、問題が解けないときに、まわりの人々の助けをあてにすることができず、しかも、もしも直接に助けを求めれば、「カンニング」という汚名をきせられてしまうのとは異なり、日常生活では、いつでもほかの人たちに頼ることができる。」

学校で学んで何かができるというのはアカペラで歌を歌えるようになることに似ている。日常的認知による能力は、文化的支援というBGMの上で歌うという意味でカラオケに似ている。人間は常識を働かせたり、人に聞いたり、空気を読んだりする。日常の強力な文脈を援助やヒントに使って、目的を達成する力があるのだ。必ずしも学校に行かなくても立派に何事かを達成できるようになる理由である。

「仲間同士のやりとりが知的好奇心を高め、より深く理解するのを助けるのだ、といっておよい。前節の三宅の実験と同様、人々が有能な学び手であるためには、他者の存在が必要なこと、その他者とは、関心を共有するが視点の異なる人がよく、必ずしも知識のより豊富な人であるには及ばないことが注目される」。

日常の学習では専門科学のように原理原則からの深い対象理解は不可能という見方もある。英会話やお金の計算ができるようになっても浅い理解にとどまって、言語学者や数学者にはなれないのではないかという考え方だ。しかし、個人にとってそれが重要な分野で、既有知識を持つ場合には、知的好奇心が働いて深い理解が容易になることもわかってきたらしい。内発的動機の学び手の学習効果は極めて高くなるからだ。

どうしたら日常的認知を学校教育や企業研修などの教育現場に取り入れることができるだろうか。著者は、指導者は教育的創造力を持つことが何より重要だ、と結論している。それは「特定の学習者を対象にして、学び手としての能動性と有能さが発揮され、しかも教育的に意味のある知的所産を生じるような活動を企画したり提案したりする創意工夫」である。

「教え手なし」の学習が成功するように導く教え手になれということか。教育や教師のあるべき役割について、新しい見方を与えてくれる名著だと思う。データやまとめが参考になった。

・日本のお金持ち妻研究
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日本人のお金持ちの奥さん達はどんな人たちなのかを真面目に研究した本。「日本のお金持ち研究」の番外編。大量のアンケートと統計分析から隠れた実態を探る。家庭における消費の主役である主婦、しかも富裕層の妻のプロフィール、考え方、行動パターンというのは、ビジネスマンとして気になるところだ。

庶民が想像するお金持ち夫人の典型イメージがある。専業主婦で豪邸でお手伝いさんを雇い、ブランド好き、教育熱心、優雅だがお高くとまっている、など。だが実像はかなり違った姿であることが判明していく。

まず彼女たちがお金持ちの妻になったきっかけである結婚を徹底分析する。俗説から次のような3つの仮説も立てて検証していく。

・玉の輿仮説:彼女たちは容姿端麗でお金持ちに見初められたのか?
・同類リッチ婚仮説:お金持ちの家に生まれてお金持ちと結婚したのか?
・糟糠の妻仮説:貧乏だった夫を支えて成功させたのか?

一般人との違いで目立つのが妻たちの学歴の著しい高さだった(夫たちも当然、高学歴が多い)。妻から見て学歴は同じか、より上の男性と結婚する「上方婚」が多い。世代間の富の連鎖は存在していた。夫も妻も両者がハイクラスの環境の家に育っている場合が多い。貧しい家から美貌で見初められてお金持ちの家へ嫁ぐという玉の輿の典型パターンは実際には少ないようだ。

中流家庭に生まれ勤勉堅実な生活と高い知性をみにつけた女性が、キャリアウーマンを経て富裕層の妻へ転身していく。妻の潜在的な能力の高さがその後の家の経営を成功に導くということらしい。富裕層の家計を見ると月々の生活費は平均200万円。うち消費するお金が110万円、貯蓄や生命保険70万円、ローン返済20万円となる。比率を見ると貯蓄や投資が多い。「消えてなくなってしまうような使い方ではなく、さらに増えてしまうような使い方をしているのである。」。

多くの妻がファミリービジネスの会社の経営者に就任している。専業有閑マダムというわけではないことが多い。これは節税就労の側面もあるが、妻が高いファイナンシャルリテラシーを身につけているということでもある。子供に倹約精神を教えたいという家庭が多い。でも儲かる投資、節税行動も忘れない。

わかりやすい事例が紹介されていた。見栄っ張りではないのでブランドものを買い集めたりはしない。だが衝動買いしたものを尋ねたところ「「割安だったので(ある有名な土地の)別荘を、つい買っちゃいました。」と答えた。この別荘に支払った代金は、後々別荘を売却した時に、ほとんど同額が回収されるか、さらに増えて戻ってくる」だろうという話だ。

