現代消費のニュートレンド―消費を活性化する18のキーワード

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現代消費のニュートレンド―消費を活性化する18のキーワード
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■マーケティングのネタ本として使える情報満載

この本は電通のニュースレター「トレンドボックス」の内容を元に、現代消費のキーワードを解説する本。根拠となる調査データのグラフが豊富に掲載されており、マーケティングの仕事のネタ本に重宝する。

・電通 消費者情報トレンドボックス
http://www.dentsu.co.jp/trendbox/index.html

目次は以下のとおり。なるほどと実感した項目を太字にしてみた。

Part1 ポジティブ消費者を探せ!
 01 "遊ぶ大人"が消費をリードする
 02 "癒されたい"から"元気になりたい!"
 03 いまどきの若返り術。
 04 "わたしづくり"の文化消費
Part2 新しい消費ユニットを狙え!
 01 新しい消費単位としての"平成拡大家族"
 02 "週末二人暮らし"カップルの"新・おうち消費"に大注目!!
 03 アクティブ大ママ進化論
 04 飼い犬の家族かが掘り起こす"D.O.G"市場
Part3 消費者の世代特性を掴め!
 01 平成型中学生のユニット感覚
 02 "キャラばーゆ族"が変えるワークスタイル
 03 仕事モードも、ボクモード。
 04 インビシブル30代の底力
 05 ほっと!なママは"してみたい族"
 06 "ソフトボイルド"な男たち
Part4 新しい消費者像を描け!
 01 "ユビキタス"消費の可能性
 02 拡大するワガママ消費!!
 03 センスでこなす!主婦は食品オカイモノ達人
 04 ドリンクはココロの鏡?!

Part5 座談会「消費者研究の最前線」

■セグメンテーションの終焉と多自由構造な生活

統計の専門家、社会心理学の専門家だからといって、必ずヒット商品を作れるわけではない。市場の傾向や、個別のお客の声をマイニングすることで”改善案”は分かるだろうが、パラダイム革新は起こせないものだと思う。

高度成長期のように、豊かさに共通基準があり、”大衆”がそのベクトルへ動こうとしていた時代は終わってしまった。次に出てきた特徴を共有する集団、分衆的な考え方も、多様化によって分析対象として意義が薄まってきているようだ。データベースマーケティングやデータマイニングも、期待されたほど成果をあげていないように思う。

第5章の対談から引用。


上條 日本人はセグメントされるのを嫌がりますし、されるほど特異性もありませんから、企業がこれまでのようなセグメンテーションでターゲットを設定することには限界が来ているかもしれませんね。

マーケティング的にいうと、昔はクラスター分析が分かりやすかったけど、いまはクラスターで分けた人びとの実像が掴みにくくなっている。そこで私たちは、昨年のヒット商品の分析の際に、消費も多重構造になったことを捉えて「多自由構造な生活」と呼びました。

たとえば、自動車は高級車を買うけれども、サングラスは1000円でいい。そうした「二重消費」が数年前まで目立ちましたが、現在はもっと自由で多重な消費行動になっているというわけです。

私の読みでは、多様な物語性を抱えた個人が主役の時代になったのだと感じている。データベースマーケティングやデータマイニングでは、物語性を抽出できない。購買履歴やアンケートから、属性やキーワードが幾つか分かったところで、個人の抱えた感動ドラマは見えてこないのだ。最大公約数や平均による分析も物語性を殺してしまう一因になるだろう。

ではマーケティングはこれから何もできないのか?そんなことはないと思う。

よく言われる「現代の消費者はきまぐれになった」は嘘だと思う。個人は物語の中では比較的合理的に振舞っているのだと思う。多自由構造の中で、物語を生きる個人の合理的選択をうまく捉えられるマーケティング分析手法がこれから求められているのではなかろうか。

アイデアとしては、情報科学における、制約条件によるストーリー生成の研究などは、マーケティングに応用がありえるかもしれないと思う。

■物語の交差点に生まれるもの

個人的なことを書くと、結婚と子供の誕生は、大きく消費内容を変えるなあと実感している。私は4年前に結婚して、2年前に東京から、地方都市の実家近くに引っ越し、そして1年前に子供が生まれた。消費内容はこの間ガラっと変わった。それまでは都内のトレンドの店やコンビニ、秋葉原にお金を落としていたが、今はデパートや郊外の大型ショッピングモールが消費の中心になった。

子供の誕生以来、休日の外出は家族単位が基本。父母や妹家族と出かけることも多くなった。でかける先の選択には、小さな子供がいても安心して過ごせる場所であることが絶対条件になっている。具体的には、授乳室や広いトイレ、騒いでも大丈夫な環境、ベビーカーを通しやすい通路あることなどである。電通の本で言えば、新おうち消費型から、平成版拡大家族型になったのだ。

マーケティングに対する感性も当然、変わった。独身時代はあまり意識しなかったが、デパートや大型ショッピングモールはこれらの条件を完璧に満たしている。こういう場所は、物語の交差点とも言えることに気がついた。

たとえばアイスクリームひとつにも物語性がある。

・アイスクリームを孫に買ってあげたい祖父母
・アイスクリームは子供の年齢から与えるのはまだ早いと考える両親
・アイスクリームに関心のある子供自身
・とにかく売りたい店員

構成員全員にアイスクリームに対する過去の想いもある。この葛藤、制約を解消して、皆が幸せになるような商品とサービスの組み合わせが求められている。物語は感動を生み、感動は人に話され、伝播する。深い感動は大抵は、ヒトとモノではなく、ヒトとヒトの、物語の交差点上のインタラクションから生まれるものだ。

物語の交差点はどこか?
物語Aと物語Bが交差すると何が起きるか?
ハッピーエンドへ向かう起承転結の転は何か?

ある程度はヒューリスティックなアプローチで解を導き出せそうな気もする。従来のマーケティング理論が扱う物語や体験は、静的で類型化され過ぎていたと思う。もっとライブでリアルな物語を見出す技術が必要だと考える。

行くと皆が幸せになるドラマが起きるように設計された不思議なお店。インターネットのショップにもそんなサイトがあったらいいなと思う。

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コメント(1)

>データベースマーケティングやデータマイニングも
期待されたほど成果をあげていないように思う。

そうですね。

ただこの手の手法の限界は、
分析対象が「既存顧客」データ。一方
マイニングされた結果を適用するのは
「新規顧客」だ、ということからくる、
つまりデータ「集団」の属性の違いからくる
齟齬が、「成果」がなかなかあがらない理由では
ないでしょうか。

「既存顧客」の購入頻度、来店頻度、購入範囲
をあげる手法としては結構使えます。
セブンイレブンが代表格。

「物語」性は、マイニングそのもの所為というより、
マイニング結果を使う側の感性の問題でしょね。

その「感性」へ向けたメッセージとして
「セグメンテーションの終焉と多自由構造な生活」は
的を得たご指摘かと思います。

どうでしょう?

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このページは、daiyaが2004年7月15日 23:59に書いたブログ記事です。

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