はじめての文学 川上弘美

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・はじめての文学 川上弘美
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芥川賞選考会の委員にも就任して、現代文学の代表的作家になった川上弘美。この本は、はじめて文学と向き合う若い読者に向けた自選アンソロジー。漢字にはルビがふられており、中学生、高校生の読者を意識しているようだ。

作品の選び方は決してお子様向けではなくて、「はだかエプロン」の話もあるし、倦怠感漂う男女関係の話もある。得意とするもののけの話もある。はじめて読む大人にとっても、著者の多様な作風の作品を少しずついれているので、入門ガイドとしておすすめ。

「ためになる、とか、視野が広がる、とか、そういうことも多少はありましょうけれど、それよりもっと大きいのは、なんというかこの「隠微な快楽」の味なのです。」。あとがきのなかで著者は、想像力をめぐらせて自由に読むことこそ小説本来の楽しみ方だとすすめている。

このブログで何冊か川上弘美の作品は紹介していて、収録作品のいくつかは重なっている。二回目だった作品も、深く読むと別の味わいが感じられたりして、やはりこの作家は凄いなと再認識した。

特に書き出しがうまいことに気がついた。

「恋人が桜の木のうろに住みついてしまった」 運命の恋人
「くまにさそわれて散歩に出る。河原に行くのである」 神様
「一月一日 曇 もぐらと一緒に写真をとる」 椰子・椰子
「十四本のろうそくを、あたしは埋めた」 草の中で

いきなり短文で読者を異世界へ誘う。どういう話だろうとふらふら入っていくと、いつのまにか隠微な川上ワールドに閉じ込められて、終わるまで出られなくなる。

過去に書いた川上弘美作品の書評。

・ざらざら
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004886.html

・龍宮
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004759.html

・真鶴
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004871.html

特に真鶴がおすすめ。これを読んで以来、ずっと行きたかった真鶴へGWに行ってきました。真鶴岬は上空で風がぐるぐる回っている感じがして、不穏な空気を感じました。真鶴港の海は引き込まれそうな青緑色にひかれました。小説に感化されすぎかな。そういう雰囲気が写ったらいいなと思って、写真に撮ってきました。

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このページは、daiyaが2007年6月13日 23:59に書いたブログ記事です。

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