アースダイバー

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東京の無意識を探るスピリチュアルな旅へ!
縄文の夢、江戸の記憶……。太古の聖地にはタワーが聳え、沼は歓楽街へと姿を変えた。地下を流動するエネルギーとこの街の見えない構造を探る神話的精神の冒険!
宗教学者 中沢新一著。


アースダイバー地図を片手に、東京の散歩を続けていると、東京の重要なスポットのほとんどすべてが、「死」のテーマに関係をもっているということが、はっきり見えてくる。古いお寺や神社が、死のテーマとかかわりがあるのは当たり前だとしても、盛り場の出来上がり方や、放送塔や有名なホテルの建っている場所などが、どうしてこうまで死のテーマにつきまとわれているのだろうか

著者は縄文時代の地形と現在の東京を重ね合わせた地図を片手に、東京を散策した。東京の重要なスポットが縄文から弥生時代に「サッ」と呼ばれた神聖な場所につくられている事実を発見する。こうした場所には、古墳や由来の古い神社がつくられていた。

縄文時代は海面が現在より100メートル高かった。東京はフィヨルド状の海岸図形で海と川が複雑に入り組んでいた。神聖な「サッ」は陸の突端にあたる海に面する地形の場所であることが多かった。「サッ」はミサキ(岬)、サカ(坂)であり、境界面を意味する。そこは古代人にとって、生の世界と死の世界、エロスとタナトスの境であった。

渋谷の繁華街やラブホテル街がなぜ繁栄しているか、もこの地勢論で説明できるという。渋谷の坂は昔は海や川に面した湿った場所であった。神泉駅の辺りは古代からの火葬場で、文字通り泉が涌く湿地だったらしい。

私が毎日通っている道玄坂(ホテルじゃなくて、会社があるから、ですよ)についてもこんな記述がある。


道玄坂はこんなふうに、表と裏の両方から、死のテーマに触れている、なかなかに深遠な場所だった。だから、早くから荒木山の周辺に花街ができ、円山町と呼ばれるようになったその地帯が、時代とともに変身をくりかえしながらも、ほかの花街には感じられないような、強烈なニヒルさと言うか、ラジカルさをひめて発展してきたことも、けっして偶然ではないのだと思う。ここには、セックスをひきつけるなにかの力がひそんでいる。おそらくその力は、死の間隔の間近さと関係を持っている。

文学では、セックスは小さな死であるとたとえられるが、湿った死のイメージの土地柄が、渋谷のラブホテル街の繁栄とつながっていると著者は考えている。大きな池のある湿地であった新宿の歌舞伎町も同様だという。

逆に乾いた土地には、官庁や大企業のオフィス街が現在は位置している。新橋がオヤジの繁華街であること、青山がオシャレの街であること、秋葉原がオタクと電気の街であること、早稲田や三田が学生街であること、銀座が高級な街であること、皇居に天皇がいることの意味も、こうした霊的な地政学で説明してみせる。

考古学的、歴史学的、都市論的には著者の考えが正しいかどうかはまったく定かではない。現在の東京の街の持つ雰囲気を、古代の地勢と宗教学的な意味づけで、すべて説明できるものでもないと思う。だが、著者らが作成した縄文〜弥生時代の地理と、古い古墳や神社の位置、現在のランドマークを重ね合わせた地図(付録にもなっている)が、絶妙の一致を見せるのは、なにかの因縁を強く感じるのも確かである。

私も著者同様に、東京を歩くのが大好きなので、土地が持つ雰囲気の違いはよく分かる気がする。確かに強い雰囲気を持つ土地には、古い神社や寺があることが多く、地形も独特であると思う。納得できる記述が多かった。

東京の散歩が趣味の人にファンタジーとしてとても面白い本である。

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昨日の週間ブックガイドでも紹介されてました。
私も興味津々。よんでみよーっと。

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このページは、daiyaが2005年8月21日 23:59に書いたブログ記事です。

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