続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法

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・続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法
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この本の続編。

・「超」整理法―情報検索と発想の新システム
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003283.html

■スケジュール一覧と文書連絡

超整理法的タイムマネジメントとは、以下の2つのノウハウに要約できる。

1 スケジュール表を一覧性のあるものとし、数週間から数ヶ月にわたる時間を目で把握すること

2 連絡を文書で行うこと

人間は7つくらいの要素しか記憶できないので1週間以上のスケジュールはスケジュール表やメモのような外部記憶を使った工夫が必要だという。そこで編み出されたノウハウから作られたのが超整理法手帳である。逆に分刻みで動く大統領でもない限りは時間区切りの1日のスケジュール表は不要とも言う。

1では、長期の時間管理ツールとして超整理手帳、中期の管理ツールとして「To-Doボード」、短期の管理ツールとして「すぐやるメモ」が紹介されている。超整理法の一冊目で紹介された「押し出しファイリング」と同様、どれも机の上ではなく、時間軸を整理することで、仕事の効率を高めようとするノウハウである。

2では「文書を作るには時間がかかるから、時間節約のために口頭で連絡する」というのはウソで、「時間がないから文書で連絡する」が正しいのだというノウハウ。FAXのススメが主な内容だった。ただし、この本が書かれたのは10年前であるので、今なら電子メールということになるかもしれない。

■仕事の進め方5原則と限界効用均等化の定理

スケジューリングの技術として次の5原則が示されていた。

1 中断しない時間を確保する
2 現場主義と応急措置(その場ですぐやる)
3 拙速を旨とせよ
4 ときには寝かす
5 不確実なことを先にやる

とにかく仕事が発生したら現場で手をつけよ、そして8割を完成させたら、他の仕事に回れ。

これはたくさんの異なる仕事を同時進行で進めるタイプの忙しい人向けのノウハウとして、まさにそのとおりだと思った。8割終わっていれば、完成は容易だし、状況報告しやすい。仕上げを他人に頼むこともできる。

そして、最も参考になったのが、限界効用均等化の定理。「一般に、いくつかの対象の限界効用が等しくない場合には、限界効用の高い対象に資源を振り替えることによって、全体の効用を高めることができる」という経済学的な考え方。

例えばAとBという2つのゲラ刷りをチェックする場合、ゲラAだけを2時間読むと120字の誤字を発見できるとする。誤字の分布が同じなら、ゲラAを1時間、ゲラBを1時間読めば総計で200字を発見できる。ゲラチェックというのが、そういう性質の仕事だからである。

ゲラAだけを2時間読むと、Aは完璧かもしれないがBは手がつけられない。大抵はAもBも8割できている状況の方が好ましい。

■拡散と収束のタイムマネジメント

タイムマネジメントで個人的に考えたこと。

私は以前、あるシンクタンクの依頼で、半年に一回、50社の有望な海外IT先端技術企業を見つけては各企業のプロフィールと特徴について、レポートを提出する仕事をしていた。この仕事は数年間に及んだ。毎回、提出時期が近づくと有望企業のリスト作成と個別の分析記事を書くことになる。

この仕事で学んだのは、

「拡散系の思考と収束系の思考を交互に繰り返すと効率が悪い」

という法則。

この仕事をするには、以下の2種類の作業が必要だった。

(1) 拡散の作業

まず50社を絞り込む作業は拡散思考から始まる。ある企業に注目したら、競合や類似した事業内容の企業を探す。最初に見つかった企業が必ずしも最有力ではないことが多いからだ。似た内容の企業が10社〜20社程度集まるまで候補リストアップを続ける。まったく同じ内容の企業はないので、ある程度テーマを広げて探索することになる。これを50社分、行う。

(2) 収束の作業

そして、その中で最も有望な企業を50社の最終候補に絞り込み、各企業の分析記事を書く。今度は収束系の思考である。この段階で新たな情報を広げて探索してしまうと、作業が終わらなくなることが多い。

この仕事を引き受けた頃は、私は50社のレポートを書くのに、(1)と(2)を50回繰り返していた。これには大変な時間と労力がかかっていた。拡散と収束が混在してしまって、個別記事を書いているうちに、新しい情報が出てきてしまい、まとめがつかなくなるのだ。拡散思考の直後に収束思考モードに移れないので頭が混乱する。

2年目くらいからは要領が分かってきた。まず1週間はひたすら(1)に集中し、500社から1000社を最初にすべてリストアップしてしまう。拡散に集中することで、情報はどんどん見つかる。そして少し休んで(2)のフェイズに入る。今度は、もう新しい情報は探さない。十分な時間を使った(1)でレーダーに引っかからなかった情報は大して重要ではないと割り切って、手持ちの情報だけで50社に絞り込んで個別分析を書く。

この作業手順の変更だけで、初回は1社に1日かけて全部で50日以上かかっていた作業時間が10日程度に短縮された。精神的にも作業が楽になり、革命的な変化だった。広げて探すときは徹底的に広げる、絞るときは絞るに専念することで、精度も高まっていたと思う。
一見、一社一社、関連情報を調べてはレポートを書いていった方が丁寧に思えるが、実際はそうではなかった。

この本の仕事の進め方5原則に当てはめると、

1 中断しない時間を確保する
4 ときには寝かす
5 不確実なことを先にやる

という部分が新しいやり方で改善されたのだと思う。

情報を広げて探すというのは、いつ有力なネタが見つかるか分からないし、終わりも見えない不確実なことだった。だから先にまとめたのが正解。その後、分析を書くまで結果的に寝かせたことで考察を深められたし、各作業を中断せずに行うことで能率が上がったのだと思っている。

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いつも読んでは刺激を受け、勉強させていただいている、情報考学 Passion For The Futureで続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法が取り上げられている。 そうだよなー、と思うこと多数。時間の使い方について、僕はもっとがんばって研究して考えて実践し... 続きを読む

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実は「超」整理法も続〜も持ってるんですが積んでます(爆死)。それはさておき、こちらの書評で述べられている「拡散と収束のタイムマネジメント」はまさに我々研究者が論文を書く際にやっていることと全く同じです。関連文献の探索、実際の研究と考察、論文にまとめる。ま... 続きを読む

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このページは、daiyaが2005年4月24日 23:59に書いたブログ記事です。

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