統計にでてきた富の世代間連鎖はお金持ち優遇の諸制度も一因であろうが、お金を増やす知識を持つ妻を迎えることで、一族のファイナンシャルリテラシーが代々引き上げられていくことにもあるのだろう。

・美貌を磨くよりも知性を磨いた方がお金持ちの妻になりやすい。
・多くの富裕層が収入より遙かに低い支出で生活している。
・投資と節税にポイントを置いた経済活動の具体例

などの興味深い事実を知ることが出来た。

ちなみに逆玉ってどうなんでしょうね?次はそのテーマで書いて欲しいなあ(笑)。

・新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/11/post-491.html

・日本のお金持ち研究
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003412.html

・DVDFlick
http://www.dvdflick.net/
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先日、ある会合の中で、いまネットで流行っている動画(PC、携帯)はどんなものかを説明する必要があった。ところが会場はネット接続がない。どうやって動画を持って行こうかと迷ったが、ダウンロードした動画を1枚のDVDに詰め込んでみたら、現場でスムーズに利用できた。参加者からはそのDVDくださいと言われる始末、でもあげません。

ネット動画、携帯動画はフォーマットが入り乱れている。このDVDFlickはMPEG、FLV、H264、WMV、AVIなど多くのフォーマットに対応したDVD作成ソフト。DVDに焼き込みたい動画をドラッグアンドドロップで指定し、メニューを選択するだけで、簡単にDVDができあがる。フォーマットが混在していることなどは意識しなくて良い。

ダウンロードした動画からDVDを作成するフリーソフトはいくつもあるのだが、DVDFlickは45以上の動画形式に幅広く対応していること、動画のエンコーディングからDVDへの焼き付けまで可能なトータルソリューションであることなどが便利な点である。

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私が教員をしているデジタルハリウッド大学にて、学生たちが企画主催で下記イベントを開催します。私はメインパーソナリティとして出演することになりました。学園祭とはいっても、久々にマジで緊張です。だって私以外のゲストが凄いのです。 (どうやって集めたんだ、運営委員会のみなさん?)。

『文学賞メッタ斬り!』などで有名な書評家 豊﨑由美さん、『鉄腕アトム』『巨人の星』『デビルマン』などで知られる脚本家、放送作家、推理作家の大御所 辻真先さん、そしてIT業界の顔 週刊アスキー総編集長の福岡俊弘さん、そして私の4人で2時間たっぷり、読書について語り合います。

デジタルハリウッド大学の学園祭は、ほかにも企画がもりだくさん。これを機会にぜひ秋葉原にあるデジタルクリエイターの育成場の空気をご体験ください。結構凄いことになっていますから。それでは一般の方のご来場を心よりお待ちしております。

------------------------企画の概要

■学生よ、今こそ本を読め!

日々の制作に追われ、日々の仕事に追われ...気づけば最近読んだ本って、専門書だけだった気がする!あなたもそんな風になっていませんか?久しぶりに本をめくりたい、移動時間にさり気なく読書したい、「でも何を読んだらいいの?」そんなあなたのために!デジハリ祭に集結した超豪華「本のプロ」たちが本を読む事の素晴らしさから、今これを読むのだ!というお勧め本の紹介までライブで熱く語り合います!読書初心者のあなたも、文章で食べていきたいあなたも、スーパー読書家を自負するあなたも、皆様ご参加ください!

開催詳細日時10月12日(日) 16:00~18:00
場所:秋葉原ダイビル7F Room1~2 (定員100名)
※当日、学祭受付にて整理券を配布いたします。
http://www.dhfes.com/event/howto_read.html

■橋本大也 先生 (メインパーソナリティ)
デジタルハリウッド大学 准教授
データセクション株式会社 代表取締役他

ITビジネスの起業家。早稲田大学在学中にインターネットの可能性に目覚め技術ベンチャーを創業。主な著書に「情報考学?WEB時代の羅針盤213冊」「新・データベースメディア戦略。」「アクセスを増やすホームページ革命術」等。(株)早稲田情報技術研究所取締役、ngi group(株)ラボ所長、多摩大学大学院経営情報学研究科客員准教授等を兼任。
Blog : 情報考学 Passion For The Future

