東方綺譚

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・東方綺譚
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アカデミーフランセーズ初の女性会員となった「ハドリアヌス帝の回想」の著者マルグリット・ユルスナールの短編集。ギリシア、インド、中国、そして日本。東方に伝わる神話や伝承をベースに紡がれた、幻想的な物語が9編収録されている。マルコポーロの見聞録からしてそうであったように、西欧人が思い描く東方のイメージというのはどこか歪曲されている。神秘的で、美しく、そして残酷にデフォルメされる。ここには本当の東洋には存在しない魅惑の架空オリエンタリズム世界が広がっている。

「老画家汪佛とその弟子の玲は、漢の大帝国の路から路へ、さすらいの旅をつづけていた。のんびりした行路であった。汪佛は夜は星を眺めるために、昼は蜻蛉をみつめるために、よく足をとめたものだ。二人の持ち物はわずかだった。汪佛は事物そのものではなく事物の影像を愛していたからである。」

この世のものと思えぬ完璧な世界を絵画に描いたために、皇帝から死を命ぜられた老画家の最期をえがいた「老画師の行方」は大傑作だと思う。この作品のラストシーンの崇高で幻想的な美しさは、まさに作中の老画家の仕事のように完璧な出来だ。

源氏物語の勝手な外伝ともいえる「源氏の君の最後の恋」は日本が舞台。かつて数多いる情人のひとりであった花散里は、自身の正体を隠して、年老いて盲目となった源氏の傍に仕える。源氏の思い出の中に残されているはずの自分の姿を知りたいという一心で。訳者あとがきによると、原作の時代考証は少々いい加減だったらしいが、名訳によって恋の儚さを描いた印象深い作品に仕上がっている。

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このページは、daiyaが2008年4月20日 23:59に書いたブログ記事です。

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