ものが壊れるわけ 壊れ方から世界をとらえる

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・ものが壊れるわけ 壊れ方から世界をとらえる
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著者は壊れるということを専門に研究してきたコロラド鉱山大学教授。

■いつとなぜの違い


いつとなぜとの混同はよくある誤解だ。人が理解しているのは、実はものがいつ壊れるかである。他の現象もすべてそうであるように、破壊も二つの部分、原因と結果から成る。いつの問題は原因を左右することにあり、なぜの方は結果を左右する。

コップを落とせば割れるのは、いつの問題で、床にカーペットを敷くことで壊れる原因をなくすことができる。コップが陶器でできていたから割れたというのが、なぜの問題で、ブリキのカップを使うことで結果を変えることができる。

破壊実験によって物質の強度を計測することで、ものがいつ壊れるかは分かっている。問題はなぜ壊れるのかということ。ものが壊れる本当の原因というのは、意外にも最近、著者らの研究で判明してきたことであるらしい。

材料は私は素人なので。この本の専門的な解説を理解できたかどうか怪しいが、つまり、ものが壊れるということは、それを構成する原子と原子が分断されてしまうということだ。原子と原子は化学的に結合している。結合には電子が接着剤のような役割を果たしている。その強さは界面における電子の密集度(電荷密度)で決まると考えられていた。しかし、著者は密度だけでなく構造の違いが、壊れやすさに影響しているのではないかと考えた。電荷密度が同じでも異なる強度を持つ素材がみつかるからだ。

そして、最新のコンピュータを使った量子計算で、電荷密度には構造があること、その構造が破壊特性の違いとなって現れることを明らかにした。なぜ壊れるか、どうしたら壊れなくなるかの根本原因が解明されたことになる。

■タイタニック号沈没とチャレンジャー爆発事故の違い

タイタニックの沈没事件について著者は原材料と構造に問題があったと考えている。タイタニック号に使われた鋼鉄を作ったスコットランドの炉は、硫黄や燐の不純物を除去する反応が行われていなかった。これらの不純物は金属を脆くする。さらに鋼鉄は温度が高いと柔軟になり、低いと脆くなる性質がある。その特性が劇的に変化するのがタイタニックの鋼鉄の場合、摂氏20度近辺だったのだという。沈没当日の海水はマイナス2度であったため、氷山との衝突で船体は脆く破られてしまった。タイタニック沈没の原因は本来は原材料と設計に大きな問題があったことであるそうだ。

しかし、実際の事故後の追及では、破壊は避けられなかったものと前提されてしまった。そして、船長の判断ミスや救命ボートの搭載数の少なさが多数の死者の原因として批判された。

それから70年後、スペースシャトル、チャレンジャー号が打ち上げ直後に爆発した。原因はブースターの継ぎ目を保護する部品が、気温の低さで脆くなっていたことだった。根本原因はタイタニックと似ていたが、今度は素材の強度が調査委員会では問題にされ、責任追及が行われた。

70年の科学の進歩によって「将来同様の状況にならないようにせよ」から「何が故障したかを特定して、それを修理せよ」へと対応が変化したのだ。ものが壊れるのは仕方がないというのではなく、壊れないようなものを作るべきだとする要請が強まった。

先日、訪問した中国で聞いた話では、あちらでは中国製の車の欠陥はよくある話で、死亡事故など当たり前におきているそうだ。三菱自動車の欠陥程度ではリコールなど起きないらしい。中国はまだ70年前の状況にあるのかもしれない。

著者の研究は基礎科学で、その成果が応用され、壊れない新素材が作られるには、もう少し時間を必要とするという。ものが壊れなくなったとき、たとえば今から更に70年後、私たちは大事故の際には次に何を問題にするようになるのだろうか。

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このページは、daiyaが2004年12月13日 23:59に書いたブログ記事です。

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