■豊﨑由美 先生
フリーライター、書評家

編集プロダクション勤務を経て、フリー。文芸、演劇、スポーツ、競馬予想などを手がける。
~主な著書~
『パチンコ天国極楽ケイバ』 ISBN:4480690255(筑摩書房、1997.9)
『それ行けトヨザキ!! Number 謎コラム傑作選』 ISBN:4163556702 (文藝春秋、1999.10)
『文学賞メッタ斬り!』 ISBN:4891946822 (パルコ、2004.3)(大森望と共著)
『百年の誤読』(ちくま文庫、2004.11)(岡野宏文と共著)
『そんなに読んで、どうするの?縦横無尽のブックガイド』 ISBN:4757211961 (アスペクト、205.12)
『文学賞メッタ斬り!リターンズ』 ISBN:4891947411 (パルコ、2006.8)(大森望と共著)
『どれだけ読めば、気がすむの?』 ISBN:4757213581 (アスペクト、2007.4)
『文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編』 ISBN:4891947543 (アスペクト、2007.5)(大森望と共著)
『百年の誤読 海外文学編』 ISBN:9784757214569 (アスペクト、2008.3)(岡野宏文と共著)

10月30日に新作『正直書評。』 ISBN:978-4-05-403872-1(学習研究社)が発売!

Blog : 書評王の島
http://d.hatena.ne.jp/bookreviewking/

■辻真先 先生
推理作家・脚本家
[担当授業]
文学にみるドラマ構成/アニメーション史

草創期のNHKテレビで、ドラマ・バラエティ・歌番組を含め、制作演出美術進行など生放映に携わる。フリーとなり『鉄腕アトム』『巨人の星』『デビルマン』ほか黎明期のアニメ脚本を多作。誕生期のジュブナイル小説も多い。のちミステリ作家、旅行作家として今日にいたる。日本推理作家協会賞、長谷川伸賞、文化庁メディア芸術祭功労賞、中日文化賞ほか受賞。

公式サイト
http://homepage2.nifty.com/M-TSUJI/

■福岡俊弘 先生
デジタルハリウッド大学 教授
株式会社アスキー・メディアワークス 週刊アスキー総編集長

1957年生。89年アスキー入社。92年よりパソコン情報誌『EYE・COM』編集長。97年より『週刊アスキー』編集長。ほかに2つの雑誌の創刊にも携わる。TBSラジオ『デジ虫』のパーソナリティー、『森本毅郎のスタンバイ』コメンテーターを各3年務めるなど、ラジオパーソナリティーとしての顔も。現在、株式会社アスキー取締役兼刊アスキー総編集長。

株式会社アスキー・メディアワークス
http://www.ascii.co.jp/

私は普段このブログで本の紹介記事を書くときに、引用箇所を書き写すという作業があります。これまで多くの本のページを左手で押さえながら、右手でキーボードを打つという大変効率が悪いやり方をしていました。ブックスタンドというものの存在を知って早速試したところ、作業速度が数倍化しました。

・ELECOM EDH-004 ブックスタンド
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買ったのはAmazonで販売されていたELECOM製のブックスタンド。本を固定したままページめくりもできます。厚さが62ミリの本間で使えます。単行本だけではなく文庫や新書でも十分に使えました。傾斜角は12段階に変化。ブックスタンドにおいたまま本を読む気はしないのですが、書き写すとか、作業状態を保持しておく、とか、帰宅したらこの本の書評を書こうと忘れないように準備しておく、など利用シーンはいくつかあります。

ついでにブックスタンドは他にどんなものがあるのか知りました。

・どんな姿勢でも読める!寝室用ブックスタンド! ほんとスタンドWセット 黒 EW-2
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これはベッドにセットできるタイプ。入院生活を想定したもののようです。寝っ転がりながら読むぐうたらツールとしても結構よいのかもしれません。

・バスブックスタンド
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本がぬれるのではないかと気になりますが、お風呂用のブックスタンドです。

・森林楽 ファミリー書見台
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和風高級タイプです。畳の上で正座して読む雰囲気です。

・ブックストッパー
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これはブックスタンドではありませんが、

・株式四季にすごく便利。
・辞書、六法全書などの厚い本にすばらしい効果。
・料理の時、料理本を押さえておくのに重宝である。
・囲碁、将棋を本にて研究するのに便利。

だそうです。

・べっぴんぢごく
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女の悲しい性を描かせたら当代一の岩井 志麻子。作家の得意であるに加えて、美女と醜女が代々交互に生まれる因縁の一族という設定が秀逸だ。読み始めると止められない。

明治の終わり、岡山の寒村で一番の分限者の家に育ったシヲは妖艶な美女であったが、村人達から呪われた出自を噂されている。シヲの娘のふみ枝は牛蛙とあだ名される醜女でシヲとは折り合いが悪い。ふみ枝の娘の小夜子は祖母に似て美貌にうまれつき、母より祖母になついた。美醜は当時の女の運命を決めた。

「男を期待させ、焦らし、ひっくり返すのは、なんと楽しいことであるか。母はきっと、一度もこんな気分は味わっていないだろう。そう考えれば、小夜子は母が哀れになる。たっぷりと知っていそうな祖母が、かすかに小憎らしくなる。」

美しい女達は禍々しいほどの魅力で男をひきつけ愛欲に溺れた。淫蕩な性質も共通であり、身体が男なしには生きられなかった。醜く生まれた女達も家の資産を受け継ぐために血筋を絶やすことはなかった。そして小夜子の娘、孫、曾孫が宿業を背負って生まれてくる。すべては一族の祖先に取り憑いた怨念の仕業であった。

シヲの半生が語られる序盤が終わると、そこからは代ごとに章がわけられている。「第一章 シヲ七歳」~「第十二章 シヲ百四歳」という風に、シヲの年齢で物語は仕切られている。あのシヲの時代から今が何年というのを読み手に強く意識させる。そのせいか厚い本ではないのだが、読後に壮大な大河ドラマを読み切った満足感がある。

・赤朽葉家の伝説
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005047.html
宿命の女達の年代記という点で似ている。これに匹敵する傑作。

・ShoppingFinderプラグイン
http://plugin.shoppingfinder.jp/index.html
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ショッピングの強力な支援ソフト。かなり便利だ。

Web上のECサイトを横断検索するツール。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon.co.jp、価格.com、ビッダーズや有名ショッピングモール、個別のショッピングサイトを検索対象とし、ショッピング検索ツールとしては日本最大級 5,000 万点以上の商品を検索できる。ネット中から珍しい商品を探したいとき、最安値のショップを探したいときに重宝する。

このプラグインはMSIEのエクスプローラバーとして動作する。基本的には対応ショッピングサイトを表示するだけで自動的に横断検索結果が表示される。エクスプローラバーから直接、検索を行うこともできる。

検索結果の絞り込み機能が嬉しい。たとえば映画DVDを探すために「ダイハード」で検索するとダイハードの2,3,4など続編の他、関連商品が大量に表示されてしまう。ここで目的の「ダイハード」の商品画像に青いピンマークがついていたら、クリックするとずばり「ダイハード」のDVDだけに絞り込まれる。

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リスト表示に切り替えると販売価格や商品評価、レビュー数でソートすることができる。クチコミの内容や規模を確認できるので、ちょっとした市場調査にも使える。

エア

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・エア
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これは衝撃作。21世紀の世界に究極的な情報技術が登場したらどんな変化を及ぼすかを、寓話的に予言している。といっても、未来のハイテクそのものがテーマではない。原題はAir(or,Have Not Have)"。情報や金を持つ者、持たざる者の関係性がネットワークによってどう変わりうるのかこそ最大のテーマだ。

2020年、中国とチベットの間にある辺境の村で、メイは「ファッション・エキスパート」の仕事をしている。近代化から取り残された村にはネットもテレビもいまだ普及していない。彼女はときどき街を訪問して密かに情報を仕入れる。そして村に戻ると流行に疎い隣人たちを店に案内し、この服が都会で流行っていてあなたに似合うのよ、と指南する。村人が服を買ったら、メイは店側から仲介の手数料を得る。メイが情報を持ち村人は情報をもっていない非対称性から成立する情報ビジネスだ。

村の有力者の家に「テレビ」がやってくる。テレビは街の様子をメイを介さずに村人達に伝えてしまう。だから起業家マインドを持つメイは、仕事のスタイルを状況の変化にあわせていかなければと苦心している。テレビを嫌悪するものもいたが、メイはむしろそれを利用しようと前向きだ。

テレビはネットワークに接続されている。(この作品における「テレビ」は現在のインターネットと同義のようだ)。メイはネットワーク上にお店サイトを持とうと決めた。村の女達の手芸品を街の人たちに売るのだ。メイはテレビを研究する。肝心の情報は有料チャンネルだったりクレジットカードが必要で、お金がない村人達は買うことができないことを知る。村人達は次第に情報格差の問題に気がつき始める。平和だった村に持つ者と持たざる者の対立が緊張感が生まれていく。

そして1年後には全人類の脳を直説的に連結する究極のP2Pネットワーク「エア」がこの村にもやってくることを知らされる。この超インターネットを使えば、世界中の人々が仮想空間で意識を統合し、情報や知識をわけあい、遠隔コラボレーションが可能になる。世界はひとつになるのだ。

市場では二つの規格がデフォルトを競っていた。「ゲイツフォーマット」と「国連フォーマット」。村でベータ版のテストをするためメイは未知の技術に身を任せたが思わぬ大事故に巻き込まれる。事件の渦中でメイは世界に先駆けて「エア」の脅威と可能性を知る一人になる。辺境の村の女性が世界を変えていく大きな物語がそこから始まる。

メイは生まれた辺境の村をほとんど出ない。中心ではなく周縁からの視点にこだわって世界の変革を描いている。世界で起きていること、これから起きるであろうことの物語である。文句なしで面白い5つ星の作品。

英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞受賞。

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